概要
主に3つ意味がある。
一つは、戦争において攻撃目標となる軍需工場、基地、通信設備、レーダー施設その他の軍事施設の機能を分散させ被害を低減させる方策。また、貴重な国家財産や高価な機材だが、戦時には使い道が無い文物(例えば鉄道における貴賓車などの高級車両)や、美術品などの文化遺産を、戦火を受けにくい場所に退避させて保護する事も指す。本来の意味である。
二つ目は、交戦状態にある国・地域において大都市、中堅都市、逃げ場のない離島や、近隣に軍事施設、キャンプ、軍事的交通の要所の近くに住む非戦闘員、民間人をそれらのない田舎や、交戦国外に退避させる政策。一般に知られる意味である。
太平洋戦争中は小学校(国民学校)年齢の都市部の子供を疎開させる「学童疎開」が推進され、親族の元へ個人単位で身を寄せる「縁故疎開」や、田園部の寺院などに教員の引率のもと集団生活を送らせる集団疎開なども行われた。特にこの集団疎開に伴うエピソードは後に当事者の体験記やフィクションの題材として多く世に出ることとなり「疎開文学」とも呼ばれる。もっとも、戦争の激化に伴い疎開先にさえ空襲が来て犠牲になった事例や、疎開していた子供を残して都市部の家族が全滅してしまった悲劇も多い。
もう一つは、震災その他の災害で一時的に移住者を受け入れさせる運動。東日本大震災でもこの語が用いられた。
転じて、台風や豪雨が襲来すると見込まれる車両基地にある鉄道車両などを、被災予防の為に他の区間にある駅や車庫へいったん退避させておくことなどにも疎開の語が使われることがある。
疎開を扱った作品
ノンフィクション、エッセイ、自伝的小説
フィクション
- ランドセルをしょったじぞうさん(古世古和子)
八王子市であった実話をもとにした絵本。モデルとなった男児の遺品であるランドセルが現存する。