2作目は⇒ソニックVSナックルズを参照。
3作目は⇒ソニック×シャドウTOKYO MISSIONを参照。
概要
ソニック・ザ・ヘッジホッグシリーズ初の実写映画化作品。北米の方では「SONIC THE HEDGEHOG」として公開されている。
プロデューサーはワイルド・スピードシリーズを手掛けたニール・H・モリッツ。製作・製作総指揮にはCGプロデューサーの伊藤武志など日本のスタッフも関わっており、実質的に日米合作の作品となっている。
当初は2019年公開の予定だったが、後述のソニックのリデザイン問題から延期になった。
日本版の公開日は2020年3月27日とされていたが、同年に蔓延した新型コロナウイルスの影響もあって他国、特にアジア圏では宣伝イベントの中止や公開延期などが相次ぎ、日本でもイベントの中止および映画無期限延期が決定、その後日本での非常事態宣言が解除されたのを受けて正式な公開日は3ヶ月近く伸びた2020年6月26日となっている。
そして日本時間で2021年12月10日、続編である「ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ」(『Sonic the Hedgehog 2: The Movie(原題)』)が発表された。
更に海外ではナックルズを主役にしたドラマシリーズが発表された。
主人公のソニックは当初はリアル感を意識した結果なのか人間の生理的に受け付けがたいデザインへと大きくアレンジされており、世界中のファン(中には日本のオリジナルデザイナーである中裕司も含まれていた)から大バッシングを受け、間もなく公式からデザインの修正とそれに伴う公開時期の延期が告知された。
その後、通達通りソニックの大幅にデザイン変更が行われ、初期トレーラー公開から約6ヶ月後の11月には原作を意識しつつ実写作品としてある程度生物的なリアル感を加えたデザインへと新生したものが新たに公開された。
また、宿敵であるDr.エッグマンは、本作ではエッグマンではなく本名のロボトニック名義で登場し、卵体型ではなく偏屈な中年というキャラ付けでジム・キャリーが演じる。ジム・キャリーが悪役を演じるのは非常に珍しく話題を呼んだ。また、特報時には再現度の高いエッグマン姿も見せたため、この点はむしろ好意的に受け取られている。
因みに本作で登場するリングはワープ機能があり、目の前にリングを投げるとリングの輪が広がり別の場所へ繋がる。おそらく原作におけるスペシャルステージへワープする巨大リングを意識したものである。
ストーリー
生まれ育った島で気ままに暮らしていたソニック。だが、常に自らの持つ特別な力を狙う謎の集団に追われる生活を送っていた。
ある時、住処を襲われ、逃げ切れないと悟ったロングクローによりリングを託された彼は、故郷を捨てて他の惑星へとワープすることとなる。
逃げるように惑星を転々とする中、地球にあるグリーンヒルズという田舎町に辿り着く。その後人間の目から隠れながら10年間の時を一人寂しく過ごしていた。しかしある日孤独な生活に嫌気がさし、感情が昂ぶってしまった結果、グリーンヒルズ一帯を停電させてしまう。
自分の存在を嗅ぎつけた天才科学者・ドクターロボトニックに見つかったソニックは、次の惑星へと逃亡しようとする。しかし警察官のトムに見つかり、誤ってすべてのリングをサンフランシスコの高層ビルに繋がったワープ空間に落としてしまい、失くしてしまう。
ロボトニックに追われる中、ソニックはトムにリングを取り戻すために助けを求め、共にサンフランシスコへと向かう決意をする。
登場キャラクター
主人公。猛スピードで走る特別な力をもったハリネズミ。
元は地球とは別の星に住んでいたが、故郷の星では毎日のようにその莫大な力を狙われてしまい、逃げた先の地球で一人ぼっちな暮らしを送っていた。
その早さの源なのか、興奮すると身体から無限のエネルギーを放出するという体質を持つ。世界征服を企むロボトニックにその力を狙われ、偶然出会ったトムに助けを求める。
本作では、原作ゲームでは描かれなかった幼少期時代が僅かながら描かれている。原作以上に明るく陽気かつ無邪気な性格で、10年も一人で秘密裏に地球の文化に接していたため、好奇心が旺盛。しかし、その反面育ての親であるロングクローと別れて以来孤独だったこともあって友達が欲しいと思うなど寂しがり屋の一面もあり、ゲーム版とはやや異なった性格をしている。
そして原作におけるロボットを蹴り飛ばすようなパワーも映画では明らかに足りず、暴漢に放ったパンチなどはまるで効いていなかった。だがスピードに関しては原作以上に速い感覚で、彼の視点から周囲すべてがスローに見えている演出がある。
- トム・ワカウスキー
フルネームは「トーマス・マイケル・“トム”・ワカウスキー」。グリーンヒルズの警察官で本作のソニックの相棒。大した事件が発生せず暇を持て余し、しょっちゅうドーナツに話かけている為、ソニックからは「ドーナツキング」と呼ばれている。英語版では「Donut Lord(ドーナツ卿)」。
自分の力を試すため、サンフランシスコへの栄転を望んでいる。ソニックと最初に出会った際は悲鳴を上げて麻酔銃を発砲、物語の発端を作る。しかし介抱した後は、親友として彼の事情を汲み取り、困ったソニックを助けつつ、ロボトニックの野望を阻止するために協力することになる。
- マディ・ワカウスキー
トムの妻。ソニックの付けたあだ名は「プレッツェルクイーン」。英語版では「Pretzel Lady(プレッツェル夫人)」。
トムとの関係性は良好で、学費を出してくれたこともあってトムの栄転も支えようとしている。
一方でグリーンヒルズから離れることをどこか寂しく思っている。姉のレイチェルはトムを嫌っており、毎回しつこく別れろと言われるためうんざりしている。職業は獣医で、ソニックのことを知ってからは負傷した彼を手当した。
- ウェイド・ウィップル
トムの同僚で、頼りない警官。トムの有能さにはいつも頼り切り。さらにロボトニックが勤務地を訪れた際は、蛇に睨まれた蛙のようにしおらしくしていた。しかし終盤はトムとソニックの熱い絆を目の当たりにして、警官らしく頼もしい一面を見せている。
- クレイジー・カール
グリーンヒルズで牧場を営んでいる老人で、町の住人の中で唯一ソニックのことを認知しており、彼を「青い悪魔」と呼んで周知活動をしているが信用してもらえず、なんとか捕まえようとしているが逃げられてばかりだった。しかし終盤にソニックが危機に陥ると、ウェイドに触発されてチェーンソーを手に助けようと向かっていく。
ソニックに秘められたパワーを悪用しようと企む悪のマッドサイエンティスト。原点のエッグマンと違い、スマートな体形で頭髪が存在する。
赤子のころに数式を解き、子供の頃に復讐のためハイテク武器を作成。いじめっ子への仕返しに顎を吹き飛ばして病院送りにし、流動食生活にしたなど破天荒な過去がある。多少は誇張されているだろうが、恐らく幼い頃から天才的な頭脳を持っていたことが推測される。
政府からは高いIQをもつがかなりの危険人物と認識され、正確に動作する機械やロボットに愛情を持ち、他の人間は全て無能とする程、メカに心酔する。本作ではオリジナルの追跡メカの他にエッグモービル枠だと思われるハイテクマシンに乗り込む。
その姿を空飛ぶ卵のようだとして、ソニックからは「エッグマン」と呼ばれるように。
- エージェント・ストーン
ロボトニックの側近的な男。エージェントは他にもおり、ウェイドにはMIBのような連中だと称される。実際は肝心なところで気が利かず、指示待ちくんなところがある。
ロボトニックに心酔しているのか、どれだけ罵られても彼のために忠実に働いているが、ロボットを信頼しているロボトニックからはまったく信頼されていない。しかしロボトニック曰く、ストーンの作るラテは「美味い」らしい。おそらく原作ゲームにおけるオーボット、キューボット的ポジションだと考えられる。
- ロングクロー
原作ゲームには登場しないオリジナルキャラクター。ソニックの育ての親である雌のフクロウ。幼少期のソニックに自分の力を誰にも見られないようにと注意しているが、ある日ソニックを狙う集団から攻撃を受け、逃走中に矢を羽根に受けて運命を悟り、自分が所持していた地図とリングを託してソニックを異世界(地球)へ逃がす。最期のシーンは死を覚悟したような雰囲気であるが、その後の生死については不明。続編のソニックVSナックルズではソニックを地球に逃がした本当の理由が明らかになった。
- 謎の集団
映画序盤で幼少期のソニックとロングクローを襲った集団。原作には登場しないキャラクター。飯塚プロデューサーはナックルズ族と言及しており、実際どことなくナックルズ族に似ているが、詳細は不明だった。
続編のソニックVSナックルズではナックルズの発言によってナックルズ族である事が確定し、ロングクローとソニックを狙っていた理由が明らかになった。
エンドロールにて登場。ソニックを探し求めていたようで…?
キャスト
- ソニック/ベン・シュワルツ(声の出演)/吹替:中川大志
- トム・ウォシャウスキー/ジェームズ・マースデン/吹替:中村悠一
- マディ・ウォシャウスキー/ティカ・サンプター/吹替:井上麻里奈
- ウェイド・ウィップル/アダム・パリー/吹替:吉田ウーロン太
- クレイジー・カール/フランク・C・ターナー/吹替:岩崎ひろし
- ドクター・ロボトニック(Dr.エッグマン)/ジム・キャリー/吹替:山寺宏一
- エージェント・ストーン/リー・マジドゥブ/吹替:濱野大輝
- ロングクロー/ドナ・ジェイ・ファルクス(声の出演)/吹替:石塚理恵
- テイルス/コリーン・オショーネシー(声の出演)/吹替:広橋涼
ソニックの日本語版声優について
声優の変更
2019年12月10日に日本語吹き替え版の予告編が公開されたが、この時点でゲーム版・アニメ版でソニックの声優を長年勤めている金丸淳一ではなく、別の俳優が吹替を担当する事が確定。
2020年1月22日に吹き替えキャストが発表され、ソニックは俳優の中川大志、ソニックを狙う悪の天才科学者ドクター・ロボトニック(ジム・キャリー)役を山寺宏一、ソニックの相棒となる保安官トム(ジェームズ・マースデン)役を中村悠一、トムの妻であるマディ(ティカ・サンプター)役を井上麻里奈が担当することが発表された。
他社の作品であるシュガー・ラッシュでも金丸はソニックの声を担当していただけに、これについて多くのファンがショックを受け、賛否両論が巻き起こっている。
吹き替え事情
そちらではオリジナルを尊重したキャスティングであるのに対し、何故今回は声優が異なるのかというと、これは本国版が関係している。何を隠そう、本家ですら声優は長年に渡りソニックを担当したロジャー・クレイグ・スミスから若手俳優のベン・シュワルツに変更されているのである。よってこれは、本国版に準拠したキャスティングであると言える。
先のシュガー・ラッシュは本国版でもディズニーが合わせて配慮(ソニックの声がロジャー)したため、日本語吹き替え版もそれに準拠したのだと思われる。
金丸以前にも古川登志夫や菊池正美、草尾毅など様々な声優陣がソニックの声を担当している事実もあるとはいえ、それらは時代の流れに伴い移り変わっただけの話で、現在の金丸ソニックはようやくオリジナルキャストとして定着した例である。よって今回とはまた毛色が違うことも留意すべきだろう。
このことから、余計にファンの中には強い反感を抱くものもいるが、これはあくまで「海外版準拠のキャスティングだ」という前提は知っておくべきである。
中川大志本人も「ファンの中でのソニック像はすでに出来上がっているため自分が演じてはいけないのでは?」と一度オファーを断っている。インタビュー記事
なお、この手の実写作品において人間以外のマスコットキャラクターや動物の吹き替えを担当するのは非本職(その中でも特に有名芸能人)であるケースが多い。
例外としてディズニーのプーと大人になった僕があるが、こちらはマスコットキャラクター及びぬいぐるみ側が概ね原語版においてアニメオリジナルのキャストを使っているため。
ただし一方で、人間側クリストファー・ロビン役の俳優、ユアン・マクレガーの吹替について、話題性重視の安易な起用がなされたとして問題視されたこともある。
逆に本作ではジム・キャリー演じるロボトニック役にジムの専属担当声優として有名な山寺宏一を起用し、至極真っ当なキャスティングをしてはいる。ただし、ロボトニック(=エッグマン)のゲーム本編における担当声優は山寺ではない(初代は大塚周夫、二代目は中村浩太郎)。こちらの批判をあまり見ないのは「ジム・キャリーの吹き替え=山寺宏一」が定着しているためである。
その他、実写版トランスフォーマーはオプティマス・プライム司令官(日本版におけるコンボイ司令官)の声優がオリジナル版と同じ声優なのは日米変わらず(日本版は玄田哲章、アメリカ版はピーター・カレン)で、日本語版は本国版の采配に配慮したためと思われる。
キャスティングに対する反応など
元々の担当声優である金丸自身は「オファーがない=自分ではない」ということにショックを受け、胸の内をTwitter内で明かしていた(現在は削除)。
なお裏話であるが、これについては映画会社の戦略的な都合であり、本来セガ側は本家のキャストである金丸を最後まで推していたという。後述のあるキャラクターの声優が同じだったのは抵抗の末の結果ともとれる。
しかし気持ちを切り替えた現在は「あくまで僕の演じるソニックとは別のキャラクター」「映画は勿論見に行きます」「別の試みによって新しい層に広まっていくことは喜ばしいことです」と前向きなコメントを残している。実際、実写版ソニックはまったく設定の違う別物として構築されている。
なお今の所、「金丸淳一がシリーズそのものから完全降板する」という話ではないようで、この点は安心していいはずである。
なお、公開後の中川大志の演技は、前評判と比べて非常に評価が高く、「実写ソニックとしては非常に合っていた」という声が多い。
そもそも中川に吹き替え経験があったことに加え、おはスタで共演していた山寺宏一と吹き替えという舞台で仕事を共にすることもあって余計に緊張したとコメントしている。
このことから、中川のモチベが高かったことも、本作におけるクオリティアップの手助けしたと言えるだろう。
少なくとも非本職の吹き替えにありがちな「タダの棒読み」とはなっておらず、本作のソニックの「どこか寂しがりやなやんちゃ坊主」というキャラクター性がよく出ている。今回の演技は共演の山寺も高く評価している。
余談だが、中川は半年後のアニメ映画にも主人公役で出演しており、その作品でも高評価を獲ている。
一方、ファンの「これはこれで良いけれど、金丸バージョンも聞いてみたい」という声も少なくはない。よって販売元の気持ち次第では、本家準拠の吹き替えも出る可能性が無きにしもあらずである。例えばシンプソンズ ザ ムービーでは所ジョージら芸能人による劇場公開バージョンに加えて大平透らオリジナルキャスト版が、ダイ・ハード4.0では、野沢那智バージョン(本来はテレビ放送版のキャストであるが、あまりの人気に劇場公開版でも採用された)に加えて、樋浦勉バージョン(DVD・ブルーレイにおける本来のブルース・ウィリスの専属声優)も特別に制作されている。
ただし日本におけるソニック人気は海外と比べると雲泥の差があるため、それだけの声は現実的に集められるかどうかは未知数ではある。実際、いくらか署名活動のようなことは行われているが、実写版ソニックについては中川の演技がハマっていたことも手伝って、支持は集められていない。
評価
この手のエンタメ映画ではお約束であるが、評論家からの評価はあまり高くない。一方でソニック人気が高い米国では、最終的には北米のゲーム原作映画の興行収入No1といった記録を残している。今回は結果としてデザインを変えたことが功を奏したと言える。
一方、日本ではシリーズを通して「日本生まれのキャラクターでありながら、日本では知名度がない」ため、映画も伸び悩みを見せている。とはいえ初登場6位と前評判よりは善戦しており、鑑賞者からの評価は高い。
基本的に新型コロナウイルスの影響による延期と自粛ムードによる影響が大きく、時期が悪かったとしかいいようがない。
余談
- パラマウントピクチャーズのロゴのシンボルである星がなんとリングになっている。それに続いてセガの歴代ゲーム作品の映像がモザイク状に流れ、ズームアウトするとお馴染みの「セーガー」の音楽と共にSEGAのロゴが現れるというリスペクトに溢れた導入部になっている。この時点ですでに目頭が熱くなったというファンも多い。
- 映画序盤では『ソニックマニア』のOPテーマが流れているほか、エピローグではジョン・バティステによるグリーンヒルゾーンのピアノアレンジも使用された。その他ゲームから拾った小ネタが非常に多い。
- ソニックが地球に来るという展開は、『ソニックX』でもあったが、こちらでは10年も孤独だったこともあり、原作と映画版の差が大きい。
- エンディングではメガドライブアレンジされた本作のダイジェストアニメーションのクレジットが流れた。この時のソニックのはメガドライブ版、つまりクラシックソニックそのまま。こちらも小ネタが詰まっている。一方で、メガドライブされたロボトニック=ジム・キャリーは必見。
- クレジット後には続編を示唆する形でテイルスが登場した。ソニックと違い、担当声優はゲームの声優である広橋涼が演じている。なお、このキャスティングが実現したのは、海外版でも同じくゲームの声優(当時の担当声優であるコリーン・ヴィラード)を使っていたためである。これは先のキャスティング基準の話題に繋がっている。
- 予告版でのソニックは原作同様の赤いシューズを履いている。しかし実際それを履き始めるのは物語後半からで、それまではボロボロのシューズを履いている。ベビーソニックの頃はさらに皮で作ったシューズを履いているため、恐らく地球で見繕ったものと推測される。
- 原作のナックルズ族はある出来事で末裔であるナックルズを除いて滅んでしまっているが原因の一つであるカオスエメラルドが登場していないため、原作と経緯が異なると思われる。
- 地上波では2022年8月19日にテレビ東京系で放送され、午後のロードショーも放送されて数時間後から始まるという展開となった。ある意味でもテレ東伝説と言えるだろうか。何故にテレビ東京での放送なのかは、ソニックXを放送していた実績があったためと思われる。今回の地上波放送は、他作品でもよくある続編の公開を記念した連動放送なのだが。
関連項目
ソニック(ゲーム) ソニック・ザ・ヘッジホッグ 実写ソニック
アグリーソニック:本作の制作に伴い誕生したキャラクターだが……
シン・ウルトラマン:2020年代に劇場公開されたリブート映画繋がり。
ククイ博士、バーネット博士:「ポケットモンスター サン・ムーン」におけるポケモン博士。トムとマディの夫婦ながらの主人公の同居人としての役割は、同作をベースにするTVアニメにおけるククイ博士とバーネット博士の方がモデルとして近いと思われる。