0マン
ぜろまん
前作スリル博士は、手塚治虫が日本初の週刊少年漫画、週刊少年サンデーにて目玉として連載を開始するも一話完結形式でスピード感や引きが弱いと指摘され、僅か10週で打ち切りとなった。
そのリベンジを誓い即座に連載開始されたのが本作である。
毎回気になる所で話を引っ張るという手法、近未来を舞台に世界を股に掛ける壮大なスケール感と、登場キャラクターを増やし群像劇的な要素を付加した本作は瞬く間に人気を獲得。
1年以上の長期連載となり見事面目躍如を果たした。
手塚治虫も「ジャングル大帝と並べたいほどの大きな物語」と気に入っていた作品である。
内容は少年ヒーローを主人公に据えたバトル・冒険ものでありつつ、「人類と超人類の抗争」「異種族間に育った主人公の葛藤」「人間や戦争の愚かさ」等手塚が得意とするテーマを盛り込んだ大河ドラマ的作品であり、人気作品ではあったものの当時の児童読者層には受け入れ難かったという指摘も存在する。
後にアニメ化の企画が持ち上がったが、当時流行していた巨人の星風のキャラクターデザインにするようテレビ局からの要請があり、その結果主人公のリッキーも可愛らしい少年から星飛雄馬風の眉毛の凛々しいいかつい青年に変更されてしまった。
それに伴い、原作で見せた軽やかなジャンプや宙返りもまるで体操選手かスポーツ漫画の描写のようになってしまい、また絵柄のせいで単に破壊兵器の凶暴さを強調するような殺伐とした作品になり、結果取りやめになってしまった。
舞台は近未来。
インドの奥地で赤ん坊が日本人に拾われ、その子はリッキー(力也)と名付けられて東京で育てられることになった。
しかし、リッキーはリスのような大きな尻尾が生えており、また運動能力や知能も人間を遥かに上回る「0(ゼロ)マン」と呼ばれる超人類であった。
後にリッキーは、0マンはヒマラヤの奥地にある巨大な地下国で暮らしており、2万時間後に人類は滅んで0マンが地球を支配すると知る。
0マンの国は、人間を嫌悪する独裁者たちによって支配されており、更に東京は人間支配のための前線基地となっていることが発覚した。
0マンでありながらも人間社会で育ったリッキーは、人間と0マンの和解のために力を尽くそうと決意するのであった。
0マン
元々金星に住んでいたリスに似た生物が進化した存在。
遥か昔探検隊として地球に来訪し、金星で勃発した戦争のために残留した中の一つがい「イダムとアブ」の子孫が現在の0マンである。
人間を遥かに凌駕する身体能力や知能、技術力を有しており、また簡単な予知ができたり異言語をすぐに解読できるなどの能力も確認されている。
作中では0マンのキャラクターはネジ目で描かれている。
リッキー/力力也
本作の主人公。読みは「ちから りきや」。人間に育てられた0マンで、もふもふ尻尾のショタ。
0マンの中でも飛びぬけて身体能力が高く、戦闘員の素質があると評されている。
槍と銛を組み合わせた「ヤモリ」という独自の武器を制作し、携帯している。
物語の途中で事故により自慢の尻尾を失ってしまい、以降は作り物の尻尾を括り付けている。
リッキーの両親
リッキーの実の両親。父親は0マンの科学者だったが、田手上博士によって夫婦共々捕らえられる。
大僧官
0マンの国の支配者。人間を毛嫌いし、0マンが地球の支配者となることを目論んでいる。
リーズ
大僧官が溺愛する一人娘。人類を嫌う父親には批判的で、リッキーの理解者となる。
ガリ公
0マンの国で暮らす少年。名前通り何でもガリガリ砕いてしまう出っ歯が特徴。
リッキーと大喧嘩になるが、負けてからは親友となった。
人間
力有武
元兵士で、リッキーの育ての父親。手塚スターシステムによる登場で、読みは「ちから ありたけ」。
リッキーには普通の人間の子どもとして生きてほしいと願っており、尻尾を切除する手術の費用を工面するため、田手上博士の研究所を襲撃する計画に乗ってしまう。
その結果銃殺され、息子の目の前で息を引き取る。
田手上博士
生物学者。名前通りライオンのたてがみのような髪と髭が特徴的。
ヒマラヤ山脈で雪男の創作の最中、リッキーの両親を捕獲する。
ドンペイ
小学校でのリッキーの親友。学友の中では唯一、リッキーの尻尾のことを知っている。
カクテルの鉄
力の元戦友で、田手上博士の研究所襲撃を持ちかけた張本人。
後に電子冷凍機を発見したことで世界征服の野望を抱く。
チャコール・グレイ
カクテルの鉄や大僧官と手を結ぶことで世界を手中にすることを企む人間。だが、後にカクテルの鉄とは対立し殺害。
最終兵器「ブッコ・ワース光線」の装置を手に入れ、狂ったように0マンの国を襲撃するなど、鉄と並んで人間側の負の側面を担うキャラクター。
谷川
日本人の青年。人間の代表として鉄や大僧官らと対峙し、リッキーに協力する。