私鉄沿線97分署
してつえんせんきゅうじゅうななぶんしょ
1984年10月28日から1986年9月14日にかけての日曜夜8時台の時間帯において、テレビ朝日系列局(ただし同じ日曜でも放送時間を差し替えた局や別の日のクロージングに回してしまった局、さらには放送自体なかった局も存在)にて放送された刑事ドラマ。また、秋田放送、北日本放送、日本海テレビ、四国放送、高知放送(いずれも日本テレビ系列局)、福井放送(放送当時日本テレビ系列局)、テレビ山梨、北陸放送、信越放送、山陰放送、長崎放送、琉球放送(いずれもTBS系列局)、テレビ熊本、テレビ大分、テレビ宮崎(いずれもフジテレビ系列局)でも、放送日時を差し替えた上で放送されている。
全90話。
東京都南西部の新興都市・多摩川市に設置されたプレハブ仮庁舎での警察署・「警視庁・第97分署」に勤務する刑事達の活躍を、悲願でもある新庁舎が竣工され移転されるまでを描いた。
本作の拠点は、あくまでもプレハブ仮庁舎だったのだ。
本作は大ホームランを出したロングラン作『西部警察』シリーズの後続でシリーズからは渡哲也&武藤章生が制作会社を越えて続投(視聴率対策)されたが、出来た作品はホンワカしたサブタイトルと裏腹にハードボイルド調な人情話ながら「明るく楽しくテンポよく」のセンスもあってこれも大ホームランを飛ばした。
オープニングのキャスト紹介のパターンが途中で大幅に変更したこともあって、清く正しい意味で「誰が主人公なのかまったくわからない作品」でもある。
また殉職話が皆無で(危うく殉職しそうになる場面はあるが…)全員が依願退職・栄転での離脱であったり、アクション描写が少ないのも特徴で、殴り合いはあっても爆破炎上シーンは皆無。カーアクションはちょこっとあるものの、銃撃戦も少なかった。詳細は後述するが、文字通り「拳銃は最後の武器だ!!」を地で行く展開だった。27話以降のオープニングでは走り行く東急8500系が登場していた。また26話までのエンディングは田園都市線の二子玉川園から高津手前迄の前面展望の映像が写り出され 今はなき東急初代6000系や東京メトロ8000系ともすれ違ってる
2021年7月から10月にかけて、ベストフィールドからDVDボックス計4セットが順次リリースされている。これを機に、本放送以来から制作元の国際放映の手で欠番話になっていた第64話も復元収録され「真の全話コンプリート」が達成された。
血の気にはやる一方で心優しい捜査課の新米刑事。仲間たちからは「ヒロシ」と呼ばれている。
時に容疑者から「刑事には向かなかったみたいね」と言われたり、逆に性格を容疑者に利用された事もあった。
だが一方で、第1話で逮捕したサラ金強盗の主犯がブルの拳銃を強奪しスーパーでのリンゴ万引き事件を犯した少年を人質に籠城。弾の残数を知り危険を覚悟で、自身の拳銃を捨て手錠の鍵を滝村の静止を振り切り鍵を籠城犯に投げ渡し最後の一発をわざと撃たせるため「撃ってみろ!オラァ!!」と囮になった事もあった。
第26話で刑事を辞め、手帳を持ったままかねてからの夢である自転車による世界一周の放浪の旅に出てしまった。
最後は滝村によってフロア内で秘密をバラされ下記の奈良のみならず滝村の張り手・詰め寄るクラさん・ウソ泣きではなく本当に号泣しながらポカポカ叩く杏子・「片山!!」と怒鳴るブルとその後のシリーズでは見られないらしかぬ行動に出るメンバーに、当人は泣きながら辛い胸の内を告白し仲間達と第1話で窮地を救ってあげた榊に挨拶を済ませ街で自転車の逆さ乗りを女子高生に見せながら静かに日本を離れていった…。
ちなみにお茶なしで羊羹4本食べられるとか。
高知県出身という設定があった。
捜査課のリーダー的存在。横浜市在住(第60話で通勤上での弱点が露呈される)。
穏やかで優しい人物だが、キレると結構怖い。
初期の頃はどこぞの特殊捜査部隊のメンバーであった草鹿刑事(中の人つながり)と大して変わらないほどの非情な面があり、第3話ではそれがきっかけで取り返しのつかない事態を招き、署長から謹慎を命ぜられた上にヒロシからは「アンタとは組めない」と猛反発までくらってしまう。
※ヒロシの退職時には話が唐突な上に激情のあまりとはいえ、第4話での一件を引き合いに出し一喝した上で当人を小突いていた。確かにキレて怖さを感じさせたが、表情と心情は次第にヒロシとの離別に対する悔しさと哀しみへ変わっていった。それだけ下記のメンバー同様に、ヒロシへの思いが強すぎたのだ…。
滝村課長の愛弟子。
第26話以降は田中信夫(ノークレジット)の後任として「僕達はこう言う事件に取り組むことになります」という解説(要するに顔出しを兼ねた次回予告・ナレーター)を務めるも、静かでシリアスなムードだった田中版と異なり回が進むにつれ独自性が出始めブルやその他の面々も加わってお遊びのアドリブ的な要素も強くなり国際放映らしいカラーになった。
後に仁科に恋をするも、結果的に本城に奪われて失恋しまう。
97分署捜査課長。通称刑事(デカ)殺しの滝村。
初動捜査でややもたつく傾向にあるからかギャーギャー叫ぶことがしばしばある(そのためか胃薬をよく飲む)ものの、部下達とこまめに相談した上で捜査のやり方をすっぱりと決める。
うるさ型に見えるが本質は理想の上司だったりする。さらに、本多刑事の父殺害事件の犯人を突き止めるため自ら聞き込みにも回るなど部下思い。
妻(演:中原早苗)と一人娘と暮らしている。
ややふてぶてしい見た目によらず甘党で、よく奈良と飲みに行く。橘赴任時は自分が他所に飛ばされると思い込み寝込む。
- 本多杏子(演:坂口良子)巡査長
山手署少年課から97分署に配属された、勝ち気な性格の女刑事。時にヒステリック気味になることもある。それ故先輩格の奈良や後輩のヒロシと口角泡を飛ばしまくったこともある。
母(演:北村昌子)と二人で暮らしている。
父親もまた警察官だったが、ある未決事件の犯人と格闘の末殉職してしまう。そしてその父親を殺した人物を、思わぬ形で突き止めた。しかしそれは、後述する九十九にとっては裏切られる顛末での「弔い合戦」だった…。
※父親は昇進試験を受けず栄転を拒み出世に背を向け交番勤務を一貫していたが、独自の信念だけでなく自身が狭心症もちだったため体がこれ以上の激務に耐えられない事を悟っていた可能性がある。それでも謙虚な姿勢は、死後も話を聞いた九十九・滝村・山崎署長らは敬服していた。
また母親は当人が警官になった事を嫌っていたが、当人自身も父親の殉職まで警官にはいい印象がなかった。そして父親の殉職を機に警官になった事を奈良に告白し、奈良もまた複雑な思いで返した…。
第30話での事件をきっかけに、凶悪化する少年事件の重大性を悟り前話で榊の同僚が立ち上げかつての山手署の同僚も属している青少年施設の教官に就くことになり、静かに97分署を去った。
- 松元良平(演:小西博之)巡査長☆ A型
顔と体格が厳ついお調子者。人呼んで「ブル(さん)」。大阪府枚方市出身。
元々は西多摩署の交番勤務だったが、移動交番での勤務が認められ97分署の刑事となった。ヒロシの退職後は、奈良達の補佐…チームのサブリーダー的な存在になる。
厳つい顔つきしているが、巧妙な罠に落ちた同郷のトラック運転手の死亡事故を無実にするために捜査したり、同じく完全犯罪にハメられた亭主を追って青森県から上京した妊婦に協力したりととても優しい性格をしている。しかし凶悪犯には鉄拳制裁などするなど容赦しない。自ら97分署のホープと言っていた。捜査のときはヒロシ~オサムと組む事が多く、共にコンビネーションは至って良好。
学生時代はコーラス部に所属。試験の時にはショパンをルパンと書いてしまった事がある。
- 倉田徳夫(演:高橋長英)警部補
クラさんの愛称で親しまれたベテラン刑事。湘南育ち。あまり目立たないが、いわゆる縁の下の力持ち的存在であった。
第62話で別の警察署に栄転という形で97分署を去ったが、その際草サッカーで送別会をしてもらった。なお倉田家は独身刑事の憩いの場所でもある。
自分が扱った事件の犯人の娘を養女として育てている(件の犯人が結局は死んでしまったため)。
- 九十九圭介(演:新沼謙治)巡査長
第27話から登場し、下記の事情から「お荷物…粗大ゴミ」呼ばわりされた千代田署から厄介払いされる格好で第28話のラストで97分署に押しかけて来て配転を志願、第29話では仮配属の扱い、第30話でやっと配属。「つくも・けいすけ」と読むが署員からは当初「きゅうじゅうきゅう」と呼ばれた。
岩手県出身でバドミントンを嗜むが、完全に演じている人そのまんまである。裁縫が得意で婦警の制服のボタン付けなどをしていて、そのあとラーメンライスをごちそうになっている。
あらゆる面で呑気だが、異動のきっかけになった事件において杏子とブルの突然の訪問でかつての親友が97分署で追っている重要参考人である事に疑念を持ち97分署への出向と捜査協力を視野に入れた独自の「単独捜査」を要望するも所轄違いと自身の立ち位置の悪さも災いし千代田署の捜査課の上司は当人の要望を拒絶してしまい、やむなく単独で宮城県まで行き97分署の面々と協力し事件を追った。
ギリギリまで無実を信じるも現代の必殺仕置人のごとく主犯に捨て駒にされた親友自身の妻と子への犯行の告白…いや自白を聞いてしまったために当人が一番恐れていた結末になってしまい、親友を逮捕する際に「馬鹿野郎!バカヤロー!!」とマジギレし、どつき回してしまった。身の潔白を晴らしたかった純情な当人の気持ちを考えると、心中を察するに余りあるものがあった…。
また幼少期に親を亡くしており、自殺騒ぎを起こした年老いた母親に罵声を浴びせていた男にも制裁している。
身内は高校生の妹のみであり、97分署に異動してきた際、その自殺騒ぎを起こした母親の息子による不動産詐欺に遭いかけるも、幸い未遂に終わり、逆にその場所が気に入った事から近所の農家の離れに引っ越し、妹と二人で過ごしていた。その妹とは仲が良く、バドミントン合宿の時には幽霊騒ぎの犯人を探したり、就職祝いにスーツを買ってあげる等、妹思いな面もいくつか見られた。
第67話にて伯父さんが営む農業を手伝うために警察を辞め、すでに東京で就職先を決めていた妹を残し岩手県に帰郷した。
- 仁科順子(演:斉藤慶子)巡査長 A型
杏子の後任として第31話から登場した。熊本県出身
城西署の少年課に在籍していた、文武両道の才媛かつなかなかの美女。
オープニングフィルムではかわいい顔しているからと言ってナメたらえらいことに遭いかねないことを見せつけている(逮捕術を訓練していたらうっかり相手の男性警官のアレを蹴っちゃった⇒チンピラ3人と大立ち回りを繰り広げ3人全員半殺し)。
同僚に口角泡を飛ばしまくる点も前任の杏子と変わらず。
本城とケンカした69話で危うく殉職しそうになるも、本城によって助け出された。ただ、最後は梅か桜でやはりケンカしてしまう有様であった。だが後によりによってその本城刑事と婚約。
- 田島修(演:四方堂亘)巡査長 B型
こちらも第31話から登場。福岡県出身
水上署に在籍していたのだが、泳げないので陸に飛ばして欲しい、出来れば柔道大会でのライバルであるブル…松元のいる97分署へ、と考えていたら本当に97分署に回してもらえた。しかし当の97分署の方には辞令が伝わっておらず、配属時は「順子だと思ってたら配属されたのはオサムだった」と周囲から落胆までされる有様だった。
ブルとコンビを組むことが多く、関係も良好で、彼のことを「先輩」と呼び慕っているが、78話で一度だけ派手に殴り合い喧嘩してしまったことがある。その話では一度惚れた女子高生にフラれている。
- 橘礼子(演:山口果林)警部補 O型
第60話から登場。本庁…警視庁・捜査一課から着任。
着任当初はどこかピリピリしたところがあり、97分署のユルさにキレかけていた。奈良からは本庁からきた監察官と思われたこともあり、また初期は、冷徹な捜査手法で揉める事が多かった。さらに、保育園児の娘には、お母さんとは呼ばれず『礼子ちゃん』と呼ばれどこかギクシャクしていた。本庁でのトラブルで飛ばされた上に、旦那を捨て娘を引き取ったという経緯があったからの様だが…。
だが張り込み中の松元と田島に肉まんの差し入れを持っていくなど、優しい場面も見られ、そのまま自然に97分署の雰囲気に馴染んでいった上、ギクシャクしていた娘との関係も少しずつであるが改善していく。そして時には仲間の刑事と共に保育園のお芝居にも参加している。
オープニングフィルムではトマトジュースを持ったまま店の外に出てきたり、食い逃げ犯を逮捕したのは良かったが娘から「手錠忘れてますけど」と、現物を見せられ突っ込まれるという、マヌケな一面を見せているが、おそらくそれが彼女の本来の姿なのかも知れない(一時期は8人体制となったため、特別編集された激レア・オープニングフィルムを観る事が出来る)。
見た目は和製ダーティーハリーと言われるなど威圧感があるが心根はとても優しく、あやとりを嗜む。ただ心根の優しさをなかなか認めてもらえなかったようで、97分署に着任するまでは7つの警察署を渡り歩くハメになっていた。そして橘同様に97分署の雰囲気に自然と馴染み、後に最初ケンカばかりしていた仁科刑事と婚約。
当人には「似たもの一家」な父親(演:金子信雄)と「今度こそ決着をつけてやる」と突っ張る複雑な因縁を持つ2人組のチンピラがおり、片や同居で片や入れ逃げ同然に「ガソリン代は本城へ」と転嫁する等のイタズラで当人のみならずメンバー達を巻き込んだ珍騒動の中で面々はやっかいな事件に巻き込まれる。だが各々の悪癖(?)から、関わった事件の解決の切り札になっていったのは皮肉な顛末と言えた…。
物語開始時点では少年課勤務。榊の助手として立候補した婦警たちの中から選ばれる。
第15話にて、酒屋を営む父親・善吉(演:八名信夫)の体調が思わしくなくなったため、善吉を助けるために退職した。
※善吉はヒロシを店の後継者…婿殿にしようと、登場話(=第6話)の数日前からストーカー同然に尾行していた。折しもプレイボーイまがいでダニ同然の中古車店のセールスマンの殺人事件が起きていた事もあり、疑心暗鬼になっていたヒロシの奇策によって身柄を確保。当然、真相を知ったヒロシと当人は激怒。だが、これが当人の退職の要因になる事を誰も知る由もなかった…。
- 新庄めぐみ(演:原口弥生)巡査
2代目榊の助手。
第23話において、多摩中央署(少年課)から志願して移籍。
准看護師の資格を持っており、医師免許を持つ榊とはある意味いいコンビではあった。
第50話で薬科大学受験に挑むため退職。署内で送別会まで開かれたが実は…
- 清水あゆみ(演:北原佐和子)巡査
第51話から登場した、榊の3代目の助手。新庄の後任として、科学捜査研究所から異動。
その前歴からか、榊からは教授または鬼娘と呼ばれている。
- 三木敦史(演:野村将希)巡査長
交通課の白バイ隊員。☆
仲間の谷口夕介(演:柄沢次郎)や望月亮(演:古城裕章)と共に捜査課に協力することがしばしばある(谷口はヒロシの退職後に離脱)。
※第50話で庶務課の吉川婦警と結婚をしているが、その直前に狡猾な手口で白バイを強奪されてしまう。事件捜査もあり、式の延期(式場のキャンセル)を余儀なくされている。容疑者は車のテールランプの球切れによる整備不良で当人にパクられせっかくのチャンスをパーにされた逆恨みで当人を失脚の道連れにすべく復讐がてら白バイを悪用しある事件の再現を目論むも、当人と捜査課等の仲間たちの執念によって第二の事件は未然に防ぎ容疑者は逮捕され白バイも奪回。事件を解決した日の夜、仕切り直して執り行われた結婚式の場所はなんと…?!
- 丸岡吾一(演:武藤章生)警部☆
なんとなく呑気そうで写真が趣味な、97分署警務課長。通称おとぼけの丸さん。何かと付けて捜査課の面々や榊俊作(後述)と絡む。また、署内至るところにへそくりを隠したり、なぜかお見合い写真を何枚か持っており、それを奈良や榊に見せることがある。その一方で、ふとした事で捜査のヒントを提示する事も多かったからなかなか侮れない。
97分署の署長を務める。
本庁時代に榊の面倒を見ていた。そんな経緯から、榊を97分署に招聘した。本城と仁科刑事の結婚の仲人をお願いされる。
- 榊俊作(演:渡哲也)警視☆
医師免許を持ちながら、医者にはならず警視庁に就職してしまった偏屈者。しかも実家はお寺。さらにそのお寺の看板ロゴが書かれたダットサン810バン(後に体裁の似た次期型車に代替)を乗り回す。
署内に新設された検視官室付けの検視官として97分署に配属される。
偏屈者ではあるが人柄はとても良く、97分署の知恵袋的存在であり、彼のヒントが捜査解決の糸口的な切り札になる。事件解決後は捜査課の人間(主に奈良。奈良の事を「龍さん」と呼んでいた)と与太話をする。
地元出身?
初期のオープニングでは茶色のワイシャツを着て前番組のあの人の面影があったが、27話以降のオープニングでは最初に白衣姿で登場、雛にエサやりしたり伝書鳩を飛ばしたり、セキセイインコを肩に乗せたりしていた。
※第12話では詐欺絡みの一件で寺の名誉が地に堕ちる窮地を救うも、代償として自身も心に傷を負った。
第48話では功を焦り単独で連続自販機荒らし事件を追って罠を仕掛ける容疑者の前科者カードの写真撮影に甘んじて定年退職させられた「刑事志望」だった元・鑑識課員の男を止めなかった事を「危険」を感じていた奈良は当人を問い詰めるが、奈良の気持ちを知りながらも自身の境遇に重ね合わせて逆に奈良を説き伏せた(しかし2人の「推理の間違い」への祈りは儚く潰え去った)。
第23話と第81話では犯人を説得する場面もあり、その内容はまるで博多湾沖の剣島で壮絶な最期を遂げた「伝説のあの人」が甦ったような感じだった。
- これまでの刑事ドラマと比べると、現実に即した描かれ方をしていた。一部のキャラを除き独身の刑事は独身寮で生活をしていることや、拳銃を使う場合は使用許可が必要なため日頃は持ち歩かない、といったあたりがそれである。ただその一方で「第97分署」という、日本の警察組織ではまず使用されないものを名称として使っていたが、これはアメリカの小説家であるエド・マクベインのライフワークとなったポリスストーリーの傑作「87分署シリーズ」に習ってのものだったようだ。
- また、榊検視官が第36話から使用するようになったパソコンは、本来の警察組織が当時使用していた、本庁のデータベースと接続されているDAM端末というコンピューター端末ではなく、ホビーパソコンのMSXであるなど、あまり現実的ではない描写も見られている。
- 第97分署という名称は、1984年10月時点での警視庁の警察署の数が96存在したことにちなんだもの。なお放送期間中であった1986年2月に、本物の警視庁97番目の警察署が高島平団地に設置されているが、流石に高島平警察署と名乗っている。もちろんきちんと「警察署」と名乗っている架空の警察署の名称も登場しているものの、そのうちの一つであった多摩中央警察署に関しては、1988年2月に、多摩ニュータウン内に設置されている。
- 東京都南西部の新興都市が舞台とされているが、実際にロケ地となったのは、同じ新興都市でも奈良の居住地に近い神奈川県横浜市北部に存在する都市であったりする。
- 元々…本作の第1シーズン分はヒロシの成長(と挫折)を描くつもりで製作・放送されたのだが、「オールスター家族対抗歌合戦」(フジテレビ系列局、ただし一部系列局は放送日時差し替え)や「日曜ビッグスペシャル」(テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知)や大河ドラマ「(滝田栄の)徳川家康」→「山河燃ゆ」(NHK総合)を向こうに回しなかなかの視聴率を得たことから放送延長が認められた。だがヒロシ役の時任は別のテレビドラマの続編に出ることが決まっていたこともあってか、やむなく降ろさざるを得なくなってしまった。これに対し彼は相当ショックを受けてしまったが、あちらは大ヒットしたが故の続編だったからある意味仕方のなかったことではあった…。
- また次回予告が「良い意味」で当たり障りのないナレーションから、奈良とブルによるお遊び満載の楽屋オチ的なものに変更されたのは放送期間が延長されたため。作風は第3シーズンが本城をメインにし「原点回帰」させた反面、第2シーズンは上記にも示した通り奈良を中心とした群像劇となっていった(これは下請けで生まれた都心の警察署の物語でのノウハウがあればこそだった)。ただ放送期間延長の結果、とんでもない強敵と戦うハメになってしまったが…。
- 覆面パトカーのセドリックは、97分署に相容れない敷居の高いエリート特捜隊やよその警察署から回してもらったものだった。ゆえに普通覆面パトカーでは使用しないはずの4ドアピラーレス・ハードトップで、しかも社外品のアルミホイールを履いたというとんでもない代物だった(97分署・移転後は奈良の在住地である所轄に回され、先のエリート特捜隊の最後の事件にも同仕様の車が出ていた)。しかも途中からはコンパクトカーの覆面パトカー(それもヒロシに縁が深い赤のHBとその次期型の白セダン)という、これまた現実にはあり得ないものが登場している。なおこのセドリックの覆面パトカーは、2021年にトミーテックの手で奈良の在住地の所轄絡みでミニカー化された。
- 渡哲也と武藤章生以外でも『西部警察』出演者からは庄司永健(70話)・小林昭二(79話)・五代高之(41話)・加納竜(39話)・峰竜太(56話)・御木裕(85話)らがゲスト出演した。さらにいえば、スタッフの多くも実は『西部警察』からの引き継ぎであった。これは別のドラマを通じて国際放映と接点のあった石原裕次郎が、「ウチの制作スタッフ使っていただけませんか?あと俺の古巣の若いスタッフは、ポルノばっかり作るのもなんだかね」と国際放映側に頭を下げたことを受けてのものだった(ただし全員がそうではなく、東映の野田幸男監督や東宝の小谷承靖監督と外様の監督もいた)。
- 東映の特撮モノからは阪本良介(レッドワン)と円谷浩(シャイダー)がメイン格でゲスト出演した。
- その東映の『スーパー戦隊』シリーズにおける2014年度の『烈車戦隊トッキュウジャー』にて、同年5月25日に第14駅・『迷刑事、名探偵』(脚本・大和屋暁+監督・加藤弘之)が放映されメインゲストとしてブル…松元役の小西博之が取手権左衛門役で出た。下車駅だったきらり台警察署・管内にて貴金属店・時計店・家電量販店等から盗みを働いていた荒稼ぎの連続窃盗犯を追っていたが、事もあろうにトッキュウジャーの4人を誤認逮捕。しかも捜査の視点が的外れで、『空腹の彼らにカツ丼をチラつかせる』という禁じ手で自白を強要と来た。当人は「呼ぶな!」と言っていたが、部下はどっかの誰かのように「ボス」と呼ばれていた。しかし単独で動いていたヒカリこと野々村洸によって、仲間の無実を立証。盗品は取手に引き渡されたが、過去を知る者からは「取手さん。貴方は「ボス」より「ブル」が似合ってる上に、もう一度烈車沿線…いや私鉄沿線の97分署へ赴任しなさい!!」と言いたくなる顛末だった…。
- スパイ活劇を基調にし、スパイ活劇や警察等をモチーフとした話や戦隊が多かったこのシリーズ。大和屋&加藤コンビは本作を意識したかは不明だが、最後の顛末は本作・第59話とそっくりそのままだった。しかも本題の97分署の新庁舎・建設費の横領事件とは別にバスの車上荒らし事件も起こり、奈良・ブルらも巻き込まれた車上荒らし犯を追う「地元では有名」な勝浦南署の刑事・桔梗河原小太郎(=演・秋野太作)も捜査の手法や初歩ミスには先の取手と「五十歩百歩」だった…。また本作でも、『少年探偵団』をモチーフにした第80話のように児童ものを得意にした国際放映らしい話もあった。この刑事と少年探偵団の組み合わせは、まるで「あのアニメ」みたいな感じもあった。
国際放映:本作の制作会社
あばれはっちゃく:本作同様国際放映が手掛けたヒット・ロングランドラマシリーズ。テレビ朝日系列局で放送・ベストフィールドからDVDボックスがリリースされている点でも共通。
シリーズの影のイメージリーダーだった東野英心は第71話で「とんでもない役」でゲスト出演し、奈良を死の淵(?)へ追い詰めた…。
忍者部隊月光:本作同様国際放映によるロングラン作。本作と違い特撮ドラマだが、シリーズのトレードマークである「馬鹿!撃つ奴があるか!!拳銃は最後の武器だ!…我々は忍者部隊だ!!」は、本作では「馬鹿!撃ったり拳銃の常時携帯を希望する奴があるか!!拳銃は最後の武器だ!…我々は「97分署」の刑事だ!!」とばかりに不言実行で実践された。
ニュータウン仮分署:本作同様国際放映による刑事ドラマ。97分署同様に、仮庁舎を拠点にしている。また視聴率対策から、古尾谷雅人もメンバーにしていた。しかし本作の巨大な影を引きずりすぎた上に刑事ドラマのジャンルそのものの弱体化も災いし思った支持が得られず、上記の『87分署シリーズ・裸の街』共々凡打に終わった…。