概要
飛天御剣流奥義である、超神速の抜刀術。
右足を前にして抜刀する抜刀術の常識(※1)(※2)を覆し、抜刀する瞬間に絶妙のタイミングで鞘側の足、つまり左足を踏み出す。その踏み込みにより刀を加速し、神速の抜刀術を「超神速」にまで昇華させる技である。
理屈こそ簡単ではあるが、刀側の足を前に出した状態で抜刀攻撃は身体のバランスを崩すと同時に自分の足を斬る恐れがある。生死を分ける極限状態での左足の踏み込みには確固たる信念が必要不可欠であり、「捨て身」「死中に活を見出す」などの後ろ向きな気持ちを一片でも含んでいては絶対成功しない…と、瀬田宗次郎は評している。
…というか、そもそも抜刀術の『刀身が鞘の鯉口から完全に抜けて相手に接触するまでの間』という常人には知覚することすら困難な時間内に遅れず先走らず尚且つ体全体がちゃんと前進するだけの踏み込みを相応の速さで行っている事を考えると、この『一歩』だけで既に人間業を越えているという事が解るだろう。
発動中の流れ
「たとえ天翔る龍の牙をかわした所で、吹き荒れる風に体の自由を奪われ、爪によって引き裂かれる」(比古清十朗)
初撃(龍の牙)
上記の仕組みの下で繰り出される一撃目。
『超神速』の名が伊達な筈もなく、たとえ相手の大技を先撃ちされている(というか、既に相手の攻撃が届いてる)状況でも競り勝って打ち負かせてしまうあたり、並大抵の者にとってはこの段階で既にほとんどチートに近い。
尚、直接刀身が当たっていない筈の部位にも衝撃が加わっている様に見受けられる(食らった蒼紫のビリビリに破けたコート等)が、これは後述の現象に寄るものと思われる。
間(吹き荒れる風)
初撃をかわされるか防がれたとしても、超神速の刀に空気が弾かれた事による衝撃波(つまりソニックブーム)が敵の全身を叩いて行動を阻害しつつ、同じ原因によって術師前方に発生する真空領域に相手を引き摺り込んでしまう。
因みにこれはフィクション内だけの荒唐無稽な理論では実はなく、同様の現象は発砲直後の銃火器の銃口付近でも格段に小規模ながら実際に起こるものであるらしい。
二撃目(龍の爪)
こうして自由を奪われた上に自らこちらに向かって来てくれている相手に対して、初撃の動きを殺さぬ横回転による遠心力が加わえられ、更なる踏み込みによる推進力も得た強力な二撃目を叩き込むことができる。
どれだけ「強力」かと言うと、大の大人が遥か上空にブチ上げられてしまうレベルである。
天翔龍閃に限らず、「飛天御剣流の抜刀術は全て隙を生じぬ二段構え!!!」と、比古清十郎は語る。
(双龍閃で言えば鞘での攻撃)になっている。
成功戦績での威力は絶大であり、師匠の比古を一撃で昏倒させたのを皮切りに、四乃森蒼紫、宗次郎を倒し、志々雄真実にも絶大なダメージを与え、人誅編に至っては外印を夷腕坊ごと十数m上空までぶっ飛ばしていた。
派生作品
キネマ版では九頭龍閃が奥義となったため、奥義とは別の「最速抜刀術」という位置づけとなり、技の読みも「てんしょうりゅうせん」に改められた。
九頭龍閃と同じく、剣心が抜刀斎となる前に会得している設定となっている。
PS十勇士陰謀編では、RPGという都合上、一撃目しか登場しない。
PS2炎上!京都輪廻では原作通り、一撃目が当たらなかった場合に二撃目に移行する。
PSP再閃では一撃目のみ。
PSP完醒では、一撃目の後、真空の空間のエフェクトをバックに二発目を放つ。
脚注
※1
通常刀は左腰に備えるため、左足を前にすると抜刀時に斬ってしまう危険性がある
※2
左足を前に出す抜刀術が存在しないわけではない。著名な流派では以下がある。
・ 神夢想林崎流(居合術): 右身の技が、ほぼ天翔龍閃の体勢と一致する
・ 香取神道流(剣術): 立合抜刀一本目の冒頭、抜くと同時に踏み切り、左足を前に出す
・ 信抜流(居合術): 左足を出して抜くのが基本の流派 (但し、間合いにより踏み換える)
余談
誤解されることがあるが、天翔龍閃は右足→左足の順に踏み込むのであり左足のみを踏み込むのではない。左足だけだと、只の「踏み込む足を変えただけの神速の抜刀術」でしかなく、抜刀時に加重と加速がかからず超神速に達しない。
この事には正体を見破った宗次郎からも言及されており、単行本12巻の初披露の時点でも、まず右足を踏み込んだ後に次のコマで更に左足を踏み込んでいるのがちゃんと描かれている。また、アニメ版や実写版でもちゃんと「右足→左足」の順に踏み込んでいる。
このように誤解されるのは、技を繰り出す時に左足の踏み込みだけで右足側の描写が省略されがちなことに加え、志々雄戦で佐渡島方治達が足の踏み込みを警戒する際に「左足を踏み込むか否か」ではなく「右か左か」と描かれてしまったのが原因と思われる。(一瞬の攻防における思考なので台詞自体は不自然ではないのだが)
なお、当然比古も天翔龍閃は使えるはずだが、原作では使う機会がなく、上記したゲーム作品ですら一度も天翔龍閃を使った事がない。