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概要編集

1960年代にアメリカの生化学者ヴァージニア・プリンスが提唱した概念。

その時の定義は「性器レベルで性別を超えたい訳ではなく、出生時に振り分けられた性別と反対の性別 / 性役割で暮らしたい者の呼称」であった。


現在では、単純に「出生時に振り分けられた性別と反対の性別 / 性役割で暮らしたい者」として性同一性障害の者も含んだり、「男 / 女という性別を越えて自己実現を行う者」も含めて、より広義に解釈されて使われている。


日本の性同一性障害当事者の間では、後述するガイドラインの第2段階までを希望する者として使われることが多い。


性同一性障害の者の場合、

MtF(出生時の性別は男性だが性自認女性である人)はトランスジェンダー女性/トランス女性

FtM(出生時の性別は女性だが性自認男性である人)はトランスジェンダー男性/トランス男性

と、それぞれ呼ばれることもある。


また、トランスジェンダーの説明において、自認する性別とは対になるほうの性別に言及する際に「身体/肉体の性別」という言葉がよく用いられるが、この言い方に傷つく当事者も少なくない。そのため、当事者の心理に寄り添った言い方として「出生時の性別/生まれた時に割り当てられた性別」という表現をすることもある。

例として、MtFの場合ならば「身体は男性だが心は女性である人」と言うよりも「出生時に男性として割り当てられた女性」という表現のほうがより適切とされる。よりくだけた表現をするならば「男性の身体で生まれてきた女性」といったところになる。

同様にFtMならば「出生時に女性として割り当てられた男性」、つまり「女性の身体で生まれてきた男性」となる。


Xジェンダー編集

前述の通り、トランスジェンダーとは「出生時に振り分けられた性別と反対の性別 / 性役割で暮らしたい者」だけでなく、「男 / 女という性別を越えて自己実現を行う者」も含まれる。


具体的には自認する性が女性でも男性でもない人、あるいはその両方である人、日によって自認する性別が異なる人、部分的に異なる性別の自認や状態を持っている人などがある。


日本ではこれらの人々は包括的にXジェンダーと呼ばれ、また出生時の性別に合わせてMtX、FtXと表記することもある。


ただしXジェンダーという言葉は日本特有の言い方であり、国際的なものではない。


海外ではXジェンダーに該当するものには様々な分類があり、より細かく定義されている。


代表例:

  • ノンバイナリー(男女どちらでもない、またはどちらでもある人。Non-Binaryの略称「NB」の発音に基づいて「エンビー(Enby)」と呼ぶこともある)
  • ジェンダーニュートラル(男女どちらでもあり中性的な自認を持つ人)
  • デミジェンダー(出生時の性別に違和感を持っているわけではないが、社会的に定義された性別観や役割とは異なる生き方を望む人)
  • サードジェンダー(第三の性。非西洋文化圏の一部では伝統的に認知されており、例としてインドでは法的な性別としても認めている)
  • ジェンダーフルイド(自認する性が流動的であり日によって異なる人)
  • アジェンダー(いずれの性別の自認も持たない人)

日本における「Xジェンダー」とほぼ同じ意味・定義で使われるものとしてはノンバイナリーが最も近い。


トランスジェンダーへの三人称編集

トランスジェンダー当事者に対する性別の扱いや表現は考慮を要する。具体例をあげると三人称は「彼」「彼女」のどちらを使うかなどであるが、一般的には性自認の性別に合わせた表現、例えばMtF/トランス女性(出生時の性別は男性だが性自認は女性である人)に対しては「彼女」を使うことが適切であると考えられている。


LGBTに対する知識と理解が浸透している海外では、公的機関の報道においてもトランスジェンダー当事者に対しては身体/生まれの性別ではなく性自認の性別で表現されることが多い。


また、MtXやFtXなどのXジェンダー(自認する性が女性でも男性でもない、あるいはその両方である)に関しては、個人によって適切な三人称が異なる場合がある。「彼」「彼女」のどちらも使用してほしくない人、あるいはそのどちらを使っても構わない人など、人によって大きく異なる。このような場合はまず本人の意思確認を行うことが望ましい。

英語圏においては近年「He」「She」のどちらにも当てはまらない人物を示すために、本来は三人称複数として使われる「They」を単数形として使用することもよくある。海外小説の邦訳では単数形のTheyにあたる表現を「彼人」(かのひと)と訳していることがある。 ⇒ 単数形のTheyについての記事


トランスジェンダーフラッグ編集

トランスジェンダーの尊厳を象徴する旗(トランスジェンダー・プライド・フラッグ)では下記のような水色、ピンク色、白の三色を組み合わせたストライプ模様のものが用いられている。両端二色に水色、その内側二色にピンク色、そして中央一色に白が配置される。


この旗の考案者によると「水色は典型的な男の子のイメージ色、ピンク色は女の子のイメージ色であり、中央の白は間性、性別移行中、あるいは中性、未定義の性自認を持つ人々」を意味しているという。

TDickcember 31 RAISE YOUR FLAG


性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン編集

性同一性障害の治療は、日本精神神経学会の性同一性障害に関する委員会による「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」の3ステップに沿って行うことが推奨される。


第1ステップ編集

第1は、精神科医による外科的治療へ進むことへの鑑別と治療の確認である。

ホルモン療法は一度始めたら生涯続けなければいけない治療であり、身体に大きな負担となる。

また、生殖機能を除去することは、不可逆の手術であり、治療に進む意思確認は非常に重要であるため、

生活史や実生活の状況の聞き取りなどから鑑別することは重要であり、

その後も治療の確認など精神科医やカウンセラーとのやり取りは継続して行われる。


第2ステップ編集

第2に、ホルモン投与療法とFtMへの乳房切除手術がある。 個人差はあるが、ホルモン療法によって、FtMの場合、筋肉量が増加し、体毛が濃くなり、声が低くなり、月経が停止する。

MtFの場合は、体毛が減少し、脂肪がつきやすくなり、皮膚のきめが細やかになり、乳房が発達する。

また副作用として、FtMには頭髪の減少、挫創(にきび)の増加、肝機能障害、MtFでは血栓症の危険性が増大することが認められている。

さらにこの段階ではFtMへの乳房切除手術も含まれる。


第3ステップ編集

第3に、生殖器に関する手術療法(性別適合手術)である。

FtMの場合、子宮摘出、膣閉鎖、尿道延長および陰茎形成がある。

MtFの場合、豊胸手術、陰茎および精巣の切除、膣および外陰部の形成がある。

これらのうち、本人が望む手術が行われる。


トランス女性の女子スポーツ参加について編集

オリンピックなどの国際的な大会の運営側は歴史において様々な試行錯誤を積み上げており、手術を終えていたり、一定期間以上テストステロン値を下げている等の条件を満たしているなら参加を認める、という形をとっていた(第4章 トランスジェンダー/インターセックス・アスリートのスポーツ参加をめぐる課題-性別確認検査導入の経緯と近年の参加資格規程変更をめぐって-)。手術やホルモン投与後も優位性があるという主張があり、選手からもトランスジェンダー選手の参加に難色を示す意見がある(五輪初トランスジェンダー選手の出場に「悪い冗談だ」 ベルギーの女子重量挙げ選手が異議)が、これについては元アスリートからも反論がある(元世界チャンピオンが語る「スポーツとトランスジェンダー」(ツイッター翻訳)。


2022年6月19日、国際水泳連盟(FINA)はトランス女性の女子部門参加に厳しい条件をもうけた。「タナー段階2(身体的発育が始まる時期)以降の男性の思春期をまったく経験していないか、12歳前の、どちらかであれば」参加可能とし、これに当てはまらない場合は「オープン」というカテゴリーで参加、とするもの(BBC国際水連、トランスジェンダー選手の女子競技への出場を禁止)。

7月1日に、これに対し、国際スポーツ医学連盟(FIMS)は五輪憲章の原則に反する、と批判している(ロイター通信トランスジェンダー選手制限は五輪憲章違反、国際スポーツ医学連盟)。


もともとは、女子部門に男として生まれた選手が参加する不公平を防ぐため、長年性別検査が実施されてきたのだが、1996年のアトランタ大会で8名の女子選手にY染色体が見つかった。いずれも性分化疾患をもつ女性選手であったが、この頃からスポーツ界においても染色体による性別の判定が疑問視されるようになった。かわって重視されたのが、テストステロン値等、ホルモン分泌の状態なのだが、このことがトランスジェンダーMtFの女子部門への参加に門戸を開く結果となった。

時代の風潮もあり、テストステロン値を下げれば女子部門への出場を許すべきだという意見が認められたのだ。(しかし当然ながら、テストステロンの分泌の多寡によって、性別が決まる訳でもなければ、変わる訳でもない)

2021年の東京オリンピックでは、明らかなトランスジェンダーMtF選手の参加が確認されている。


2023年、世界陸連のセバスチャン・コー会長は、男性として思春期を過ごしたトランスジェンダーの選手について、同年3月31日以降は女子の世界ランキング大会への出場を認めないと説明した。これによりMtFがオリンピックの陸上競技に出場することは事実上不可能となった。



トランスフォビアによる差別問題編集

日本においてはまだトランスジェンダーに対して正確な理解が得られている状況とは言い難く、また知識自体も浸透しておらず、同性愛者と誤解・混同されることも多い。


トランスジェンダーへの無理解や嫌悪から差別的・否定的・侮辱的・攻撃的な発言を行う者は「トランスフォビア」と呼ばれ、国際的に問題視されている。


以下はトランスフォビア的行為に該当する例である。


ミスジェンダリング編集

トランスジェンダー当事者に対して出生時の性別を本人に向けて強調したり、故意に本人の望まない性別として扱う(三人称に本人の自認する性別に準じたものを使わない等)などの行為はミスジェンダリング(Misgendering)と呼ばれ、当事者にとっては強い侮辱・差別にあたるため、断じて行うべきではない。


また、ミスジェンダリングを行う側には特に悪意は無く、単に無知や無理解からこのような行為をカジュアルに行うことも多いが(例として、トランス女性であることをカミングアウトした人に対して「あいつ男だったの!?」などという発言等)勿論これらも当事者からは決して快いものではなく、性同一性に関する理解が根本的に欠けている言動であるため、たとえ他意が無くともこのような発言は慎むべきである。


デッドネーミング編集

当事者の多くは社会的な性別移行の一環として本名を希望する性に合わせたものに改名するが、大抵の場合改名前の名前(出生時の名前)は出生時の性別、つまり当人の望まない性別のイメージに合わせて名付けられたものであるため、改名前の名称の使用は本人が許容している場合を除いて極力使わないことが望まれるが、これに関してもトランスフォビア的感情を持ち合わせている者によって故意に、悪意的に改名前の名前を使用されることがある。


このような行為はデッドネーミング(Deadnaming)と呼ばれ、当事者のアイデンティティを否定し侮辱する行為にあたるため、ミスジェンダリングと同様断じて行うべきではない。


勿論当事者の友人や親族等が悪意無く改名前の名前でうっかり呼んでしまうというケースもあるが、当事者にとってはこのような場合でもあまりにも多く続くと当然快くは思わないため、十分に気をつけたい。


アウティング編集

トランスジェンダーであることを公表していない状態で自認する性に合わせた生活をしている人に対して、本人の意思に反して出生時の性別を第三者に漏らす、秘密を暴露することなどの行為は「アウティング」と呼ばれ人権侵害に当たる行為であり、近年LGBTへの配慮・理解の欠如によって起こる問題としてよく取り上げられ、無理解な人物や企業がこのような行為を行うことで事件化に至ったケースもある。


トランスパニック編集

宗教的な理由によってLGBTへの潜在的な差別心・嫌悪感が強い西洋諸国ではネット上での差別的発言のみならず、現実世界においてセクシャルマイノリティに対して暴力的な迫害が起こることは珍しいことではなく、中には「友人や親族がLGBTであることを知ったショックで殺害する」などという、日本では俄に信じられないような事件も依然として数多く起きている。このような事例は、ゲイに対する場合は「ゲイパニック」と呼ばれ、トランスジェンダーに対する場合は「トランスパニック」と呼ばれる。


トランスパニックの場合、トランスジェンダーであることを隠し、表立っては生まれつきの女性として社会生活を行っているトランス女性が特に被害に遭いやすい。よくある事例では彼女達が異性愛者の男性と付き合い、後にトランスジェンダーであることが判明したような場合である。トランスパニックを起こした男性側がトランス女性を女性として認めず、侮辱的な言葉で罵倒しながら暴力を振るう、最悪の場合激昂して殺害するような事例は数多くある。



社会的な定義のあいまいさ編集

令和6年、岸田内閣は、須藤元気議員の質問主意書に対し

”「トランスジェンダー」については、政府として確立した定義を有していない。”

との答弁書を、参議院議長に提出した。


ジェンダー論者やトランスジェンダー当事者、各種団体によって、自らの理想や、トランスジェンダー像は提唱されているのだが、学術的な統一見解に乏しい状況であり、詳細部分については何が定説なのか分からないという問題もある。

WHOの見解も時の流れにつれて変更されることがあり、性同一性障害については精神障害の分類から除外されることとなった。しかし本邦における”性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律”はあくまで障害者を特例として救済する趣旨であるため、矛盾が生じている。


西側先進国ではトランスジェンダリズムが広まりつつあるものの、世界全体で見れば、宗教や文化の違いがあるため、いまだ世界標準の考え方であるとは言い難い。

先進国においても、思想の自由が当然あるので、むりやりに教化することは許されない。



過激派フェミニストによるトランス差別編集

近年、教育の場では少しずつ人権回復への対応が進みつつあり、性自認とその性別で人生を送ろうとする意志を確認した上で男子校女子校への入学が認められるケースが出てきている。


しかし過激派(ラディカル)フェミニストの中にはトランスジェンダーの者に対して存在を認めない、あるいは差別言説やヘイト扇動を行う者が現れるようになった。性自認に基づくトイレ風呂場の使用やスポーツへの参加が否定の対象になりやすい。


特にトランス女性(出生時に割り当てられた性別が男性で性自認が女性)である場合、性別移行手術を終えていなかったり、それを行う意図の無い当事者の場合、こういった自称フェミニストからは女性と認められず、「絶対的被差別者であるはずの女の領域に入ってくる男」とする為にミスジェンダリング(性自認と故意に逆の性別で扱う性差別)を行った上で弾圧・攻撃の対象にされることがある。


こうした自称フェミニストはターフ(TERF)とも呼ばれ、SNS上では被害者を自殺に追い込むまで弾圧を続ける事例も起こるなど深刻な人権侵害として近年問題視され始めている。


ターフ(TERF)とは、そうでない立場の過激派フェミニストたちと区別する為の言葉である「Trans-Exclusionary Radical Feminist(トランス排除的過激派フェミニスト)」の略語だが、こう呼ばれる集団には「トランス排除的だが過激派フェミニストを自認しない」者も多い。


情報化が進んだ現代において、世界各地でのスポーツ、トイレ等の使用における係争・対立の事例、現地のマジョリティからの批難や、否定派・懐疑派に転じたフェミニストの所論は、辞書を使えば解読できる人もすくなくない英語で書かれることで、また和訳されることで日本にも流入している。


その結果、日本国内のフェミニスト、Twitterを活動の中心とするツイッターフェミニスト(略称ツイフェミ)内の立場も二分され、支持派・反排除派は前述のターフを強く批判、批難し、通報も呼びかける主体となった。


トランスジェンダーに対する認識の対立、否定的立場はフェミニストの一派に限定されたものではない。トランス女性(出生時に割り当てられた性別が男性で性自認が女性)の女子スポーツ参加に否定的な者は日本におけるツイッターフェミニストと対立する「表現の自由」クラスタにも存在する。


フェミニズムは、そもそも女権拡張主義であったため、テリトリーを侵される事に強い拒否感を覚える者も少なくない。

トイレについて言えば、昔は女子用の公衆トイレも無かったので、運動によってそれらを獲得したという歴史観を重視するフェミニストもいる。むしろフェミニズムを勉強するほど、そういった世界観は強化されるのだが、トイレの安全を求める素朴な生活感覚とも合致するために、この問題において譲歩は難しい。


フェミニストにとっては、『ジェンダー』という言葉自体、男女格差是正の為に必要な概念であったため、それをトランスジェンダーに奪われるのではないか、と危機感を抱くケースもある。女子トイレにしても、女子スポーツにしても、女権拡張運動によって獲得(奪回)してきた、いわば陣地なのである。

そういった意味で、トランスジェンダー(MtF)の台頭は、女権拡張主義者の目には脅威に映ることがあり、両者の思想は対立しがちである。


宗教右派・保守派からの弾圧編集

キリスト教圏を始めとする西洋諸国では宗教右派・保守派が反トランスジェンダー運動の大勢力となっており、彼等によるLGBTQの存在そのものを否定するような言説は支持者に和訳される形で日本語等の非西欧系言語のネット環境でも目に入る形になっている。


家父長制への認識などにおいて本来相容れない立場であるフェミニストであってもこれを取り上げる(韓国現代フェミニズムにおけるTERF(トランス排除的ラディカルフェミニスト)批判――『文化科学』(2020年冬号)掲載論考紹介)という形で一種の共闘状態にもなっている。


アメリカでは現大統領ジョー・バイデンは支持派ながら、保守層が優勢な各州でトランス当事者のスポーツ競技参加を禁じる法案が現れる事態となっている。前大統領のドナルド・トランプもトランス女性の女子スポーツ参加に反対しており、バイデンがそれを覆そうとしているのに保守層が対抗している、という構図である。


前提情報の欠如、誤情報の流布の問題編集

ネット上でこうした事柄が取り沙汰される際、前提となる情報(MMAにおけるファロン・フォックス選手とシスジェンダー女性選手との試合で起こった眼窩骨折の負傷はシス女性選手同士でも起こる負傷である事など)が言及されないまま進んでしまうことがある。フォックス選手の事例では右派により「眼窩骨折」が「頭蓋骨骨折」と曲げられた上で拡散された。


「風刺サイト」から発された「鹿自認」「鹿ジェンダー」なるネタが流布された例もある(ロイター通信によるファクトチェック記事(英語))。


フェチ用語との混同による問題編集

英語圏には「女性だと思ったら男性だった事案」を示す「trap」というフェチ用語があり、元々の文脈では所謂「男の娘」とほぼ同義であり、架空・実在問わずそのような事案を誘発する存在に対して使われていたが、やがてこの言葉がMtF/トランス女性の当事者に対して無配慮に使われるということが頻発し、当人が深く傷つくだけでなく、無理解な者が「trap」というレッテル貼りをしながら当人達を攻撃し人格否定するなど深刻な問題が多く起こり、「trap」という言葉自体が差別にあたるとして物議を醸した。


その結果、2020年に英語圏の大手掲示板サイト「Reddit」ではトランスジェンダーへの差別的表現にあたるとして、上記のような意味合いでの「trap」という言葉の使用を禁止するという事例があった。


勿論、男の娘とトランスジェンダー女性は意味が全く異なる存在であるが、配慮に欠ける者達によって元来の文脈から外れた使われ方をしたために差別的用語となってしまった例と言える。


現在、英語圏において明確に「男の娘」を示す言葉では「femboy(フェムボーイ)」が最も一般的に使われており、対象の自認する性があくまでも男である場合や、自らそう自称している場合にこの言葉を使う分にはなんの問題も無い。


男の娘ふたなり等を始めとした性別に纏わるフェチ用語とトランスジェンダーは時に混同されやすく、当事者に対して無配慮な使用をした場合上記のように差別的意味合いを持つ言葉となってしまうことがあるため、くれぐれも混同しないことが望ましい。


思想的な対立編集

トランスジェンダリズムは当事者と周囲の繊細な配慮によって成り立つ世界観であり、配慮を欠いた瞬間に台無しになってしまう。

周囲のちょっとした言葉遣いひとつで当事者の機嫌を損ね、摩擦・衝突に発展しかねないため、常にトランスジェンダーにとって望ましい振る舞いを求められる。その世界観を維持するために、相応の緊張を強いられ、消耗さえするのだが、そういった事に疲れた者達がトランスジェンダリズムに異議を唱える事も少なくない。生理的なトランスフォビアや宗教的運動とは原因が異なるが、結果としては類似のトランス批判・反対運動に繋がることがある。


ジェンダー思想への理解度についてマウント合戦が起こったり、考えが異なる者に対する弾圧も現実に起こっている。本来、思想は一人一人違うため、唯一の正解を押し付けられる事には誰しも抵抗を覚える。

「これこそが政治的に正しい」という主張・提唱はそもそも反発を招きやすく、かえって調整が難しくなりがちである。(ポリコレ


理想を維持するために緊張を強いられるのは、実はトランスジェンダー当事者にとっても同じであり、まず現実の自分と理想の自分とのギャップに悩まされる。

理想の自分に近づき、維持する為に支払うコストも甚大であるため、精神的には社会に配慮を求めがちになり、摩擦も生じやすい。

また、トランスジェンダーというだけで全員が同じ思想を持っている訳ではなく、生き方や価値観はそれぞれであるため、当事者間でも喧嘩は発生する。


ピクシブ株式会社における事件編集

pixivとピクシブ百科事典を運営するピクシブ株式会社においてもトランスジェンダーへの加害事件が起きてしまった(Pixiv従業員セクハラ裁判事件)。

ピクシブ株式会社に勤務するトランスジェンダー女性に対し、上司である男性がセクシュアルハラスメントを行った。

社内のセクハラ被害者にはシスジェンダーの女性たちもおり、共に会社に相談したが……

原告「周りにも同様の被害を受けている女性がいて、(会社に)一緒に相談したが、生来の女性と私に対するセクハラでは『重みが違う』と言われ、本当に悔しい思いをした」「男だから平気だと思った」セクハラ受けたトランス女性、会社と上司を提訴

このようにpixiv社内においてトランス女性に対する性加害を矮小化する対応が行われた。


問題の男性上司による加害内容として以下が挙げられている。

・同意の無い身体的接触

・「キャバ嬢にしか見えない」「ハプニングバー通いしてそうな顔だ」という性的なレッテルを貼る発言

・「男だから平気だと思った」に代表されるミスジェンダリング

2018年に男性上司から「謝罪」がされたが、セクシュアルハラスメントはその後も続いた。

原告女性は2019年に会社のセクハラ相談窓口となっている弁護士に相談し、会社は両者の業務場所を離し同じ事業部にも入れない、被告男性を飲み会等に参加させない、という対応をすると約束。

男性上司は懲戒処分で執行役員を外されたが、同じ事業部に回される等他の対応は徹底されなかった。

そのため、原告女性は男性上司だけでなく、ピクシブ株式会社も対象に裁判を起こした。

ユーザーたちの対応編集

ピクシブ株式会社では過去にもpixiv社長セクハラ事件が起きており、加害者の社長は辞任したのだが、2018年のこの事件と同年の4月に男性上司のセクシュアルハラスメントは始まっている。


コンプライアンスの底が抜け果てたこの状況において、pixivユーザーの間ではプレミアム会員の退会や作品削除・公開停止という形で抗議が行われることになった。




トランスジェンダーの問題点編集

トランスジェンダーの人権を改善する活動が増加している一方では、当事者であるトランスジェンダーの中には守られるべき立場を傘に着て女性に対し不快感を与えたり危害を加えたりする者も少なからず存在している。

例を挙げると、体が男性の女性が何の問題も無く女湯や女子トイレに入れるようになった場合であり、それに対する第三者の苦情が「人種差別」と見なされ、結果的に女性の権利を奪って危険に晒す可能性も存在する。

それらがトランスジェンダーの印象を悪くするという悪循環を招いている。こちらを参照

要するに「多様性の尊重」と「価値観の押し付け」を履き違えていると言える。(押し付けのほとんどは、個人的なものが目立)


 と言う事が書かれているが、実際はトランスジェンダーの当事者が銭湯やトイレに関するトラブルに巻き込まれる事はほぼ無いという。(銭湯やトイレに侵入して逮捕される事件があるが、殆どが出生時の性別と性自認が一致するシスジェンダーの男性が多い)




性分化疾患との混同編集

トランスジェンダーの思想を擁護するため、あるいはXジェンダーの概念を補強するために性分化疾患を引き合いに出す者もいるが、全く別の概念である。


トランスジェンダーでない者に対して「男でも女でもない」「中性」「本当は逆の性別なんじゃないの」などの言葉をかけるのは普通に揶揄であって、MtFに向かってわざわざ「本当は男じゃん」と言って傷つけるのと同様の人格否定にあたる。

性分化疾患についての知見を蓄積してきた臨床研究機関では、ヒトにおいて男女以外の「第三の性別」は否定されている。

性分化疾患をもった女性は女性であり、性分化疾患をもった男性は男性である。

(性別の判別が極めて難しい、ごく稀な症例において、判別に社会的価値判断が介入する余地が全く無い訳ではないが、その場合もスムーズな排泄を確保するためや、手術の簡便さを天秤に掛けているだけであって、自由に好きな性別を選ぶという性質のものではない。)


トランスジェンダーの素養がない人間にとって、無闇に性別を忽せにされることは、アイデンティティが揺らぎ、精神が不安定になるリスクがある。只でさえ自分の体に苦労している者や、性分化疾患の当事者、あるいは不妊に悩む者にとって「男でも女でもない」「本当は生まれの性別とは逆の性別」等と言われる事は精神的苦痛でしかない。




トランスジェンダー追悼の日編集

アメリカを中心に、毎年11月20日は国際トランスジェンダー追悼の日として認識されている。

前述してきたようなトランスフォビア的差別・迫害によって自認する性を極端に否定された上に命まで奪われる事態が海外では無視できない件数で起きているため、トランスジェンダーの尊厳と権利について考え、トランスフォビア的心理による暴行で命を落としたトランスジェンダー当事者達の犠牲と悲劇を忘れないようにするための日となっている。




当事者への配慮について(トランスの男女共通)編集

トランスジェンダー全般や性別違和を抱えている人への一般的な配慮と同様に、トランスジェンダー女性及び男性の当事者である人への性別に関した表現には配慮を要する。それに加えて本人の意思を尊重する事も必要だ。

しかし、そう言っても、世界的には全く一緒とは限らないので相手の事をよく考えてから人らしく捉えよう。


例:

  • トランスジェンダー女性への三人称は『彼女(She)』を使用する。トランスジェンダー男性『彼(He)』を使用する、
  • 「○○女子」「○○男子」など女性である表現で扱う
  • 俳優の場合は「女優」「男優」として記載する→俳優モデルで男女共通用語に統一する。
  • 病院の診察時には、手術・治療方法(医療行為)に関する乱用を防ぐため、診断記録には必ず性転換の有無を記録しておくことが推奨されている。

等。

しかし、これについてもトランスの男女であっても個人差はあるので個々でその人に応じて個別に配慮する必要がある。配慮は不要と本人の意思で示さない限りは適切な対応をしよう。


また、トランスジェンダーの説明において、自認する性別とは対になるほうの性別に言及する際に「身体/肉体の性別」という言葉が割り当てと識別のためによく用いられるが、この言い方に傷つく当事者も少なくない。そのため、当事者の心理に寄り添った言い方として「出生時の性別/生まれた時に割り当てられた性別」という表現をすることもある。


MtF(FtM)の場合だと「身体は男性(女性)だが心は女性(男性)である人」と言うよりも「出生時に男性(女性)として割り当てられた女性(男性)」という表現のほうがより適切とされる。よりくだけた表現をするならば「男性(女性)の身体で生まれてきた女性(男性)」といったところになる。


また、トランスジェンダーの全体的な説明において、自認する性別とは対になるほうの性別に言及する際に「身体/肉体の性別」という言葉がよく用いられるが、この言い方に傷つく当事者も少なくない。そのため、当事者の心理に寄り添った言い方として「出生時の性別/生まれた時に割り当てられた性別」という表現をすることもある。


医療においては身体の性別の方で適切な治療法を受ける必要がある事については医療法上、仕方がない事とされている。認知されてから医療業界も周知しており、その当事者を想定した手術・治療法・入院患者などのデータ管理(カルテ上の表記)などにおいては今現在、見直されつつある。


性転換の治療を受けた場合、その後の適切な治療法や手術療法そのものが多少変化するので医師に相談する必要がある。


ちなみに、2022年4月1日には民法の改正により18歳は成人扱い可能となっており、性転換の制限年齢は18歳からである。(詳しい事は専門病院の公式サイトを参照)


前世の記憶説が正しければ、「自分の前世はおそらく女性だったのかもしれない」の捉え方の場合もあるだろう。


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性別 ジェンダー ポリコレ セックス 性同一性 性自認

LGBT MtF FtM 性同一性障害



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