「My name is ジェロス。通りがかりよ。友情とか愛情とかそういうの吐き気がする程嫌いなだけの、ね」
CV:甲斐田裕子
概要
クライアス社の女子社員。役職はジェネラルマネージャー(第24話以降)。
初登場は第18話だが、この時点ではセリフもなくシルエットのみの登場だった。
第19話のクライアス社の会議シーンで、あざばぶ支社に新しく配属された正社員として正式登場する。当初は課長であるパップルの後輩という扱いだったが、パップル退職後の第24話でジェネラルマネージャーに任命された。ジェネラルマネージャーは多くの企業で部長職以上の立場にあるため、課長であったパップルより出世した事になる。
なお『アニメージュ』9月号で座古明史SDが語ったところによれば、彼女は生え抜きのクライアス社員ではなく、知り合いだった社長直々にスカウトされたエースとのことである。(第19話でルールーが「クライアス社にあのような社員はいなかったはず」と訝しんでいたのはそのため)
ジェネラルマネージャーに就任した後は部下であるジンジンとタクミを常に引き連れるようになり、オシマイダーの素体の選別や戦闘指揮を彼らに任せることもある。管理職ならではの貫禄と言えるが、失敗した時の責任を部下に押し付けるためという姑息な目的もある。
女王のような雰囲気を纏った妖艶な美女で、英語交じりな女性語を常用する。冒頭の台詞にある通り、彼女の英語は簡単ながらも意味がしっかり通る英文で、いわゆるルー語とは異なる(赤ん坊を文脈に関係なく常時『ベイビー』と呼ぶなどはする)
パップルと同じような赤のメッシュが入った緑色のボブカットに、左目の泣きぼくろが特徴で、黄色のロングコートに赤と黒を基調としたチャイナドレスを身にまとい、厚底なハイヒールを履いている。
オシマイダー発注の際のバンクは、手でハートマークを作ってネガティブウェーブを放射し、ゴージャスな雰囲気と彼女の色気を前面に押し出した滑るようなダンスを踊った後、名刺のようなものを差し出して発注するというもの。その際両脇には、ジンジンとタクミがどこかで見たような構図で背景に現れる。
第24話からは同じ発注方法で猛オシマイダーを生み出すことが可能となっている。
人物
自分の能力に強い自信があり、常に余裕たっぷりで滅多なことで慌てることがない。
微笑みをいつも絶やさず親愛を感じさせるフランクな口調の持ち主でコミュニケーション能力に長ける。しかし同時に人間関係というものはビジネスライクであるべきだという割り切った思想の持ち主でもあり、友情や愛情といった感情を「吐き気がする程嫌い」と堂々と公言している。
そのため、彼女のフランクな言葉や態度とは裏腹に醸し出す雰囲気には温かみは全く感じられず、むしろ上から目線な高慢さがにじみ出ている。だがジェロス本人はそれを隠すこともなく、むしろあけっぴろげにしている。才能があるものが無能を見下して何が悪いのかといわんばかりである。
前述の通り当初はパップルの後輩という立場で登場したが、この時点で後輩という立場をわきまえて丁寧な物腰を常にとっていたにもかかわらず、肩身が狭いパップルを真っ向から皮肉って本人をイラつかせていた。
表面的には冷徹に振る舞いこそすれど、内面にはそれ相応な人間臭さもあったチャラリートやパップルとは真逆とも言えるだろう。
第19話では友情や愛情を侮辱するジェロスの態度にカッとなったキュアエールが掴みかかろうとするもすかさず軽くいなし、「Good Bye!素敵な悪夢を見てね。Kiss、Kiss!」と挑戦的な言葉を残して引き上げるなど、心理戦においても理知的で駆け引き上手な面を覗かせた。
嫌いなタイプは薬師寺れいらのような、アスパワワにあふれた美人(第26話にて本人談)。
そのせいなのか、母親の大切な場所を奪わせまいと懸命に戦うさあやに対しても本気で苛立ち、「うざっ」「そのイキった口、ふさいでやんな!」と言葉を珍しく荒げていた。
また、本編中では「老い」への嫌悪感をしばしば見せることがあり、彼女が「時間を止める」という社長の計画に加担している動機と繋がっているようだが…。
最終形態
第45話においてクライアス社社長・ジョージ・クライの心を掴む事ができない上に、迫りくる老いへの恐怖と度重なる失敗から功を焦るあまりに暴走するジェロスが、以前ジンジンとタクミが無断で使用した「トゲパワワを使って照射する光線で限定的に時を止められる装置」に溢れるトゲパワワを、自らの意思で飲み下して猛オシマイダーと化した姿。
自らの意思で怪物化した影響なのか、今まで人間そのものがオシマイダーと化した時とは違って自我を保ち続けており、怪力と、口から吐き出す時を止めてしまう光線を主な戦力としている。
各話の動き
あざばぶ支社の新入社員(第18話~第23話)
第18話、ダイガンから嫌味を言われるパップルの様子を見物する形でワンカットのみ初登場。
第19話にて本格的に活動開始。自分のジェンダー観を否定されて苛立つ愛崎正人の前に姿を現し、「ハーイ、キミ。とってもナイスな顔しているわね。I get your トゲパワワ!」と、彼を捕えてオシマイダーを召喚する。オシマイダーはプリキュア達に倒されるが、健闘を讃えるのかのように拍手をわざとらしくしながら「友情も愛情も吐き気がする程嫌いなね」と彼女らを挑発。カッとなったキュアエールが食って掛かろうとするも、上述の通り軽くいなして撤退する。
新たにあざばぶ支社に配属された一社員として第21話で正式に紹介され、話を聞かされておらず警戒心剥き出しなパップルに、「こう見えてわたし、先輩の事とっても尊敬していますのよ。失敗続きでもここにまだ座っていられる神経の太さ、称賛に値するわ」と丁寧な女性語ながら強烈な皮肉を浴びせた。
出撃したパップルの元には「見学」の名目で現れ、「先輩の仕事ぶり、見学に来ました。でも苦戦中かしら?」と嫌味を言う。苛立ったパップルはオシマイダーをさらに巨大化させて面目を何とか保とうとするが、結局敗北してしまった様に「(反面教師として)参考になりましたわ、先輩。See You!」と明るい声で去っていく。パップルはジェロスの背中を睨みつけ、愛用な扇子をへし折る程に怒りを爆発させていた。
第22話ではそのパップルの彼氏と何故か二人っきりでベッド付きの部屋にいた。
それをパップルに目撃されて「なんでアンタがここに?」と問い詰められたときには、その疑問には答えは出さず「Why? なんでだと思う?」と余裕な態度で返していた。そして意味深に「鶴の恩返し」の童話の一節を語り出す。「おばあさんは戸の隙間から中を……」 そう、見てはいけないものを見てしまったなら、愛するものと別れなければいけないという暗喩だ。
上述の持論からジェロスがこの彼氏に本当の恋愛感情を持っているとは考えづらいが、当の彼氏は同じ部屋にいたにもかかわらずパップルには背中をずっと向け一瞥もくれず言葉もかけなかった。
パップル自身は自分が捨てられたと認識し、その絶望から自らオシマイダー化する。
パップルに地位を放棄させ、会社から追い出すための作戦としては上々だろう。
ジェネラルマネージャーに就任(第24話〜第33話)
第24話で前述の通りジェネラルマネージャーに就任。とりあえず基本的な方針は今まで通りプリキュアとの接触が中心とのことで、ナイトプール会場に水着姿で早速現れる。
結論から言うと猛オシマイダーは倒されてしまうが、映像を見たジョージ・クライは特に気にしないどころかプリキュアの中でも一際未来に対する思いを持ったキュアエールに対する興味をますます強めるのだった。
なお、本話放映後のタイミングでジョージ=パップルの彼氏であったことが関連雑誌でほぼ明言されており、上述の一件はジョージと手を組んでパップルを嵌めていたことになる。
関連雑誌によればジョージとは男女の関係であり、互いに利用し合うドライな関係だったものの、ジェロスなりにジョージの事は愛していたらしい。しかしパップルと同じようにジョージの愛がジェロスに向けられることはなかった。
ジョージやジンジンたち以外だとドクター・トラウムとの絡みが多いが、上司と部下という関係を抜きにしても彼とはそりが全く合わないようで、軽口を度々たたいたり時には本気で脅しにかかったりしている。
第31話では度重なる失敗の責任を上から追及される前に先だって行動。「部下達がわたしの足を引っ張るんです。あの二人をそろそろクビにしたいんですけど……」と社長に提言しに行き、「キミの好きにすればいい」というお墨付きをもらった。
このことは物陰で聞いていたジンジンとタクミを慌てさせ、名誉挽回のためにトラウムの発明品を勝手に持ち出して街の人々の時間を止めにかかるが、装置の暴走によって怪物化。騒ぎを聞きつけ現場にやってきたジェロスはその様子を嘲笑い、同じ会社の仲間なんだから助けてくれと懇願するジンジン・タクミに「そう、わたしたちは仲間……カンパニー。最後くらいは仲間であるわたしのために役に立ちなさい」と、ここでプリキュアと戦って華々しく散れと平然と言ってのけた。どうせクビにするつもりだったので助ける義理も義務などジェロスにあるわけがなかったのだ。
プリキュア達は仲間を仲間と思わぬジェロスの非情さに強い怒りを見せ、それがきっかけになってプリキュアの新たなる力チアフルスタイルが覚醒する。そしてジンジンとタクミは浄化され彼らはジェロスの元を離れることになった。
そして皮肉なことにジェロスは結果的にプリキュアの強化を導いたことになるのだが、流石にこれにはジェロスも極めて不快そうな顔を見せながら撤退した。
責任を押し付ける部下がいなくなったということは、ここからは敗北に対しての言い訳がそうそう簡単にできなくなったことも意味するのだが…。
自暴自棄からの強化(第34話~第44話)
その後しばらく音沙汰なかったが、第34話にて後輩たちがいない孤独に耐えられなくなり引きこもっていたことが発覚。
といっても、自身が「ジンジンとタクミは、解雇しようと思います」などと言ってしまった過程による因果応報や自業自得によるものなので、それで今更落ち込まれても極めて自分勝手である。だが、自分の成功に繋がらない他人は切り捨てるべきだという上昇志向も、孤独への不安感も、同時にジェロス本人の本質であるようである(面倒くさい女子とも言えるが……)。
本人曰くかつてはたくさんの人々に囲まれていたが、誰も最後までついてきてくれなかったらしい。それがトラウマとなって、彼女は自分を常に認めて褒めてくれる人がいないと極めて不安に陥る体質となっている様子。
過去に何があったのかは具体的に明かされていないものの、本人はそれを加齢で魅力がなくなったからと解釈しているようである。
「輝け、輝けと言われ、女子として精一杯輝いた結果がこのざま…………」
「こんな世界、ぶっ壊れればいい!」
壁の時計を叩き壊したりとひとしきり荒れた後、鏡に向かう。
メイクを終えたとき、そこには面影はあるものの妖艶な彼女からは想像しにくいロックバンドのような姿が…………彼女の怒りと絶望を表現しているのだろうか。
そのメイクのまま出撃し猛オシマイダーを暴れさせる。猛オシマイダーの力自体はこれまで同様だったようだが、ジェロス本人が凄まじいトゲパワワ(かつてのパップルとは比べ物にならないぐらいな強さ)を放出して猛オシマイダーを強化。発した衝撃破だけでプリキュア全員を吹き飛ばし動けなくさせるというとんでもない強さを発揮させる。
そのままプリキュアを始末させようとするが、そこにことりがプリキュアを守るため食ってかかる。
ひなせすらも怯えるジェロスの眼力に負けなかったことりがジェロスに詰め寄ると、ひなせとふみとがその後に続き、3人のアスパワワでジェロスのトゲパワワを掻き消してしまった。
このことでプリキュアに逆転のチャンスを与えてしまい、猛オシマイダーは浄化される。
プリキュアに対し、いつもと違い余裕がない声で「アンタたちにもいつかわかるわよ」と言い放つと姿を消した。
しばらくほぼ音沙汰がなかったが、第40話でビシン共々マザーの力を秘めているはぐたんを狙うようジョージから指示され久々に出撃。
猛オシマイダーの相手を麻痺させる能力で苦しめるも、そこになんとクライアス社を裏切ったトラウムが現れプリキュアたちを庇ったことで形勢逆転されてしまった。
暴走の果てに掴んだもの(第45話)
そして第45話では、ジョージ・クライ社長が望む『楽園』をジェロスが真に望んでいないことを社長本人に見透かされてしまう。
そう、ジェロスは自分に流れる時間を止めたいだけであって、世界の時間を止めたいわけではない。
それどころか、彼女の根本にある他人の称賛が欲しいという願望は、ジョージが目指す時間停止した世界だと永遠に叶わない(反応してくれる人がいなくなる、というだけでなくそもそも『若さ』が武器になり得ない)。
ジェロスはその矛盾をわかっていながらも、見ないフリをしていたのだ。
だが、このままでは会社での信用を失うという焦りからいよいよ暴走することに。
そしてジェロスは、かつてジンジンとタクミを怪物化させたトラウムの発明品を持ちだし、大量のトゲパワワを飲み下すことで自らオシマイダー化する。
「どれだけ頑張っても可愛がられるのは若いうち」と暴れまくり、そこにジンジンとタクミが現れたことで、退職後彼らが全く顔を見せなかったことを、過去に自分から離れた人たちに重ね責め立てる。
「あんた達が私の部下になったのも、仕事が欲しいからなんでしょ?」と怒りをぶつけるも、二人からは「足を引っ張ったらいけないと思った」と純粋な答えが返ってきた。その言葉を聴いて、駆け出しだった頃を思い出す。
当時のジェロスは髪にメッシュも入っておらずすっぴんで、ジンジン・タクミと共に小さな部屋に住み、3人揃ってジャージ姿で慎ましい生活を送っていた。カセットコンロで調理した鍋料理を一緒に囲んで食べていたあの頃、彼女は2人に「私、いつか絶対この国のトップに立つわ。そしたら毎日フレンチよ!」と約束していたのだった。
その約束を覚えていた彼らからは、「貴女と一緒に食べるご飯は、(高級料理の類ではない庶民的な料理でも)美味しいご飯であるならば何だっていいんです」と打ち明けられ、「(お互いが歳を重ねていって)爺ちゃん・婆ちゃんになっても…ずっと一緒にいましょう」とハグを受けた。
プリキュア達の手によって浄化された後は、2人からアルバイト先のクリスマスケーキを差し出され、再び彼等と共に、雪が降る中新たなスタートを切ったのだった。(ちなみにこのケーキ、「捌ききれなかった売れ残り」とのことだがジンジンとタクミは「(貴女と一緒に楽しく過ごせるのなら)関係ないですよ」と言い切った。嘗て世間では「女性もクリスマスケーキも、25を過ぎたら売れ残り」という「クリスマスケーキ理論」なるものが存在しており、ジェロスが持つ老いへの恐怖に対するアンサーと言えるだろう)
若さや損得勘定を抜きに、自分と共にいてくれる者の存在を感じられたジェロスが、新たな道を歩み出せることを信じたい。
クライアス社とプリキュアとの最終決戦展開に入ってからは、第47話にてジンジン・タクミを引き連れ再登場。プリキュア達を水上バイクで牽引し、クライアス社の本社ビルへと送り届ける役割を買って出た。
「あんたが言ってた未来、きちんと見せてよ!」
第49話の描写にて、2030年時点では小学生だと判明。
「アカルイアス社のような会社をサクセスする」と述べていた。
キュアトゥモローがはぐみと同年齢かつ14歳時点でクライアス社と対峙すると仮定した場合、本編中の彼女は20代半ば程度と推察される。
余談
名前のモチーフ
名前の由来は「ロストジェネレーション」(就職氷河期)である。
演者について
演じる甲斐田裕子氏は、本作がプリキュアシリーズ初参加である。因みにクライアス社側では、チャラリートを演じる落合福嗣氏についで若い(1980年生)事も上記の後輩設定の由来であると思われる。
名前は似ているが、『Go!プリンセスプリキュア』にロック/クロロを演じた甲斐田ゆき氏とは別人。血縁関係も無論ないがこちらの甲斐田氏とは、苗字つながりで親しくなったと言う逸話がある。
なお、甲斐田氏のニチアサキッズタイム枠での出演は最強銀河 究極ゼロ〜 バトルスピリッツ〜以来である。
曖昧さ回避
同名にエターナルアルカディアに登場する古代人が開発したギガスと呼ばれる6つの破壊兵器の1つがある。詳細はジェロス(エターナルアルカディア)を参照。
関連タグ
プリキュア内
HUGっと!プリキュア クライアス社 ジンジン・タクミ プリキュアの敵一覧
秋元こまち、秋元まどか:緑色のボブカットな髪型とこまちが女性語口調なのが共通している。
ダークプリキュア:緑色のボブカットでぱっつんな髪型と憎悪に満ちた鋭い眼光とルックスが共通している。
クローズ:ロックバンド系の敵キャラクター。顔のメイク・逆立った髪型・トゲ輪等、第34話でのジェロスは彼そっくりの容姿となった。
プリキュア外
ブルゾンちえみ→おそらくは彼女のイメージモデル。パップルの後輩という立場ゆえ、同じ女子芸人路線が意識されたと思われる。