カシャボは、紀伊の国(現在の和歌山県)などで伝承される妖怪。
概要
河童の一種で、呼称は他にカシャンボ、カシラ、カシランボウなど。南方熊楠は、この妖怪を紹介する際「河童」であると説明し、河童の漢字へ「カシャボ」のフリガナを振る。
能登から紀伊にかけて分布する。ケシ坊主(頂部のみを残した髪の毛)の頭で、青い碁盤縞の着物を着、冬に森へ出没する7~8歳の可愛い子と説明される。一方で、犬、馬はその姿を見ることができるが人間の目には見えないとも言われる。
人間の唾を嫌うらしく、人に相撲をとろうと持ちかける際に、唾をつけて行うと勝つことができる、などと言われる。
和歌山県東牟婁郡高田村(昔平氏の落人がコミュニティを作ってたと言われる)のある家では、毎年秋ころに熊野川を遡って来た河童が挨拶に訪れ、姿は見えないが家に小石を投げ込んで知らせ、山へ入ってカシャボになるという。
それは河童ではなく山童では…?
性質は河童と変わらず悪戯者で、山中で作業をしている馬を隠したり、牛小屋にいる牛に涎のようなものを吐きかけて苦しめるという(汎ユーラシア的な水属性の妖怪のお約束で、牛とか馬をかまうというのがある)。
ある農村で、飼っている牛に、よくへんな粘液が付くので、識者のアドバイスに従って牛小屋の戸口に灰を撒いておいた(汎世界的に、スピリチュアルな皆さんは足形取られると困るそうである)ところ、水鳥のような水掻き付きの足跡が出入り口から入って牛へ続いていた、とか言われる。南方熊楠は、この悪戯を行ったのは「カワウソ」(が牛を舐め回した)である可能性を示唆している。
また、「おっさんが農作業中、遠くで「ほーい、ほーい」と鳴くカシャボの声を、生暖かく聞いていたところ、急に耳元で「アホ!!」という大声がし、彼は聴覚を失ってしばらくのちに」という話の他、山で木霊のような、木を切り倒す音などを出すなど音系統の怪異を行ったと言われる。
馬へ荷物を乗せる作業をする際に向う側にいて、荷を付けるはしから下す、という悪戯をするとされる話で、荷物が消えたからって馬の向うを見ると、一本足が見えた、と言われるほか、和歌山県西牟婁郡富里村(現・田辺市)では、カシャンボはヒトツダタラとも呼ばれ、雪の降った翌朝に一本足の足跡を残すとされる。
紀伊では河童をゴウライ、あるいは五来法師と呼び、冬の間は山篭りをしておりその間はカシャンボと呼ばれる。夏の土用辺りに川へ行き、冬、玄亥の頃に山へ入るといわれる。
カシャンボの名称は、「くすぐる」を意味する方言の「かしゃぐ」、「火車坊」、頭(かしら)などからと思われる。