ゴリラ・警視庁捜査第8班
ごりらけいしちょうそうさだいはっぱん
1989年4月2日から1990年4月8日にかけてテレビ朝日系列局(ただし一部系列局は放送日時差し替え)にて全46話が放送された、旧・石原プロモーション制作のアクションドラマ。また、多少のズレはあるもののほぼ同時期には秋田放送や南海放送(いずれも日本テレビ系列局)でも放送されたほか、日本海テレビ(日本テレビ系列局)→山陰放送(TBS系列局)や北日本放送(日本テレビ系列局)でも何らかの形で放送されている。
同じく石原プロ制作の『西部警察』シリーズ、それに国際放映制作の『私鉄沿線97分署』などでお馴染みの、日曜20時台(※)にて放送されたドラマでもあり、所謂刑事ドラマに類する作品としては、前年に放送された『ニュータウン仮分署』以来となる。
特徴
前述の通り本作は、刑事ドラマのカテゴリにも入る作品ではあるが、一方では番組企画当時に流行しつつあったサバイバルゲームや、『ランボー』などに代表されるアクション映画の影響を受ける形で、どちらかと言えばコンバット色を前面に押し出した無国籍アクション物が志向された。そうした傾向は、主人公チームである「警視庁捜査第8班」の、警察(警視庁)組織の枠組みから独立した傭兵部隊的な立ち位置などからも容易に窺えるものとなっている。
また、本作の出演者の一人である舘ひろしが主演を務め、1980年代後半に多大な人気を博した『あぶない刑事』からの影響も少なからず受けていたようで、物語前半では伊達と風間、それに中田を中心に同作を思わせるコミカルなやり取りも随所に散見された。
『西部警察』以上のスケール感を強調すべく、初回の2時間スペシャルは海外でのロケが敢行され、台湾それにフィリピンを舞台に大規模なアクションも展開された。フィリピンにおいては大統領府の全面協力も受け、当時の大統領の義弟であるアガピト・アキノもゲストとして出演。この他日本国内でも福岡や広島、それに北海道での地方ロケが度々実施されている。
逆風と迷走の連続
石原裕次郎逝去後初となる石原プロ制作作品として、前述の通り並々ならぬ力を入れて制作された本作であったが、その意気込みとは裏腹に視聴率は伸び悩みを見せた。
この当時、日曜20時台と言えば大河ドラマ(放送期間中の作品は『春日局』→『翔ぶが如く』)を擁するNHK総合、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』や東京ドームからのセ・リーグ中継という強力なカードを持つ日本テレビ(系列局ほか)の2強が、安定して高視聴率を獲得していた頃でもあり、これら裏番組の壁に阻まれる格好となった本作が伸び悩むのも無理からぬ話ではあった。
そもそも、1987年に刑事ドラマの長期シリーズ作品だった『太陽にほえろ!』『特捜最前線』が相次いで終了し、「刑事ドラマ」というジャンルそのものへの人気が次第に陰りを見せていたこと、それに大ホームラン作の『西部警察』の良くも悪くも巨大な影を引きずりがちであったところもまた、視聴率の低迷の一因であったとも指摘されている。
また本作では、車両協力がそれまでの日産自動車から軽自動車から大型トラックのフルラインナップを持つ三菱自動車へと変更された。
これにより後述の通り、作中では個性的な特捜車も輩出することとなったのだが、一方で当時の日産も三菱と同様に、相次いで性能・個性共にパワフルで魅力的な車両を多数世に送り出しており、『西部警察』シリーズの頃のようにそれらの日産車の使用(例えるならガルウィングドアを持つZ32型フェアレディZや、マシンX風のR32型スカイラインGT-R)を期待した視聴者からの失望を買ったと見る向きもある。
とはいえ本作以降も、石原プロと三菱との関係は継続されていくこととなるのだが。
最大の売りであったコンバットアクションについても、番組初期の撮影中に渡哲也が負傷するというアクシデントに見舞われたこともあり、アクション物としての体裁は維持しつつも次第にコンバット色が薄れ、単に「警察手帳を持たない刑事が様々な事件に挑んでいく」という、『大都会』&『西部警察』シリーズともほぼ変わりのない方向性へとシフト。
さらに最終クールに入ってからは、倉本聰監修の元、メンバーそれぞれに焦点を当てた、陰湿な人間ドラマ的な路線へと大幅な変更を余儀なくされてしまった。
このように、様々な形で苦戦と迷走を強いられた本作だが、それでも2時間スペシャルとして放送された最終回では、瀬戸内海を舞台に大掛かりな物量アクションを展開、アクション物として一応の体裁を守りつつ1年間の放送に終止符を打った。
連続ドラマとしての、石原プロのアクションドラマは事実上本作がラスト(※)となり、半年の間をおいて本作と同時間帯にて制作・放送された『代表取締役刑事』以降からは、初期の『大都会』シリーズへの原点回帰も企図してなのか、当時刑事ドラマのジャンルで主流となりつつあった人情物としての路線が模索されていくこととなる。
(※単発のドラマも含めれば、2004年放送の『西部警察SPECIAL』も本作以降に制作された石原プロのアクションドラマである)
倉本省(演:渡哲也)
捜査第8班のリーダー。班長という立場ではあるが部下からは「倉本さん」と呼ばれる。
警視庁捜査一課の刑事だったが訳あって警察を辞め、静岡県のとある村に住み着き漁師をしていた。しかし、台湾で日本人実業家を拉致・監禁したグループのリーダーに漁師仲間を殺され、そのことを契機として警視庁に復帰、捜査第8班に属するに至った。
愛車は6代目ギャランVR-4(コードナンバー:G1、車体色:グレースシルバー)。WRC(世界ラリー選手権)グループA規定参戦を目的として開発されたトップラインモデルで、4G63型ターボエンジンなど、ランサーエボリューションで一世を風靡する事になる技術が多数搭載された名車である。
終盤のテコ入れでは妻との愛情ドラマが焦点になる。
伊達健(演:舘ひろし)
警視庁を辞めてマニラで特に何もせず生活していたが、倉本の誘いで復帰。
「自分のケツは自分で拭け」を信条としている個人主義者。そのため倉本の考え方に最初の頃は付いていけない面もあったが徐々に理解していく。
英語が得意。
スタリオンのガルウィングドア仕様車(コードナンバー:G2、車体色:セルビアブラック)を乗りこなす。
終盤のテコ入れでは実家が長野県でリンゴ農家をしており、家族との折り合いの悪さから長らく絶縁状態にあったことが判明。そして自身も…
風間有悟(演:神田正輝)
彼もまた警視庁に在籍していたが辞めていた。だが台湾での日本人実業家が巻き込まれた事件の絡みで台湾に入国、独自で捜査を行っていた。その後倉本と伊達に合流する。
元々は無精ヒゲを生やすなど三枚目のキャラであった。最初の事件の際、フィリピンでとある諍いを起こしたこともあり、伊達とは当初折り合いがいいとは言えなかったが、物語中盤でヒゲをそり落としてからは伊達との関係も徐々に改善されている。
2代目デボネア(コードナンバー:G3、車体色:サラエボホワイト)を乗り回しているが、この車、プリンスグロリアやトヨペットクラウンと車格が同じ。上司である倉本の愛車であるギャランがダットサンブルーバードやトヨペットコロナと同じ車格であることを考えると・・・・・いいのかそんなんで?しかも高級車であるデボネアなのに平気でドリフトやスピンターンをかました事があった。演者のドラテクの高さあってのものであったが、そう言う問題ではなかろう。
谷川竜太郎(演:谷川竜)
元々は警視庁の刑事で実直そうに見えるが、減棒やら戒告やら謹慎やらを合わせて15回もやらかしていた、とんでもない人物。
射撃の腕前はなかなかのモノがある。
愛車は初代パジェロのショートボデー(コードナンバー:G4、車体色:上部トワイライトブルー・下部グレースシルバー)。
高峰淳子(演:加納みゆき)
後方支援担当の婦人警官。
OA機器や無線を扱うのが主な仕事だが、倉本と共にヘリコプターに乗り込み捜査に赴くこともたまにではあるがあった。
3代目ミラージュに乗る事もあった。
第2話から第30話まで出演。
田中美奈子(演:田中美奈子)
研修のためFBIに出向した高峰の後任として、第31話から出演。
ポジションとしては高峰と同様だが、彼女以上に現場に赴いていた。
結構射撃が出来るようで、練習の際には谷川を驚かせていた。
後に、当時クライスラーとの提携で共同開発されたばかりの、初代エクリプス(車体色:サンタバーバラレッド)を愛車として乗り回すようになった(日本での発売は本作放送終了後の1990年6月より)。こちらも前出の3代目ミラージュの後継という位置付けで、スタリオンと同様にガルウイング仕様とされていた。
塩田直次郎(演:谷啓)
第8班の管理官。元々は警視庁の刑事であり、かつての倉本の上司でもあった。
独立採算制を取っている第8班の特質上、その懐事情に頭を悩ませている。
ある事件の捜査で囮になった際、自分の境遇をボヤき倒すあまり、中の人の持ちネタである「ガチョーン」を披露し、たまたまその場にいた関係ない人をハラホロヒレハレーと脱力させた事がある。またその際、ついでに奥さんと子供がいることも語られている。
麻生公義(演:鈴木瑞穂)
警視庁刑事部長。第8班の創設者。
倉本のことを信頼し、その捜査方法についても基本的には容認する姿勢を示しているが、捜査が行き詰まりかけているときには厳しい叱責に及ぶこともある。
中田透(演:仲村トオル)
神奈川県警捜査一課刑事。
捜査第8班のメンバーではないが、刑事だった頃の倉本や伊達とも少なからず付き合いがあったことから、度々第8班の手がける事件捜査に協力。また、基本的に第8班が秘密組織であることから、彼等が確保した犯人を譲り受ける形で自身の手柄とすることもある。
初回から顔を出しているものの、数話おきに登場するセミレギュラー的な立ち位置のキャラクターであり、後にある事件での失態の責任を取る形で第8班との関わりを事実上絶ち、そのまま物語上からもフェードアウトする格好となった。
倉本静江(演:柏木由紀子)
倉本省の妻。
最終クールにのみ出演した、終盤の路線変更を象徴する人物。
日下義郎(演:金井大)
老医者。
彼もまた最終クールにのみ出演した、終盤の路線変更を象徴する人物。
- 第10話「博多大追撃」では、当時福岡市で開催されていた「アジア太平洋博覧会」の会場を使ってロケが行われている。また同話数では、捜査途中で地元の三菱自動車販売店に立ち寄るという描写が見られたが、その際、ミニカのポスターを見た伊達と中田が顔を見合わせて異常に恐れる描写が見られた。その理由は・・・お察しください。
- 劇用車であったスタリオンとエクリプスのガルウィングドア仕様車は、実際に一般販売された事がある。スタリオンは5台限定で販売された一方、エクリプスはオーダーの際ボディ加工のための追加料金を支払ったうえで改造してもらえた。但しいずれも追突されただけで全損扱いになる程、車体強度が低下する。
- 登場人物の項目で紹介した車両のほかに、一度だけではあるが情報収集車という設定でミニカが登場した事がある。まさに当時の三菱自動車のラインナップの充実ぶりが窺え、SUVと軽ハイトワゴンしかない現在の(日本市場における)三菱自動車からすれば隔世の感がある(え、デリカD:5?あれはミニバンの皮を被ったSUVだ)。
- 元々鳥取県と島根県では日本海テレビで放送されていたが、日本海テレビの番組編成見直しに伴い放送期間中の1989年10月以降は山陰放送に移管した。なお、日本海テレビの編成見直しについては該当項目を参照。また、北日本放送では、日曜のお昼という、スポーツ中継などの特別番組で放送しにくい時間帯に組んでしまったために放送休止が相次いでしまい、全話消化するのに2年もかかってしまった。ライバルテレビ局における「ホイッスル!」ですか。