概要
ニワトコの杖とは、ウィザーディング・ワールドに登場する死の秘宝の一つ。
ペベレル三兄弟のうち、長男のアンチオク・ペベレルが「死」から授かったとされる最強の魔法の杖。
ハリポタシリーズではアルバス・ダンブルドアの杖として第1巻から登場。映画版では、外観としても他の杖との違いが節のような飾りで強調されている。
解説
原語では「エルダー・ワンド(Elder Wand)」。「Elder」は「長兄」「年長」「長老」「ニワトコの木」といった複数の意味を表す。
素材
「死の秘宝」の御伽噺のように本当に「死」が人間界に持ち込んだのか、アンチオク・ペベレル自身が製作したのか、そのルーツは謎に包まれている。
材は「ニワトコ(接骨木/庭常)」の木、「芯(コア)」は死を視た者の視界にのみ映る有翼の魔獣セストラルの尾の毛。
最強の杖
通常、魔法使いの杖は「使用者の力量」「使用者と杖の相性・絆」「使用者が所有権を勝ち得ているか」といった要因が引き出せる魔法力の差となるのみで、杖自体に魔法力の優劣はない。
しかしニワトコの杖は杖そのものが至高の魔力を持ち、これを使う者は負けることはないと言われている。
本編ではまともにこの杖を奮うのがダンブルドアのみだったため分かりづらいが、「所有権を得ていない者が使用した死の呪いで分霊箱を破壊する」「折れた杖を修復する」などのように、通常の杖や魔法では絶対に不可能なことを実現させている。
後年のファンタビシリーズで幾度も魔法省・闇祓いに捕縛されてきたはずのゲラート・グリンデルバルドが、ニワトコの杖の一振りでパリを焼き尽くすという影響力が描写されている。
血塗られた運命
ニワトコの杖は「死の杖」「宿命の杖」とも呼ばれ、所有者と精神的な絆を育むことは決してない冷酷な性質を持っている。
通常の杖は決闘や勝敗で奪い取られ持ち主が変わった場合、新しい持ち主に対する忠誠心を持つものの、以前の持ち主への忠誠心も完全には失わない。
だが、ニワトコの杖は新しい持ち主への忠誠心が非常に強く、以前の持ち主への忠誠心を完全に失い、所有権が「必ず」「完全に」勝者に移動するのである。
これらの性質は、当杖に一度も触れていない者であっても例外なく適用され、万が一所有者が誰にも敗北せずに死ぬと(寿命による自然死、殺害者との事前の合意による「計画された死」など)忠誠心は移動せず、以後誰も所有者となることができなくなる。
加えて所有権を魔法などで直に確かめる事は出来ず、当事者たちの認識や実際に使った時の能力上昇で判断するしかない。
ちなみにニワトコという素材自体はありふれているため、「ニワトコ製の杖」を作ること自体は何も難しいことはない。
しかしこちらも「主の力不足を感じた(所有者より強力な魔法を認識する、呪文を失敗する等)その瞬間その主人を見捨て忠誠心を失う」というあまりに使いづらすぎる非情な性質を発揮し、当然他の杖では有効な手入れなどでご機嫌を取るのも無駄である。
一方で秘宝の本杖は敗北によってのみ忠誠心を移動させるため、実は「ニワトコ製にしては義理堅い」方であり、それこそが秘宝と呼ばれる理由の一つとなっている。
経緯
上記突出した性質から魔法史にはニワトコの杖が略奪で受け継がれてきた血塗られた系譜が点々と示されている。中でもマグル支配をイデオロギーとして革命を引き起こしたゲラート・グリンデルバルドは有名。
しかし彼は最強の杖を持っていながらも1945年、アルバス・ダンブルドアとの伝説の決闘に敗れ、以後杖はダンブルドアの物となる。
そして現在になり、ダンブルドアは自身の死後にヴォルデモート卿がニワトコの杖を求めると予測し、腹心セブルス・スネイプとの共謀による「計画された死」で所有権が誰にも移らなくなるよう画策していた。
しかしドラコ・マルフォイがダンブルドアをエクスペリアームスの呪文により武装解除したため、この時点でドラコがニワトコの杖の主人になった。
これはダンブルドアにとっても想定外の事態だったものの、事前に示し合わせた通りにスネイプがダンブルドアを殺害。そのままダンブルドアの遺体と共にニワトコの杖も彼の墓に埋葬された。
こうしてニワトコの杖に一度も触れることなく新たな主人となったドラコだが、その事実を知ることなく自らのサンザシの杖を使い続けていた。しかしその後、マルフォイの屋敷でハリー・ポッターに武装解除され、サンザシの杖を奪われる。
この時点で、サンザシの杖の主人はドラコからハリーに変わったが、同時にニワトコの杖も自分の主人が「武装解除された(=敗北した)」ことを認識した。
一方、ヴォルデモート卿はダンブルドアの墓を暴いてニワトコの杖を手に入れるが、思ったように杖が働かなかった。ヴォルデモート卿はその原因を「ニワトコの杖の忠誠心が(前の持ち主である)ダンブルドアを殺したスネイプにあるから」と考え、ナギニに命令してスネイプを殺害させた。
しかし、実際にはスネイプは所有権を持たないどころか一度も主人になったことすらなく、当然ながらスネイプを殺したところでヴォルデモート卿に所有権が移ることはなかった。
つまり、ヴォルデモート卿の考えでは、
- (杖そのものの所持者):ダンブルドア→ヴォルデモート卿(ダンブルドアの墓を暴いて杖を入手したため)
- (杖の忠誠心):ダンブルドア→スネイプ(天文台でスネイプがダンブルドアを殺したため)→ヴォルデモート卿(ナギニに命じてスネイプを殺させたため)
だったのだが、実際には……
- (杖そのものの所持者):上記の通り
- (杖の忠誠心):ダンブルドア→ドラコ(天文台でダンブルドアを武装解除したため)→ハリー(マルフォイの屋敷でドラコを武装解除したため)
……となっていたのだった。
かくして事態は最終局面を迎える。ハリーのサンザシの杖が放つ赤い閃光とヴォルデモート卿のニワトコの杖が吐く緑の光線が衝突した際、ニワトコの杖は真の主人であるハリーに従い、ヴォルデモート卿に逆らってそのままヴォルデモート卿の命を貫いた。
第7巻終盤、ダンブルドアはハリーに対して「わしはせいぜい秘宝の中で最も劣り、一番つまらぬ物を所有するに値する者であった(杖の危険性を認識して吹聴しない程度の賢さと、杖を他人に奪われない程度の強さがあった)」と語っている。
最終戦争後、この杖は「強すぎる力は誰も幸せにしない」という想いゆえかハリーに秘匿され、ハリーの自然死と共に力を失うように仕向けられた(映画版では真っ二つにへし折って橋から投げ捨てている)。
立体物
ガシャポン「ハリー・ポッター 魔法の杖コレクション」にラインナップしている。
2014年、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにもオープンした「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」でも、ハリー達メインキャラクターの使う杖の一本「アルバス・ダンブルドアの杖」として、通常版と「ワンド・マジック」対応版(マジカル・ワンド)が販売されている。スタッフさんによっては「ニワトコの杖」としての詳細を踏まえた会話を挟んでくれることも。