概要
2022年3月6日、東映アニメーションは同社内のネットワークにて第三者による不正アクセスを確認した。これは翌日3月7日に東映アニメーションから発表された(参考リンク)。4月7日には、原因について身代金要求型のコンピューターウイルス「ランサムウェア」によるサイバー攻撃を受けたためである旨が報道された。4月28日に東映アニメーションから発表された調査結果によると、東映アニメーションの従業員が業務上必要なソフトウェアを外部ウェブサイトからダウンロードしようとした結果、その外部ウェブサイトがランサムウェアの侵入の起点となるソフトウェアが同時にダウンロードされるよう改竄されていたために、ランサムウェアに感染したことが判明した(つまり元の原因は、改竄された外部ウェブサイトだったのである。これらはウイルスバスターなどのウイルス対策ソフトでほとんど対処可能であるため、「事件」というより「事故」あるいは、東映アニメーションが十分なサイバー対策を怠った故に起きた「人災」に近いか。)。
これにより、社内システムの一部が停止した影響で、当時制作・放送中であった下記の作品に、制作の遅延発生等による放送スケジュールへの悪影響が出るに至った。なお、個人情報をはじめとする情報漏洩や顧客などへの被害は確認されていないとのこと。
当然一番被害を被ったのは、東映アニメーション自身であり、該当作品の視聴者もよりコアなファンである程真っ赤に憤慨。
特に『ダイの大冒険』は恩師の復活と宿敵の最期を描く第73話が、『デパプリ』は3人目のプリキュアの初登場がそれぞれ1ヶ月以上先延ばしとなってしまった為、TOP画像の様に多数の遺憾が燃え上がった。
影響
テレビアニメ
- ドラゴンクエスト ダイの大冒険(2020年版)
放送時間:テレビ東京系列にて土曜9時半から放送中(びわ湖放送、テレビ和歌山、熊本放送は遅れネット)
3月12日に放送予定であった第73話の放送を延期し、「ドラゴンクエスト ダイの大冒険 ベストセレクション」として第31話の再放送に差し替えられた。
その後、3月19日から4月2日までの3週分も過去話の再放送を行い、同月9日に最新話の1話前である第72話を再放送。4月16日より第73話から放送再開となった。
急な出来事に各所の全てが対応出来る筈もなく、スケジュールの決定していた一部キャンペーンなどは延期が不可能という事もあり、ゲーム「魂の絆」では本来の進行通りに進めざるを得ず、アニメ未放送分のネタバレが発生してしまった。
なお、話数の短縮は行われず、第73話からは本来のスケジュールから約1ヶ月遅れで放送、最終回の放送やそれに伴う改編(後座の『シャドウバースF』と、その後の『ニンジャラ』の放送時間繰り上げ)も10月下旬に行われる事になった。
放送時間:ABC・テレビ朝日系列にて日曜8時半から放送中(山陰放送は遅れネット)
3月13日に放送予定であった第6話の放送を延期し、「おさらいセレクション」として第4話の再放送に差し替えられた。
放送分の終了後には、代替措置として『映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』を、翌週の3月20日から4月3日にかけて3週にわたって放送する事が発表された。
4月10日は「おさらいセレクション」として最新話の1話前である第5話を再放送し、同月17日に第6話の放送を再開。
また、上北ふたご著の漫画についても、設定からやり直しを余儀無くされたほか、関連商品(キュアヤムヤム関連商品、ハートジューシーミキサー、キュアフィナーレ関連商品の一部)については当初の予定通り発売されたため、本編と販促のスケジュールに約1ヶ月程度のズレが生じる状態になってしまい、バンダイによる第1四半期の玩具売上も前年度より20%ほど低下する結果に。
また、この影響で話数も5話分短縮となり、全45話となった(これにより、当初予定されていた水着回が消滅してしまった他、次のシリーズ『ひろがるスカイ!プリキュア』は従来通り2月第1週開始となる)。
放送時間:フジテレビ系列にて日曜9時から放送中(一部系列局は遅れネット、ただし福島テレビ、テレビ大分、沖縄テレビは放送自体無し)
3月13日は名古屋ウィメンズマラソン2022の中継により、当初から事件に関係なく休止。
3月20日からは第1話を皮切りに4月10日まで「デジモンゴーストゲームセレクション」を放送。
4月17日から放送再開。番組は2023年3月26日まで放送されたが、この休止で放送期間がどのように変更されたかは不明。
放送時間:同じくフジテレビ系列にて日曜9時半から放送中(一部系列局に加えて山口放送は遅れネット、その一方で系列局でもテレビ大分は放送自体無し)
3月13日は同上。3月20日から4月10日までは「ワノ国編ベストセレクション」を放送。
4月17日から放送再開。なお、こちらは原作の連載ペースが遅いという事情もあるため、休止による影響は最も少ないものと思われる。
映画作品
4月22日に公開予定だったが延期され、後日6月11日に改めて公開される事が発表された。
宣伝面においては、当初の公開時期に合わせて発行されたホットペッパーの表紙が結果的にフライングという形になってしまっている。
その他
- 東映アニメーションオンラインショップ
3月中旬にリニューアルを予定していたが「諸般の事情により」延期する事が発表された。
その後、公式ツイッター上で4月12日より「東映アニメーションオフィシャルショップ」として、4月14日13時よりリニューアルオープンする事が発表された。
- Sailor Moon Store ONLINE
事件を受けて、サービスを一時停止した。なお、決済情報の漏洩については認められていないとのこと。
例外(?)
Eテレにて放送されている『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』と『おしりたんてい』は事件当初、再放送だったため難を逃れた。これはNHKアニメの映像納品期限が早めに設定されているためと、本放送と再放送をローテーションで放送していたためである(NHK関連のアニメは長期放送になるとこのような処置がなされることが多い)。ただし本放送スケジュールは若干ずれ込んでおり、その間は再放送でしのいでいる。
また、劇場版『映画おしりたんてい シリアーティ』は事件前に映像が納品済みだったため予定通り3月18日に公開された。
事件の経過
- 3月6日:不正アクセスを確認。翌3月7日にその旨を公表。
- 3月11日:上記の理由によりアニメ制作が困難になっているとして、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』と『デリシャスパーティ♡プリキュア』の次回話を再放送に差し替える旨および『デジモンゴーストゲーム』と『ONEPIECE』についても、放送スケジュールに影響が出る事が発表された。また、オンラインショップのリニューアルの延期も発表された。
- 3月13日:『デリシャスパーティ♡プリキュア』の休止が、少なくとも4月3日まで延長される事が発表される。
- 3月15日:『デジモンゴーストゲーム』と『ONEPIECE』も新作放送を休止し、再放送に差し替えると発表。
- 3月17日:『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の放送休止も、少なくとも4月2日まで延長され、再放送に差し替える旨が発表される。
- 3月18日:『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の公開延期が発表される。
- 4月3日:『デリシャスパーティ♡プリキュア』について、4月10日も「おさらいセレクション」として最新話の1話前である第5話を再放送に差し替える事が発表された。
- 4月6日:テレビアニメ4作品が16日・17日からの放送再開決定。
- 4月7日:事件の原因がランサムウェアであった事が報道された。
- 4月14日:『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の新たな公開日が6月11日と発表した。
- 4月16日:『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』が放送を再開した。
- 4月17日:『デリシャスパーティ♡プリキュア』、『デジモンゴーストゲーム』、『ONEPIECE』が放送を再開。
- 4月28日:東映アニメーションから当事件に関する詳細な調査結果が公表された。
- 6月11日:『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』が公開。
犯人について
東映社内の話によれば、発生時点で「現在調査中」としていた。後にランサムウェアの侵入の起点となるソフトウェアが同時にダウンロードされるよう改竄されてしまった外部サイトに、偶然業務目的でアクセスしてしまったのが原因である事が判明しているため、今回の事件で直接不正アクセスを行った犯人は存在しなかったことになる。
なお、その外部サイトを改竄した犯人については目的も正体も未だ不明である。
詳細な調査結果が公表されるまでは、ネットユーザー間では様々な解釈違いや陰謀論、憶測記事などが飛び交っていた(参考記事)。
個人による悪意説
前述の通り、原因が第三者による不正アクセスとあるが、第三者とは、会社や団体ではなく、あくまで関わりのない個人のことを指す言葉である。この事から、一個人が東映アニメ作品のネタバレ情報を盗み見るために不正アクセスを仕掛けたという説があった。
ロシアによる報復説
この時期は2022年2月24日から始まったロシアのウクライナ侵略に対し、日本を含めた西側諸国が強い経済制裁を表明し始めた直後であり、他業種の企業(後述参照)も相次いで攻撃を受けた(参考記事)。
侵攻開始後にサイバー攻撃が増えたという調査結果もある(参考記事)事から、ロシア側の報復のサイバー攻撃やその便乗犯罪である可能性を疑う声も出ていた。結局この説はロシア側から何も発表されなかったため、杞憂に終わったが、本事件から2年後に発生したニコニコ動画などへのサイバー被害については、実際にロシア系ハッカー犯罪集団が犯行声明を出している。
類似案件
サイバー関係
不正アクセスの記事を参照。
番組の休止関係
第一次オイルショックによる製作費削減の影響により、1975年2月2日から3月2日まで、放送済みの作品の再放送が行われた。
1997年12月16日に発生した放送事故。これによりアニポケが4ヶ月に亘って中断。
2002年6月8日の第49話放送後、主演の杉浦太陽が2000年に起こった傷害・恐喝事件の容疑者として誤認逮捕された。
この影響で番組は一旦は打ち切りとなり、後に被害者側が事件の一部を虚偽と認めた為、放送が再開されたものの、一部話数のカットを余儀無くされてしまった。
一個人の悪意が番組に多大な被害を与えた点が本事件と共通している。
2020年に新型コロナウイルスが流行し始めた事により発生。当時日本国内で放送されていた大半のアニメ作品が、コロナ禍の影響で長期の放送休止を余儀なくされた。
関連タグ
京都アニメーション第1スタジオ放火事件: 同じくアニメ会社を襲った実際の事件。但しこちらは犯人の放火によるもの。