ナミアヤシ
なみあやし
「小僧、いい涙だ!三途の川にはそれが必要なんだよ!」
「ああ、いい匂いだ!そんだけ悲しんでくれたらオレも嬉しいぜ、ヒヒヒヒ…!」
右半身が虎、左半身が逆巻く波のような奇妙な姿を持ち、妖怪水虎の伝承のルーツになったとされる。
「青竹断割槍(あおだけだんかつそう)」という槍が武器で、必殺技は大波と虎のようなエネルギー弾(?)を同時に繰り出す「虎津波」。
その言動から血祭ドウコクや薄皮太夫からの評価は芳しくなく、「気色悪い」だの「変態」だのと散々な言われ様だが、本性は唾棄すべき程に性根の腐った外道そのもの。
骨のシタリによって三途の川から召喚される。シタリ曰く「三途の川の水を増やすには、100人の人間の涙より、たった1人が流す深い悲しみの涙1滴の方が効果がある」との事で、ナミアヤシはその作戦に持って来いの奴らしいが…
ある日、神社で願い事をしていた良太という少年の前に現れ、何事かの取引を持ちかける。驚きながらも「本当に?」と、手のひらのお守りを握り締める良太。
そこへシンケンジャーが駆け付けるが、ナミアヤシは「うるせェな、オレ達は友達なんだよ」と嘯き、碌に戦いもせずに逃げ去る。
何を話していたのか聞き出そうと、池波流ノ介と白石茉子は良太を探し出して問い質すも、良太は口をつぐんで答えようとしない。訳ありと睨んだ流ノ介と茉子は、良太を見張る事にした。
明日、少年野球の試合に出場する事になっている良太は、帰宅してからも思い詰めた表情でバットを振り続ける。
そして翌日の早朝、良太は家を飛び出して、昨日の神社にやって来た。そして追いかけてきた流ノ介と茉子の目の前で野球道具一式をゴミ箱に捨てた上で、「どこにいる!?見てろ、約束を果たすから!」と言いながら、神社の工事用の足場に登り始める。
今日は試合ではないのかと問う流之介と茉子に対し、「俺、もう野球やらないんだ!」と良太は聞く耳を持たない。そして現れたナミアヤシに「早くしないと約束はナシだぜェ?」と催促された良太は足場から飛び降りて、怪我をしてしまう。
驚き駆け寄る流之介と茉子。しかし痛みに呻く良太を、ナミアヤシが嘲笑う。
「よーくやったな小僧!……けどな、あれはウ・ソ。嘘だ!」
愕然となり「そんな…言ったじゃないか!大切なものを捨てれば、その代わりにもっと大切なものが戻るって!」と訴える良太。彼は去年祖父を亡くしており、ナミアヤシに「野球ができなくなれば、その代わりに祖父が生き返る」という嘘を吹き込まれ、信じ込んでしまったのだ。
「バーカ、死んだ人間が生き返るかよ…!! お前はドブに捨てたんだ、野球も、試合も!
そして爺さんも生き返らない!ヒヒヒヒ……!」
打ちひしがれ、祖父からもらったお守りを見つめて良太は大粒の涙を流す。これこそが今回のシタリの計画。
たった1人でも心からの悲しみの涙を流させ、三途の川を増水させるという目論見だった。
そんな卑劣なナミアヤシに怒りを爆発させた流之介と茉子はシンケンブルー・シンケンピンクに変身して叩きのめす。二ノ目になって巨大化し反撃しようとするナミアヤシだったが、シンケンオーのダイシンケン侍斬りで成敗された。
試合には出られなくなったが、ベンチから懸命に声を出す良太を見守るシンケンジャー達。志葉丈瑠は「思」のモヂカラを使い、一瞬ながら良太の祖父の姿を映し出す。
その在りし日の笑顔を見た良太は、きっと怪我を治してレギュラーに戻ると心に誓うのだった。
今回の被害者はたった1人の少年だけで、大量破壊や殺戮を行ったわけでもない。
しかし流ノ助も言及したように、シンケンジャーの面々は改めて外道衆の卑劣にして邪悪な性質を理解した様子。「外道衆はこのように人の心を踏みにじるからこそ『外道』」なのだと強く刻み込んだ悪役であった。
1.モチーフ
大波と虎、他にも岩場と竹も含まれている。名前の由来はそのまま「波」と「あやし」から。
『水虎』は川に近付いた人間に害をなす化け物らしいが、そのルーツはナミアヤシが「虎津波」で戦う様子だとされる。
2.伏線「アヤカシの本質」
この回のドウコクはかなり機嫌が悪く、シタリの作戦に対しても「だったらとっくに川は溢れてるはずだ! 生き死にもできずにここに留まるしかねェ、オレ達外道衆の悔し涙でよ!!」と食ってかかった。後にアクマロは「三途の川に生まれた我等……生きてこの世にも、さりとてあの世にも行けず そのもどかしさと辛さ故、ヒトに纏わりつくもの。特に苦しみ、悲しみに惹かれることこの上なし……」と語っているが、「平気で人の心を踏みにじるような非道な輩」というだけではなく「アヤカシの本質」もさりげなく示されていたわけである。
3.声を演じた戸部氏は『特捜戦隊デカレンジャー』のリコモ星人ケバキーア以来、実に5年ぶりのスーパー戦隊シリーズ出演となった。
4.海外版での名前はダブルトーン。
規制の関係か「高所から飛び降りをさせて、足を怪我させる」というところはカットされているものの、こちらでも野球少年の『ライアン』に「試合当日に野球道具を捨てれば、軍人で遠くに行っている父親が帰ってくる」という嘘をつき、ゴミ収集車が回収するところを見て、「試合終了!!」と嘲笑うという原点と負けず劣らずの卑劣漢ぶりを見せた。
ラストは、『捨てたはずの野球道具(実はゴミ収集車に入れられる前に、あまりの新品ぶりに見かねた収集作業員に回収されていた)をコーチに手渡されたライアンが、ジェイデン(日本での志葉丈瑠/シンケンレッドにあたる人物)の『夢』のシンボルパワー(モヂカラ)で現れた父親の幻影からの応援で勇気づけられ、試合でホームランを打つ』という原点よりも救いがある終わり方になっている。
侍戦隊シンケンジャー 外道衆 アヤカシ(シンケンジャー) 水虎
ギガノイド第2番「英雄」:6年前の怪人で、同じく子供の心を弄んで悲しみのどん底に突き落とした外道。ただし、こちらはより大人数をターゲットにしている。