曖昧さ回避
- 日本の電話事業が国営だった時期に、逓信省・郵政省・電気通信省・電電公社が提供した制式電話機のうち、3号電話機・4号電話機・600形電話機・601形電話機のこと。狭義にはその卓上型、かつ自動式または共電式の物を指す。本稿で解説
- もしかしなくても→金正恩(覇気ヘア)
概要
当初、電話は国による専売事業(逓信省→電気通信省→(郵政省傘下)電信電話公社)だったため、国によって制式化された電話機だけが使用可能だった。
これは、「国営事業だから」という単純な理由ではなく、電話の回線そのものの性能や電話局の交換設備などの設備環境面の理由から性能の均一化を図る必要性があったためである。
日本で電話機が普及し始めた頃、(当時としては)高性能普及型電話機として、アメリカのAT&T社のデザインを真似て設計・採用された「3号自動式電話機」「3号共電式電話機」が以降、制式電話機の雛形になった。これの外装が黒だったため、一般に家庭用制式電話機が「黒電話」と呼ばれるようになった。(もっとも、今の基準で言ったら真似たというよりも、パクリと捉えられるかもしれない。当時の日本は、現在よりも商標権に関する意識が低かったのでこれは仕方がない)
その後、下膨れの4号電話機をはさんでシェイプアップしたような600形、601形で単機能電話機としての完成を見る。
家庭用のダイヤル電話機は4号電話機から8色のカラーバリエーションが展開された。
しかしながら、最も現存数が多いものは黒色である。
しかし1985年、電気通信事業の民営化が行われると、端末自由化によって電話機は末端ユーザーの財産であることが前提へと180度変わり、「電話加入時に送ってもらうもの」から「家電店で購入するもの」になった。
その結果、電話機は煩雑なダイヤル式から(制式化電話でもすでに存在した)プッシュホン式が定石になり、留守番電話・コードレスホン・ファックスなどが一体化した多機能電話機が一般化していく。
一方で、従来は電電公社(後にNTT)が「所有していた」電話機は、加入者に数百円という安価で「販売」されて所有権が加入者に移ることとなった。
黒電話として有名な機体のうち、3号はちょうど戦時期をはさんでいるため、制式化相当とされたメーカーの私物電話機が送り込まれていたり、木製だったり、敗戦後の復興期にアメリカから送ってもらったものがあったりする。アメリカから送ってもらったものとはつまり3号のモチーフのAT&T用電話機に日本のダイヤルを取り付けたものということになる。
最も普及した600形とそのマイナーチェンジ版の601形は形こそほぼ同じものの、呼び鈴の音は明らかに違う音になっている(呼び鈴部の機構は600形(まで)がお椀形の鋳物ベル、601形はドアチャイム同様の鳴動板形ベルになっている)。
なお黒電話は使えなくなるということはない。「黒電話が使えなくなる」と言ってくる悪質な詐欺行為も存在するので要注意。通話機能さえあればいいのなら黒電話でも問題ない。ただし新規レンタル契約は打ち切られているので欲しければネットオークションなど中古機を探すか、継続レンタルされている電話機を見つけて譲ってもらうしかない。
現在の電話機は携帯電話に普及に伴って通話の機能を軽視しているものが多い(自身の送話器の音が受話器に流れ込む側音防止機能が弱いことが多い)ので、通話をメインに考えているなら黒電話のほうが高性能なことも。
国内に流通しているIP電話端末のほとんどがダイヤルパルスにも対応しているので、黒電話があるのならIP電話機として活用すると快適かもしれない。
ただし、現在の住宅環境の場合電話機の接続はモジュラージャックを想定されているので黒電話はそのままでは繋げない(端子が異なる為)。その場合はモジュラージャックのコンセントを外して電話線に繋くか変換するものを経由しないといけない。
時既に21世紀であるわけだが、このダイヤル式電話機の使い方を知らない世代も多くなっている。
最近では、操作が単純で簡単なこと、耐久性が高く頑丈なこと、災害時においても使えることなどから、その価値が見直されつつある。東日本大震災後の計画停電において黒電話が活躍したことも話題になった(電話線から供給される電力を利用しているため、災害時の停電下でも問題なく機能する)。逆に、現在の携帯やスマホなどは災害時の停電に弱いとされている。
いざというときに役立つ辺り、アナログの底力を見せたと言える。
利便性以外にも、その独特なレトロデザイン、強く印象に残るベルの音に魅せられる人も少なくなく、「昭和のレトロアイテム」としての人気も根付き始めている。
なお、近年では公共の施設などにおける電話のロゴマークとして、黒電話がモチーフとなることが多い。