概要
1999年に任天堂の「ポケモン」のイメージを壊す内容を書いた同人誌を通信販売していた作者が、著作権法違反で逮捕された事件。
任天堂が該当の同人誌を直接見つけたというわけでなく、一般人から内容がひどい同人誌があると情報提供があってから警察に届けを出した。
結果として作者は略式起訴をされて罰金(民事訴訟ではないので賠償金ではない)を科された。また同人誌を印刷した印刷会社の社長も、著作権法違反ほう助の容疑で書類送検されたがこちらは不起訴になった。
警察の同人誌への不理解もあった一方で、事件の発端となったのは通報者が二次創作のクレームをその作者ではなく、公式の権利者へ直接入れたことであり、この事件は日本において同人活動がなぜ権利者の目に触れられることを避けるのか、そしてなぜ同人活動が権利者の黙認の上で成り立っているのかを考える上で非常に重要な出来事になっている。
(※ここピクシブ百科事典は編集自由なため、この記事も情報の正しさの保証はできないので注意してほしい)
当時の報道内容
「ポケモンキャラクターを使ったアダルト漫画の同人誌をチラシで宣伝、通信販売した疑い。B5判、29ページの本を300冊印刷し、1冊900円で販売。うち120冊をすでに販売。」と報じられた。
ポケモン同人誌著作権問題関連(報道や時系列まとめ)
作者によればページ数などが事実と異なる。また、18禁のアダルト同人誌ではなかったとの証言もある(ポケモン同人誌事件のお話)。
「情報提供者は同人誌を購入した中学生の母親」とまことしやかに噂されたが、当時の報道には出典が見つからず真偽不明のようだ。
それぞれのスタンス
任天堂のコメント
- 刑事告発の理由について
一般人からの情報提供がきっかけでひどい内容の同人誌が出回っているという通報があったので、問題を検討し社員が同人誌を購入し内容確認。
警告はせず逮捕に踏み切った理由は、このような同人を過去にも書いているという情報提供があったことと、警告しても相手はペンネームを使用しており警告が届く保証もなく名を変えたりして出される可能性に加えて、バックに何か暴力団などの犯罪組織がいるかどうかわからないので弁護士と検討して決めたとしている。
- 二次創作についての見解
判断が難しい側面を持っており知的財産を脅かす行為をすべて黙認とは言えない。一方で好意を持っていただいて何かしただけで、まるで「任天堂は自分を犯罪者扱いするのか」というような対応もまた不適と発言している。一律にここからここはセーフ・アウトではなく知的財産の品格や価値がおとしめられない表現かどうかが一つの判断点となる。
作者のコメント
京都府警は同人誌と海賊版を混合していたようで、サークルの背後に暴力団などの大規模な反社会的勢力がいると勘違いして大がかりな捜査本部を設置の上、数十人にのぼる数の捜査員を動員し、数ヶ月にもわたる張り込みや内偵捜査を行ったという。その後、女性は22日間にも及ぶ長期の拘留を経て釈放されたが、10万円の罰金刑を命じられたほか逮捕を理由に会社からは解雇処分を受け、マンションからの退去命令により職を失ったまま住まいを追われることになった。それだけにとどまらず、ガサ入れ時に何から何まで次々持っていかれた押収品の返送費も、京都から帰る交通費も全て自費負担。財産・貯金・居住を根こそぎ失い、彼女は突然百数十万円の借金を失職状態で抱え込むこととなったという。
報道について
大規模な報道になったことは、任天堂側としても驚いており行き過ぎな報道もあったとしている。
半ば都市伝説になりだした事件
2018年9月末にネット上で巻き起こったクッパ姫ブームの最中、二次創作に関わる著作権についてこの一件も「前例」として浮上したのだが、その過程でネット上ではソース不明の事まで語られる事が出てきて都市伝説の様相にまでなりかけてしまっていた。当然、当時の事を知らない世代もいる為、ネット上で語られているもの全部が全部を鵜呑みにするのも考え物である。
既に解決したこの事件ではあるが、少なくとも任天堂としても先述の観点を持ちつつファン活動に対しては非常にデリケートになっているのは確かである。
実はこの時代にもう一つ二次創作での事件が起きていた
前年の1998年においても二次創作界隈を騒がした事件があった。コナミの「ときめきメモリアル」を題材にした事で起こった「18禁二次創作」の存在が引き起こした事件である。
こちらは同人誌ではなく「同人製作のアダルトアニメビデオ」であった。発端は写真週刊誌でこの「同人アニメ」の存在が大々的に記事にされてしまい、ときメモファンどころか権利者であるコナミの目にも入り訴訟問題に発展した騒動だった。ときめきメモリアルのキャラクターの清純なイメージを損ねる内容だったのが最大の争点であった事が大きく、二次創作側が敗訴している。こちらも権利者に見つかるとどうなるか知らしめられた事件であったのである。
2022年8月初頭、ときメモGS界隈において二次創作におけるグレーゾーンを脅かす行動に出た者が現れた。
ざっくり説明すると、「ある人物が、ときメモGSに登場するアクセサリーを再現した同人グッズをときメモGSの版元であるコナミに認可を求める文書を送り付けた」事がときメモGS界隈どころか二次創作界隈を騒然とさせた。
この行為はまかり間違ってしまうと、公式側が一切の二次創作によるファン活動を禁止しかねない危険性を孕んでいる。
件の人物は何かしらでときメモGSのファン界隈で問題のあった人物であったらしく、もはや暴走といえるものであり、話がもはや平行線を辿る程通じない様子。
まとめ
様々な人間の同人活動及び二次創作への不理解と行き過ぎた報道によって結果として一人の同人作家の人生がめちゃくちゃになったという極めて痛ましい事件である。
このような出来事を起こさぬために
「二次創作とは何だろう?」「二次創作がもたらす影響は一体何だろう?」という点を
十分に考えた上で二次創作をしていただきたい。
関連タグ
コーエーテクモゲームス…「DOA」の成人向け同人販売禁止を各同人販売サイトに通達した。
C翼…キャプテン翼のファンアートの一応カテゴリではあるがBLに属する一面もあり、過去に集英社がキャプテン翼のBL同人誌の存在を知り問題視した事例があった。この事によりBL界隈では成人向け/非成人向けのゾーニングの意識が高まったとされる。