福本清三
ふくもとせいぞう
1943年(昭和18年)、兵庫県出身。通称「5万回斬られた男」。
1959年(昭和34年)に東映京都撮影所に入社し、台詞が覚えられないため大部屋俳優として数多くの時代劇に斬られ役として参加。現代劇でも、映画「仁義なき戦い」を始め、ヤクザ映画や刑事ドラマに多数出演している。「仁義なき戦い~広島死闘篇」ではチンピラとして登場し、「膝を落とした状態で撃たれ、一回転して倒れる」と言う超人的なやられシーンを演じている。
斬られた際に一瞬の溜めを置いてからのけぞって倒れる「海老反り」が特徴的で、時代劇マニアの間では知る人ぞ知る存在だったが、1990年代あたりから徐々に名が知られるようになり、2003年(平成15年)の映画「ラストサムライ」でトム・クルーズと競演するに至り、一気に脚光を浴びた。その後、NHKで特集が組まれたり、NHKの時代劇で福本演じる悪役が主演の回があったりした後、2014年にはキャリアで初の主演作となる映画「太秦ライムライト」が公開された。
「たとえ華やかな仕事でなくても、真面目にコツコツと働いていれば、いつかは評価される」ことの代名詞として福本の名前を挙げる評論家や教育関係者もおり、教科書で目にした人も多いと思われる。
2021年(令和3年)1月1日、肺がんにより享年77歳でこの世を去った。
ちなみに、生前福本氏本人は「チャップリンの命日がクリスマスやから、僕はお正月にしたい。」と語っており、言葉通りに斬られ役の数々の伝説を残して旅立った。
通称「福ちゃん」「先生」。某時代劇などでラス立ちに度々登場。劇中のラス立ちでは浪人や家臣の姿でよく登場する。また、ラス立ちの他にも、役名がある回に登場。時代劇視聴記のホームページでは、みんなから「福ちゃん」や「福本先生」などたくさんの回にラス立ちなどの出演や登場などが載っている。特に、ラス立ちでは俳優がぶっ叩かれる時に「うわぉ」や「おおっ」「おわぁ」などの呻き声が度々ある。ぶっ叩かれた後は何回も復活するシーンがよくある。特に、某時代劇のラス立ちでのキャストクレジットの氏名はあまり載っていない。
朝日放送の「探偵!ナイトスクープ」で、視聴者から「いつも時代劇で出てくる名前もわからない、先生と呼ばれる用心棒の斬られ役の役者さんの事が知りたい。できるなら徹子の部屋に出演させてあげたい」という依頼を受け、桂小枝探偵が京都太秦の撮影所に行ってそれが福本清三であることを突き止めるが、当時は無名に近い彼をいきなり徹子の部屋の出演は無理があるとして、桂小枝が黒柳徹子に扮し、本物の徹子の部屋のセットでロケを行ったが……これだけで話は終わらなかった。
なんとその場に黒柳本人が現れ、事情を聞くうちに「斬られ役」というものに興味を持った事で本当に徹子の部屋への出演が決まったのである。。
これで福本清三の名前が大きく広まったのだった。
今や彼のトレードマークというべき浪人姿は一目でわかるほどであり、ファンからの愛称は「先生」が定着したぐらいである。
絶妙な痩せ具合、メイクによる眼光の鋭さがいかにもなアウトロー感と凄みを醸し出しているのはまさに彼のキャリアと斬られ役の美学の賜物である。
一躍脚光を浴びる切っ掛けとなった「ラストサムライ」では、寡黙な名も無きサムライ(エンドクレジットでは「Silent samurai」という役名)を好演した。寡黙だったのは彼が英語のセリフを覚えられなかったからだという。
役どころとしては、トム・クルーズ演じる主人公ネイサン・オールグレンの護衛兼監視役として彼の傍に控える無口な老侍といったポジションであり、役柄の関係上、出番も見せ場も過去作とは比べ物にならないぐらい多い。
本作における彼は不平士族…現代風に言えば反政府勢力の一員であるため、いつもの浪人姿ではなく、眼光の鋭さといったアウトロー感も控えめである(本作での彼は、どちらかと言うと穏やかで泰然とした人物を演じている)が、いざ戦闘となると数々の修羅場をくぐり抜けてきたであろう風格を見せ、まさしく「手練れ」と表現するに相応しいサムライ像を演じている。
加えて、最後のシーンではこれまで培ってきた斬られ役としての本領を発揮(ちなみに、この時一言だけセリフを喋っている)。
セリフは少なくとも、その姿とアクションで見事にその存在感を魅せつけた。