クライアス社は創立以来、世界中の人々の幸福を願ってまいりました。
世に蔓延る明日への希望、そこに永遠はありません。
未来は必ずしも明るいわけではないのです。
我々はこれからも皆さまに本当の幸福を提供できるよう精進してまいります。
(公式サイト「ご挨拶」より)
概要
「HUGっと!プリキュア」に登場する敵対勢力。
はるかな未来に存在する大企業であり、時間の流れを遡って現代世界に社員を送り込んできた。
東映の公式サイトの紹介も個別に「ご挨拶」「社員紹介」「会社概要」等の項目がある一般企業の公式HPらしい作りになっており、本編の展開に応じて更新されていた。
欧文表記では "Criasu Co., Ltd"とあり、株式会社であるらしい。
なお、組織名が明確化されているのは『Go!プリンセスプリキュア』に登場する「ディスダーク」以来。
「ミライクリスタルの獲得と未来の消滅」を経営理念に掲げており、社員達にはその業務を達成するために怪物オシマイダーを使役する権限が与えられている。
彼らが時間を遡って現代世界にやってきた元々の目的は、ホワイトのミライクリスタルを持って現代世界へと逃亡した「未来世界で活動していたとあるプリキュア」の捜索のためだったが、この現代世界でキュアエールをはじめとした新たなプリキュアが生まれたため、「現代世界のプリキュア」が持つミライクリスタルを奪うことも新たな目的になっている。
仕事の成果を上げれば昇進出来る、稟議書を提出してボスとも呼ばれる社長の承認の印鑑を貰ってから社員が出撃するなど、企業としての面が前面に押し出された演出がされている。
第15話ではバイト社員含め有給が存在することが明かされた。
また、「アスパワワ」や「トゲパワワ」を感知測定するセンサーが各社員に支給されていたり、時間を過去へ遡行するタイムトラベルの技術を有しているなど、プリキュアシリーズの敵勢力にしては珍しく科学力が高い。
ルールーも当社の技術力で製造されたアンドロイドであり、第17話でリストルがルールーを「クライアス社の優秀な製品」と呼んでいたことから、相応の製造業務も行っている模様である。
その一方で、書類や口頭による報告を強く推奨している(裏を返せば監視が徹底されておらず、不都合な事象を隠蔽できる)など、内部統制に関しては前時代な側面もある。
作中の登場人物であるハリハム・ハリーとはぐたんは、クライアス社が未来を奪ったその時代に生きていた者達であり、野乃はなが13歳である時代(西暦2018年)に転移してきた逃亡者なのだが、第2話ではながはぐたんの記憶を通して見た夢の中の場面で、ハリーとはぐたんの生きていた時代では4人のプリキュアがクライアス社と戦っていたことが示唆されている。
つまりクライアス社はその地のプリキュア達に勝利したわけであり、その戦力は第10作目に登場した敵対勢力並みに高い事が窺える。更にクライアス社は本編外で退職した元社員や新入社員、社長を含めて構成員は16人で、シリーズ史上最多だったドツクゾーンと並ぶ。(幻影帝国や終わりなき混沌も存在が示唆されている姿を見せてない者を含めたらこれらにも並ぶ)。
なお、公式サイトの作品紹介では「クライアス社という悪い組織がはぐたんの持つミライクリスタルを狙って現れた」という表記がされているが、少なくとも第1話時点でクライアス社がミライクリスタル・ホワイトの所持者として目をつけていたのははぐたんではなく、「第1話より前から存在しているとあるプリキュア」であった。
そこに「新しいプリキュア」としてキュアエールが誕生したことで、クライアス社が狙うミライクリスタル自体が増えたのである。
なお、クライアス社が明確にはぐたんを狙うのは、第40話以降とほぼ最終盤になってからでミライクリスタル・ホワイトに秘められた「マザー」なる存在の力が復活し、その奇跡をはぐたんが行なったことで彼女の正体がバレてしまったことが、クライアス社の行動を激化させるきっかけとなる。
クライアス社の沿革
ここにおける「籍を抹消」とは、「会社概要」のページで該当社員に×印が付けられることを示す。
- XXXX年(本編前)… クライアス社が設立される。
- 2018年初頭(本編前)… 現代のあざばぶ市に支社を設立する。
- 2018年3月11日(第6話)… 係長・チャラリートが度重なる不祥事により地位を剥奪され左遷。それに伴いチャラリートが籍を抹消され、同時に「採用情報」の募集が開始。当時の応募資格欄は「未経験者歓迎、係長経験者優遇」。
- 2018年5月27日(第17話)… アルバイト・ルールーが退職に伴い籍を抹消。同時に「採用情報」に「アルバイトも募集!」の記述が追加された。
- 2018年7月1日(第22話)… 課長・パップルが退職に伴い籍を抹消。同時に「採用情報」の応募資格欄の文が「未経験者歓迎、課長・係長経験者優遇、アルバイトも募集!」に変更された。
- 2018年7月15日(第24話)… 部長・ダイガンが解雇に伴い籍を抹消され、同時にあざばぶ支社の組織改編が行われた。「会社概要」に「2018年7月 あざばぶ支社組織改編。」の記述が追加。
- 2019年1月27日(最終話)… クライアス社解散。それに伴い正式に解散を表明する「プレスリリース」が追加された他、「会社概要」の残りの社員の籍が抹消され、同時に「2019年1月 解散。」の記述が追加。「採用情報」の募集も停止された。
社員一覧
最終回にて、ジョージ・クライを除く元社員たちはいずれも未来の世界へと帰還している。
上層部
ジョージ・クライ(声:森田順平) |
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クライアス社の代表取締役社長。未来や希望を忌み嫌い、野乃はなに執着。第48話でプリキュアに救済された。 |
ドクター・トラウム(声:土師孝也) |
クライアス社の相談役で、ルールー・アムールの製造者。組織改編した第23話から登場。第37話でプリキュアに救済された。 |
リストル(声:三木眞一郎) |
ジョージ・クライの秘書。クライに代わって社内業務をこなす。ハリーの元同胞。第47話でプリキュアに救済された。 |
あざばぶ支社の幹部社員(改編前)
第1話から第23話まで暗躍していたクライアス社の幹部社員たち。
いずれもプリキュアとの関わり合いでクライアス社を去ることになり、本編後半からはパップルが起ち上げた芸能事務所「まえむきあしたエージェンシー(MAA)」に所属している。
ダイガン(声:町田政則) |
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クライアス社の部長。パップルに替わって第23話から行動するが、即座に解雇される。その後はパップルの部下になる。 |
パップル(声:大原さやか) |
クライアス社の課長。チャラリートに替わって第6話から行動。第22話でプリキュアに救済され、その後は芸能事務所を設立。 |
チャラリート(声:落合福嗣) |
クライアス社の係長。最初にプリキュアと敵対する。第11話でプリキュアに救済され、その後はパップルの部下になる。 |
ルールー・アムール(声:田村ゆかり) |
クライアス社のアルバイトで、少女型アンドロイド。ラヴェニール学園に潜入。第17話でキュアエールの説得で改心した。 |
あざばぶ支社の幹部社員(改編後)
ジョージ・クライがクライアス社を組織改編した第23話から登場する新たな幹部社員たち。
ジェロス(声:甲斐田裕子) |
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クライアス社のジェネラルマネージャー。組織改編後の第24話から行動。第45話でプリキュアに救済された。 |
ビシン(声:新井里美) |
クライアス社のカスタマースペシャリスト。組織改編後の第24話から行動。ハリーに執着する。第47話でプリキュアに救済された。 |
ジンジン(声:小島よしお)、タクミ(声:山田ルイ53世) |
ジェロスに仕える2人1組の社員。第31話でプリキュアに救済され、その後はアルバイトとして再始動。 |
新入社員
若宮アンリ(声:染谷俊之) |
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第42話にて、リストルのスカウトを受けて一時期にクライアス社の社員となったアンリ。 |
パリピーノ(声:田中健大) |
ミュージカルショー限定で登場するクライアス社の新入社員。チャラリートの後輩。最終的に改心し、退職する。 |
怪物
下記の他にも、第37話では暴走したドクター・トラウムが生み出したザケンナー、ウザイナー、コワイナー、ナケワメーケ、ソレワターセ、デザートデビル、ハイパーアカンベェ、サイアーク、ゼツボーグが大量のオシマイダーと共に登場した。
オシマイダー(声:吉田ウーロン太) |
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クライアス社が使役する怪物。人間の「トゲパワワ」を物体・生物に憑依させて誕生する。主にチャラリート、パップル、ルールー、ダイガンが召喚・使役する。 |
猛オシマイダー(声:吉田ウーロン太) |
第23話から登場するオシマイダーの強化版。主にリストルや、ドクター・トラウム、ジェロス、ビシンが召喚・使役する。オシマイダーと同じ原理で誕生する。 |
怪物化したあざばぶ支社(声:不明) |
正式名称は不明。ジョージ・クライによって怪物へと変貌したあざばぶ支社。召喚者であるクライの指示で動く。 |
元社員
ハリハム・ハリー(声:野田順子・福島潤) |
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リストルとビシンの元同胞。本編開始時点で既に退職済みだが、ビシンの手により第25話で一時的にクライアス社時代の猛獣に戻された。 |
ブンビー(声:高木渉) |
第36話に登場。元ナイトメアの幹部で、元エターナルの一員。クライアス社からスカウトされたが、待遇の悪さにより逃亡。 |
HATE-900(声:なし) |
漫画版に登場するクライアス社の少年型アンドロイド。「HATE-900」という名は自身の製造番号。 |
未来が奪われた世界
「未来の消滅」を目的にしたクライアス社だが、これは抽象的な意味ではなく言葉通りの意味である。彼らによって未来を奪われた世界は時間が止まり、未来という概念自体が無くなってしまう。
上述している公式サイトの挨拶文からもわかるように、クライアス社はその恐ろしい行為を人類社会への奉仕だと考えている。
第17話でルールーが思い返したところによれば、「時間が止まることで人類は一切の活動をする必要がなくなり、過去の幸せな思い出に永遠に浸り続けられる」ことこそがクライアス社が考える理想の世界のあり方らしい。
そして全てが止まった世界のメンテナンスを心のないアンドロイド達が担うことで、人類は未来への不安に怯えることなく幸福な夢を見続けられるというわけである。
未来を作る力であるアスパワワに干渉することで未来を消し去ることが可能で、そのためにアスパワワの結晶であるミライクリスタルを奪おうとしている。
ハリハム・ハリーがいた未来の世界は実際に時間が止められてしまったが、最後のミライクリスタルである「ホワイト」を持って過去の時代(はな達の時代)に逃げ出した。このことはクライアス社の最終計画を狂わせてしまったらしく、ミライクリスタル・ホワイトを探し出すために彼らもこの時代へとタイムワープしてきた。
またハリーは「はな達が生み出した新しいミライクリスタルがクライアス社の手に落ちてしまえば、この世界(現代世界)でも未来が奪われる」としている。
そして今は力を失っているミライクリスタル・ホワイトにアスパワワの力が戻れば、ハリーがいた未来世界の時は再び動き出すのだという。
第36話ではドクター・トラウムによってプリキュアオールスターズの世界(ジョージ・クライ曰く「プリキュアによって世界が救われアスパワワに満ちた世界」)の一部も時間が停止した。
あざばぶ支社
公式サイトによると、本作に登場している殆どの社員は「あざばぶ支社」の社員とされる。
あざばぶ支社の社屋は現代日本のオフィス街に建てられた高層ビル。屋上に設置された巨大なパラボラアンテナが目を引き、周囲のビル群の中でもっとも高く威容を放っている。
「あざばぶ」の元ネタはおそらく「バブル期の麻布」。はな達が暮らしている街は「はぐくみ市」の「のびのび町」であり、距離的な関係は不明だが、一応劇中の描写から頻繁に車で移動できる程度と推測される。
なお第27話以降プリキュアたちがあざばぶ市にお出かけするシーンが出るようになったため作中で実在する地域だと判明したが、意外にもあざばぶ支社の存在は気付かれておらず話題にも出ない。
クライアス社は遥か未来からタイムトラベルで現代にやってきた存在であるため、社員たちも未来世界の住人である模様。
公式サイトの会社紹介ではあざばぶ支社の設立日が“2018年”(本作の放映開始年)となっている。ミライクリスタル探索のために「この時代」に設立した橋頭堡があざばぶ支社というわけだ。公式サイトによると支社は他にも多数あるようだが、これが「他の場所」なのか「他の時代」なのかは不明。
社屋の内部はなかなかに未来的で、円筒状の水槽のような空間となっている。下の方は暗く青黒いが、水面に当たる上の方は明るいマリンブルーとなっていてそこからうっすらと光が下へと届いている。
社員たちのデスクはこの円筒状の空間の壁から突き出る形で設置されており、役職が上がるほどデスクの位置も高所に置かれる。ただし支社のトップにあたるリストルも、水面に当たる最上部にデスクが届くことはない。最上部は支社の社員が座る場所でなく、本社社長のホログラムが投影される場所なのである。
あざばぶ支社の社員の多くは本社がある未来世界に戻りたがっているが、本社への帰還は成果を上げなければ許されないようで、投入したオシマイダーを浄化される等の不祥事を犯せば始末書を書かなければならないなど、それ相応のペナルティが課せられるようだ。
そしてそのような不祥事が重なった場合は通常業務からは外されて「左遷部屋」なる部署に送られ、許可なく部屋から出ることが許されない一種の監禁状態に置かれる。
実態のほどは不明だが、第11話にて約一ヶ月振りに左遷部屋から引きずり出されたチャラリートは、正気を失った瞳で「暗い…怖い…助けて…」とだけしか呟けない極限状態に陥っていた。
しかし社員たちが左遷部屋よりも恐れているのは解雇されることであり、社員たちは自分が酷い境遇に置かれたとしても会社にしがみついている。
これは単なる社畜体質というより、会社から放逐されると「自分がいた未来の時代」へ帰還できなくなるからということが大きいだろう。
一応、クライアス社は会社を辞めたければ勝手に辞めればいいという「去る者は追わず」が基本のスタンスであり、解雇された(または自主退職した)後にこの時代をどう生きるかは本人たち次第かつ自由である。
ただし、ハリーが言うには「クライアス社は裏切り者を許すような組織ではない」とのことなので、会社に翻意を見せた離反者についてはその限りではない模様。
ちなみにチャラリートが左遷、ルールーとパップルが退職した際には、クライアス社の公式サイトにて社員募集広告がかけられていた。
第22話にて課長であるパップルが退職し、残るのは部長であるダイガンだけであったが、初出撃の際に「会社のお荷物」のレッテルをはられて粛清される形で解雇されてしまった。
このことから、立場が上の社員に対しては、空気を読んで自主退職しないならば処分するという恐ろしい側面があることが判明した。
ダイガンが解雇された事によりあざばぶ支社の初期社員は誰もいなくなってしまったが、第23話のリストルと社長の発言により、そもそもあざばぶ支社の初期社員はプリキュアにミライクリスタルを生み出させるためのかませ犬として用意された捨て駒であることが判明。
そして必要なミライクリスタルが揃ったので、ダイガンの処分を以って初期社員を意図的に一掃したのである。その後、あざばぶ支社にこれからの新しい計画のためのメンバーとしてジェロス、ドクター・トラウム、ビシンが配備された。
ただしこの3名の補充社員とリストルも失敗が続けば初期社員と同じような目にあうことは想像に難くない。現にジンジン・タクミは第31話、トラウムは第37話、ジェロスは第45話にて退職した。この他、リストルが若宮アンリを一時スカウトしたことから新たな人材としてこちらの時代の味方に加えようとしていた。
ちなみに初期社員と補充社員の違いとして、プリキュアの変身前正体の情報が共有されているかどうかというものがある。補充社員は全員がプリキュアの素性を知っている。
ただ、キュアエールに強い興味とシンパシーを持つ社長は、自分たちとプリキュアのどちらを世界が認めるのかという「フェアなゲーム」を望んでおり、変身前を不意打ちするようなことはしない。あくまで変身した後の「プリキュアという存在」を打ち倒すことが社長にとっての勝利である。
本社について
公式サイトによると本社の設立日は"XXXX年"となっており、いつ設立したかが不明な記載となっている。
作中でそれを類推できる情報は少ない。
ただ、「彼らが未来で時間を止めた年代」ならある程度の推測が可能である。
それは最終話で「未来世界でクライアス社と戦っていた、ホワイトのプリキュア」の誕生年が明らかになっているため。プリキュアの基本年齢である14歳を足すことでこれくらいの年代なのかと推測できる。
いつなのかについては「残された謎」の節を参照(ネタバレ注意)。
1つ言えることは、意外と近い未来だということである。
そして本社設立日は当然それより前となる。
本作はあまりSF的な解説はしない方向性で作られているが、「過去に起こったことは変えられないが、これからの未来は変えられるから、諦めないで」と言うことがメッセージとして何度も出ている。
そしてクライアス社の目的が歴史改変ではなく「時間を止めて過去の思い出を永遠にすること」ということも、個々の人間がすでに経験した過去は変えられないという前提に立っている。
これらのことから「クライアス社の本社があった、ハリーのいた未来世界」と「はな達がこれから作り出していく未来」はパラレルワールドの関係性であると言える。
つまり、この2018年で何をしても、「本編の物語に出てくる未来人たち」がすでに経験した悲劇や出会いがなかったことにはならないということである。悲劇が回避されるのは別の未来の彼らである。
なので、クライアス社のやってきた未来は「数多ある可能性世界の1つ」と考えた方がいいだろう。
なお、最後まで本作のクライアス社はあざばぶ支社を拠点としていたため、本社のビジュアルなどは一切不明のままとなった。
名前のモチーフ
社員の名前は一部を除いて社会に関連した世代や用語をもじったものからきている(『アニメージュ』のスタッフインタビューにて)。
- ルールー→「ルール」(さとり世代?)
- チャラリート→「チャラい」と「サラリーマン」と「エリート」(ゆとり世代?)
- パップル→「バブル」(バブル世代?)
- ダイガン→「団塊」(団塊の世代?)
- リストル→ 「リス」と「リストラ」(しらけ世代?)
- ジェロス→「ロストジェネレーション」(ロスジェネ世代?)
- ジンジン→「人事」と「新人」
- タクミ→「匠」
- ドクター・トラウム→「Traum」(ドイツ語で夢の意味)あるいは「トラウマ」
- ビシン→「ハクビシン」と「備品」
- ジョージ・クライ→「常時、暗い」と「上司」
なお、会社名である「クライアス社」は「未来を奪う」ということから「暗い明日」と「クライシス(=危機。某太陽の子の敵組織名でもある)」をかけたものと思われる。
上記サイトでの表記が "Criasu" と"Crisis"にかけた綴りになっていることがこの説を裏付ける。
残された謎
未来世界で数多くの文化が廃れている件
本編中でルールー・アムールが語ったところによると、ルールーが作られた未来の時代では、2018年時点では普通に根付いている文化の多くがすでに忘れられ廃れてしまったらしい。
例えばハロウィン(38話)。例えばクリスマス(45話)。さらには音楽という文化も失われているとのこと(41話)。
このことからすると、ルールーが作られた未来、すなわちクライアス社の連中の故郷である未来世界は、現代からかなりの時間がたった遠い遠い未来のように感じられる。
そして本編も終盤になって、ようやく彼らがやってきた未来の世界がいつ頃なのかが明らかになる。
46話で「若い頃のジョージ」が「大人になった野乃はな」と親密な関係にあったことが判明したのだ。つまりジョージは100年とか1000年とか先の未来からやってきたのではなく、もっと近い未来から来たのである。
さらに、最終回で11年後(2030年)のはなが子供を産んだのだが、この子供がはぐたんそっくりであった。
未来世界のプリキュアであるキュアトゥモローがプリキュアの標準年齢である14歳と仮定すると、クライアス社がやってきた未来は2044年となる。25年後ということだ。
技術の進歩は産業革命的なものがあれば25年で目まぐるしく変わることはあるが、さすがに文化についてそこまで大きく変わるのだろうか?
実は「はぐたんのママは未来のはななのでは」という推測はそれこそ第1話の頃から視聴者の間ではあったものの、中盤以降になってルールーの口から未来世界で様々な文化が失われていることが語られるようになってからは「はなの子供の世代とは思えない」という声もまた大きくなっていたのだが……。
結局、この点については最後まで補足されることはなかった。
ただ終盤では、未来世界は一度完成した「理想の王国」が人々の尽きぬ欲望から生まれたトゲパワワによって崩壊していったことがジョージの口から描かれている。
なので、我々の身近な文化が未来には廃れているという設定も「未来世界はクライアス社に時間が止められる前から荒廃しつつあった」ということを示すための伏線の意図があったとは思われる。
トゲパワワが蔓延したことで未来世界はゆとりをなくしてしまい、人類のメンタリティが変化したのかも知れない。
なお放映後に刊行された『HUGっと!プリキュア オフィシャルコンプリートブック』によると、シリーズ構成の坪田文は最初は「未来はすごくすごく遠い」と言う設定で物語を考えていたが、SDの佐藤順一から「10年後、20年後の未来でも子供達にとってはめちゃくちゃ遠い未来だよ」と言われたことで、設定を組み直したとしている。
文化が失われたというのは初期設定の名残なのかもしれない。
クライアス社の持つ技術のルーツ
社長であるジョージ含め、社員たちは皆普通の人間(および人間の姿をとった小動物の種族・ハリハリ族)である。闇の世界からやってきた怪人とかではない。
クライアス社はあくまで10〜20年くらいの近未来に立ち上げられた新興企業に過ぎないのである。
そんな彼らがどうやって世界の時間を止める力を手に入れたのかは、最後まで明かされる事は無かった。
だが、作中で断片的に語られたいくつかの情報から、ある程度までの推測を立てることはできる。
ルールーは「クライアス社の社長であるクライが、ある日突然強大な力を得て、人々から未来を奪った」と語っている。彼個人が持つ強大な力といえばそれはいつも持つ本である。
彼はこの不思議な本の力によって、第23話ではたった一人で世界の時間を一時的に止めた。最終決戦ではプリキュアをこの本の力を使って壊滅直前まで追い込んだ。
これについての謎がまずあるのだが、それ以前に考えなくてはいけないことがある。
クライアス社の持つ「アスパワワやトゲパワワに干渉する力」は超能力や魔法の類ではなく、再現可能な科学技術である。これは社長個人がすごい力を得たというだけの話では説明できない。
作中でジョージが詩的表現を持って語った未来史には、要約すると以下のような内容となる。推測される時系列順に記載する。
「明日を失いつつある世界のため、剣は何も持たない少女を選んだ。剣に選ばれた少女は民衆と共に戦う」(第11話)
「少女が目指すのは花咲き乱れる理想の王国。夢は叶い、人々は笑顔に満ちた」(第46話)
「その世界では皆が明日への希望に満ちていた。 しかし、永遠に続く煌きは存在しなかった」(第8話)
「文明の進化、だがその成長に似合うほど人類は尊い生き物ではない。ひとつの夢が叶えばそのまた次へと。明日への希望は欲望へと変わり、王国を狂わせていった。君たちがどれだけ明日への希望の力・アスパワワを増やしても、際限なく人々はトゲパワワを増やす」 (第46話)
このことからすると、ジョージがやってきた未来では、文明が急激に進歩した「理想の王国」なるものが一旦は完成したらしい。
そして、ジョージがやってきた未来についてはもう1つ、忘れてはならないことがある。それは未来を司る女神・マザーの存在である。そのような存在は本編中の現代では確認されてないし、最終回で描かれた「クライアス社が誕生しなかった世界線での未来」でも言及されていない。つまりマザーは「クライアス社が存在する未来」においてのみ確認されるということだ。このことから「マザー」の顕現と「理想の王国」の誕生はほぼ同時に起こったことではないかと推測できる。
マザーの未来を司る力を持つというが、本作で未来を作り出す力といえばアスパワワだ。つまりマザーはアスパワワを使って幸福な未来そのものを作り出せた存在、いわば因果や運命といったものを操る存在であったと考えられる。それらが人々に認知されるくらい身近で、人々のために未来を作っていたのならば、確かに人類は「理想の王国」を作り出せるだろう。
このマザーとは何なのかについては全く謎に包まれているが、1つだけ予測できることもある。「理想の王国」は「ある少女」が夢見たものの具現化であり、つまりはこの王国の根幹にあるのはこの少女の存在である。ならば、王国の未来を司る女神マザーこそがその少女が行き着いた姿だと考えることもできるだろう。
そして、終盤でジョージが野乃はなに向けて語った様々なセリフから、彼が今まで物語として語ってきた「少女」とは、「ジョージがやってきた未来」の世界線における『野乃はな』であることはほぼ確実で、その『野乃はな』はジョージと極めて親密な関係にあった。
また、プリキュアの剣を手にしたようなので、彼女もまたプリキュアになったと思われる
(区別のため、以後は彼女については「アナザーはな」と仮称する)。
第48話では、2019年時点におけるドクター・トラウムの姿がちらりと映っており、そこにジョージらしき青年の姿もある。つまりジョージはもともとはトラウムの助手だったようだ。彼は本来は研究者畑の人間であったと仮定できる。
そしてジョージは、のちにマザーとなるアナザーはなと親密な関係にあったので、彼女を通じてアスパワワの研究をトラウムと共に行えたのではないだろうか。
アナザーはながそれに協力したのは、プリキュアのアスパワワを操る力を技術活用できるなら、世界中の人々がアスパワワに護られた「夢と希望に溢れた理想の王国」が実現できるからというわけだ。
さらにいえば、ジョージの言葉では「理想の王国」は文明の進歩と結びついているとしている。つまりアナザーはなを「マザー」に昇華させたのもジョージたちの研究成果によるものかもしれない。
冒頭のクライアス社の挨拶文では「創立以来、世界中の人々の幸福を願ってきた」と主張している。
つまり最初はトゲパワワでなくアスパワワを使った発明とかをしていた企業なのではないだろうか。
アスパワワを使った発明というと、本編を見たならすぐに心当たりがあるだろう。プリハートやミライパッドなどの、ミライクリスタルから力を引き出すデバイスだ。
マザーを作り出して「理想の王国」を実現させ、プリキュアを作り出してその王国を永遠に守る。そういう目的で最初は行動していたのかも知れない。
それが現在は、トゲパワワを使った発明で世界の時間を止める恐ろしい企業に成り下がった。
アスパワワとトゲパワワは表裏一体なので、アスパワワを研究していた彼らならトゲパワワを操ることできるというわけだ。
ジョージが人類に絶望した経緯については本人の記事に詳しいが、彼個人が「ある日突然強大な力を得た」ことについては本編中の情報だけでは推測も難しい。その背景については未だ多くの謎を残している。
プリキュアシリーズで、「突然に」すごい力を得たとされるラスボスは実は黒幕みたいなものがいてそれに操られているとかが定番ではあるが・・・ 本編を見る限り、ジョージのやってきたことはジョージ自身の意思であることは強調されている。
もしかすると、彼の力の象徴である「不思議な本」がトラウムの発明品でそれが完成した時から個人ですごい力を発揮するようになったから、「突然に力を得た」ように見えるという単純な話なのかも知れない。
社員たちの過去について
本作に登場するクライアス社の社員たちは全員が未来を信じられなくなっているが、そのような心境になった原因について作中で具体的には語られていない。
ただし、その原因を想像できるようなヒントになる描写は多々散りばめられている。
わざわざヒントを用意しているのに「答え」を出さなかったことは、意図的な側面があると思われる。
本作の主人公であるはなは「みんなを応援したい」という強い思いを持つキャラだ。その思想の根源には「自分を奮い立たせるため」というものがあり、つまりは自分のために他人を応援しているのだが、詳細は野乃はなの項目に譲る。
ここで重要なのは、はなは「この人は〇〇だから応援に値する」という考え方をしないことである。はなの応援は、価値観の異なる相手とも寄り添い共感することを諦めないための応援なのだ。
だが、クライアス社の社員たちが未来を信じられなくなった理由にお涙頂戴的な答えを具体的に描いてしまうと、「この人は可哀想な目にあったのだから応援してあげよう」という上から目線な応援の印象になってしまう。それを避けるために、答えを明確な形では描いていないのだ。
作中で描かれた「ヒント」から想像する限り、チャラリートは自己肯定ができずに苦しんでいたり、ダイガンは老害扱いされることを極度に恐怖していたり、ジェロスは女性であるがゆえにルッキズムの洗礼を受けていたりと、まさに現代日本の生きづらさの象徴のような構図が見え隠れする。
しかし、ジョージが語る未来史では、「理想の王国」が築かれて人々に希望が満ち溢れ、笑顔が絶えない世界になったはずである。
未来世界でも上記のようなことを気にしないといけないなら生きづらさが残ってるなら、とても「理想の王国」とは言えないだろう。
未来を司る女神・マザーも彼らに手を差し伸べてあげなかったのだろうか?
これについてはいくつか考えられ、まず1つは「理想の王国」が人々のトゲパワワで歪み始めてから、これらの不幸が起こったということ。
もう1つは、クライアス社の社員たちも実はジョージの未来とは異なる世界線からスカウトされたというものである。
さすがに後者だとややこしくなりすぎるので、前者の可能性の方が自然かもしれない。
すると、「理想の王国」が理想のままでいられたのはかなり短い期間に過ぎなかったようだ。
なお、社長であるジョージ・クライが未来を信じられなくなった理由については一応は作中で理由が語られており、筋も通ってはいる。ただしこれにも隠された別の真実があるのではという考察も存在している。詳細は本人の項目にて。
余談
企業型の組織はプリキュアシリーズでは前例が存在するが、時勢の変化を反映してか本作では「稟議承認」「発注」「納品」「始末書」「ヤメサセテモライマス」等、第1話からリアルな用語が多用されて大いに話題を呼び、日曜の朝に現実逃避していた大きいお友達をげんなりさせ、トゲパワワが大量放出されたとか。
さらになんと日本経済新聞社発行の「日経MJ」でも取り上げられた。
第36話ではジョージ・クライをはじめとする上層部がプリキュアオールスターズの情報を正確に認識していたことから、TVシリーズでは初となる現行作品以外のプリキュアを把握している組織となった。
尚、幹部が全員生存・改心したのはスイートプリキュアのマイナーランド、ハピネスチャージプリキュア!の幻影帝国に続いて3度目だが、本編以外の敵幹部も全員生存・改心したのはクライアス社が史上初となる。
関連イラスト
外部リンク
クライアス社 | HUGっと!プリキュア | 東映アニメーション
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- ナイトメア:シリーズ第4作『Yes!プリキュア5』に登場する敵組織。同じ企業タイプ。欠員が出ると新メンバーが追加されたり、メンバー間の仲間意識が皆無な点も共通。ただし、クライアス社の方は基本的にプリキュアによって救済されるという明確な相違点がある。ちなみに本作のシリーズ構成の坪田文によると「プリキュア5のナイトメアが大好きだったので、敵組織を同じ企業タイプにした」と語っておりクライアス社はナイトメアの正式オマージュである(コンプリートブックより)。なお、ナイトメアの元社員のブンビー曰く、クライアス社は「ナイトメアもビックリな超ブラック企業」とのこと(第36話)。
- エターナル:シリーズ第5作『Yes!プリキュア5GoGo!』に登場する敵組織。ナイトメアと同じく同じ企業に近いタイプかつ、ナイトメア同様部下達の扱いが共通している。又、味方側のメンバーが過去に所属していた時期があったと言う点も共通している。
- ラビリンス:シリーズ第6作『フレッシュプリキュア!』に登場する敵組織。科学力の高さが共通。人々を徹底した管理のもとで支配し、それが人々の幸せにもなると考えている理念も似ている。ただし、クライアス社の方が物語の早い時期から離脱者が出始めていくという明確な相違点がある。
- 幻影帝国 … シリーズ第11作『ハピネスチャージプリキュア!』に登場する敵組織。人間から怪物を生み出す点が共通。世界各国にプリキュアが多数存在する関係上、主人公チームの1強で勝てる相手ではないといった全シリーズ中歴代最強との呼び声も高いが、未来世界どころか36・37話での展開で(モブキュアを含めた)歴代チームを殆ど全滅に追い込んだ等こちらに最強の地位が譲渡されることになる。
- アカルイアス社:クライアス社社員達のギャグ系イラストに付けられるタグ、だったのだが……。
- 芸能事務所まえむきあしたエージェンシー:元クライアス社社員達が立ち上げた企業。
プリキュア歴代敵組織
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