始めに
当記事は非常にデリケートです。中立性を持った編集を心がけて下さい。
また現在では騒動から10年以上が過ぎ、複数の解釈が生まれ必ずしも中立性を保っている訳ではなく一部には編集者による個人的な解釈が含まれている場合があります。当記事で初めてこの騒動を知る方々は、その事を踏まえた上で、閲覧して頂けると幸いです。
意見・不満・感想等は、当記事の掲示板でお願いします。
概要
9・18事件(きゅうてんいちはちじけん)とは、2010年9月18日に行われた東京ゲームショウ2010(以下TGS)で起こった『アイドルマスター2』に関する出来事。
読み方は様々あり、きゅういちはちじけんとも読める。表記も点をなくした「918」と書かれることも。場合によってはアイマス2に関する騒動全体を表すこともある。
事の始まり
それまで人々は皆、新しくなった『アイドルマスター』へ興奮し、醒めない熱気で『アイマス2』の支援をしていた。そしてTGS2010で行われたアイマスのイベント「アイドルマスター 765プロ決起集会」では声優陣も登場し、ミニライブから始まり当初会場は大きな盛り上がりを見せていた。
熱狂の続く会場で突如、PVで黒井社長が登場する。
「961プロより新キャラが登場する」との発表は前々からされていたため、これは演出として受入れられていた。
黒井社長は打倒765プロ宣言をした後、新ユニット発表をして行くのであるが……。
発表された新要素
男性アイドル ーJupiterー
黒井社長が新アイドルユニット発表したその瞬間、聞こえて来たのはまさかの男性アイドルの声であった。
アイドル全員が女性の765プロのライバル役である新キャラとして現れたのは「Jupiter」という男性3人組ユニットであった。いわゆるジャニーズ系出で立ちである。
アイドルマスターはアイドルプロデュース(育成)シミュレーションゲームではあるが、女性キャラクターをメインとしたゲームであり、ギャルゲーと捉えられる場合もある。そのため、ギャルゲーにおいては余り慣例がない「メインポジションへ男を追加」※1という采配は驚くべきものであった。
一応前作『アイドルマスターDS』にも男性アイドルは存在していたものの、こちらは女装アイドルであったため、その衝撃は大きいものとなった。
しかし、発表はこれだけに留まらず、シリーズ総合プロデューサー・坂上陽三(以降坂上P)によってさらに衝撃的な発表がされて行くのであった。
既存アイドルNPC化
過去作でプロデュース出来た水瀬伊織・三浦あずさ・双海亜美・秋月律子の4人のうち、伊織・あずさ・亜美の3人は765プロ側の3人組ライバルユニット「竜宮小町」となり、律子はアイドルを引退してその竜宮小町のプロデューサーとなった。
これにより4人ものアイドルがNPCキャラ、つまりプロデュース不可※2となった。ギャルゲーでいうなら攻略対象からの除外である。
この変更には、前作までその4人をプロデュースしていたPの多くが頭を抱えることとなった。
それまで「長髪」が特徴的であったあずさが現在の「短髪」へと大幅な髪型変更されたのもこのタイミングであり、そちら方面へのショックを受けた人も(髪型変更のメタな理由としては「プロデューサーである律子以外の3人だけで見た時のバランス調整」のため。ゲーム内では「事務所の皆さんの手本になるように一念発起するため」と語られている)。
選抜レース
これから発売される『MASTER ARTIST 2』というCDシリーズで、同時発売される3人を1組としてオーディションをし選抜する。そして、オーディションを勝ち抜いた1組が「The World is all one!!のM@STER Ver.」、つまりアイマス2の主題歌のようなものをCDで歌唱出来ると発表された。
オーディション方法はTGSでは明言されず、様々な憶測が飛び交い「AKB48のようにCD売上を競うものではないか」という推測もされ、もしそうならばアイマス2のテーマである「団結」に矛盾が生じてしまうと予想された。
ただし、後日公式ブログで発表されたオーディション方法は「携帯電話からの1人1票形式投票」であり、投票結果も「全員で歌唱」が1位となったため、想像していたような選抜レースとはならなかった。
問題点・課題点
竜宮小町扱い
竜宮小町メンバーNPC化については前情報である程度告知されていたものの、製作側から直々に、何のフォローもなく告げられたことで、観客に大きなダメージを与えた。
クリア後の裏ルートやDLC配信に期待した者もいたが、それも予定されておらず追打ちを掛けるものとなった。
またゲーム本編での活躍も、序盤に先輩ぽい活躍を見せたものの後は、中ボスとして立ちはだかり、その後はJupiterの引立て役で終わりその後は目立った活躍もないただの噛ませ犬というあんまりなものであった…。
過去にも、『アイドルマスターSP』において以前プロデュースできていた星井美希がプロデュースできなくなったという事例がある。SPでの美希はライバル事務所の961プロへ移籍したという設定を課されてしまい、1人だけプロデュース不可能だったのだ。そのため、この竜宮小町の一件はこれと同じ問題だとする見方もある。
ただし、楽曲は他プロデュース可能なアイドル達と同じ曲数が収録されており、ライブを鑑賞できるモード「S4U」で歌わせることが可能で、条件を満たせばストーリーでも5人組でのライブにゲスト参加させることが出来た。
後に発売されたPS3版では、エクストラエピソードとして竜宮小町の4人を指導(プロデュースではない)しJupiterにリベンジする短編ストーリーを遊べるようになった。
後に、これはバンナム上層部からの予算や時間制約の影響であったと電撃オンラインのアイマス10周年記念インタビューで元総合ディレクターの石原章弘氏が語っている。
Jupiterの存在
前述したとおり、Jupiterは3人組の男性ユニットである。
アイドルマスターはアーケードからDSまでほとんど女の子のアイドルばかりの世界※3なのに、男性アイドルの登場によってその世界観が壊れてしまうという懸念が相次いだ。
また、「竜宮小町をプロデュース不可にしてまで出す必要があったのか、彼ら用のモーションキャプチャー・ボイス・ボーカルの費用を竜宮小町に使えなかったのか」などの声も出ている。
ただし、これに関しては彼ら3人のゲーム内でのデータ使用容量を合わせてもプロデュースできるアイドル1人の容量にすら満たしていないという点では注意。
なお、この容量解析などは、「リバースエンジニアリング」と呼ばれる行為であり、いわゆる「クラッキング」に相当する行為であるため360版(俗にいう無印アイドルマスター)の説明書にすら記載されている「違反行為」であることを明記しておかなければならない
(リバースエンジニアリングはソフトの脆弱性などを見つけるためなど、アンチウイルスソフトなどを作成するためにも使用されるため、2023年現在は違法行為ではないが、著作権上では何度も問題が指摘されている)
他にも「公式で恋仲になったり、NTRイベントが起こるのでは」など男女関係についても色々と不安視されたが、公式で「それらの要素はない」と発表され、実際に765プロアイドルとJupiterが恋仲になるような展開はなかった。
しかし、2発売前に発表された曲である「団結2010」に、あるアイドルが歌詞を噛んで本来の歌詞とは異なる「男の人が大好き」※4という言い間違えをしてしまうくだりが存在したり、前述の大幅な変更などから疑心暗鬼を生じざるを得なかった者が多く存在した。
またニコニコ動画では、総統閣下が「恋愛描写がなければいいという話じゃない、可能性を生み出しただけでアウトなんだよ!!」と発言する動画があった。
その動画は再生数881,097、コメント数61,394、マイリスト数4,021を叩き出し、一躍脚光を浴びたが現在では権利者削除となっており、閲覧することは出来ない状況にある。
怒りの矛先はJupiterだけでなく彼らを演じる声優陣にも向けられたようで彼らが初めてライブに臨んだ際に松岡禎丞は「本当にJupiterも色々あったけど…」と声を詰まらせ涙し、神原大地も「こんなステージに立つということはもうないのかなと正直思ってました。」とコメントし涙した。
特に松岡は初めてオーディションで勝ち取った役であり、その役がファンへ受入れられるどころか敵意を向けられた悲しみは計り知れないものであったと考えられる。
過去作からの変更点
本作ではこれら以外にも様々な変更がなされている。
これらは9月18日のTGS以外で発表・確認された情報であるが、一部本騒動に飛び火している。
まず、今作から萩原雪歩のCVが長谷優里奈氏から浅倉杏美氏、765プロ社長は徳丸完氏演じる高木順一朗から大塚芳忠氏演じる高木順二朗へと変更された。
これらは事前にアナウンスされてはいたものの、公式からハッキリとした変更理由が語られることはなかった。
システム面ではより多くの要素が変更され、好評であったオンライン対戦機能も廃止されスコアランキング形式のみとなった。これによりゲーム性が薄まり、以前の様な熱い戦いが出来なくなったとの声もある。
他にも新たな要素としてアイドル同士の不仲や対立が行われるシステムが導入されたが、これにより仲間外れやいない者扱いなど陰湿な嫌がらせ行為を行うアイドル達の姿が生々しく描かれ、余り見たいとはいえない部分が露となった。シナリオ面でも枕営業などの描写を暗喩するテキストや芸能界特有の圧力など暗い要素が多く見られ、低評価の一因となっている。※5
また今作は『アイドルマスター』シリーズで唯一Xbox360、PS3の2機種で発売されたソフトであるのだが、Xbox360版より半年程後に発売されたPS3版には限定新要素や特典が数多く存在し、先にXbox360版を購入したユーザーからは非難対象となっている。またDLCもXbox360だけ先に配信が終了され以後はPS3のみとなっている。
他にも前作アイドルマスターDSの876プロの3人がステージを見たり戦ったりすることができるDLC追加キャラクターとしてPS3版限定で登場した。プロデュースは不可。
疑問点
オーディション形式の必要性
前述の通り後日「全員で歌唱」という選択肢によって選抜レースとはならなかったこの企画。そのような選択肢があるのならばオーディション形式である必要があったのか疑問視されている。
後にこの選抜レース的な方法はシンデレラガール総選挙へ受継がれ、こちらは毎回大きな盛り上がりを見せている。「団結」がテーマでありながら票で対立するという矛盾した打出し方に問題があったのであろうか。
声優陣への扱い
本人の心情は不明であるが、秋月律子役若林直美氏が発表中に涙を見せる場面があった。
若林さんはアイマスに対してはプレイヤーとしても私費でアケマス(初代アーケード版)行脚するなどの熱心さで知られている。そして役者としてもアイマスについて真摯に向き合い、眼鏡を購入し、ライブ時には髪型を律子へ近付けて挑み、さらには振付けを自ら考え出すなどアイマスコンテンツ発展へ多大に貢献して来たことで知られる程の人である。涙の真意は不明ではあるものの、外部から見れば数々の変更点で泣かされたようにも見えてしまったかもしれない。
水瀬伊織役釘宮理恵氏についても一考がある。今や国内外問わず熱狂的ファンが多数存在する釘宮氏であるが、アイマス5thライブ出演依頼の際、米国での他作品公演予定が既に組まれていたものの、企画立上げから関わった立場としてアイマスを優先し、米国での公演をキャンセルしている。このような頃に既にプロデュース不可が伝えられていたのであるとすれば、心情を慮るのみである。
雪歩の声優交代については長らく発表されなかったが、事件発生から約5年後の2015年11月2日に雪歩の初代声優である長谷優里奈氏がXで声優交代の真相を暴露している。
- 雪歩の声優交代は自分の意志ではなく降板を申し入れたのは当時のマネージャー
- 「イベントに出なければ雪歩自体を抹消まで考慮する」ということをいわれていて、その後突然「雪歩を探しています」というメールが届いた
- 当時バンナム側からは「イベントに出なくてもこれからも雪歩を宜しく」といわれていたが、降板はその直後だった
- 石原氏、浅倉さんとの対談を申し出たのは自分であった
- あずみんの雪歩は奇跡の雪歩。自分にとってはどちらも大切な存在
と、長谷女史は苦い思いを吐露していたが……(下記の後日談を参照)。
社長代替わりについては、徳丸氏は2制作当時病気療養中であり、それ故の変更と見られ、発売数か月後に徳丸氏の訃報が所属事務所により発表された。
反応
当日の反応
これらが纏めて発表された「765プロ決起集会」では、発表が次々されて行くに連れ、最初はいつものように熱狂していた参加者達が徐々に沈黙して行った。
発表した坂上陽三プロデューサーは静まり返った会場を逃げるように直ぐに退場。その場のフォローを声優達のアドリブに任せるという、いわば声優の盾を利用しこれも批判を集めた。
そしてイベントは終了。アイドルマスターイベントでは恒例のアンコールは起こらず、精鋭であろう700余名の精鋭P達※6は、アンコール枠のため照明が落ちたままの場内をただ静かに後にした。
これらは決して大袈裟な表現ではない。嘘であると思うなら、こちらを参照。
アンコールについては終了直後に参加者退席アナウンスが流れ、辛い雰囲気であったのもあるが、普通では映されない観客退場の様子が中継されていた所を見るとアンコールを想定内のものとしていたことが窺える。
発表後
この衝撃的な発表は瞬く間にネット上へ拡散し、ネット上のアイマス関連コミュニティは大炎上した。
また当時全盛期であったまとめブログによりシリーズを知らなかった層にまで拡散され、その影響はどんどん拡大して行った。
当時の空気は凄まじく、公式を叩く者からプロデューサーを引退する者、それを面白がり彼らを煽る者、最終的には少しでも肯定的な意見が出ると猛烈にバッシングを受ける空気になったところ、逆に公式を全肯定することをアイマスへの愛として公式への批判者を叩く者が出るなど内輪揉めまでに発展し阿鼻叫喚といった風情であった。
アイマス2次創作のメッカであったニコニコ動画ではこの発表以降、「アイドルマスター」タグが付いた動画数が減少へ転じた。ニコニコ仕様として動画が削除されるかタグが外されない限り、動画数が減少することはあり得ないため、発表を受けて少なくないユーザーが自身の動画を削除したものと考えられる。
また、動画の削除をしなかったユーザーも投稿動画の投稿者コメントなどで引退を表明する光景も多く見られ、ニコニコ御三家脱落の危機と騒がれた。
ユーザーレベル以外の反応
TGSは東京モーターショーなどと同様プロモーションの場であり、「会場で何があったのか」は投資家向けプレスにも載るため、TGSに向けて上げ基調に変わりつつあったバンダイナムコHDの株価は再度下げ基調へ転じ、10月1日には年度最安値を記録した。
当然ながらバンナムグループはアイマス以外の事業も手掛けているので全原因がこれであると考えるのは早計である。
ちなみに、この最安値は765(ナムコ)円という、ちょっとした偶然も起きた。
解説など
※1…アイマスシリーズでは、今まで登場して来た男性キャラの大半が全身が黒塗りで描かれていてることが多く、姿(特に顔)を映さないように施されていた。
※2…当初、アイドル同士の人間関係はドラマCDや2次創作などで補完するしかなく、1人1人の解釈や想像に頼るものが大きかった。
ユニットを組めるという触れ込みがあったことから、NPC化に伴って組む予定が大幅に崩されてしまい、頭を抱える人が続出する。
※3…男性アイドルが女性の代わりに歌う、踊るのはほとんど前例がなかった。
※4…上記のようにあくまで言い間違えであり、平常ならば『「団結2010」ではなく以前の「団結」の歌詞である「男の人は苦手です」と混ざっただけのただの他愛がないドジ』あるいは敢えて『言い間違え』ではなく『言い方を間違えた』だけであるとして『かつて「男の人は苦手です」といっていた彼女が「プロデューサー、あるいはファン達(女性アイドルなので当然男性が多いはず)が好き」といえる程に成長した』という好意的な解釈でも受入れられたのではないかと思われる。
しかし立続けにマイナス・不安要素が襲い掛かったため、「男」の単語だけで嫌悪してしまい、プロデューサー(プレイヤー)ではない別の第三者ではないかと捉えられてしまった。
また、事件前に収録した、翌日のラジオ内ミニドラマで登場したジュピターとの前日譚では、「少し興味ある?」程度の発言もあったことから余計にそういう悪い方向へ解釈されてしまうという、まさに些細な火の粉が即座に爆発してしまう程の燃料投下へと発展してしまったのである。
ちなみに彼女に限った話ではないが、人間本当に全く興味がなければ『苦手』ではなく『無視』となる場合が多い。『嫌い』『苦手』といった負の感情はほんの少しでも意識している(≒興味を持っている)ことの表れであり、男の人が苦手な彼女がその男の人に対して「少し興味がある」と発言したとしても本来おかしいことではない(平常であれば前述同様彼女の成長と捉えられたであろうとの発言である)。
※5…ただし、本作の1年前に発売されたアイドルマスターDSや後年発表されたシャイニーカラーズでも芸能界の闇の部分へ触れるシナリオが登場したがそちらは概ね受入れられている。
これに関してはそれまでに培ってきた作品ごとのカラー・世界観の違いによるものが大きいと思われる。
※6…アイドル物のジャンルが確立した現在とは違い、自分たちこそがコンテンツを土台から支えてきた、アイマスを心の底から応援するファンの中の代表達である。当時はまだ、ラブライブ!を始めとしたアイドルを題材にした作品はほとんど存在していない。
後日談
この騒動を受けて2011年2月24日に発売されたXbox360版アイマス2の初回限定版は売り上げ不振となり、通常版が販売前に廃盤になった。それ以前に、アイドルマスターシリーズ自体がXbox移植を廃止し、PS勢力のみにソフトを提供し続けるきっかけになってしまった。
また、CDもこの騒動により2関連のものは売り上げが伸び悩む形になってしまった。
発売日の一連の流れは2・24事変を参照。
一連の騒動によりアイマスというブランド自体の勢いが衰えたように見えたが、まだ当時は2が現役の時期であるにもかかわらずアニメ化により、それまでの経緯を知らない新規ファンが流入、アニメ終了に合わせてリリースされ、全く別事務所より始まるという設定となった事実上Cygames製『シンデレラガールズ』が出た後、家庭版延長線上のストーリーの『ミリオンライブ』が出て、以前の勢いを取り戻した。この流れを見て、さらに新作供給予算規模を打込むことに成功し、さらなる発展を遂げる。
現在では765プロ13人全員がプロデュース可能な『ワンフォーオール』や『プラチナスターズ』、『ステラステージ』、これらの作品では、全員が団結して大規模なライブに臨んだり、仲間同士の関係と絆がより大きな意味を有するようになった。
男性のみアイマスである『SideM』など、ある種ファンの要望に応えた後続作が誕生しており、こちらもアニメ化を果たし、それぞれが人気を獲得している。
さらに15周年を数える辺りから各ブランドクロスオーバーも本格化し、『アイドルマスター ポップリンクス』では当時では考えられなかった765プロメンバーとJupiterメンバーによる混合ユニットを組むことも可能となった。
時間も経ち、そしてそれぞれの作品でそれぞれのキャラ達が人気を博したことでこの9・18事件もある程度の沈静化がされたものであると考えられる。
しかし、この事件以降、アイマスはデレマス・ミリマス等のソシャゲ方面へ軸足を移し、無印キャラの展開も御座なりとなってしまっている事実があり、この事件とそれに端を発する2及びその関連商品の商業的な失敗がアイマスのコンシューマ展開と無印アイマスのキャラ展開を事実上の終焉へと導いたと見る向きもある。ただし、家庭版についてはG4U、及び2014年の「アイドルマスターワンフォーオール」、つまりXbox360版アイドルマスターベースの事実上最終作(ただし、プレイステーション3版のみ供給)から再開している。
また、公式がこの事件のケジメを付けないままリカバリーが成功し、アイマス発展が進んでしまったため、結果としてアイマスのファンコミュニティに分断と選民がもたされた。
これまでコンテンツを支えてきたファンが、公式に最早用済といわんばかりに切り捨てられ、後発組にその立場を乗っ取られるというあまりにもあんまりな事態に陥ったのである。
このせいで当時のことを批判する者達はアイマスコミュニティから排斥され、アイマスが発展してもその輪の中に入ることが出来ず、彼らは歴史における敗者、異端者のような立場に置かれてしまった。
皮肉なことに公式が事件の反省をしたのか分からない状態のまま、アイマスが事件から復興し、大きく発展してしまったが故に批判者達は振り上げた拳を振り下ろす先を失い、擁護者達はそんな彼ら嘲笑、拒絶したことで両陣営関係は修復不可能なレベルにまで拗れてしまったのである。
こういった経緯もあって、アイマス発展以降に当時の公式の擁護者側が批判者側にさらなるバッシングしたり、「あれは一部ヒステリーを起こした奴らが暴れただけ」と事件を矮小化するといった事例は多く見られる。
中には「厄介な層を選別した」「必要な犠牲であった」「あの事件があったからこその…」など、この事件を美化するかのような言説すら存在したりする。
しかし、結果的にコンテンツ存続という形で騒動自然鎮火こそされたが、そもそもの話として公式が軽はずみにコンテンツとして致命的な事態を引き起こしたのは事実であるし、その対応も決して良いモノではなく、むしろ悪手とも呼べる下策であり、事が収まったのは様々な好機が重なったが故の結果論であるということは忘れてはいけない。そもそも、アイドルマスター自体現実の芸能人を舞台にしているので、ゲームの内容で荒れたら「物語自体が全部フィクションであった」ということとして終わらせることができなくなり、騒動が泥沼化したのも事実である。そして制作陣がゲームやアニメ内のストーリーに関係なく、出演する声優などのメンタルケアにも走る必要が出て来た結果、どんどん周りの空気だけが重苦しくなるのも当然である。当時にバンダイナムコがさらにやらかしを行い、何かが異なっていけば本当にアイマスというタイトルが終わってしまっていたかもしれないのであるから。
なお、批判者の中には怒りに任せて全方位を荒らすような過激派や、本件の騒動に乗っかって来た愉快犯も含まれていたため、そちらに正義があったと断じ難い部分はあるものの、自分の担当アイドルがプレイアブルから外れて嘆いた者、真剣にアイマスの在り方を憂いていた者も多かったのもまた事実である。
公式からの非情な通知にショックを受けて怒り悲しんでいたら、味方だと思っていた同じアイマスユーザーに背中を撃たれ、挙句の果てに過激派や愉快犯と十把一絡げにされて、アイマス・コミュニティから叩き出された彼らの絶望が如何程のものだったかはこれらを経験した本人たちにしかわからないだろう。
このため、批判者側は現在もアイマス公式や当時の擁護者側への恨みを募らせ、水面下でアンチ活動をしたり、アイマスとは完全に決別したり、アイマスの輪の中へ戻っては来たは良いがアイマスや界隈へ対して複雑な感情を抱いていたりと、彼らのアイマスへ対する感情は事件以前とは大きく変わっている。
と、このようにユーザーレベルでは現在でも小さくないしこりが残っており、この事件の影響はまだ存在するものの、この事件自体を知らない若い世代も増えており、前述した以前の擁護者の言説も相まって風化は少しずつ進行している。
ファン以外の方へ視線を向けると、初代雪歩役を務めた長谷女史は同役を降板後、アイマスとは無関係の自身の個人イベントで雪歩のネームバリューを利用しようと疑われたり、ストリーミングサービスの『SHOWROOM』にて無関係な女性声優の内情を暴露するなどの、炎上商法紛いな行為をやらかしてしまった。
そのため、一部のファンからは「(長谷女史が雪歩を続投したままであったら、この騒動は確実にアイマスコンテンツに飛び火しただろうから)結果的に彼女の降板は正しかった」とする意見もちらほら出るように……
また、ポップリンクス同様オールスターとも呼べる『アイドルマスタースターリットシーズン』ではSideM(とDS)のみハブられた事態となっており、このことで不満意見が頻出するなど、9・18を経験した者からして見れば皮肉極まりないとしかいえない事態も起きている。
関連項目
4・4事件:SideM版9・18事件
坂上陽三:当時のアイマスチームのプロデューサー。
石原章弘:当時のアイマスチームのディレクター。ディレクターの立場に加えて、インタビュー等での各種発言からこの事件の主犯と断言されており、当時は凄まじいバッシングを受けた。しかも彼が書いたとされる家庭用アイマス追加シナリオや、アイマスSPのシナリオの出来の悪さに加えて、普段から発言がふざけ気味なせいでユーザーサイドから少なからずヘイトを貯めていた経緯もあり、公式の擁護者サイドすら彼個人に対する擁護は「絶無」と断言して良い程であった。
元リストラ組:本事件と酷似した他社作品での出来事が記述されている。
満州事変:こちらは戦前史における9・18事件。9・18事変ともいう。