概要
1936年10月25日生まれ。東京都荒川区日暮里出身(1944年の疎開時は群馬県沼田市で育った)。愛称はマコ。群馬県立沼田女子高等学校卒業。父は画家の野沢蓼洲。叔母は俳優のちに子役時代の野沢のマネージャーをしていた佐々木清野。夫は同じく声優の塚田正昭(2014年死別)。
青二プロダクション(~1979年)⇒ぷろだくしょんバオバブ⇒81プロデュース(〜2009年)⇒オフィス野沢・代表者(2012年3月末廃業)⇒青二プロダクション(2012年以降復帰)所属。
一人っ子。3歳のときに子役として映画デビューし、以降は女優として若い頃から活躍していた。成人してからは劇団東芸に所属、大塚周夫や田の中勇らとはこの頃からの知り合いにして野沢の先輩である。特に田の中とは仲がよく、自分より女性らしさがあるとして「田の子さん」と呼んでいたとのこと。
1960年代から劇団の経営を支えるために声優として活躍を開始、後にこの仕事がメインとなっていき、現在は日本を代表する大ベテラン、レジェンド声優の一人。青二プロダクション創設メンバーの一人でもある。その後、ぷろだくしょんバオバブの設立にも関わることになる。
池田昌子とは、銀河鉄道999で共演以来、実生活でも野沢が「メーテル」、池田が「鉄郎ちゃん」と呼んでいる。
(お願い!ランキングGOLD・2時間スペシャルに野沢がゲスト出演した時の本人の発言より)
同年代のアテレコ経験者と同じく、かつては声優として紹介されると「舞台女優です」と訂正し、声優と呼ばれることを好まなかった。しかし時を経るにつれて仕事に誇りを持てるようになり、現在は堂々と声優であると自身を紹介している。
ハツラツとした少年役に定評がある。特に「ゲゲゲの鬼太郎」の初代・鬼太郎や「ドラゴンボール」 の孫悟空役としての知名度は高い。一時期、これといって印象的な役は言えない(みんな大切)と答えていたが、時を経るにつれて先の二名と星野鉄郎は欠かせないと答えるようになった程である。
なお、鬼太郎・星野鉄郎・孫悟空のいずれもオーディションによるキャスト選考でそれぞれの作品の原作者(水木しげる・松本零士・鳥山明)によって選ばれた役である。
孫悟空を担当するきっかけは、3期鬼太郎の声優に応募した際に、既に別主人公の声を担当していたために断られ(同スタジオのアニメ作品の主人公を同じ声優が2作品以上同時に務めることは暗黙のルールで忌避されていた)、他の作品を探していた時に出会ったことから。よって「鬼太郎を再度演じられなかったのは残念という気持ちもあるけど、そういう意味ではラッキーなことでもあった」と語っている。
なお、孫悟空役を演じていた際は、まさか息子の声もやるとは思っていなかったとか。PS2ソフト「ドラゴンボールZ スパーキングメテオ」では演じた役が変身、合体キャラも含めると何と10役を超えていたため、ギネスブック入りを果たした。
2018年からは、逝去した田の中勇の後任として、「鬼太郎」6期の目玉おやじを演じている。野沢自身は「自分が演じた鬼太郎が今度は父親になったイメージ」で演じているとの事。しかし長年節々で鬼太郎を演じてきた経験は身に染み付いてしまっており、たまに鬼太郎を演じる沢城みゆきの台詞を間違って読んでしまい、沢城に「私、鬼太郎やってもいいですか?」とツッコミを受けることが多々あったという。
2023年には、なんと本人のねんどろいど版の商品化が決定となった。
伝説
レジェンド声優と呼ばれる大ベテラン声優の中で最も有名な人物と言っても過言ではなく、まず齢80代に突入しても平然とバトルアニメで主役キャラを演じているという時点で驚愕に値する。声優のテレビ出演が増える前から顔出し出演も多く、時にバラエティのような企画に参加することもある。
本人は100歳まで最低でも現役を続けると宣言している。念押しするとあくまでも最低である。
野沢は高校卒業後(1955〜1956あたり?)に声優の仕事を初めた。この時代は、録音機材や編集技術が発達していないため、セリフの録音に失敗すると最初からアフレコし直しになる生本番の時代だった。そのため声優歴70年近い大ベテランである。野沢より声優歴の長い声優は40年代や50年代初期から声優としていた、巌金四郎、加藤道子、勝田久、山田康雄、滝口順平、小原乃梨子、高橋和枝、納谷悟朗、麻生美代子、熊倉一雄、大塚周夫など他にも数多くいるが、女優歴を含めると野沢より前にデビューした声優は1925年にデビューした、第一号の声優達井上正夫、栗島すみ子などであり、かなり少ない。
アニメデビュー作が、1963年の日本で最初の本格的な1話30分の連続TVアニメである鉄腕アトムであり、ほぼ、日本の戦後アニメ作品と芸歴をともにしている。
初アニメ主演作が1968年のアニメ第1作目のゲゲゲの鬼太郎である。1970年代には、いなかっぺ大将、ど根性ガエル、おれは鉄兵、ドロロンえん魔くん、ガンバの冒険、あらいぐまラスカル、銀河鉄道999など、既に多くのアニメで主演を演じており、2021年現在、おおむね60歳以下の人であれば、物心つくころに、彼女が主演のアニメ作品を見ていることになるだろう。
1990年代以降はドラゴンボールのヒットにより、アニメ、ゲームや映画出演等で海外でも広く知られるようになり、海外吹替え版の孫悟空役であるショーン・シュメルと共に、レジェンドとしてコミコンやドラゴンボールイベントに招待されるようになっている。
2017年、『ドラゴンボール』関連のゲームで主人公・孫悟空の声優として「ひとつのビデオゲームのキャラクターを最も長い期間演じた声優」「ビデオゲームの声優として活動した最も長い期間」の2項目でギネス世界記録に認定された。
2023年現在、子役時代を含めると芸歴84年目であり、戦前の芸能界を知る、芸能人としても最古参の部類でありながら、それほど長い休止期間もなく、現在も第一線で活動している数少ない一人である。「仕事は公のものであり、共演者に迷惑がかかるといけない」という信念を持ち、自宅がもらい火で全焼しても、わずか十分の遅刻で仕事現場に駆け付けたりしている。なお、仕事での遅刻はこの1回きりである。
長い経歴にもかかわらず、若手にも現場でも細やかな配慮を行うことや、その仕事態度から、業界の中でも尊敬したり慕っている人物は多い。高齢になってからも非常に元気で、戦闘シーンで大声を張り上げてもまったく疲れたりへばったりしないことから、年下の共演者からは「自分より体力がある」「あの人は(身体能力が)化け物です」と苦笑い混じりに伝説として話されることも多々ある。本人曰く夜中に起こされてもかめはめ波が撃てるという。
共演の多い田中真弓は深い尊敬と同時に、自らが健康的に自信がないという自覚を明かしたうえで、野沢の年齢を感じさせないパワフルさに嫉妬しているという。神谷明も野沢くらい元気に仕事をしたいと尊敬の念を抱いているとのこと。
なお田中は息子に対し、「高齢(当時64歳)の自分に万一のことがあった際、ルフィの後任は誰が良いか」と聞き「野沢雅子(当時82歳)しかいない」と返されたことを野沢に明かしたところ、「真弓、やるよ」と即答したという凄まじいエピソードがある。
ただし田中はそのなかなか他人に共感されないパワフルな価値観に振り回されることもあるようで、先の夜中に叩き起こされてもかめはめ波が撃てるという話も、元は「朝一の仕事は辛い」というアフレコ前の雑談に対し「私わからないわ(共感できない)」と前置きした時の発言で、後述するエピソードもあってスタッフが声優のバイタリティを勘違いすることから、田中はその場で「マコさん、迷惑だよ!」と指摘したという
悟空を始めとした一人数役を、一本撮りで(同時に喋るときを除いて)演じる技術は、ファンは勿論のこと、スタッフや同業者を含めて皆が揃って驚愕するという、有名なエピソードである。野沢曰く絵を見ると自然とそれぞれの声が出るという。
ただしこの話には後日談があり、しばらくの間、野沢は一度のアフレコで自分の役を全て撮っていたのだが、ある時後輩(後に田中真弓と判明)から「マコさんが(一本撮りを)やってしまうと、他の声優もみんな同じようにできるとスタッフが勘違いしてやらされて迷惑だからやめて欲しい」と切実なクレームを付けられ、それからは悟空をメインに悟飯と悟天を別撮りするようになったという。(なお田中真弓はこのクレームを付ける前に何度かクリリンとヤジロベーの一人芝居を一本撮りでやらされたことがあり、頭が混乱して辛かったという)
しかしテレビ取材でドラゴンボール超の1話を収録を撮影された際は普通に一人二役を演じており、今でもこの天才的な切り替え術は健在である様子。もうサイヤ人のおばあちゃんと呼んでもいいんじゃないかな…
役柄
少年役が多いのは先の通りで、これはかつて吹き替えにおいても同じであり、子役をアテレコすることが多かった。これは労働関係の法律を掻い潜るため(収録が長引いて夜まで伸びると、実際の子役は使えない)の手段で、「少年に女性の役者を当てる」というキャスティングの第一人者とされている。
少年役が増えた一方、高齢になってからは貫禄のついた老婆の役もいくつかこなしている。また、かつては妙齢のキャリアウーマンの吹き替えなども演じており、美人の女性役としての活躍も目覚ましい。また、ターレスやゴクウブラックのように残忍非道な悪役を演じることもある。
ラスカルなどの動物の鳴き真似なども得意としている。当時、野沢はアライグマの実際の鳴き声を聞くために動物園に足を運んだものの、アライグマは滅多に鳴かないため一日粘っても一切鳴かず、がっかりしていた。しかしその後テレビの動物番組でようやく鳴き声を聞いて、役作りに活かしたという。
余談
数々のバラエティ番組に出演してる野沢は近年の声優業界に関して個性的な声とセンスのある若手が少ないと苦言し、その上で声優としての自覚をもっと持ってほしいと忠告しており、彼女に限らず大塚明夫や山寺宏一、千葉繁、三ツ矢雄二、岩田光央を始めベテラン声優からも安易に声優を目指そうとする若者に待ったをかける形で警鐘を鳴らしている。
彼女は運転好きで若い頃はスポーツカーを始め数々の車種を乗ってたが中高年になると矢尾一樹を始め後輩から怪我されたら困るからメルセデス・ベンツを始め頑丈なドイツ車に乗ってくれと頼まれ、メルセデス・ベンツEクラスを所有し、乗るようになった。
野村道子とは長年と親交があり、2024年に小原乃梨子を始めベテラン声優の訃報が相次ぎ、その後週刊誌(女性自身)のインタビューに応じ数々のベテラン声優の共演した出来事を語った。
主な出演作
アニメ
四季カケル@青いブリンク(画像右) | アシュラ@アシュラ | ラスカル@あらいぐまラスカル |
風大左衛門@いなかっぺ大将 | 上杉鉄兵@おれは鉄兵 | 怪物太郎@怪物くん(1980年版) |
ムサシ@からくり剣豪伝ムサシロード | ガンバ@ガンバの冒険 | 星野鉄郎@銀河鉄道999 |
ケンツ・ノートン@銀河漂流バイファム | 鬼太郎@ゲゲゲの鬼太郎(第1期・第2期)/墓場鬼太郎*1 | 目玉おやじ@ゲゲゲの鬼太郎(第6期) |
オララ@ケロロ軍曹 | ブラックノーズ@それいけ!アンパンマン ブラックノーズと魔法の歌 | エステバン@太陽の子エステバン*2 |
日ノ丸四駆郎@ダッシュ!四駆郎 | ロペット@超電磁ロボコン・バトラーV | 三平三平@釣りキチ三平 |
ギルモン@デジモンテイマーズ | ひろし@ど根性ガエル | おハム婆さん@とっとこハム太郎(画像上から1段目の右) |
トム・ソーヤー@トム・ソーヤーの冒険 | ドラえもん(2代目)@ドラえもん(日テレ版) | 野比のび助(少年期)@ドラえもん のび太と奇跡の島〜アニマル アドベンチャー〜 |
Dr.くれは@ONE PIECE | えん魔くん@ドロロンえん魔くん | エレキッド@ピカチュウたんけんたい |
ピコリーノ@ピノキオより ピコリーノの冒険 | ビリ犬@ビリ犬 | 悪夢獣(個体)@プリキュアオールスターズNewStage3 |
ブンブー@へーい!ブンブー | マサムネ@ポケットモンスターアドバンスジェネレーション | ヒスイ@劇場版ポケットモンスター みんなの物語 |
ポロン@星の子ポロン | キュリー夫人@マリー&ガリー(画像上) | ウイリー・シシゾウムシ@みつばちマーヤの冒険(画像左) |
シチューおばさん@それいけ!アンパンマン | トニオちゃん@5億年ボタン~菅原そうたのショートショート~ | 雪城さなえ@ふたりはプリキュア |
- *1:この他、2007年8月にNHKで放送された『鬼太郎が見た玉砕 〜水木しげるの戦争〜』や『映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活』などでも鬼太郎を演じた。
- *2:オリジナル版、1998年版共通。
以下はドラゴンボール
孫悟空@ドラゴンボールシリーズ | 孫悟飯@ドラゴンボールシリーズ | 孫悟天@ドラゴンボールシリーズ |
バーダック@ドラゴンボールシリーズ | 孫悟空Jr.@ドラゴンボールGT | ターレス@ドラゴンボールZ 地球まるごと超決戦 |
ゴクウブラック@ドラゴンボール超 | 黒衣の戦士@ドラゴンボールヒーローズ | |
イラスト未確認
- なぎさの祖母@きみの声をとどけたい
- じんのすけ(野原しんのすけとそっくりなおじいちゃん)@クレヨンしんちゃん
- ロブスター@それいけ!アンパンマン
- マジカル・マリン@鬼灯の冷徹
- ミルクの精@メーテルリンクの青い鳥チルチルミチルの冒険旅行
- オレアナ、一木金太@超電磁ロボコン・バトラーV
- リグリット・ベルスー・カウラウ@オーバーロード
- キャシー@爆闘宣言ダイガンダー
- 浦島ひなた@ラブひな
- テスラ・エレキテル(エレキママ)@ロックマンエグゼ
- ジョー@愚かな天使は悪魔と踊る
- 駅ぎらさきの駅員@怪異と乙女と神隠し
ゲーム
イラスト未確認
ギルダ@ポポローグ、ポポロクロイス牧場物語
吹き替え
ウィリス・ジャクソン(トッド・ブリッジス)@アーノルド坊やは人気者
ショート・ラウンド(ジョナサン・キー)@インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説
マウス/クラーク・デヴリュー(コリー・フェルドマン)@グーニーズ(TBS放映版)
エミリー・アップルトン(ヘレン・ミレン)@ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記
特撮
その他
アニメの力が起こした奇跡
野沢氏のエピソードの中には「アニメの力」を感じた奇跡の出来事が存在する。
ある年の2月に野沢氏の元にある少年の父親から手紙が届いた。そこには「息子は病気で2月いっぱい持ちません。「ドラゴンボール」が大好きだから色紙とサインをいただけませんか?」という内容だった。その少年は病気で余命幾ばくもないと診断されていた。
そこで野沢氏はスタッフにテープを録ってくれるよう頼み手紙に書いてあったその子の名前を呼び
「オッス、オラ悟空!オラ、劇場で待ってっからな。ぜってえ来んだぞ!劇場で会おうな、約束だぞ!」
と孫悟空の声で声援を送った。
するとその少年は余命と言われていた2月を超え映画が公開される8月まで生き延び、大好きな「ドラゴンボール」の映画を見ることが出来た。更に少年は寝たきりで座って見れるような状況では無かったが「どうしても座って観る」と言い座席で鑑賞しその翌日に息を引き取ったという。
その後、少年の父親が野沢さんに送った手紙には「息子が奇跡を起こして見られました。本当にありがとうございました」と感謝の言葉が綴られていた。そして一緒に添えられた医者からの手紙には「アニメの力ってなんでしょう?僕は今知らされました」と書かれていた。
野沢氏自身も「すごいな、このアニメの力って」と驚かされたという。
少年は絶対に生きのびて、「ドラゴンボール」の映画を観たいという強い意志を持っていたに違いない。「好き」という気持ちは現代医学では計り知れない強いパワーを持っているのかもしれない。
関連タグ
アイデンティティ(お笑いコンビ)・・・田島直弥が彼女の物まねで有名(大半がドラゴンボールネタ)だが、野沢本人から「公認はできない」と断られたとの事。
特別機動捜査隊・・・モブポジションながら存在感のある役で何回か出演。