「覚えておけっ、わしが王だ!!!お前(神)たちは執事!下僕!従ってろわしに!!!」
概要
CV:津嘉山正種
テレビドラマ版キャスト:津川雅彦
福本伸行原作の漫画「アカギ〜闇に降り立った天才〜」の登場人物。
本作の主人公赤木しげるに次ぐ人気キャラクター。
戦後の日本を裏から支配し、巨万の富を築いた闇の帝王。
卓越した先見性と頭脳、そして神懸かり的な「剛運」をもつ別名「昭和の怪物」。
その実力は赤木が唯一自分の同類、神懸かり的に手強いと認めたほど。1965年8月の時点で75歳。
大きな吊り目(初期は垂れ目)と鷲鼻が特徴的で、銀色の長い白髪をオールバックにしてその一部を肩にかけている。
漆黒の裾の長いスーツ、唐草の装飾が施されたハイネックのシャツ、深紅色のベストを着用。アニメ15話では、暗い緋色のガウンを身に付けている描写があった。
性格は唯我独尊で散漫だが、一方でかなりの負けず嫌い。対局では、赤木に散漫さや死への怯えを指摘され何度か敗北を喫する事もあるが、その実力と絶大な剛運で互角に渡り合う。
さらに「ホワイトホール」と呼ばれる「超絶剛運状態」が存在し、その状態になると配牌の時点でテンパイし役満をツモあがる怪物と化す(ナレーション曰く、赤木以外には完全無敵状態)。
『アカギ』のスピンオフとして、過去の鷲巣を主人公とした『ワシズ -閻魔の闘牌-』が「近代麻雀オリジナル」にて2008年7月号から2012年11月号まで連載された後、続編として『ワシズ 天下創世闘牌録』が2012年12月号から2013年12月号まで連載された。
「アカギ」での鷲巣は、赤木と鷲巣麻雀6半荘を戦った。
鷲巣が賭けるのは6億円(対局中に隠し財産1億円を追加)、赤木が賭けるのは血液。
また後半南一局からは、鷲巣の財産では足りなくなり、鷲巣自身の血液も支払いの対象となった(単行本21巻より)。
活躍
前歴
東京帝国大学法学部を卒業後に、「官庁の中の官庁」とも称された内務省に入省。警保局(現・警察庁)に配属され、特高警察で頭角を現し、その後特高警視・権中警視にまで昇進する。しかし1942年6月、同年のミッドウェー海戦の結末(当時の報道では戦勝だが、実際は壊滅的大敗)を機に日本の敗戦を予見し退職、敗戦後の戦犯から逃れられた。
戦後、経営コンサルタント会社「共生」を設立し、内務省時代に掴んだコネ・スキャンダルを駆使して企業コンサルティングを行うほか、実業家としても朝鮮戦争時に鉄屑の売買や炭鉱の抵当権と炭鉱王の地金を得るなどで巨財を築き、裏社会の頂点に立った。
しかし老境に入り、老いと死への絶望から狂い、『鷲巣麻雀』を仕立てて若者の命を弄び、若者が敗れ死に絶える様を見ることを最高の愉悦としていた。
本編
1965年(昭和40年)、鷲巣麻雀により犠牲となった若者は失踪扱いされていたが、犠牲者の一人である平山幸雄(ダメギ)の死体処理があまりにも杜撰だったせいで、一連の失踪事件が鷲巣の悪業によるものと警察に発覚。鷲巣の逮捕も時間の問題であったが、警視庁でも鷲巣がかつての警視庁OB(厳密には前身の内務省警保局)であったことで、当局としても身内の恥を晒すために及び腰だったこと、加えて鷲巣が警察の捜査を掻い潜るため政治家らに資産を握らせて事件をもみ消すが、その代わりに海外への逃亡を行わねばならなかった。そんな折、鷲巣は海外逃亡前に最後の一戦を希望、その相手に選ばれたのが赤木しげるであった。
作中で赤木が最も長く戦っていた相手で、単行本の8巻(1998年初版)から約20年間戦い続けていたが、35巻(2017年11月)でついに決着がつき、赤木に敗北。敗北した理由は、血液を抜き過ぎによる貧血から鷲巣が心肺停止状態に陥り、白服(後述)が蘇生・輸血を敢行したため(血抜きの鷲巣麻雀中に輸血を行うことはルール違反)。白服の必死の手当ても虚しく、鷲巣は生き絶えた・・・かに見えたが気合いでからくも生き返り、鷲巣邸を発った赤木を「勝負は終わってはいない」と血眼の様子で探しに行く。
ちなみに、この時の鷲巣はアカギに点数で上回っておりかつ最終局オーラス、手は実質ダブル役満テンパイであり、部下の三元牌と東を鳴いて、西差し込まれればアカギに手を回さず問答無用で終了という勝利確定の状況にあった。もし鷲巣の心停止があとわずかに遅れていれば赤木が負けていたのである。
そのため赤木は「俺はただ長生きしただけ・・・勝ったのはオレじゃない 勝ったのは鷲巣・・・おまえだ!」と心の中で彼を賞賛した。また、勝敗のわからぬ大敵に今まさに勝ちが確定した瞬間という"博打の絶頂で逝った"鷲巣のことを「羨ましい死に方をした」と述べ、その死に様(生きていたが)から、鷲巣が確かに「何かに魅入られ、愛されている。何かを持っている」一方で「自分にはそれがない、だから自分はいつか凡庸に死ぬ」と後々の幕引きを予感し、「俺も鷲巣の様に俺らしく死のう」と決意していた。
また、目を覚ました直後は貧血による意識混濁でボーッとしており、普段ならば「手前勝手に慌てた挙句無断で蘇生措置をして敗北とは何事だ」とでもキレそうなところを殊勝な態度で「無為に死ぬ所を助けてくれた命の恩人だ、叱責などとんでもない」と言い、アカギが「試合の上では勝ったが勝負では実質負けたのだから自分の分は要らない」と置いて行った金を「(情けで残された)不浄の金」として焼却する様に命じ、白服からは「こんな丸くなってしまった鷲巣様なんて…」と落胆されていた。
その後アカギとの再戦のための捜索に執心しようとするが白服が「アカギの追跡には資金が必要だがその資金がない、それに使える資金はアレ(現在一部炎上中の札束)しかない」と言った瞬間「金を燃やすとはどういう了見だ」といつもの理不尽な手のひら返しを敢行し、すぐ消火しろと杖で殴りながら命じ、「これでこそ鷲巣様だ」と訳のわからない見直され方をしていた。
これにより一応3〜4億弱(現在の3〜40億程、仰木と安岡が「お互い一億転がり込んだ」と話しているため、残りが勝負していた赤木の取り分と考えられる)はなんとか手元に残った模様
その後散々キレ散らかしながらも稲田組(アカギを連れてきた柳木が若頭を務める組)へと来襲、アカギを出せと詰め寄るも荷物を持ってさっさと駅へ行き、改札を通って消えたという証言から当てもなく街を彷徨いながら嘆いていた。
鷲巣麻雀での対局から3年後、アカギを追って石川県御川を訪れるも、すれ違いの状況となり、アカギに惨敗して金をむしり取られた上、脅して取り返したと思った金の入ったバッグは石を適量詰めただけのものであったことで、アカギを追って始末しろと命じたヤクザに対して「アカギはワシの獲物だ、横取りするなら貴様や貴様の親分から始末するぞ」と脅しつけ涙を飲ませたが、結局アカギとは再会できず、無念の涙を呑んだ。なお3年の間で何があったのかは不明だが、車椅子となっていた。(あの…国外退去…)
この時点で鷲巣麻雀を始めるきっかけとなった自身の老いと死への絶望が綺麗さっぱりなくなっており、「もう一度勝負しろ、でないとワシが死んでしまうだろ」と独白するなど死よりむしろ「自分が死ぬまでにアカギと決着をつけられない」事を恐れるように代わっていた(最後のポン直前でも「ワシもいつか死ぬが、その時はお前が言っていた様に大人しく死んでやる。だから先にお前が死ね」と独白している事から自身の死への恐れを吹っ切った模様)
なお、鷲巣の直接的な最期は描かれていないが、アカギが老齢となった『天』の時点での生存は考えにくく、既に故人である可能性が高い。
若者たちへの嫉妬から生き血と命を奪い続けた吸血鬼の末路は、1人の若者を執拗に追い続け満たされない欲に苦しめられるというものであった。
来歴
1890年・誕生(年齢から逆算)。
1912年3月・旧帝大を卒業。
1912年4月・内務省・警保局に入局、特高で頭角を現す。
1932年未明・特別高等警察警視に昇進。(尚、当時の警察には「警視」という階級は存在しない。実際の階級は一等警視補か権少警視といったところか、いずれも現在の警察でいう「警視」「警視正」あたりである。)
1940年未明・特別高等警察権中警視に昇進。(現在でいう「警視正」あたり)
1942年6月・ミッドウェー海戦の結末から日本の敗戦を予見し、退職。(これにより、鷲巣は一般人となる為戦犯追及等から逃れることとなる)
1945年3月・東京大空襲を見物。
1945年8月・終戦後、敗戦後の惨状を鑑み、その後の生涯を勝ちと定める。
1948年前期・コンサルタント会社・共生を設立。隼(鈴木)、文学が入社。
1948年後期・戦争を予見し武器工場会社や鉄くずを収集。
1949年未明・手作りのガラス牌を作成。文学が退社。
1950年6月・朝鮮戦争勃発、戦争を予見していた鷲巣は戦争の特需で日本の再興に一役買う。
1956年未明・白髪になり服装が現在に変化。隼が白服に。田中角栄の後ろ盾となる。
1957年未明・日本の支配者・元老に勝利、鷲巣の推す岸信介が総理に。鷲巣、日本を牛耳る。
1965年未明・赤木しげると鷲巣麻雀で対局。激戦の末、赤木に敗北。
1968年未明・赤木を追って石川県御川を訪れるも、赤木との再会は叶わず。
鷲巣麻雀
鷲巣麻雀とは、「アカギ」作中にて鷲巣が考案したオリジナルの麻雀ルールである。
- 同種牌4牌のうち3牌がガラス牌で、全員に牌が何なのか分かる。
- 鷲巣は現金、対戦相手は血液を賭ける。血液はあがった時や半荘終了後の清算時、点数に応じ取り戻す事が出来る。
- 牌が丸見えのため山は積まず、洗牌は半自動卓で行われる。配牌やドラ、ツモは卓の中央の穴から取る。
- 盲牌できないように、牌を取る右手に皮の手袋を着用する。
- 最初のドラ表示牌は配牌終了時に親が一枚引く。
- カンドラ、裏ドラは必要になったときにそのつど必要とするものが引く。また、暗カン明カンがいくらあろうと、捨て牌の合計が70牌で流局。
- 1ゲームは半荘6回。VSアカギでは2回ごとに鷲巣側が続行するかどうかを選択できるルールが追加された。
- 点数の清算は原則半荘終了ごとに行うが、鷲巣と対局者の間に直接点棒の移動があった場合は、ボーナスとしてその局ごとに血液か現金をやり取りする。どちらを受けるかはあがった人が決める。
- 終了時それぞれ10-30の順位ウマと、トップにはオカとしてさらに2万点が加算される。鷲巣と対局者との点差に応じ、血や金を支払う。生き残るか鷲巣の持ち金を全て奪えば対戦者の勝ち、死に至るまで血を失えば対戦者の負けになる。また対戦者が負けた場合、それまでに得た金は全て没収される。
なお作中では鷲巣側に有利な小細工などは特にされていない。…が、公平な勝負とはとてもいい難い代物である。
挑戦者側は血が抜かれる度に死が近づき、死の恐怖による視野狭窄、貧血による意識混濁等も相まってまともな精神状態ではいられなくなる。そのため振り込むリスクを極度にを恐れ即オリ、或いはそれを嫌って暴打しがちになり、後半になるほどまともに上がれない、或いは白痴の様な振り込みが多発する状態となる。
それに対して鷲巣は通常レートなら惨敗したとしても最大でもせいぜい5000万負けといったところで鷲巣の財産からしたら痛くも痒くもない(ちなみにアカギ戦での全財産6億はあくまでニセアカギの死体遺棄の隠蔽に大半を浪費した後の残りであり、それまではもっと多くの金を所持していた)。
そのため作中では鷲巣による一方的な「狩り」のゲームと語られている。
アカギはこれに対抗するためにレートを10倍に引き上げる(本来は血液10cc=10万円=1000点換算で20万点=成人男性の大体の致死量2000ccだが、100cc=100万円=1000点の2万点にする)ことで、一度でも鷲巣を下回ればサシウマで即死亡となるが、鷲巣の本来の最大負け分5000万を5億にまで跳ね上げ鷲巣を「殺せる」ようにし同じ土台に持ち込んだ。
実際鷲巣も初めて味わう全てを失う恐怖に一時まともに麻雀が打てず、大敗する一局もあった。
鷲巣の部下
鷲巣配下の黒服は、稲田組の黒服と区別するためか全員白いスーツにカラーシャツを着ている。通称「白服」。
・岡本 / 吉岡
鷲巣の腹心らしく、鷲巣のわがままをよくなだめている。鷲巣に仕えて10数年と発言。アカギとの対局前に鷲巣の不興を買い、杖で殴られたために額に打撲痕がある。アニメでは包帯をしている。
単行本18巻からの人物紹介では岡本と表記されているが、初版単行本11巻のナレーター部分では吉岡と呼ばれていたようだ。アニメでは吉岡となっており、ファンによっては「吉岡本」という呼び方をされることもある。
他の白服たちと共に鷲巣に助言をしたりするが、実は彼らが助言をしなければ(或いは鷲巣がそれらを全て一蹴していれば)鷲巣はとっくにアカギに勝っている。
アカギを恐れすぎるあまり、勝負の流れも鷲巣が絶好調でアカギのブラフまでも看破し勝利寸前であったのを「限りなく可能性が低くても、万が一にでもリスクは冒せない」「未来は分からないから、今は確実な安全を優先するように」と、余計すぎる心配をしたためにせっかくの勝利を逃す破目になってしまう。
結局、目先の損得や保身ばかり気にする凡人であったが故に鷲巣の足を引っ張ることになってしまった。
・鈴木(隼)
赤木と鷲巣麻雀での勝負に参加。鷲巣の下家として、鷲巣をサポートする。
「ワシズ」においては、側近として配下にされる過程が描かれている。当時のあだ名は「ハヤブサ」(日本陸軍の戦闘機・隼のパイロットだったため)。
ネットでの評判
初期の頃は禍々しい闇の王としての威厳があったが、巻数を重ねるに連れ徐々に垂れ目から吊り目へと変化し、またアカギとの対戦においてのリアクション、名言の数々や子供っぽい振る舞いがネタとしての相乗効果で多数のファンを獲得した模様。
牌を投げつける、よだれを垂らすなどの鷲巣の振る舞いを指して75歳児と呼ばれる事もある。
ニコニコ動画などでは、名も無きの白服達の手によって多くの鷲巣様MADが製作されている。
鷲巣を主とした作品では、鷲巣様ファンクラブ専用MADタグより閲覧することが出来る。
また、女性化された萌えキャラとして「鷲巣衣和緒」がpixivでは有名。
ちなみに本編では対局中に意識不明になった際、地獄に落ちたのだが『亡者を焚きつけて地獄の鬼達に反乱を起こす』『さらに巨大化して閻魔大王をブン殴る』『現世に戻る際に富士山から巨大化のまま出現・世界遺産(富士山)崩壊』『迎撃に向かった自衛隊の戦車や戦闘機を破壊しまくる』とやりたい放題な脱線しまくりの超展開がネット上でも話題になった。もはや初期の怪人物を超えた怪獣の有様である。
挙句はその回の最後のコマでの煽り文が『鷲巣様が新たな使徒…?』と公式が病気であった。
ところでこの漫画、何をテーマにした作品だっけ?
鷲巣の名言集
- なぜ満ちない……?なぜ…俺は死ぬ……?
- 死んじゃう死んじゃう…死んじゃうツモ…!
- 通用しませーんっ…! そんな事は…ゼロ ゼロ ゼロ…! 加えませーん…! いっさい 手ごころなど…!
- ロンッ……!ロンッ……!ロンッ……!ロンッロンッ……!ロンッ……!ロンッ……! ロォンッ……!
- 悪魔めっ…!わしなどまっとう……!このガキこそ悪魔だっ……!
- これぞ……ワシズコプター
- わしはわしと心中…! わしっ わしっ わしっ! そもそも… それがわしじゃった! 唯我独尊! わしはわしのことだけ好き…!
- わしは…君らとは違うんです!
- 神など死ねっ!死ねっ! 上だっ…! おまえよりわしが… 上っ…!
- 英語ならキング!ドイツ語ならケーニッヒ!イタリア語ならレッ!レレレ!レレレ!レレレのレッ!
- 乗りはせんっ…!奴の苦し紛れの戯言…ツイッターに!
- 止めを刺す! 貴様の博運 博才を 凌駕する… 鷲巣力で!
余談
モデルとなった人物は、戦前・戦後期の右翼活動家・児玉誉士夫氏と思われる。
氏は、戦時中に海軍航空本部のために物資調達を行い、終戦時までに備蓄していた物資を占領期に売りさばいたことで莫大な利益を獲得。その豊富な資金を使って、戦後分裂状態にあった右翼を糾合し、鳩山一郎氏などの大物政治家に政治資金を提供しており、その絶大な権力・資金力から「政財界の黒幕」、「フィクサー」と呼ばれ恐れられた人物であり、かつての鷲巣の経歴と非常に酷似している。かの有名なロッキード事件に深く関与していたとされているが、裁判中に本人が没したため真相は闇の中となっている。ちなみに生前葬を行っており、河野一郎や大野伴睦といった大物政治家が児玉のための葬儀に集まり、焼香したというエピソードも存在する。
ドラマ版では市川と親交があり、彼からの助言を受けて鷲巣麻雀を思い付いている。
また、意外に甘党なのか、イチゴシロップをかけた(当人曰く「血の様に真っ赤な)かき氷を好む一面も見せている。
関連タグ
海江田四郎 - 『沈黙の艦隊』の主人公。立場は違えど、アニメでは中の人が鷲巣と同じであること、劇中での策謀をめぐらしたピカレスク的な活躍が若き日の鷲巣(ワシズ)と共通している。