曰く「魔盗賊」「黒き砂漠の民」「大魔王」「力を支配する者」「光と影を統べる王」「厄災」。
概要
『ゼルダの伝説』シリーズの多くでラスボスとして登場する、主人公にとってもプレイヤーにとっても因縁の宿敵と言える存在。
触れた者の望みを叶えるというハイラルの秘宝「トライフォース」、そしてそれによるハイラル王国の支配を目論む大悪党。
その過程で、理由は様々だが、ゼルダ姫をさらう展開が多く、他の任天堂作品でのポジション的にはマリオシリーズにおけるクッパ大魔王、星のカービィシリーズにおけるデデデ大王などに近い存在。
だが、コミカルな描写や一時的に共闘や仲間になる展開もあり曲がりなりにも歩み寄りができるようなそれらと異なり、作中では決して主人公やヒロインとは相容れることのない、諸悪の根源として君臨し続けている。
間違いなく悪党だが、彼なりの美学があるようで、ゼルダ姫を殺そうとしたことはなく、リンクに関しても子供なら命までは奪おうとしなかった。
リンクやゼルダは作品によって別人のことが多いのに対し、ガノン/ガノンドロフはシリーズ通して基本的には同一の存在である。ただし、『時のオカリナ』の結末から分岐してパラレルワールドのガノンドロフが生まれたり、過去の作品の彼が転生した存在だったり(『4つの剣+』)と、完全なる同一人物というわけではなくなり始めている。
そして『ブレスオブザワイルド』では既に生命としての形を失い、思念体としてハイラルの地を支配しようとする「厄災ガノン」として現れる……のだが。
ネット上では「ガノンドルフ」と呼ばれることも多いが、正しくは「ガノンドロフ」である。逆に、同じく任天堂のスターフォックスシリーズのボス「アンドルフ」は、名前が似ているためか混同されることもあり、「アンドロフ」と呼び間違われることがある。
人物
過酷な砂漠で暮らすゲルド族の出身であり、ゲルドにおいて100年に1度だけ生まれるという唯一の男性。
身に秘めた圧倒的かつ邪悪なる魔力を背景に世界を手中に収めんと野望を抱き、何よりも強大な『力』を信条とする。
ただし決して力任せの単純な人物というわけではなく、様々な魔法を使いこなす知的な一面や、謀略に長ける狡猾な一面も備え持つ。『時のオカリナ』ではパイプオルガンの演奏も披露するなど、芸術にも精通している様子が描かれている。
力による支配は、盗賊団の王として奪い奪われながら力ある者だけが生き残る弱肉強食の砂漠の掟を体現したもの。そしてその燃え上がる野心は、広大な砂漠という死と隣り合わせの過酷な環境に生まれたが故の憧憬でもあった。
大半の場面で冷酷な性格を示すが、『風のタクト』ではリンクをねじ伏せながらも命までは奪わないと告げたり、愛用する双剣に育ての親の名前であるコウメ、コタケの名をつけ、大切にしていたことがうかがえるなど、決して非情だけの人物というわけではないことが描かれている。
全シリーズにおいて友や仲間と呼べるような存在は登場していない。強大な力で配下を率いて魔物たちを統率しながらも、自身と肩を並べる対等な人物というものには恵まれず、孤独な人でもあった。
2017年3月1日発売の『ゼルダの伝説 ハイラル百科』によると、宝石はトパーズを好むらしい。
『時のオカリナ』において魔獣と化したガノンの剣にはトパーズがあしらわれている。
また、同書では身長230cmぐらいと記載されている。
一人称は作品によって異なる。
『時のオカリナ』では「オレ」もしくは「オレ様」、『風のタクト』では「ワシ」、『トワイライトプリンセス』および『ゼルダ無双』では「我」となっている。
容姿は赤または赤茶色の髪に、褐色(オリーブ色のような色で描写されることもある)の肌、鍛え抜かれた躰が特徴。鎧の上に赤いマントを纏っている。鎧の下は素肌であったり同系色の服を着込んでいたりする。また、鎧にはゲルド族の紋様らしき意匠が用いられている。
年齢の描写は作品によってまちまちで、壮年期(20代半ば〜30代後半)の荒々しく血気盛んなイメージのこともあれば、中年期以降の威厳あるイメージのこともある。シリーズが下るにつれ後者のイメージの方が強くなっている。
各作品のガノンドロフ
本記事では、発売されたシリーズ順にガノンドロフを紹介している。ネタバレ注意。
(そのため、ゼルダ史における時系列順で確認したい場合は「歴代ガノン&ガノンドロフ」の記事を参照することを推奨。)
本編作品
ゼルダの伝説 神々のトライフォース
盗賊団を率いる頭領であり、またの名を魔盗賊ガノン。聖地の入り口を見つけ、血で血を洗う闘争の末に勝ち残りトライフォースを手にした。
「世界を我が手に」という願いによって聖地を闇の世界へと変貌させ、更にはそこにいる者たちをトライフォースの呪いによって動植物に変身するようにしてしまった。ガノンドロフもブタの怪物「ガノン」になっている。
ガノンは闇の世界から光の世界(ハイラル王国)の侵略も目論む。手始めに自身の邪気をハイラル王宮へと向かわせ、騎士団と邪悪な者の戦いである「封印戦争」を勃発させた。
しかし騎士団の奮闘と7賢者の封印によって闇の世界の出入り口を封印され、ガノンは光の世界に帰れなくなった。
と、このように、時のオカリナよりも先に発売されたため、時のオカリナのガノンドロフとは設定が若干異なる。
なお「ガノンドロフ」という名前がゲーム中に登場したのは発売順では本作が初。
ゼルダの伝説 時のオカリナ
「オレの名は ガノンドロフ! 世界の支配者となるものだ!!」
初登場作品。『ガノンドロフ』というキャラクターの設定が明確化された作品でもある。
詳細はこちら。⇒ガノンドロフ(時のオカリナ)
ゼルダの伝説 ムジュラの仮面
姿と名前こそ出ないが、ゲームのプロローグで前作の(7年後の未来の)戦いでリンクに敗れたとのモノローグで語られている。現代のガノンドロフ(時の勇者が帰還した時系列)に関しては、前作のエピローグとトワイライトプリンセスの回想から、タルミナでのリンクの冒険と戦いの裏で、ガノンの処刑の準備が進んでいたと思われる。
ゼルダの伝説 風のタクト
詳細はこちら。⇒ガノンドロフ(風のタクト)
ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス
詳細はこちら。⇒ガノンドロフ(トワイライトプリンセス)
ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
作中では「厄災ガノン」(たんに「ガノン」とも)と呼ばれる。魔獣ガノンのそれに近い非常に禍々しい異形の姿となり、その怨念は具現化してハイラル城やハイラル各地に泥のように染み付いている。
肉体はおろか自我や知性までも完全に失われており、もはや人であった頃の面影は全くなく、禍々しい怨念の塊として描写される。
後述のティアーズオブザキングダムにガノンドロフ本人が出演しているが、現状厄災ガノンとガノンドロフの関係性については断定することができない。
詳しくはこちらを。
ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム
ブレスオブザワイルドの続編に当たる今作ではハイラル王国の地下遺跡に胸の部分に謎の手が食い込んだミイラらしきものを発見。
このミイラにいくつかの特徴的な点がガノンドロフの特徴と合致していたためこれがガノンドロフのミイラなのではないかと考察されていたが、トレーラー3rdとその後に公開されたツイッターにて、ついにガノンドロフ本人であることが確定し、完全復活を遂げたことが明らかになった。本編作品で『ガノンドロフ』としての姿で登場するのはトワイライトプリンセス以来。トワプリの発売日が2006年であるため、実に17年ぶりである。
詳しくはこちらを。
派生作品
ゼルダ無双
使用武器:大剣(二刀流)・トライデント(3DS版追加武器)
シアを陰で操っていた真の黒幕としての登場。
何気に「ガノンドロフ」としてはトワプリ以来の登場である(それ以後だとスマブラへの出演のみ)。大剣による二刀流をメインに、闇の力で戦う。
詳細はこちら。⇒ガノンドロフ(ゼルダ無双)
ガノン
ガノンドロフが魔獣に変身した姿として、「ガノン」が登場する作品が存在する。
かつて、『ゼルダの伝説』初代以降の数シリーズではこの姿で登場しており、『時のオカリナ』までは人間体である「ガノンドロフ」は登場していなかった。
ただし『神々のトライフォース』のプロローグや一部の登場人物たちが名前と「魔盗賊」という肩書を口にしている。聖地に侵入しトライフォースを手に入れ、「世界を我が手に」という願いを叶えて聖地を闇の世界に変えたものの、そこから脱出することが出来なかったため、闇の世界で魔力を蓄えて光の世界に侵攻しようとしていた。
分身たるアグニムはその尖兵である。
トライデント(三つ又の槍)を扱う二足歩行のイノシシの魔物(初代やトライフォースではどちらかというと豚そのもの)の姿をしている。
また漫画版などではゲームとは容姿が異なる場合もある。
コミックス版
記事肥大化のため分割記事化。
詳細はガノンドロフ(コミックス版ゼルダの伝説)を参照。
外部出演
大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ
第2作『大乱闘スマッシュブラザーズDX』から参戦。以降はforWiiUを除き、隠しキャラとして扱われている。外見はDXとSPでは「時のオカリナ」、Xとforでは「トワイライトプリンセス」のデザインをベースにされている。
(他のキャラもそうだが)スマブラに登場するガノンは本人ではなく、彼のイメージを吹き込まれたフィギュアである。
詳しい性能や解説はリンク先を参照。
担当声優
時のオカリナ百科にて語られた設定
聖地に侵入したガノンドロフだが、光の賢者ラウルの妨害に遭い賢者の間には侵入できなかったという。これが封印されたリンクがガノンドロフとは会わなかった理由である。
百科的物語によれば、ツインローバはガノンドロフを育てている内に“教育”が持つ影響力を知ったと記されている。躾に始まり教育を施して行くことは、長い年月をかけた人格形成の作業。年老いた老婆たちにとって自分の分身を作る作業は楽しみでしかなかった。
この事実からガノンドロフの歪んだ人格形成に、ツインローバの“躾と教育”が無関係であるとは言い切れない。