概要
菅原そうた氏の漫画「みんなのトニオちゃん」のエピソードの1つ「アルバイト(BUTTON)」及び同エピソードをベースにしたアニメ『5億年ボタン~菅原そうたのショートショート~』に登場するアイテム。
(ただし初出は週刊少年ジャンプの増刊「GAG Special 2002」に収録された同作者の読切「BUTTON A PART TIME JOB」という作品。上記の「アルバイト(BUTTON)」はこの読切を話の筋書き以外置き換えたものである)
ボタンを押すだけで100万円が現れるアイテム。その代わり、ボタンを押した瞬間に異世界を飛ばされ、その異世界でたった一人で5億年過ごす。
食事も睡眠も必要ない(むしろ取る事ができないといった方が正しいか…)世界だが、なんの娯楽がない為にやる事がない退屈と誰もいない孤独感に恐怖を覚える。
5億年経過後は元の世界のボタンを押した直後に戻れて、5億年過ごした記憶は抹消される。
作中で異世界に飛ばされた登場人物・スネ郎(アニメ版では主人公トニオ)が妄想の世界に引きこもる、一人遊びをするなどして気を紛らわせる描写があるが、やはり飽きており、真理に達する事が出来なかった者は呼吸するだけで思考を放棄する末路を辿っている。
また、16連射も可能らしく、その場合は合計年数分過ごすのではなく、5億年が16往復される。
抜け道もいくつか存在しており、他人の身体に押し当てるとその対象が、猫が押すとその猫が、石で押すとその石が5億年空間に飛ばされる。ただし、手袋を着けて押すと直接押した扱いと見なされて押した本人が飛ばされる。
アニメ第11話では現実世界に似た空間で5億年過ごすボタンが登場。一般人などはNPCという形で運営され、ボタンを押したジャイ美達は死ぬ事も年を取ることもないまま過ごす事になる(例外として子作りはいつでも可能)。
更に夢から醒めたらまた夢で…というループから着想を得た「5兆年ボタン」(何故かガードレール型)も登場している。
最終回では5億年ボタンで体験した記憶を思い出す「思い出しボタン」が登場した。
しかし
上記の通り5億年経つと元の世界に戻り記憶が消去されるため、実際は何の苦もない。体感で言えばまさに「ボタンを押すだけで100万円が現れる」、これと変わらない。そもそも本当に5億年があったのかわからないシュレディンガーの猫のような状態である。
20年ごしのアニメ化へ
2022年6月15日にこの5億年ボタンのエピソードをベースにしたアニメの製作が発表された。
トニオのTVアニメとしてはMUSIC ON!TVで放送された単発作品に続き二度目となる。
アニメ版のタイトルは『5億年ボタン~菅原そうたのショートショート~』となる。放送局はTOKYOMX。それ以外では各配信サイトで配信が行われる。
なお、全編が『5億年ボタン』の話ではなく、『ショートショート』という名称通り、後半はおまけのアドリブコーナーとなっている他、途中から短編エピソードも放送されるようになった。また、5億年ボタン以外の「みんなのトニオちゃん」のエピソードも一部取り入れられている。(ハワイへ行くエピソードなど)
全編を通してギャグというわけではなく、シリアス回も存在し、取り扱うテーマは科学用語、思考実験、哲学まで幅広いのが特徴で、CGを巧みに使用した図によって各回で扱われるテーマがわかりやすく解説されている。
2024年9月30日には、唐突に第13話がTOKYOMXにて放送されることに。
(いわゆる枠埋め番組に近いのだが……)
なお第14話の次回予告もあり、不定期放送になるようである。
登場人物
- トニオ
CV:野沢雅子
赤ちゃん言葉で話す5歳児。原作からは唯一の続投。(初出の読切ではゴンゴンという猿と犬を合わせたような頭部のキャラ)
ただし、役割は原作エピソードのスネ郎(初出の読切ではたくやというトゲトゲ頭にゴーグルをつけた人物)に相当し、五億年ボタンの空間に飛ばされ、孤独を耐え忍ぶ過程で大宇宙の真理に辿り着くなどの神秘的な体験をする(周回によって内容が異なり、オカルト的な思想から真理に辿り着く事も…無論、そんな悟りを得ても5億年経つと忘れてしまうのだが…)。
父親に会いたいというウン子ちゃんの望みを叶えようとするなど優しい一面を持つが、第1話導入部分ではシンクロ地球儀を使い、実験のために指で街を破壊するなど原作を思わせる黒い一面や第10話で5歳児故に女風呂に入れる事を利用して姉に悪戯をするなどゲスい一面を覗かせる。そして第11話ではとうとう…
おまけコーナーではMCを担当する。
ド●えもんで言う所ののび太のポジションである(それを示すようにジャイ美が「トニオの癖に生意気」というフレーズを用いる)。
ジャイ太とスネ郎に関する発言から彼だけは原作のトニオと同一人物だが、第1話ではあくまでもアニメ版は原作とパラレルだと本人の口から語られている。
第10話ではとうとう自分たちがCGアニメの存在であることを悟ってしまった。最終回では自身の正体がマアト(井上博士)を遣わした上位存在「ラー」である事が判明する(ちなみに声色はギルモンとデュークモンぐらい違う、と言うか中の人のせいで、ゴクウブラックにも似てる。)
余談であるがMUSIC ON!TVの単発アニメやラジオ番組「オールナイトニッポン」のB-DASHの特集回でナレーションとして登場した際は菅原そうた氏の妹の菅原麗子氏がCVを務めていた。
CV:三森すずこ
原作のジャイ太(初出の読切ではタナヤンというリーゼントヘアーのヤンキー)に相当する14歳の少女で、トニオの姉。走り方はNARUTO風。
CV:大空直美
トニオの姉で18歳。原作エピソードの主人公であったスネ郎(たくや)ポジションだがトニオが押す役回りになったため立ち回りは全く異なる。本作のツッコミ役。
性格は至って常識人で、元ネタのスネ夫の面影はツリ目以外、どこにもないと言って差し支えない(いわばツッコミ役に充てがわれた出木杉ポジション)。
生徒会長を務めており、人望も厚い。
一方で性的な事には敏感であり、ネジを見ただけで鼻血を出したり、Vtuber事務所さんじよじの37期生「スネりんちゃん」として活躍しているなどの一面を持つ。
3人の中でも知能が高く、第8話では生物によって認識している世界観が異なる事を解説。
博士によって頭蓋骨に穴を開けて貰い、『現象界』(カントの哲学用語。人間が語感を通して得た主観で作られた世界)から見た世界観ではない『無分別智』(仏教用語。価値や名前など人間の認識で作られた世界観「分別智」とは対極に位置する概念)の境地に達し、そこで「ありのままの世界」を観測するが…。
CV:高野麻里佳
グリーンのシニヨンヘアに赤いアイシャドウが特徴的な女性科学者。キャラ自体は原作のイノウエ博士のポジションにあたるが立ち回りは(トニオが押す側になっているため)原作エピソードでのトニオ(ゴンゴン)になっている。原作同様「のじゃ」口調で話す。
三人に五億年ボタンのバイトを勧めて来た元凶。様々な科学知識や思想に精通しており、トニオや視聴者に思考実験などをわかりやすく解説する狂言回しでもある。
5億年ボタンを作成する(5億年という膨大な年月を体験させるにもかかわらず、そこで得た記憶を一瞬で消去するだけでなく、データも採取できるなどかなりの高性能。第7話ではAIに代行させる改良版を作っている)、成層圏は優に越えているであろう高さの滑り台を作成する等々、知識に裏打ちされた技術力は本物である。
NASAに知り合いがおり、コネを使って宇宙へ行くという実験も実践できる。
「マアト」というエジプト神話の女神の名を冠する謎の女性と姿がそっくりであり、「ラー」(CV:野沢雅子)という人工知能じみた存在に従い、「根本原理」について解明すべく、三人に五億年ボタンを押させるよう活動している模様。その正体はマアトのアバターであった。
アドリブコーナーでは当初こそまとも寄りであったが、途中からキャラ崩壊レベルで突き抜けた解答をするように(第7話でのたけしのモノマネは必見)。
第9話のEDを見るにスタイルはかなり良い。
- はなちゃん
CV:羊宮妃那
スネ子の同級生で富裕層。
優しく穏やかな性格だが、第10話でジャイ美に5億年ボタンの2回も生贄にされる不憫な目に遭う。
- ウン子ちゃん
CV:三上枝織
ドラゴンの糞から生まれた妖精。こんな名前だが美少女である(作中から察するにトニオの主観である可能性も考えられるが)。
父親に会いたいという一心から、トニオに同行するが、ドラゴンにビチグソ呼ばわりされてショックを受ける。
その後、ドラゴンの植木鉢に肥料となって宿り、美しい花の姿へ転生を遂げた。
- ドラゴン
CV:ボルケーノ太田
スキンヘッドの巨漢。前科55犯という経歴に違わぬ、暴力的な性格だが、花を愛でる一面もある。
トゲ付きの首輪を着用しており、体の大半が赤く、一部が白い特徴的な容姿で、言うまでもなく元ネタは青いタヌ…おや、誰か来たようだ。
- ジャイ太・スネ郎
ジャイ美とスネ子のポジション元の二人。トニオのセリフと「B-DASH」のジャケットでのみの登場。なぜかトニオに存在を認知されており、彼曰く今回はパラレルワールドということでお休みらしく二人はそのことにめちゃくちゃキレてた模様。
- 菅原そうた
最終回で登場した原作者ご本人。シナリオに干渉する力や1クール再走するボタンを有する。
宇宙の真理に辿り着いたトニオによって呼び出された。
CV:銀河万丈
エピソード
各話は「〇PUSH」とカウントされている。
話数 | サブタイトル | 取り扱うテーマ |
---|---|---|
1 | シンクロ地球儀 | - |
2 | 5億年ボタン | 汝自身を知れ |
3 | 大統一場理論 | 統一場理論、超ひも理論、汎神論、カラビ・ヤウ空間、梵我一如など |
4 | 僕、悟ったでちゅ | - |
5 | 5億年ボタン16連射/ウン子ちゃん | - |
6 | 押す派VS押さない派の激論バトル/旅行に行く | - |
7 | AIの5億年ボタン | スワンプマンの思考実験 |
8 | 色即是空 | 認知(現象界、無分別智、分別智など) |
9 | サ道 | 整う(サウナ)、幸福論、死後の世界 |
10 | 5億年ボタンの解決法 | プラモデル宇宙、我々は何者なのか |
11 | 5兆年ボタン | 哲学的ゾンビ他 |
12 | 思い出しボタン | - |
主題歌
- TIME
作詞・作曲:大沼パセリ/編曲:安宅秀紀/歌:幸祜
- チクタクボーイ
作詞・作曲:永井聖一/歌:理芽
第9話ではヒロインがバスタオル姿になったり、第10話では巨大化するなど各回ごとにED映像の仕様が異なる。
第11話ではずんだもん、ユニティちゃん、ついなちゃん、栗田穣崇、ビームマンP、春日部つむぎ(より厳密には「おどる春日部つむぎBB」)が参戦している。何が何だかわからないが、事実なんだから仕方ない。
余談
なおイギリスでは懲役刑の代わりとして、時間の感覚を遅くする薬の研究が行われている(8時間が1000年に感じるとのこと)……という話題が広まっているが、あくまで「そういう薬の開発を考えることは可能である」とある哲学者が述べたというだけの話であり、実際にはそんな薬の研究も行われていなければ、その薬の使用を懲役刑の代わりにすることも考えられていない。
上記のアニメ版以前にPlottが手掛ける複数のアニメ作品のエピソードでそれぞれ五億年ボタンが扱われている。どのエピソードも大筋は元ネタに沿ったものだが細かい展開は各作品の世界観やキャラクターに合わせたものになっている。なお菅原氏に許可をとっていたのかは不明。(テイコウペンギンのエピソードの説明欄に元ネタとして記載されているリンクも「アルバイト(BUTTON)」の無断転載動画になってしまっている)
関連動画
関連タグ
一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた~落第剣士の学院無双~ - 「一億年ボタン」という5億年ボタンからきてるとみられる装置が登場。ただ、こちらはボタンを押して移動した空間での記憶はあり、飲食や入浴も可能。主人公はそこで修行するために移動したので、期間がとてつもなく長い精神と時の部屋である。
懲役30日 - 5億年ボタンとも一億年ボタンとも真逆の理由で時間経過する。
ネットミラクルショッピング - 作中でセルフパロディされた。
B-DASH - トニオ、ジャイ太、スネ郎がマスコットで菅原そうたの兄GONGONがボーカルを務めていたバンド。一部のCDジャケット・PVにはトニオ達も登場する。
gdgd妖精s - アニメ版「5億年ボタン」と同じ菅原そうた製作のアニメ。3Dモデルの使用、三人のデフォルメされた女の子、ショートショート形式の番組構成、アドリブによる大喜利コーナー、毎回演出が異なるダンスED、カオスなギャグ、三森すずこが(見た目的な意味で)紅一点を演じている等々、アニメ版「5億年ボタン」と共通点が多く姉妹作の関係になっているといえる。
精神と時の部屋 - アニメ版放送時に主人公の中の人が世界一有名な戦闘民族だった為、この空間に喩えられた(といっても性質は全く異なるが)。