概要
「山父」や「山翁」とも呼ぶ。「やまじち」と読むことも。
山姥などと同じく山に棲息する妖怪で、伝承がある地域によって全く姿や性質が異なることもある。70歳ぐらいの人間のような姿をしている姿の他、有名なのは一本ダタラのような特徴を持つバージョンである (1つ目に一本足、全身を鼠色の短毛が生えた三~四尺の大きさの翁だと謂われている。しかし、実は目は2つあり、1つはとても大きく、もう1つは非常に小さいため、1つ目の妖怪だと思われているという伝承もある)。
歯が頑丈で、動物の骨を大根のように噛み砕くことができるため、猿を頭から食うともされる。そのため、猟師達は餌で手懐けて狼を追い払っていたとされる。
人間が通る道にも現れるがあまり人前に出たがらず、六~七尺おきに四寸程の足跡を残すという。
山の妖怪の中では比較的大人しい性格だが、子供や家畜を拐うことがある。
声がとても大きく、山中に響き渡って天地を揺るがし、木の葉を落とし、木々や岩を動かしたとされている。近くで山爺の大声を聞けば鼓膜が破れ、最悪死んでしまうという。
人間に大声勝負を挑むことがあるが、自分の声と偽って銃声を鳴らされて負かされる話もある。流石に不正に気付き、蜘蛛に化けて寝込みを襲う事もあるが、ある猟師が大晦日の晩に伊勢八幡大菩薩を祈りながら作った『撃てば必ず命中する代わりに、持っていると必ず妖怪に出会う』という不思議な弾丸を手に、これを山爺に向かって撃つと言われ慌てて逃げたという。
徳島県ではさとりのように心を読むことができると謂われている。一方で、伏魔殿である山城・歩危では子泣き爺と同郷である。こちらの個体は、子供や大人、犬や家畜等を襲っては食っていたので、山伏または村人達と犬達によって退治されている。七人ミサキの伝説には、山爺の犠牲になった者達の伝承が含まれる場合もある。
高知県物部市では、中尾という男が山爺からモロコシの種を貰い、それをまくと大豊作になったという伝承がある。それ以降、年末になると山爺が餅を欲しがり、その繰り返しで3斗もの餅を平らげた。家計を心配した中尾が餅と偽って焼け石を食わせ、熱がる山爺にお茶と偽って油を飲ませると、驚いて逃げ出し死んでしまったという。その翌年、豊作だった中尾家は一気に衰えたと謂われる。
創作での山爺
ゲゲゲの鬼太郎
「ン」や「ソ」の字を逆にしたような配置の大きな目と、片方だけ歪に吊り上がるように裂けた口、そこから除く並びやサイズが不揃いの歯が目を引く姿をしている。(エスキモーの工芸アザラシのイヌア(魂)が元となっている)
アニメ1期では『妖怪大戦争』にて西洋妖怪に立ち向かう日本妖怪の群衆の1人として登場した。この時は、伝承や後のシリーズと違い、両目とも大きく描かれていた。
(イラスト中央)
4期では群衆の一員としてちょくちょく登場し、『鬼太郎対三匹の刺客!』にて、五徳猫(上図左)や如意自在(同右)と共に、鬼太郎を倒すために朱の盆が連れてきた助っ人として登場する。
……しかし、実はねずみ男が金目的で適当に見繕った(曰く「顔だけ怖い」)妖怪であり、まったく喋らず(感嘆の声や笑い声はする)、いつもボケーッとしていて何を考えているかわからない上に、鬼太郎が相手と知って怯える五徳猫と如意自在を尻目に蝶々を追いかけて遊ぶなどとことんマイペース。ぬらりひょんに怒られた時も暢気に鼻……と思われる穴をほじっていた。
攻撃手段もドングリを投げて遊ぶだけだが、住処の巨木を訪ねたねずみ男と朱の盆が「御用の方は木を叩いてください」と書かれた看板に従ったところ、クワガタよろしく樹上から落下して凄まじい土煙を上げている。
5期では妖怪大運動会の参加者として登場。映画『日本爆裂』では妖怪四十七士の高知県代表。
(イラスト2コマ目)
6期では、4話にてゲゲゲの森に棲む妖怪の1人として登場。上記のように過去作ではそこまで伝承のような凶暴性や強さは見せたことはなかったが、今回は彼の棲み家近くに通りかかった鬼太郎がさっさと通り抜けようとするなど、危険な妖怪として描写されている(とはいえ後述のように最終的には許していることから、少なくとも怒らせると怖いが話が通じない存在ではない模様)。
しかし、裕太が好奇心から棲み家の木になっていた「山爺の実」を取ってしまい、それに怒って暴れだした。ドームの天井に頭がつきそうになった2話の見上げ入道よりも更に大きく巨大化し、「返せぇ!」と連呼しながら地面から無数の黒い手を伸ばしてねずみ男や子泣き爺を始め手当たり次第捕まえるなど、過去のシリーズ(特に4期)からは想像できないほど遥かに強くなっている。
最後は怯えて逃げていた裕太が鬼太郎達に言われて実を返した事で怒りを沈め、捕まえた妖怪達を解放した。
そして、謝罪する裕太に好奇心と無知ゆえの行動と理解したうえで、「どの世界にも犯してはならぬ掟がある」と説いて許し、二度としないように彼の右手に×印を書くと、「2度とするでないぞ!」と改めて忠告しながら姿を消した。
余談
6期の山爺が言うように、ゲゲゲの鬼太郎では犯してはならない禁忌が多く、それを破った人間が酷い目にあう事が多い。
中には2期のタイタン坊の様に鬼太郎でもどうしようもない存在もいるし、逆に5期での沼御前の回で忠告を無視した結果「自業自得」と鬼太郎が見捨てた例や、むしろ鬼太郎達に危害を加えた人間が文字通り地獄を見たこともあるため、鬼太郎に見放されず、短い説教と戒めの印を書かれただけで済んだ裕太は運が良かったと言える。
前述通り6期の山爺は特に4期とのキャラや強さのギャップがかなり激しいが、あまり動きがないこともあってか画調も背景画に近い緻密な塗りで、4期ではごくシンプルに描かれ、体とほぼ同サイズな頭や左の頬に生えた(?)草、肘から先しか描かれていないような短い腕と赤子を思わせるデフォルメされた手と相まって愛嬌さえ感じさせた大きな目も、削り取られたように窪んだ様なデザインとなり、顔の各所にある欠けたような穴や背後から光を浴びている立ち位置からかかる影とともにより不気味さを醸し出している(ちなみに顔のサイズこそ幾らか小さくなったが、アイキャッチにも掲示された水木御大の原画に近い)。ついでに5期は白目部分が緑でこげ茶色の顔は豆のような歪んだ楕円形で、4期ほど愛嬌はないが、かといって6期ほど不気味さもないある意味無難なデザインとなっている。
関連イラスト
関連タグ
山本元柳斎重國....一部から「山じい」と呼ばれるので、混同されやすい。当人も死神である他、名前の元ネタには妖怪の大物である山本五郎左衛門があると推測されることもある。