概要
CV:岩永哲哉
演:窪田正孝
京都見廻組(新撰組と同じく佐幕派の警邏組織。元の身分が低い彼らと違い旗本や御家人等の士分にある者たちで構成される)に属する若い武士の青年で、御家人の次男坊。
文武弓馬は十人並み以下だが、明るく優しい性格で慕う者は多かった。幼馴染の娘との婚約も決まっていたのだが、上述の通り武士として秀でていない自分に少しでも箔をつけるべく結婚を先延ばしにしていた(その幼馴染には「一廉の武士として認められなければ君を幸せに出来ない」と語っていた)。
そして残雪も未だ消えぬ1864年4月某日、同僚の石地と共に京都所司代の重倉十兵衛を護送している最中に不運にも人斬り抜刀斎の襲撃を受ける。重倉と石地は瞬く間に抜刀斎に殺害され、自身も刀を抜いて応戦するが、腕及ばず頬に一条の傷を負わせただけであえなく斬殺されてしまう。しかし今際に彼が抱いた無念が余りに強かったため、抜刀斎の頬の傷は癒えぬものとなった。
冒頭でいきなり殺されてしまった人物だが、抜刀斎の人生を変えるきっかけを生んだ彼もまた、追憶編のキーパーソンであると言える。
実写映画版でも、志々雄一派に捕縛された緋村剣心=抜刀斎に向け、佐渡島方治が罪状を読み上げるシーンで名が登場している。回想描写では原作とは違い血まみれになりながらも戦いを挑んでいるが、力及ばず雪中に散った。
余談
作中では悲劇の人物として描かれた彼だが、一部の読者からは「動乱の京都で名を上げようとした以上死ぬ覚悟もあって当然」「自分の実力を正しく見極められず功を焦った自業自得」と辛辣な評価をされることもある。
実際、戦う理由が剣心達の守株の輩を排除し新時代を築くという情熱や、新選組の幕府への忠誠を貫く真の武士たらんという信条に比べると、彼は活躍して出世したいからという(命をかけて戦いに赴く猛者たちの視点で見れば)ある種不純なものなので、気概の温度差で敗北したと言えないこともない。
とはいえ当時、長きに渡る太平の世の中で御家人が出世する機会などほぼ絶無に等しく、幕末の動乱に身を投じる事はその貴重な千載一遇の機会であり、武士として名誉栄達を得たいという意味では、彼の動機は多くの新選組隊士たちと然程変わるものではない。
加えて彼と切り結んだ剣心の「腕自体は大したことはないが、生きようとする執念は凄まじかった」という評価から、彼が決して軽薄な気持ちで京都見廻組として剣を振るっていたわけではないことも窺える。そうでなくば、人斬り抜刀斎にかろうじてとはいえ一太刀入れることなど不可能だろう。
なんとなれば、彼の目的は「愛する人を幸せにしたい」「愛する人と幸福に生きていきたい」という、本来は剣心たち維新志士、そして幕臣たる新選組隊士たち双方が守ろうとしている、最も尊い願いそのものだったのだから。
関連項目
以下、ネタバレ注意
清里の婚約者の名は、雪代巴。後の抜刀斎の妻となる人物である。
彼を失ったことは、巴の弟である雪代縁の暴走の最初の引金にもなり、文武はてんでダメだが人当たりもよく心優しい性格は、巴にとっても決して惹かれないものではなかった。