主人公に関しては、フグ田サザエの項へ。
概要
日曜日の夕方に独特の髪型(戦後間もない頃に流行したヘアースタイル)の主婦が裸足で野良猫を追いかけたり、年の割には頭髪の少ない父親が息子を叱ったり、ペットの猫が果物の間に挟まって腰を振ったりするテレビアニメ…というのは冗談で、サザエとその家族や周囲の人々の日常を描くホームコメディ。幾度となく実写ドラマ化もされているほか、実写映画も過去に複数回製作されている。
原作は終戦直後の連合軍占領下(1946年)からオイルショック直後(1974年)まで夕刊フクニチや朝日新聞などで連載された長谷川町子作の4コマ漫画。
ジャンル的にはホームドラマだが、舞台はフグ田家と妻の実家の磯野家の複合大家族というやや特異な設定で、サザエとカツオの年齢が異常に離れているために、本作をよく知らない人からカツオとワカメがマスオ・サザエ夫婦の子と間違えられることがしばしばある。ただし、戦後まもない頃はこのくらいの年齢差の兄弟姉妹はそれほど珍しくなかったらしい。これは結婚と第一子をもうけるのが早かったことに加え、子供の死亡率も高かったため、女性は高齢になるまで多くの子供を産む傾向が強かったためである。その割にはサザエとカツオの間が10歳以上空いているが、幼児死亡率がまだ高く、昭和恐慌や日中戦争がまだ記憶に新しい時代では、それほど違和感はなかったであろう(ただし、作者はその辺の事情について特に言及しておらず、磯野家に夭逝した兄弟がいたとか、フネが戦争で子を産み控えたといった裏設定があるわけではない)。
原作でも初期にサザエがマスオと結婚してタラオを生んだほかは家族の基本的設定はほぼ一定である。
下記に詳しいが、アニメと原作漫画版では雰囲気がかなり異なる。原作者自身はアニメ版に対してはかなり否定的な態度を取っていたともされるが異説もあり、自分がこの世を去っても続けてほしいと云っていたとも。(後述)
原作漫画
新聞に連載された『サザエさん』作品は、いずれの新聞に掲載された作品をも一本化して、姉妹社(1993年に廃業、現在版権は長谷川町子美術館が保有する)より単行本化されている。全68巻。
「時間が止まったようなノスタルジックで優しい世界」の空気感を大切にしているアニメ版とは全く雰囲気が異なり、「戦後混乱期から高度経済成長期の終焉までの激動する時代の世相を笑い飛ばす」ような勢いのある作風となっている。基本的にはほのぼのしたノリが大切にされているが、元より新聞4コマである事もあり、社会動向の推移にまつわる描写や世間風俗の描写、それに伴う風刺もある程度盛り込まれていて、時には毒を感じさせるブラックなオチになることも多い。
キャラクターの性格も後述のアニメ版とは異なり、全体的には「時にやりすぎゆえのボケもするが、基本的に抜け目なく、状況に対してしたたか(強か)な庶民」として描かれている。
特にカツオが知性派に描かれていること、タラオがやんちゃなこと、ワカメが相当にお転婆になっていること、波平の間抜けさと頼りなさが強調されていること、フネの気性が激しいことが主な違いである。サザエがタラオを罰として倉庫に閉じ込める、フネが波平を追いかけ回して馬乗りになって頭頂部の毛を切ろうとする、波平がカツオとワカメにやり込められるなどのシーンもある。
ちなみに、連載初期はサザエは波平をパパと呼んでいたが、後に波平からパパと呼ぶのはやめろ!と怒られて以来父さんと呼ぶようになった。
そしてアニメ版との最も大きな違いは、磯野一家はその時代の最先端の流行にとても敏感な家庭として描かれているところである。もしも原作漫画が今も続いていれば、カツオがドローンでいたずらしたり、タマの一日が動画サイトに投稿されて世界の人気者になったりしたのだろう。
新聞に連載されている漫画という形式上、磯野家はリアルタイムの世相を反映して常に変化していくことが宿命づけられているキャラクターたちだったのである。
ただし、舞台設定は二つに分かれている。
- 福岡編・サザエ独身時代(連載開始~最初の最終回※後述)
家が二階建て・固定電話を持つ当時の中流より少し上あたりの家庭の設定。
- 東京編(朝日新聞での再開~打ち切り)
平屋建て・再開初期は固定電話の導入が遅れていた・連載中期は高度経済成長期だった当時の中流寄りの家庭の設定。磯野家総出で東京へ引っ越したのは作者が東京へ移住した事からであり、実際は特に深掘りした設定は無い。
また既存の『サザエさん』から特に面白い(と作者の言う)作品を選び抜いた『よりぬきサザエさん』や、ショートストーリー形式の『別冊サザエさん』も同社より刊行されている。
現在まで入手しやすかったのは、『サザエさん』全68巻を45巻に配分し直した朝日新聞社刊行の文庫版『サザエさん』だった。ただし、差別用語や反社会的内容が含まれるネタが入っている作品については文庫版には未収録となっている。(後述)
また、あまりにも時事ネタかつ楽屋オチな内容で、その日の新聞とあわせてリアルタイムに読まないとまったく意味がわからなくなる作品については姉妹社版にも未収録。
2020年には長谷川町子生誕100周年を記念して、朝日新聞出版から『姉妹社版サザエさん』を装丁をそのままに全68巻を月三巻のペースで4コマ漫画一つ一つに新聞掲載日を追記・巻末に注釈を掲載して掲載当時の生活環境や世相を解説する新しい試みもされている。なお、この『姉妹社版サザエさん』は27年ぶりの復刻であるらしい。なお第一巻は第二巻以降に統一されたサイズの形で復刻される。初版の第一巻はその書籍サイズ(B5のの横開き)が不評だった為、増刷でB6になった、というエピソードがある。そのため初版第一巻(の忠実復刻版)は長谷川町子美術館でしか復刻版は販売されていなかった。
長期連載だった為、最初期から再晩期はかなり画風が変化している。その為『サザエさんのニセ本が出ている』と作者の下に送られてきたのが初期のサザエさんの単行本だったというエピソードがある。
ちなみに作者・長谷川町子の最後の作品は『サザエさん旅あるき』という題名であるが、この作品自体は作者の旅行エッセイであるため、『サザエさん』作中のキャラはほとんど登場していない。
なお、原作がアニメよりも毒が多いことを示す例として「原作版では磯野家はヒロポンを常用しているからいつも幸せそうにしている」というネタが語られることがあるが、これは誤認である。ヒロポン描写があるのは長谷川町子の別作品である『似たもの一家』であり、つまり犯人は伊佐坂家の皆さまである。ちなみに名誉のために補足しておくと、そのネタが初掲載された時点では合法薬物であった。
新聞漫画ゆえに時事ネタは上記のように当たり前だったが、なんと原作・アニメ共に磯野家の面々は東京オリンピックをサザエさん時空により年を取らずに二度開催した時代を経験した貴重なキャラクターとなってしまっている。原作では1964年東京オリンピックが、アニメ版では2020年東京オリンピック(延期により2021年開催)がリアルタイムで行われたのである。
実は原作の磯野家の間取りは明確には定まっていない。4コマ漫画である為背景が必要最低限に簡略化されていたりする為。後述のテレビアニメには無い時代の流れで洋室が登場したりする。
トイレは時代的には比較的早く洋式を採り入れている模様。
テレビアニメ
1969年10月5日よりフジテレビでアニメ版『サザエさん』の放送が始まる。当初は『トムとジェリー』のようなドタバタコメディ劇だったが視聴者からの苦情が相次ぎ、ほどなくして過激なドタバタ調は影を潜め、1975年ごろから現在のようなほのぼのホームドラマに落ち着いた。
因みににAmazonプライム及びFODで第一話から配信されているが、暴力や罵声が当たり前のように飛び交うのはともかく、現在では少なくとも地上波では放送できない表現(き〇がいなどの放送禁止用語、精神病院が当たり前のように登場してしかも茶化した表現でありそこで登場したナチス式敬礼などなど)が多い。かつてその中の「75点の天才」はリバイバル放送された事があるが、これでも一部セリフの無音化を施してギリギリレベル。原作者である長谷川町子がアニメ化に否定的だったのはおそらくこの頃のもの。また、こうなった原因の一端は当初のアニメ版の脚本にあると思われる。
なお、第1回放送の内容がドタバタすぎる事は当時制作に関与していた宣弘社が第1回放送以降その路線を作画に抑えるよう要望させて徐々に現在のような作風に路線変更をしたという。
他にも今では考えられないワカメが生意気な事をした為に庭の木に吊るされる体罰のシーンや波平がやたらノイローゼ気質である事とかなり現在と違う設定が見受けられる。
一応原作の四コマの内容をベースに別冊サザエさんのショートストーリー形式に近い構成であるのが特徴。その為、四コマ版のネタが一話に複数組み合わさっている事が多い。
またエンディングのスタッフロールでは四コマでのエピソードをアニメ化している。
実は長谷川がテレビアニメに関していくつか注文を付けていたらしく「流行のファッションは扱わない」「ブラックユーモアは扱わない」「放送時間帯に配慮」「原作を必ず使う」等があったとされる。この要望は宣弘社も同じ意見だったとのこと
(ちなみに原作版では磯野家は流行のファッションを楽しむことはあるし、作風はブラックユーモアに根ざしたものも多いのだが、なぜ長谷川がこういう注文をしたのかは今となっては不明である)。
2019年にはアニメ放送50年を迎えたが、磯野一家とその周囲のライフスタイルはこの50年で大きく変化していない。
原作漫画では磯野家は年こそ取らなかったが、新しい情報に敏感でミーハー気質であり、すぐにテレビ(初期はラジオや新聞)の時事ニュースに流され流行りモノに乗っかって最先端を気取りたがっていた。特に家電類はすぐに購入して使いこなしていることがわかる。漫画と比べると、アニメの磯野家のライフスタイルは真逆である。
…が、アニメ版も実はお風呂を一度改築している。最初は原作で見られた木桶の風呂(鉄砲風呂)から現在のタイル張りの風呂に変わっている。また、ある一定の時期では家電も微妙に変化している。例えば現在でももはやレトロな家具調テレビが茶の間にあるが、放送開始初期あたりでは4つの脚があるテレビ(白黒テレビに多い)だった。
ところで注意しなくてはいけないことが一つある。アニメのサザエさんは、放映されているリアルタイムな時代を舞台にしている、ということである。
「アニメのサザエさんの舞台は昭和」と思い込んでいる人が多いのだが、それは間違い。磯野一家とその周囲が、昭和の匂いをたまたま残したライフスタイルを送り続けている、というだけの設定なのである。これはアニメ製作陣が口を酸っぱくしていっている事実である。先述の制作側への注文が今日に至るアニメ・サザエさんの作風の基本的な方針となっている。また、基本的に原作のエピソードを使っているのは長谷川が生前「歌舞伎の演目」に例えており、「歌舞伎は同じ演目で繰り返し現在でも上演されているから原作を繰り返し使うのは問題ない」としている。
「アニメの時代設定は昭和ではなく現代である」ということを示すわかりやすい例では、近年の作中で東京を舞台にする場合、東京タワーではなく東京スカイツリーがちゃんと映ったりする。他にもデジカメ・ノートパソコン・携帯電話が作中のネタにごくたまに登場する。
ただ、放送から20年が過ぎて平成になったあたりから、現実の風景とサザエさんの世界でのそれの齟齬がさすがに看過できないほど目立ち始めた。
劇中でも、
- ダイヤル式の黒電話が現役(携帯電話は登場済。なお、黒電話は使えなくなったわけではない。21世紀の今も現役で黒電話を使っている人は存在している。なお、原作では福岡時代から電話があるが、舞台を東京に移した時は電話導入が何故か遅れていた。
- 波平達が通勤で乗る電車がいまだに103系(厳密には外観は1500番台に近いが正面非貫通で旧型国電の様な前パン車だったりドア数が4つと3つが混じっている上走行音は何と吊り掛けである。実車の103系は首都圏では2006年に完全引退している。だが何故か新幹線や旅行先の地域の電車、気動車はそれなりに新しい車両に変わっていたりするが、それでも近場の大きな駅ではやはり583系や485系等の特急が発着している(但しこれらの形式はまだ全滅していない)。なお、火曜版OPでは当時山手線の主力だった205系が描かれたこともある)
- ほっかむりを冠って風呂敷を抱える泥棒がいる
- 家の近くの道路が舗装されていない
- 学校などで未だに体罰が行われている
- サザエを筆頭とする女子キャラクターが女性語を常用(だが、原作およびアニメ初期はそうでもなく、女子キャラクターの蓮っ葉な口調が目立つ)。
- 上下関係が現在よりも明らかに厳しい
- デパートなどでのお出かけは正装
- カツオをはじめとした小学生以下の男の子の登場人物が太股が露出する短い半ズボン
- 登場するバスが明らかにノンステップバスではなくモノコックバスである
- 家はおろか職場にもパソコンが無い(磯野一家などのレギュラーキャラクターが使っていないだけで、ゲストキャラクターが使うシーンは割とある)
……など大変な時代遅れであり、もはやそのツッコミ自体がお約束となっている。
ただ、ここまで現実との齟齬が大きくなると舞台は昭和と思い込んでしまうことは責められないのかも知れない。
一説には、家電メーカーの東芝が長らく1社スポンサーとして提供していたため、東芝が作っていない電化製品は取り入れないという暗黙の了解があったらしい。つまり作中に電化製品をできる限り出さないようにしていたら、アニメ版の作風が固まった1970年代中頃から現実世界の風景との「ズレ」が目立ちはじめ、平成に入る頃には完全な時代錯誤になってしまったというわけである。
ただし、初代OPでは逆説的な東芝への配慮が見られる。
まず「お魚くわえたドラ猫 追っかけて~」のくだりで想像されるサザエさんが振り回しているものは、リアルタイムで見ていた世代でさえホウキか包丁だと思いこんでいるが、実は掃除機であった(しかも90年代の小型軽量化ブーム以前のバカでかいキャニスター型)。
また、OPのアウトロでは長らくそのまま東芝の提供通告になっていたが、初代では東芝のロゴは白をバックにクリーム色の文字という、色目立ちしないものだった。しかし、これは要するにカラーテレビだと見やすいということを意識した配色なのである。
放送開始当時、フジテレビはまだ同年3月に新作映像を完全カラー化したばかりで、当然再放送などモノクロ放送も多く組み込まれていたため、初代OP後の提供通告は「カラーでお送りいたします」とサザエ(加藤みどり)による告知も加えられていた(71年辺りからサザエとタラちゃんによる告知になったが、複数社提供への変更と共にサザエのみに戻った)。
ちなみに、1979年3月までのOPでは筆記体の「 Toshiba 」ロゴが漢字ロゴと併用して使われており、同年4月から現行ロゴ(書体変更直後の頃は現行ロゴとその下に「明日をつくる技術の東芝」のキャッチコピーというパターンだったが、キャッチコピーが「エネルギーとエレクトロニクスの東芝」に変更された1982年ぐらいからTOSHIBAロゴのみとなった)となった(ただし87年頃、並びに96年8月25日放送分ではサンセリフ体らしき書体でローマ字表記の「SAZAESAN」が使われていた)。
ED後の提供読みは長らくフジテレビのアナウンサーが担当していたが(73年9月30日放送分の時点では放送当時入社8年目だったフジテレビの野間脩平アナウンサー、83年頃は女性アナウンサーによる告知だった)、こちらもサザエによるアナウンスに変更されている(99年3月27日放送分までの一社単独提供時代はサザエとタラちゃんが担当)。ED後の提供クレジットは「エネルギーとエレクトロニクスの東芝」時代初期までは基本OPと変わっていなかった(「エネルギーとエレクトロニクスの東芝」時代途中から「E&Eの東芝」に省略・変更され、告知も上述の通りサザエとタラちゃんに変更された)。1999年4月4日放送分より複数社提供になってからは背景がOPと異なっているものの、クレジットに変わりはない。
現在ではそういうスポンサーへの配慮はほぼなくなっているはずだが、「昭和のノスタルジックな雰囲気」が定着し、作風が固定化されてしまった。2007年3月18日の放送で荒川静香が作中のスケート選手として、2023年10月1日の放送でバレー男子日本代表である石川祐希と西田有志と高橋藍の3名が、それぞれ実名(本人役)で登場したり、2016年10月9日放送のエピソードではデジカメが出てきたり、2018年11月25日の放送ではマスオの勤務先の人間がノートパソコンを使用するシーンや、東芝がスポンサー撤退後は新規スポンサーの商品をサザエ一家が紹介するCMが流れたり、OPアニメでサザエが作中では見せることの無い今風の衣装を着用した姿をたまに披露し2022年4月以降のOPアニメではハーフパンツの男子小学生が多数出てくるようになったり、2023年12月に大型テレビ、2024年にはマタニティマークが出るなど、「リアルタイムの現実」を強く感じさせるシーンがあるエピソードが放映されると、舞台が昭和だと誤解している多くの人たちから「時代考証が間違っている」とツッコまれてしまい、ネットニュースやまとめサイトにも取り上げられるくらいに大きな話題となったりする。
だが重ねていうが、現在のアニメ版のサザエさんは「昭和っぽい令和」が舞台であって昭和ではないのだ。(信じがたいことだが一部の情報サイトでもサザエさんの自体設定が昭和固定ではなく現代なのだと認識していない所もある。)
東芝が長年メインスポンサーを務めており、上述にもある通り1999年3月までは1社単独提供だった。その後複数スポンサーとなり(87年10月4日放送分から試験的に実質的な複数社提供を行っていた)、近年の業績不振や2015年の歴代社長3人による粉飾決算が発覚した事をきっかけに2018年3月25日放送分を最後に降板した。以降は日産自動車がメインスポンサーとなっているが、やはり、サザエさん=東芝のイメージが強く残っているため、提供クレジットではメインスポンサーの日産も単独では紹介されず、その他のスポンサーとまとめて紹介されている。
アニメイション製作がセル画からデジタル彩色に移行する中でも、昭和の雰囲気を残すため長らくセルに拘り続けたテレビアニメ作品であったが、2013年9月29日放送分を最後に、セルの使用を取りやめて完全デジタル化した(2005年10月にハイビジョン化してから部分的にデジタル制作を行っていた)。実はそのちょっと前の時期から「最近のサザエさんは絵が汚くなった」という苦情が殺到していたらしい。その時期というのは地上波アナログ放送の完全停止が騒がれていた時期。この時期に多くの家庭がフルHD以上の解像度の大型テレビに買い換えたのだが、あまりにはっきりと映像が映るようになったことで、多くの視聴者が今まで温かみを感じていた手塗りの荒さを、汚いと感じてしまうようになったのだ。
ただ、HD・ビデオ撮影の弊害であると言うならば、従来通りSD・ムービーフィルム撮影で制作した後アップスキャンして放送するという手もあったはずだが、当時はまだ東芝がメインスポンサーだったため難しかったのだろう。
サザエさんが完全デジタル化に移行したことで、日本製のテレビアニメからセルを使用したものは消滅した。
また長寿アニメの宿命なのか、近年は磯野家を筆頭とする主要キャラクターを演じるキャストの交代が顕著になってきており、2023年2月にタラオ役の貴家堂子が逝去し放送開始時から出演し続けているのは、サザエ役の加藤みどりのみとなった。
日曜日の夕方の代名詞というだけあって、昔から「サザエさんを見終わると、明日からまた学校・仕事へ行かなければならないという現実に直面して憂鬱になる」と言われている。これはサザエさん症候群とも言われており、2chではこれをネタにした、俗にいう「月曜日」のAAが数多くつくられている。
次回予告
番組の終わりにサザエがジャンケンをするのが恒例となっているが、これは1991年10月20日放送分から開始された。それ以前は、サザエがピーナッツなどを投げ食いして「ん、がっくっく」と喉に詰まらす仕草をするというものだったが、実際にこれをマネた子供が喉に食べ物を詰まらせて窒息死するという事故が発生したことで、現在のジャンケンに差し替えられた。というのはデマであり、実際には上述のようなマネをして事故にならないように切り替えた(要するに良い子はマネしないでねと言わせておきながら変えたことになる)。なおかつて発行された「磯野家の謎」(東京サザエさん学会著、絶版)という本によれば、スタッフが「あのシーンももう長いから」という理由も付け加えて変えたらしい。
参考フジテレビ日曜夕方6時台アニメ一覧
なお、フジテレビ日曜夕方アニメでサザエさんと同時に1969年に放送開始したのはなんとあの懐かしアニメとして有名な「ハクション大魔王」と「ムーミン(1969年版)」である。
更に、現在前座番組として定着している『ちびまる子ちゃん』の設定年代(1974年)において既に放送中である。
サザエさんがどれだけ長く続いているかおわかりであろうか?
ちなみにサザエ役の加藤とタラちゃん役の貴家はハクション大魔王でも声の出演をしていた為、日曜夕方6時台のフジのアニメでは既に50年以上務めている事にもなる。
再放送サザエさん
1975年4月から毎週火曜日夜7時から『まんが名作劇場 サザエさん』の題名で再放送され、ローカルセールス枠にも拘らずほとんどのフジテレビ系列局で再放送され、系列外の番宣ネットのサザエさんは当初はこちらの方だった。
また、必ずしも放送順に再放送されていた訳では無く、放送話は適宜シャッフルされており、名探偵ホームズや藤子アニメ等の並み居る裏番組を全て蹴散らす程の優良コンテンツであった。
なお、当初長谷川は日曜日だけで充分と意見を述べていたらしく、フジテレビ側が熱心に説得した事で再放送枠ができたものである。
しかし、1994年以降プロ野球中継の増加や火曜ワイドスペシャルの拡大放送に伴い十分に放送されなくなり、1996年春に関西テレビが一足先にネットを打ち切り、末期はマトモに放送されなくなり、1997年11月に突然再放送が打ち切りとなった。
「長谷川町子美術館との契約切れ」と公式発表されているが、実はアニメ版サザエさんの原作使用料は当初エイケンが支払っていたが、再放送版でも支払う必要になったためフジテレビ側が二重に支払う事になったのも原因のひとつだとされる。
また、宣弘社が広告代理店としてクレジットされていたが、1985年に長谷川側と何かしらの不和があった事等制作から撤退した為、広告代理店業務は電通に替わっている(宣弘社曰く電通に広告代理店業務を取られたらしい)。
ちなみに原作者・長谷川町子氏の訃報の公表はこの再放送のエンディング後に行われたのが最初である。
キャラクター
昭和の人々は(現在の感覚では)老けるのが早かった(逆に昭和の感覚から言えば平成・令和の人々は社会事情や食育知識の普及、なにより昭和時代には存在しなかったアンチエイジング技術の登場もあるため老けるのが遅すぎる)らしく、サザエ・フネ・波平は設定年齢より遥かに年上に見える(波平とフネは50代前半、サザエは20代前半である)。そのためもあって、カツオやワカメは波平とフネの実孫、マスオとサザエの実子、タラオの実兄姉と、キャラクター設定を全く知らない見始めたばかりのビギナーには間違えやすいし、実際に誤解する。連載が始まった昭和当時の人々が現在からみて老化が早く見えるのは当時の環境や栄養状態などが現在のそれと大きく異なっている事も影響している。
原作とテレビアニメでは、キャラクターデザインがかなり違い、上述の通りキャラクターの性格付けも大きく異なっている。詳しくはサザエさんの登場人物一覧を参照。
音楽
- オープニングテーマ
「サザエさん」作詞:林春生 作曲 編曲:筒美京平 歌:宇野ゆう子
皆さんお馴染みのあの曲。日本人ならほとんどの方が歌える曲であろう。オープニングの中で、サザエさんが気球に乗って日本全国を旅しているのが定番となっている(日本全国を旅行するようになったのは1974年から。映像は3か月毎に変更されている)。アニメ放送時に流れているのは1番と3番である(初代OPでは1番のみ、1970~1971年頃は2番フルと4番メロ部分だった)。
「サザエさんのうた」作詞:保富康午 作曲・編曲:渡辺宙明 歌:堀江美都子、サニー・シンガーズ、コロムビアゆりかご会
火曜日版で流れていた曲。当時火曜日版を観ていた人にとっては懐かしい思い出である。ちなみに、火曜版のOPはこれ以外にもある。
- エンディングテーマ
「サザエさん一家」作詞:林春生 作曲・編曲:筒美京平 歌:宇野ゆう子
原作の4コママンガを再現したような映像が使用されている。最後の場面でサザエさん一家が小さな家に駆け込む映像もお馴染みとなっている(初期の頃は煙突が無かったが、途中で追加された。また、ラストの家に駆け込むシーンは放送開始当初は現在より長かった)。
アニメ放送時には2番前半と3番後半が使用されている。1番ではなく2番と3番が使用されているのは、磯野家が平屋であるにもかかわらず1番の歌い出しが「二階の窓を 開けたらね」となっているためである(これは、歌詞の内容がアニメでの設定ではなく、原作での設定に基づいていたため。なお、電電公社のCMでは2階建てになっている)。
なお、トリビアの泉にて、アメリカの音楽グループである1910フルーツガム・カンパニーの曲「バブルガムワールド」が「サザエさん一家」と似ていることが取り上げられた事から、特にイントロ部のモデルになったのでは?という指摘もあるが、実際のところはどうなのかは不明。
- BGM
『マッハGoGoGo』主題歌や楯の会のテーマソング(!?)などを作曲した越部信義によるもの。こちらも聴いただけで場面が思い浮かぶぐらい有名である。
余談
最終回の都市伝説と事実
長期掲載漫画作品かつ長寿アニメである事から、最終回にまつわる都市伝説が複数語られていたが、結論から言うとサザエさんは一度は正式な最終回を迎えた事がある。
これは長谷川が福岡時代に新聞掲載していた頃のサザエさんで迎えたもので、福岡時代の最終回はサザエの結婚で締めくくったものである。ちなみにマスオは福岡時代では本当にチョイ役として初登場していたのだが執筆再開の時は長谷川はマスオの顔をすっかり忘れていた。
オチであるコマではサザエとカツオとワカメが連載終了の挨拶の言葉で締め括った。
そして東京にて執筆再開したサザエさんは後に作者都合による打ち切りで原作は終了した。
打ち切りの時の回は、最終回らしい締めくくりではなくいつも通りの話だったとの事。新聞掲載版と単行本掲載版では最後にあたる四コマの内容の違いがある。
福岡時代の最終回は単行本収録されなかった事や、単行本(姉妹社版)も長らく絶版扱いになっていた事もあって事実確認が困難に近かった事もあるらしい。
この事は90年代に東京サザエさん学会が調査した「磯野家の謎」(後述)で明確になった。
これと似たケースなのがあの『ドラえもん』である。
また、アニメ版はフジテレビの火曜日に放送していた再放送版である『まんが劇場 サザエさん』が改編期で終了している。
なお、都市伝説として語られている最終回の一つに「磯野家の面々が海外旅行で乗った飛行機が海に墜落し、それぞれ名前の元となったものに変わる」というものがあるが、これと非常に似た話が姉妹社版サザエさん68巻(最終巻)に収録されていたショートストーリー「ひょうりゅう記」として存在した。
大まかに説明すると、海で客船(?)沈没から脱出した波平・サザエ・カツオ・ワカメがどこかの南の島に漂着した。4人はその島でサバイバル生活を始め、ヒョウを手製の檻に捕獲しようとしたが失敗して逆にその檻に避難する始末。今度は波平が弓矢を作り狩りに出かけるが、なんと人喰い人種達に見つかってしまい捕まってしまうも、サザエの機転で友好的になり貰ったボートで島を離れた・・・が、実は貸ボートの上でサザエが見ていた夢オチだった。
ここで都市伝説の方に話題を戻すと、都市伝説でも波平・サザエ・カツオ・ワカメの名前は出てくるのにフネ・マスオ・タラちゃんが何故か出てこないところから、この最終回として語られているのはこの「ひょうりゅう記」が元ではないのかと推測される。
ちなみにこの「ひょうりゅう記」は姉妹社版68巻(最終巻)の初版にのみ収録されていたもので、珍しく収録作品としては別冊サザエさんと同じショートストーリーであった(※1)。その後の重版で削除されており、朝日新聞出版が復刻したシリーズ長谷川町子全集のいずれにも収録されていない。おそらくは現地民の描写が「黒人の人喰い人種」として描かれた事によるいわゆる黒人タブーに引っかった事からだと思われる。
2010年にこれに描かれていなかったフネ・マスオ・タラちゃんも追加し問題の現地民を原始人っぽい外観や磯野家の面々が捕まったのが無断侵入に怒った事にするなど大幅に設定変更したアレンジ回がアニメで放送されている。
長らく封印作品となっていたが、2021年に朝日新聞出版による姉妹社版サザエさん(全68巻)の復刻版でそのまま復刻されている(※2)。
単行本でも未収録となった作品が多数存在しており、新聞掲載当時でないとわからないネタやオチがイマイチ分かりづらいとされるもの、ポリコレ規制等の理由での未収録となった回は多い。後に「おたからサザエさん」で未収録作品のいくつかが収録されているが、中には原稿が現存していないもの(該当するものは新聞掲載時のものを引き伸ばしている為画質が荒い)や、単行本に収録する目的でコマを差し替えた或いは描き直したとされるも結局は収録されなかったものも含まれる。
ちなみに第1巻の第1話はフネによる挨拶から始まるものだが、初版(B5)と2巻以降の改訂版(B6)では内容は同じであるものの、B6に改訂した版では絵柄が異なる。
※1…68巻で収録されたサザエさんの作品でも最後になる。
※2…同じく68巻には「ひょうりゅう記」の次に「町子かぶき迷作集」も収録されており、こちらは残っているが、後年の朝日新聞出版の文庫版とでは収録された話の数が少し違う。
- 都市伝説最終回の再現動画
※動画ではサザエさん一家全員が登場している
磯野家の謎の是非
いわゆる「謎本ブーム」を巻き起こした東京サザエさん学会が発表した考察本(研究本)「磯野家の謎」で埋もれていたエピソードの発見と解説があった一方、公式ではない一研究者の考察が誤解を招きかねない一面も持っており一時期謎本著作者同士で論戦が起きた事がある。
非公式ゆえにこれを根拠として持ち出すのは実は割と間違いの元になるので注意。特に続編「磯野家の謎 おかわり」は信ぴょう性の薄い性質が強い。磯野家の謎シリーズはその後も出ているが、もはや原作考察からかけ離れてしまっている。
きれいなサザエさん
日清食品カップヌードルの2018年テレビコマーシャル『HUNGRY DAYS』シリーズにて、まさかの青春アニメ版サザエさんが制作・放送され、視聴者の度肝を抜いた。
キャラクターデザインは漫画家の窪之内英策。
詳しくはアオハルかよを参照。
全登場人物が高学歴というデマ
稀にX(旧Twitter)の投稿で、サザエさんの登場人物がみな高学歴だとする投稿がなされる。
その際の書き込みは、
- 波平:京都大学
- フネ:日本女子大学
- マスオ:早稲田大学
- サザエ:川村女子短大中退
- サブちゃん:一橋大学→サントリー→三河屋
- アナゴ:京都大学
- ノリスケ:東京大学文科一類(法学部)
- タイコ:立教大学経済学部
というもの。
しかしながら、これは2005年6月頃の2ちゃんねるへの書き込みに起因したもので、これへ更に改変が為されて、上述のようなデマに発展していったようである。
ネタとして見ればハッキリ言って”寒い”。が、ただ残念ながら現在も事実然として投稿されているのが現状である。
関連イラスト
なおpixiv内ではネタイラストがほとんどを占めており、作品を純粋に描いたものは極めて少ない。
関連タグ
4コマ漫画 日常系 ホームドラマ コメディ ブラックジョーク
サザエさん症候群 サザエさん時空 日曜ジャンケン戦争 サザエさんコラボ
ドラえもん:こちらも人気の長寿アニメで、同作には本作の声優が多く出演し、共演している。