来るべき世界
きたるべきせかい
「平和だ平和だ! 地球に戦争は無くなった!」
「人間バンザイ、世界の文化!!バンザァイ」
俗にメトロポリス、ロストワールドと合わせて手塚初期SF三部作と呼称される作品の一つ。
三作の中では最大の長さを誇り、絶対的な主人公と言える人物の居ない群像劇で舞台も米ソ冷戦の時代を下敷きに、二つの超大国「スター国」「ウラン連邦」の対立を軸に核兵器の恐怖をキャラクター化するなど先進的な試みが数多くなされている。ちなみに、作品が発表された1951年とはヤルタ会談による第二次世界大戦終戦から僅か6年後に過ぎず、昭和ゴジラ第一作の3年前、朝鮮戦争の真っ最中、内容ももともとは1000頁あったのだが手塚本人の意思で「長すぎる」という理由で700頁カットした。人間じゃねえ…。
後にこの作品を下敷きに24時間テレビアニメ枠にてフウムーンというタイトルでアニメ化されている。
単行本時代の手塚漫画としては最後期に属し、ジャングル大帝等の連載形式に比重を移していた事も有り、それ程取り上げられる事は無いが近年電子書籍等で目にする機会も増えたためかKindleランキングに登場するなど再評価の機運があるようだ。
近未来、馬蹄島で原子爆弾の実験を調査していた山田野博士は恐るべきものを発見する、それは相次ぐ原子爆弾の実験により突然変異を起こした島の生物と、新人類と思わしき謎の生物であった。博士は国際原子力会議でその生物たちの調査結果を発表し原子力の利用を少しでも止めようとするが、世界を二分するスター国とウラン連邦は面子の張り合いばかりして耳を貸さず、その他の国々も二大国に付き従うだけだった。
そんな中地球には二大国の全面戦争より大きな危機が迫っていた…。
ポポーニャ
ウラン連邦の強制労働工場を統括する工場長にして科学省長官の娘にしてマッドサイエンティストの少女。工場では舐められないように覆面を被り、ロックの精神を破壊してしまうのだが、なんと新人類フウムーンの科学力に魅せられ親も婚約者も捨てて彼らの研究に協力してしまう。富野由悠季が幼い頃に大きな衝撃を受けたキャラとして一部で有名、「ポポーニャが覆面を取った時、僕は初めて女性を意識した」初版本の価格が30万円と知って「買いたい」と言ったり、「オタクは嫌いだけどこれを見ると自分がオタクだと認識してしまう」などと氏の相当な思い入れが感じられる。ちなみに設定上はココアとそっくりとなっているのだが、全然似ていない。
ピアニストの和田さん
ケン一少年の近所のピアニストの先生。医術の心得があるらしくフウムーンの治療に手を貸す。全体を通しては出番は多くないのだが、世界崩壊の最後の瞬間までベートーヴェンを一心不乱に弾き続けるシーンは、最早何の漫画だか分からなくなるほど強烈なインパクトを帯びている。
フウムーン
放射能の影響でムタチオンを起こし人間以上の人間となった新人類とされているが、デザインが人間からかけ離れているせいか宇宙人にしか見えない。特にアニメ版。
手塚スターシステムからの出演
ウラン連邦のトップ、「レドノフ」として出演。威厳溢れる鉄の男。
スター国のトップ。自由を説くが愛国の名のもと人々を戦禍に招くことを当然と思っている。
ノタアリンの娘、ココアとして出演。
善玉の科学者。原子力がもたらす影響に危機感を持ち警鐘を鳴らしても誰も相手にしてくれないが、世界の為に奮闘する。
スター国の少年「ロック・クロック」として出演。ノタアリンの口車に乗りウラン連邦に潜入するが…。
ヒゲオヤジと大の仲良し。
私立探偵。多彩なアクションで見せ場も豊富。
ルンペン。その身分から不公平な裁判を受け、世界一の金持ちとなる事に執念を燃やす。
ウラン連邦の田舎村、ユモレンスク村の村長。信仰心が篤くフウムーンたちを神の類と認識した。