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CV:染谷俊之/依田菜津(幼少期)


概要編集

HUGっと!プリキュア』の登場人物で、輝木ほまれの旧知の友人。ほまれやはな達より1つ上の中学3年生。

ジュニアフィギュアスケーターで、ほまれとの親交が始まったのもフィギュアスケートが切っ掛けである。

その腕前は世界レベルで、モスクワ等で開かれた大会で優勝するほど。美しい容姿もあって世間からは王子様として騒がれている時の人である。


初登場は第7話。ラストシーンで突如現れほまれを抱きしめる、という衝撃のデビューを飾った。

ほまれのスケートへの挫折に納得できず、初登場した第7〜8話では、ほまれのアスリート人生を考えて彼女をモスクワへ連れて行き、スケーターとしての高みを目指させようとしていた。

前へちっちゃいほまれちゃんとアンリ君


父親はフランス人、母親は日本人。はなにハーフと呼ばれた時には「半分じゃない、大和撫子とパリジャンのダブル」と反論している。

(これはハーフが日本でしか使われない和製英語であり、海外のダブルやミックスと異なり、ハーフの「半分だけ日本人」という突き放したニュアンスに反発する人は現実でも多いためと思われる)


はっきりした性格で自分にも他人にも厳しく、周囲の空気に左右されずに自分の主張を通すため、キツい印象を受けがち。しかし堂々と反論した相手に対しては、その価値観を理解しようとする一面も持っている。


ジェンダー編集

作中では彼の美しさは「性を超越した美」と褒め称えられている。

アンリ自身は自分の美しさを気に入っており、かなりのナルシスト。ファッション的な側面においては「自分に似合っていれば女子物だろうと関係ない」としてレディース物を好んで着用する。学校でも女子的な着こなしをすることもある。

周囲からはいわゆる女装男子として奇異の目で見られることもあるが、本人は「なりたい自分」に素直なだけであり、決して男性的な服装が嫌いなわけではない。「自分に似合っている」と思えば男女関係なく着こなす、いわゆる「ジェンダーレス男子」のくくりに無理やり入られがちである。


……がしかし、彼自身はトランスジェンダーではなく性自認は男子であり、「女子らしさ」や「男子らしさ」を定義づけようとする世間の目線はくだらないと一蹴するだけではなく、「中性的/ジェンダーレスらしさ」という一歩踏み込んだジェンダー思想の枠組みにまで批判的な立場にいる。

(吉見リタが若宮アンリの良さについて「性を超越した存在」と讃えていることに対して、自分への賛辞に真っ向から対抗こそできずにいるが裏でそれに対する複雑な心境を零していた。)


このような言動からジェンダー系ヘイト行為を受けることも度々あるが、彼自身はスルーして感情的になる事はない。だが、他人が同じようなジェンダー系のヘイトや差別を受けて傷つけられているのを目の当たりにした時は反抗心を露にする。

もっとも「他人のために自分が頑張るなんて面倒臭い」を信条とするアンリは人助けなどしているつもりはなく、それをなくそうとしているだけである。

彼はジェンダー的な行為に限らず、原則的に他人が悩んでいたり苦しんでいたりするのを快く思えない素直なお人好しであり、自分が動くことで自分にとって不快な光景をなくせるならば、手を差し伸べることに躊躇しないタイプの人物なのである。『情けは人の為ならず』を本当の意味で実践しているとも言えるだろう。



本編での活躍編集

輝木ほまれとの再会編集

ジュニアフィギュアスケートの選手にとって、中学生の今は大人達と同じ土俵であるシニアに移れる年齢を目前にした最も重要な時期(作中のフィギュアルールが現実と同じとするならば、選手がジュニアでいられるのは19歳までであり、15歳からはシニアクラスにある程度任意で移行可能)。

故にはな達をほまれのスケートには不要と見なし、ほまれから遠ざけようとした他、はなの応援も「無責任な頑張れは彼女の重荷になる」現実的なアスリートの目線でやや邪険に扱っていた。

ほまれを救えるのは自分だけだと少々独善的ですらあったが、ほまれがはな達との交流で「新しい世界」を見られたこと、その経験から得た演技と表現力、そしてその応援を背負ってジャンプに成功できたことで思い直す。称賛の言葉を素直にかけ、今のほまれの気持ち溢れる演技も悪くないとして引き下がった。

後にはなとも和解し、「きっと将来素敵なレディーになるよ」と彼女を陰ながらに評している。


こうして一件落着……かと思いきや、なんとラヴェニール学園のスポーツ特進クラスに転入。制服もカスタマイズしており、ワイシャツの襟が波型になっているものを着用し、男子用のネクタイはリボン結びにしている。

その際「ボクもやってみようかな?プリキュア」とほまれ達にだけ聞こえるように言って、「……なんてね、まあ他人のために頑張るなんて、ボクには向かないのかな?アハハハハ!」と笑い飛ばした。


彼は同話の戦闘にてキュアエトワールの跳躍を目撃しており、ほまれがエトワールだと見抜いていたのである。


第11話では、「自分の応援」としてメロディソードではない形で行使したキュアエールの姿を見届けており、「やるじゃない」と呟いていた。この時の反応からすると、はなやさあやがプリキュアであることにも既に気づいていた様子(ほまれがプリキュアだと知ったなら想像には難くないだろうが)。


愛崎正人との関係編集

第18話ではラストに現れ、スマートフォンにえみるルールーの姿を収める。翌第19話では2人を自分も参加するファッションショーに誘い、どうやら先の撮影はこのためだった様である。

また愛崎正人と男子らしさ、女子らしさの価値観をめぐって対立する。当初は元々の性格もあって適当にあしらうが、その後ジェロスによってオシマイダーにされた彼が抱える辛さに気づき、「そうか、キミも苦しんでいるのか。だけど、キミがどんなに不快に思ってもボクの心は変えられない!」としながらも正人の価値観を頭から否定せず理解しようとも務めていた。

ファッションショーの会場では天井の崩落から体を張ってえみるとルールーを救い、無傷で生還するという殊勲を挙げている。


第20話では、えみるにライヴのチケットを渡せたのか正人に聞いており、正人からの謝罪を受けこれまで「若宮くん」呼びだった彼に「(ボクを呼ぶ時は)アンリでいいよ」と呼び捨てを促す。

これをもって彼とは和解し合ったようであり、その後の第25話では正人共々浴衣姿で現れ、個人的な交流が続いている事を窺わせた。

第33話等ではえみるとルールーの信頼関係と対比するようにアンリと正人も同様に深い信頼関係を築いているシーンが散見される。


彼自身の心の闇編集

若宮アンリという少年は、作中の世間では「男女子の性差を超えたボーダーレス」の象徴(アイコン)として注目されている。アンリ自身もジェンダーの押し付けはくだらないとは思うものの、自分自身はボーダーレスに思想的なこだわりも別にない(勘違いされやすいが彼は単に『女子服も好き』『一方的な押し付けは嫌い』というだけ)ので、実のところそういう「社会のアイコン」としての役割を期待される風潮にも嫌気がさしている。

そしてジェンダー方面でアイコン扱いをされている反動で偏見も持たれているようであり、第33話ではアンリとルールーとの熱愛報道をでっちあげようとしたTVディレクターを正人が注意したら、そのディレクターが正人に対して「キミ、アンリ君のお友達? だったら詳しく話を聞きたいな…… ほら。彼って色々と噂があるみたいだから」と嫌らしそうで意味深な目つきをしていた。

アンリはカテゴライズの押し付けや無責任な噂にストレスを抱えながらも、「自分らしさを貫くには、世間を黙らせるくらいに勝ち続けなければならない」と自分自身にプレッシャーをかけ続け努力を重ねている。


一方、アンリは自分という存在をカテゴリ抜きに世間に認めさせるためには時間が足りないという焦りも持っている。その理由の1つは自分が成長期であるがゆえに声も体格も日々「男性的」になってきているため、ボーダーレスの象徴として持て囃される恵まれた立場は長くは続かないという現実的な予測。

そしてもう1つの理由はみんなにも秘密のこと… 誰にも言えないが、自分には「時間がない」のである。

そのため、心の奥底では時間を止めてしまいたいと思っていることなどが明らかになり、それを見出したリストルからは、新たな社員候補としてクライアス社へのスカウトを受け、名刺を渡された。


だが、この第33話ではえみるやはなの言葉を思い起こしその話を蹴っている。彼は「ボクは色々と面倒くさい性格の人間だし、他人のために頑張ることもできない」としながらも、みんなが幸せになれる未来を作るために頑張れるプリキュア達には敬意を素直に示しており、彼女達の敵になりたくないと思ったのである。

そして、みんなが自由に生きられる未来を作ってくれるようにプリキュアに願いを直接伝えたのであった。

戻ってくるんだ!…無理です!時間を止めて


…しかし、リストルからアンリ勧誘の失敗の報告を受けたジョージ・クライ社長は「彼の輝きが曇る前に救いたかった」と意味深な言葉を吐く。未来から来た社長は、アンリにこれから何が起こるのかを知っている……

そして同話エピローグでは、アンリがスケート選手の命ともいえる足首に違和感を覚えながらもそれを周囲に隠し続けているというシーンが描かれる。それに反応するかの様に、まだ持ち歩いていた名刺からトゲパワワが発生しつつあった。


アンリが時間を止めたいと思っている理由は、彼のモノローグからすると「世間から失望されることへの怖れ」があるようだが、この第33話でリストルが二度目にアンリに接触した際に「我々には時間がない。キミと同じように」と気になる発言をしており、「このままでは足が持たないので、時間を止めたいと感じている」ということも動機の1つになっているようだ。

不穏な空気が何やら漂い始めていつつも、そこからしばらくは彼の登場もなかった。


第41話で久々の登場。スケートリンクにて、恋の悩みゆえに心ここに在らずのほまれに対し「何かあった?」と訪ねるが、ほまれはそれを誤魔化す形で「それよりアンリこそ、なぜジャンプの踏み切りを変えたのか」と突っ込まれる。しかしアンリは質問を質問で誤魔化そうとしたほまれに「ボクに隠し事なんて無理だよ?」といなした。

(ジャンプを変えた理由は言うまでもない)

そこに、様子のおかしいえみるが現れる。いつもと様子が違いすぎるため、ほまれ共々驚きのあまり固まる。


その後、えみるの心配をする正人に同行。ギャグでスベった正人に対し、追い打ちのような感想を述べる。諸々あったのち、えみるの問題は解消した。


そして、同話エピローグ。

一人でスケート練習をするアンリ。しかし、足の不調のせいか転倒してしまう。

「頼む…あと一度だけ…」

ふと目をやると、そこにはリストルの名刺が。

名刺に心を引かれるような一幕はありつつも、アンリはクライアス社の誘惑そのものには決して負けなかった。


しかし第42話では、そんなアンリの心さえ砕くような途方もない絶望が襲いかかる。

なんと歩きスマホの途中で車2台が衝突する交通事故に遭い、その衝撃で完全に足が動かなくなってしまったのだ。

それは彼の心を絶望に染めてしまうが、今日楽しみにしていたアンリのスケートが見られないまま選手人生を終わらせられたことに悲しむファンの顔を見て気持ちが揺らぐ。

「何でもなれる、何でもできる」を信じる仲間達の思いを受け、氷上の王子は、奇跡の変身を遂げた。


夢から醒めたその先へ編集

「愚かな…… ひと時の夢に惑わされても、残るは現実だ」


リストルが最後に呟いたその言葉は真実であった。

この奇跡は一瞬の瞬き。アンリ自身が望んだのは「あと一度」。一度だけの奇跡なのだ。

その後に残ったのは、非情な現実である。

御都合主義など起こらない。アンリは片足の感覚を失い、スケートどころか日常生活を送ることもままならない状況になってしまう。

それでもアンリは、あの時の奇跡の夢に「自由」を感じていた。


「ボクはもう一度、自分のなりたい自分を探すよ」

「たとえ若宮アンリの体でも、若宮アンリの心を縛ることはできないんだ」


心配になってお見舞いにきたはな・さあや・ほまれの3人に、アンリは希望と覚悟に満ちた表情でそのように宣言した。

壁を超えたアンリのその言葉は、むしろ3人の側にある種の焦りを感じさせた。そして3人はこれをきっかけに「なりたい自分」にもっと本気で向き合うようになるのである。


新たなスタート編集

その後は車椅子を使っての生活になっているが、ほまれのスケートの練習を見守りにリンクに訪れる。

だが、その演技に【ほまれらしさ】が感じられず彼女の内に秘めているハリーへの恋心を見抜いて「ボクは恋をしているほまれは素敵だと思うけどな」と指摘をする。

だが当のほまれは「恋なんてスケートの邪魔。アンリやお母さんのためにも頑張らないと…」と釣れない返事。アンリはほまれが自分の恋心にまっすぐ向き合うことを怖がっていることを察しながらも

「スケートを理由にしないでくれ。【誰かのため】じゃなくて【自分のため】にスケートに挑んでほしい。(それに打ち込む)100%の輝木ほまれの演技が、ボク達の笑顔になるから」と精神的に支え、ほまれの恋心に決着をつける後押しをした。


クリスマス回の第45話では、彼がサンタさん(本物)から貰ったプレゼントは何と松葉杖。

サンタさんがくれるプレゼントは本人の夢を形にしたものだ。

これはアンリが車椅子生活に甘んじることなく、回復を信じてリハビリを続けていく意志を持っているとのことなのだろう。

第47話でも正人のサポートを受けて、松葉杖を使って歩行訓練をしている様子が描かれている。


第49話で描かれた2030年時点では、やはりスケーターとしての復帰はできなかったが、おそらく振付師としてフィギュア界に関わっている様子が描かれている。彼なりに輝く道を見つけたのだろう。

松葉杖も無事外れ、アイスショーではフィギュアスケート選手と一緒に笑顔を見せていた。

多くの観客を魅了し笑顔にする振りつけは、も虜にしているようだ。



余談編集

初めてプリキュアの正体を"見抜いた"人物編集

プリキュアシリーズにおいて最初から関与していた場合を除き、後にプリキュアの正体を知った人物自体は多く、中には正体を知った縁でプリキュアになったケースもある。

ただしその大半は当事者からの告白や勧誘、もしくは変身する場面に居合わせた、立ち会ったケースが殆どであり、変身後のパフォーマンス等で直感的に見抜いた人物はアンリが初めてである。後に、野乃ことり庵野たんぽぽも彼に続くことになる。

明言こそ無いが、はな達がプリキュアであることも(後にプリキュアになったえみる・ルールーを含め)芋づる式に看破したと思われる。第42話ラストで初期メンバー3人にプリキュア名のネーミングの話をした際には、はな達もアンリにはバレていると認識した前提の受け答えであった。


アンリに与えられた役割編集

アニメージュ誌のHUGっと!プリキュア増刊号で行われた本作シリーズ構成の坪田文へのインタビュー記事によれば、若宮アンリというキャラクターは本作のテーマである「なりたい自分」の姿が未来にはないという苦悩を描くために用意されたものだということ。

坪田は女の子は成長に伴う肉体的な変化が強いから第二次性徴を迎えた頃に、小さい頃に夢見ていた「未来の自分の姿」が成長によって折り合いがつかなくなることは結構あるとしている。それは人によっては「自分の理想の姿が未来に存在しないことを運命づけられた」という感覚に等しい。

とはいえ、女の子が性徴を迎えることの心の戸惑いをストレートに描くとプリキュアシリーズでは生々しくなりすぎるので、このテーマを担うキャラクターとして構築されたのが若宮アンリなのだという。

アンリの夢の本質は「みんなを笑顔にしたい」という良心的で無垢なもの。しかしその夢を形にするためにアンリが武器にしたのはフィギュアスケートとしての卓越した技術と性別の垣根を超えたジェンダーレスな魅力。その双方とも「大人」になると失われる運命にある。

つまりアンリに求められた役割は「人の心は子供の頃の夢を貫くことはできても、肉体の変化は夢を奪うこともある。それはプリキュアでも覆せない」という現実を避けずにTVの前の子供達に伝えることだ。

自分の肉体が「変わった」ときに、どうやって折り合いをつけ、新しい夢を見つけていくのか。そしてその新しい夢を子供の頃の夢と繋げることができるのか。それを示したのが若宮アンリというキャラクターなのである。


カサブランカの花編集

作中ではカサブランカの花がアンリのメタファーとして描かれており、複数回にわたって出てくる。

第42話にてアンリが交通事故に遭い選手生命を絶たれた時には、その運命を嘆いたジョージ・クライが手に持っていたカサブランカの花を散らすというシーンがあった。また同話にてアンリのファンが素体にされた猛オシマイダーはカサブランカをモチーフとして召喚された。アンリがキュアアンフィニへと変身した際にも背景にカサブランカが描かれている他、作中のファンからのアンリへの贈り物も専らこの花である。

『ユリの女王』の異名を持ち、更に花言葉は『高貴』『壮大な美しさ』と正に男女の垣根を超えた魅力を持つ彼にぴったりのチョイスだろう。

キュアアンフィニキュアアンフィニ


声優について編集

アンリを演じた染谷俊之氏は今回がプリキュアシリーズ初出演である。


幼少期のアンリを演じた依田菜津氏は次回作のスター☆トゥインクルプリキュア天宮えれな/キュアソレイユの弟天宮たくと天宮いくとの双子とモブキャラ多数を、次々作ヒーリングっど♡プリキュアでは沢泉ちゆ/キュアフォンテーヌを演じている。


関連イラスト編集

33話


関連タグ編集

HUGっと!プリキュア 輝木ほまれ フィギュアスケート アイスダンス

女装男子 ジェンダー キュアアンフィニ

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