概要
Xや2ちゃんねるやPixiv等ネット上で行われる集団による個人への攻撃である。主な手口としては嫌がらせリプライやメールの大量送信・晒し行為・誹謗中傷サイト(pixivでは百科事典記事)作成、度を越えたMADなどのネタ動画作成・サジェスト汚染・殺害予告・ストーキング・凸行為などである。これらの行為は全て犯罪なのでたとえ相手に非があっても絶対に行わない様に。
簡単にいってしまえば「ネットによるイジメ」である。ただし、攻撃者数は数百人から数千人を超えるなど大規模となりがち。期間はまちまちであるが、数年以上(悪質なものであると10年以上)もネットリンチ被害を受けている被害者もいる。最悪の場合、実生活にすら悪影響を及ぼし、最悪の選択をした者すらいる。
近年では学校のいじめ(スクハラ)で使われることもあり、対応が急がれる。
相談してもSNSに理解がない人が「SNSなんてやんじゃねーよ」と相手にしてくれず、相談相手がいない場合もある。
加害者の傾向
主にXや2ちゃんねるなど匿名で情報を容易に発信出来るサービスを活動場所とし、炎上を察知すると炎上被害者に対し社会的抹殺を目的とした攻撃を加える。
建前として正義などを掲げ自身の正当性を主張するが、自己研鑽をせずとも得られる優越感と匿名ゆえに安全かつお手軽なストレス発散を目的としている(厄介なことに自身のそういった欲求に無自覚なまま、自分は純粋な正義感だけで動いていると思い込んでいる加害者も多い)。
承認欲求を目的とする例もあるが、完全匿名なサービスにおいてもネットリンチ活動に励む例が多数確認されていることから、動機の割合としては低いと見られている。
匿名性を過信し自身が安全圏にいると考えているため、理性が効き辛くなっている。さらに加害者が集まることで「エコーチェンバー現象」やサイバーカスケードなどで説明される集団心理が働き、より過激な行動に駆り立てられてしまう。こうなってしまうと加害者自身の常識と一般常識の著しい乖離などが顕著に表れる様になり、大抵の場合は排他的、攻撃的な性質を示し敵対者は勿論のこと中立的な立場の人間すらレッテル貼り(信者認定・荒らし認定・被害妄想・陰謀論など)を駆使して攻撃対象とする厄介者となる。さらに誹謗中傷だけならまだマシで、最悪の場合、成り済ましして事態を悪化させるクズもいる。
他方、自らの欲求に自覚的な加害者も存在し、その傾向はより悪辣で危険なものとなる。自らの欲求に正直な彼らは、炎上の拡散や扇動などをより効果的に実行することで欲求を満たせる環境作り・整備すら行うようになり、酷い場合は罪なき人間を炎上させるということすらやってのける。影響力が強いいわゆる「インフルエンサー」と呼ばれるタイプのユーザーであることも多く、この場合は承認欲求を満たすことも目的に含まれていると思われる。
注意しなければならないのはこれら加害者の傾向は多かれ少なかれ人間なら誰しもが持つ性質であり、これを読む閲覧者の皆様にとっても他人事ではない。実際、悪辣な加害者の正体がリアルではしっかりと理性を働かせることが出来る一般人であったという事例は珍しいものではない。
しかし、加害者となってしまえばその様なことは言い訳とはならず、名誉毀損罪・脅迫罪などが適用され書類送検・実刑も十分にあり得る(実例あり)。
加害者にならないためには最低限以下のことを強く意識、自覚することを勧める。
- 「私刑行為は違法」(日本国憲法第31条:何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。)
- 「ネットリテラシーを軽視しない」ネット初心者は勿論のこと、慣れた者も初心を振り返るべし。
- 「匿名性を過信しない」通常、IPアドレスなどの情報からは利用者の大雑把な地域しか特定できないが、犯罪捜査などを目的に法的手続きが取られた際には、通信業者に照会することで利用者個人を特定可能である。
- 「皆やっている。は何も安全を保障していない」皆がやっているのであるから自分が罰せられることはないという思考は希望的観測であり、いざとなれば皆まとめて罰せられ、批判されるだけである。
- 「法が整備される可能性がある」様々なネット問題を受けて将来的に法の厳格化や通報システム強化などが行われる可能性は十分に考えられる。現に2021年、日本国政府が公表した「第4次犯罪被害者等基本計画」にはネット上での誹謗中傷対策について触れられている。
- 「批判と制裁目的の攻撃の境界線を常に意識する」まっとうな根拠を伴う批判は言論の自由観点から容認されるべきものである。しかし批判と誹謗中傷の境界線は非常に分かり辛いため注意を要する。「意見を否定する」のではなく「個人を否定する」ことが目的となっている場合は危険信号である。一方で悪意ある者や被害妄想に陥っている者は純粋な批判に対して誹謗中傷・荒らし行為などとレッテル貼りを行いながら自らは批判と称して誹謗中傷を行う場合があり判断を誤る要因となる。惑わされないように注意すること。
- 「誰か(何か)を批判する際には情報の真偽をしっかり確かめること」デマをRTしただけでも名誉毀損として訴えられる可能性はある。
対処法
- 「炎上を起こさない様に言動に注意を払う」そもそも被害に合わない様に予防することこそが最大の対処法である。ただし、確率はほとんどないものの、何の非もない者すらネットリンチの犠牲者になる可能性はある…(前例あり)。そのため、場合によっては訴訟を起こし、事実無根であることを証明する必要がある。他者(知人など)が勝手に個人情報を流し、炎上悪化するケースもある。そもそも個人情報特定に繋がる様な情報を発信しないというのも重要である。それによりリアルで犯罪被害に遭う確率は減らせる。過去には数年かけて断片的に発信した些細な情報を組合わせて個人特定に至った例もあるので注意。
- 「スルーする」あらゆる攻撃を無視しスルーする。何であれ反応を返してしまうことが一番の悪手となる。(恒心教関連の炎上が大規模な要因の1つはこの悪手にある)
- 「警察や弁護士、人権団体などに相談する(なお、弁護士に相談する際は本当にネットに強い弁護士に相談すること)」諸事情によりスルーが困難である場合や特定されてしまいリアルにまで攻撃を受ける様になった場合はこういった対処が必要となって来る。相談する際には証拠や状況の詳細な記録などを用意しておくと相談相手も動きやすく解決がスムーズとなる。ただし、自身に非があって炎上している場合は間違いなく顰蹙を買い、中立的な立場の者からの心象も悪くなる傾向がある。実生活に被害が出るなどの深刻な事態に陥った際の最終手段と考えた方が良い。
自称被害者
ネットに限った話ではないが、「リンチ」とは違法且つ不当な私刑である。
従って、実際に周囲に害を及ぼしている言動・行動が「批判される」のはリンチには当たらない。
ところが「ネットリンチ」について語る者、特に自らを「ネットリンチ被害者」と称するような者は、「批判」を無条件に(且つ無意識的に)「不当な攻撃」と同一視している場合が多い。
この様な被害者意識は当事者が周囲からの信頼を失うだけでなく、「ネットリンチ」という問題自体が軽視されることに繋がり、実際にネットリンチ被害を受けている人々にとっても甚だ迷惑な話である。
重要なのは被害(迫害)を訴えるにあたり、その実態を客観的に表現できるか否かである。
それが「リンチである」と認識する者が当事者以外存在しないという状況であれば、まずは周囲の理解を得るための工夫をする必要がある。
※注意:本当にネットリンチの被害に遭っている人物が、その被害を訴え改善を求めることは何の問題もありません。寧ろ心身を守るためにも1人で抱え込まず周囲に助けを求めるべきです。
主な事例
有名なものとしては以下の事例がある
- 恒心教…とある弁護士を批判、あるいはネタにすることを目的とした集団。過激派路線教徒に逮捕者が出ているが、穏健派を中心に未だ活動が確認されている
- 煽り運転…厳罰化をキッカケに加害者への批判が高まったが、無関係の人間や企業に対して関係者扱いする誹謗中傷、風評被害が相次いだ。なお、仮に対象が関係者であったなら許されるという話ではない
など(他多数)
ネットリンチ被害者
※この項目に記事がない人物を追加する際は、どの様な被害を受けているかの説明文を併記してください
- スマイリーキクチ…とある殺人事件の犯人であるという事実無根なデマを流されてしまった何の落ち度もないネットリンチ被害者。誹謗中傷を行った複数の加害者が一斉摘発され、真実が浸透したことで沈静化の傾向にある。
- 木村花…ネット上の誹謗中傷が自殺の原因であった可能性が指摘されている。
- Syamu_game…YouTuber。奇抜な言動がネタとされ、一部ネットユーザーに玩具扱いされている上、住所が特定され実生活に被害が出ている。
- 野獣先輩…ゲイビデオに出演していた男優。所謂淫夢勢に度々ネタにされ半ばフリー素材と化してしまった人物。
- Aiueo700…YouTubeなどで活動していた動画投稿者。様々なトラブルを引き起こし、その様を動画として投稿していたが、特定された住所に対し岩倉使節団と呼ばれる者達から攻撃を受ける様になる。
ネットいじめや炎上との違い
非常に似通っており大半の部分が重なっている。これらに明確な境界線は存在しないが、私的制裁を伴うネットリンチは偽善的ではあるが正義感を動機としている傾向がある他、被害者自身が問題がある人物であることが多い(何の罪もない人物が被害者となる例もある)。
ではネットいじめや炎上にそれらの性質がないのか?と問われるとそういう訳でもない。結局の所本質はほぼ同じであり、言葉遊び程度の違いしかないのかもしれない。少なくともどれも許されざる行為であり、実刑の可能性があるという点は共通している。
関連タグ
必殺仕事人(2022年新春スペシャル)…舞台を江戸時代に置き換える形で、ネットリンチがどの様にして起こり、どの様な弊害を招いて行くのか、その工程を見事に表現されたストーリーとなっているテレビドラマ。