「私は……バンド、楽しいって思ったこと一度もない」
「祥が…壊れそうだから」
CV:渡瀬結月
概要
アニメ『BanG Dream!』の派生作品『It's MyGO!!!!!』及び『Ave Mujica』の登場人物。
月ノ森女子学園に通う高校一年生で、園芸部に所属。1月14日生まれ。身長153㎝。
豊川祥子とは幼馴染で、彼女を「祥(さき)」と呼んでいる。
両親共に芸能人(父親が大御所お笑い芸人の若葉隆文、母親が演技派女優の森みなみ)という珍しい経歴を持つ。
また、テレビに出演したことがあり有名人の娘として世間的に知られている模様。だが、睦自身は芸能人の娘として注目を浴びることを望んでいない。
なお、母親を「みなみちゃん」、父親を「たあくん」と呼んでおり、現実でも芸能人一家が取り入れている所謂「友達親子」のような呼び方を睦にさせている。
基本的に無口で、無表情。感情は余り表には出さないが、本当は誰よりも思いやり深い優しい性格。
口下手な彼女なりに他人を気遣おうとしているが、自分が喋ると何か悪い結果になる事を自覚して黙っていることも多い。
バンドユニット「CRYCHIC」の元メンバーでギターを担当していた。ギターは幼少期から嗜んでおり、睦本人は自信なさげではあるがその演奏技術は一流。
CRYCHIC解散後はバンド活動は行わず、当時同じメンバーだった幼馴染の祥子と行動を共にすることが多い。
なお、同じ高校に通っていた燈すら知らなかったCRYCHIC解散後の祥子の転校先を彼女から唯一知らせていたが、同時に口止めもされていた。
アニメ『MyGO!!!!!』において
祥子の幼馴染であることから彼女の行方を探ろうとする長崎そよから接触を受けており、その件で祥子と幾度か相談を行った末に第8話にてCRYCHIC復活を訴えるそよを祥子と共に拒絶。
その後、アニメ第12話では自分で丹精込めて育てたキュウリ(それも、色ツヤや形が美しく、売り物になるレベルの立派なもの)を紙袋に詰めて、「MyGO!!!!!」の楽屋に差し入れをした。
この差し入れは第8話で祥子と共にCRYCHIC復活の可能性に縋り付くそよを拒絶した彼女なりの謝罪の気持ち、あるいは解散後も内心気にかけていた元CRYCHICメンバーらへの「共にバンドをすることは出来ずとも、活動を応援している」という友情のエールだったのだろうが、MyGO!!!!!として「迷子でも進む」ことを決めたそよにとって、既に「振り切った過去」となった睦の厚意が届くことは無く、「これ、いらないから!」と突き返されてしまった。
その後、祥子の誘いに応じて新バンド「Ave Mujica」のギター担当「モーティス」として加入を承諾。
その際に「祥が壊れそうだから」と口にしており、祥子を案じて支えるためにそばにいることを選んだ模様。
アニメ『Ave Mujica』において
第1話では祥子の過去が明かされると同時に、母親の死を乗り越えられない祥子にずっと寄り添い続ける、月ノ森音楽祭で一緒に見たMorfonicaのライブに感銘を受けた祥子にその場で一緒にバンドを組むことを誘われる、父との困窮生活を決めた祥子に月ノ森から転校することを告げられ、そのこと口止めされると言った、「祥子が睦にしか知らせてない『陰の部分』」が描写される。
第2話では、武道館ライブで祐天寺にゃむの策略によりメンバー全員の素顔が公開されたことにより、「有名人の子供」として見られることを厭う睦は一際憔悴。素性が判明したことで仕事先が睦を指定にしたオファーを入れたことや、初華のアイドル活動両立の埋め合わせのために睦に単独仕事を多く割り振られたことに加えて、自身がギターに没頭できる自宅のスタジオを母親がバンドの練習場所として解放したことで、体力的・精神的に疲弊していき、インタビュー中に朦朧としながら祥子が言った「長くは続かない」という言葉を発してしまい、Ave Mujica解散疑惑の話題が広がってしまう。
それでも祥子を支えるために「有名人の子供」として注目される激務をこなし続けたために幻覚を見るほど体調が悪化していき、全国ツアー初日にギターを弾き間違えたことが引き金となってステージ上で崩れ落ちてしまう。
その場は祥子がアドリブで機転を利かせたことにより観客側には演出として受け入れられ、ステージを成功させるが、そのことが評判を呼んだことでテレビやライブでも同様のパフォーマンスを求める依頼が殺到するようになり、睦は更に苦境に立たされる。
睦の過去と悔恨
睦は昔から芸人と女優の娘として見られてきたが、「若葉睦」として見られたことは殆どない。皆から期待されるのは「芸人若葉と女優・森みなみの娘」であることだけで、睦自身は何も持っていなかった。そのうち彼女は喋ることが苦手になってしまったものの、ギターと出会ったことで音で自分を表現するようになる。
しかしCRYCHIC結成後、他のメンバーの歌唱や演奏・音色に羨望する一方、自らのギター演奏の表現を見失った睦は、「自分にギターを上手く歌わせる才能は無い」と思い込んでしまう。
これこそCRYCHIC解散となった決定的な一言「私は……バンド、楽しいって思ったこと一度もない」の真相である。
自分の言葉でCRYCHICを崩壊させたこと、そして、ただひとり祥子の後を追いかけて、雨の中号泣する祥子の姿を見つけたにもかかわらず、彼女に傘を挿すことも渡すこともできなかったことで、睦の心に絶望感と深い傷を残すことになった。
絶望と「モーティス」
「客に求められている演目を優先する」にゃむと「睦の精神状態とバンドの方針が狂ってしまうことを危惧する」祥子の衝突は日を追う毎に激化。
そのことで、夜中にひとり思い悩む睦の前に人形のようなモーティスが現れ、彼女を慰める。
自分の言動と周囲からの反応のギャップに苦しむ中、何時しか睦の中にはイマジナリーフレンドのような存在が生まれる。それはモーティス人形をはじめとする可愛らしい人形たちだった。
中でもモーティスだけは、睦に対して甘い言葉を囁きかける存在であった。
後日、ムジカの打ち合わせの際に祥子と対立するにゃむから「祥子こそ睦にとっての足枷であり、このままだと二人とも破滅してしまう」と揺さぶりをかけられたことを契機として、朦朧とする中に現れたモーティスから「私、祥子ちゃん、嫌い!」と言われて睦はショックを受ける。
そして、仙台ライブにおいて祥子が睦にパフォーマンスをさせないという選択をしたことで、祥子は観客の期待に応えられなかったとにゃむから激しく非難され、海鈴も祥子に辛辣な批判をしたことからバンド内の空気が更に悪化。睦も精神的に追い詰められていく。
そして帰り道に口論で追い詰められた祥子はとうとう「どうして味方になってくれないの!?」「ムジカしか……わたくしにはもう、この世界しかないのに……!」と面と向かって睦を非難してしまう。
今まで祥子を守ることを行動原理の軸としていた睦はその言葉により、自分は祥子を支えるどころか味方にもなれてなかった、そして自分のせいで守りたかった祥子の新しい居場所が壊れてしまうのだと思い絶望する。
生放送のオンエア前もムジカの演出の方向性が定まらず、不和が他の出演者に伝わる程になる。「また自分がすべてを壊してしまう」と思い込み、泣きじゃくる祥子の姿がフラッシュバックして苦悩する睦。
「今まで辛かったね」
「苦しかったよね」
「私だけは、睦ちゃんの味方だよ」
夢想の世界に逃げ込んだ睦の前に現れたのは、祥子に挿せなかった傘をさしのべるモーティスだった。
睦にとっての後悔・罪悪感の象徴とも言える、雨の中で慟哭する祥子に挿せなかったピンク色の傘をモーティスから差し伸べられ、睦は手を伸ばす。
しかし、小さいモーティスの口は大声で笑うように大きく割け、体躯は巨大化。祥子に挿せなかった傘だけを残して、ギターもろとも睦を飲み込んだ。
CMが明けてムジカの出番となったが、彼女は突然饒舌となり寸劇を始める。
「目が覚める度に生き返る。目覚めないのは……永遠の死」
「貴方のために、ゆりかごを編むよ」
「ビロードで仕立てた、棺みたいな子守唄」
アドリブ劇の内容というよりも、明朗にセリフを紡ぐ彼女の異様な光景に、スタッフは勿論のことムジカのメンバーたちも混乱する。
彼女は地面にギターを置く。まるで遺体を置くかのように。
「くるんであげる」
「貴方が、眠りに気付かないほど」
彼女は満面の笑顔を向け、カーテシーをする。そして左目に涙を浮かべる。
「だから、もう大丈夫」
「おやすみなさい、良い夢を」
睦は深い眠りにつき、以降は「モーティス」がAve Mujicaを動かしていく。
しかしギターが弾けないモーティスがAve Mujicaに居ても意味が無く、そのままバンドは解散。その後表舞台から姿を消していたが、睦を起こそうとするも起きてこない事態が発生していた。
余談だが主人格が起きないというのは現実にもあり、主人格が精神的に疲弊していることで起きてくる力が無くなってしまうことがある。
余談
- CRYCHIC解散後の祥子の行方を唯一知らされており彼女とずっと共にいたことや、Ave Mujicaのメンバーになることを応じた際の「祥が…壊れそうだから」という言葉から、現状では祥子の境遇を正確に知るただ一人の人物と描写されており、アニメ『MyGO!!!!!』監督インタビューでは祥子の「陰の部分」について幼馴染の睦以外には知らせていないと述べられている。
- 『メガミマガジン』2023年11月号に掲載された制作陣によるインタビュー記事によると、睦にとって祥子は自分の半身のような幼馴染とされている。Ave Mujicaには祥子に対する罪滅ぼしのような気持ちで参加をしているとのこと。
- ファンの考察により睦は「Ave Mujica」のモーティスとして活動していると推察されており、上記の通りアニメ『MyGO!!!!!』第13話で彼女こそがモーティスと判明した。
- 祥子がCRYCHIC脱退を申し出た際に睦も「私は……バンド、楽しいって思ったこと一度もない」と否定的な言葉を残したが、脚本インタビューによると、睦のこの発言がCRYCHIC解散の決定打になったとのこと。物語上の意味合いとしてはCRYCHIC解散の責任をきっかけとなった祥子だけに背負わせず、睦も祥子と同じ罪を一緒に背負うことになったとされている。
- アニメ終了後に公開されたアプリ版のストーリーでは、初ライブ成功後に他のメンバーと共に笑顔を見せていたり、燈たちが『春日影』を歌った際に「CRYCHICじゃない『春日影』……」と悲しげに呟いたりと、睦自身もCRYCHICに愛着を持っているような描写がされている。
- 『バンドを楽しいと思ったことは一度もない』『それなのにCRYCHICに所属し、CRYCHICに愛着を持っているような描写がある』『祥子と一緒に脱退し、彼女の誘いに応じてAve Mujicaに所属する』と、要約すると、彼女にとってのCRYCHICとは『祥子と一緒にいるための場所』『大切な人(祥子)が大切に思っているから、自分にとっても大切な存在』だったものと受け取れる。
- コミカライズ版『Ave Mujica』では、祥子が睦をバンドに誘ったことを思い出すと同時に睦がその言葉を発した場面も描かれていること、CRYCHICの解散の回想場面でその言葉を発する睦に対して「ごめんなさい」というモノローグが付されていることから、祥子は睦の言葉に対して負い目を抱いていることが窺える。
- 『アニメディア』2025年2月号における睦を演じる渡瀬氏のインタビューにおいて、脱退を申し出る祥子の気持ちを全て理解し、一緒に罪を背負っていく覚悟で言ったという見解を示しており、「バンドを楽しいと思ったことは一度も無い」というのは紛れもない本音ではあるが、その本音をあの場で言ったのは祥子のためだった模様。
- アニメ「Ave Mujica」第2話にて、私服の下はキャミソールを着ていることが分かるシーンがある。
- OPやEDで睦だけ二人いるような描写が多く、「ストレスで別人格が生まれてしまう」展開の伏線となっていた。
- また、ステージネームのモーティスとは「死の湖」を意味する言葉であり、祥子が睦にその名前を与えた理由は明かされていないが、物語上では「若葉睦という人格が眠った=若葉睦の死」という展開と符合した名前となっている。
関連イラスト
関連動画
関連タグ
関連キャラクター
- 桐ヶ谷透子:Morfonicaに所属しており、ギター担当である点が共通。睦から見れば同じ学校の先輩に当たる。
- 竹下みいこ:お隣の作品に登場する、中の人繋がりのキャラ。お嬢様学校出身という繋がりもあるが、性格・テンションは正反対。
- 冨岡義勇:睦を分かりやすく喩えるならこの人。但し睦は相手の反応を見て失言と気付いて謝罪している。