マザーハート
まざーはーと
『HUGっとプリキュア』の未来世界において、「未来を育む女神」として人々から認知されている存在。ただし作中の現代世界では誰もその存在を知らない。
未来世界のプリキュアであるキュアトゥモローはこの女神マザーの力を宿している。
マザーは初期からオープニングには登場しており、愛崎えみるとルールー・アムールがプリキュアになった時など、物語のキーポイントにおいて、巨大な黄金の女神像の幻影として姿を現わしていた。その幻影の像の外見はキュアトゥモローに似ているがもっと大人っぽい。
しかし作中では何のセリフも会話もなく、ただプリキュア達に力を一方的に与えるだけであり、視聴者視点からは全くの謎に包まれた存在であった。
その存在が「未来を育む女神」だと判明したのはかなり後半の第37話。
そして第39話で、この女神の力を受けてプリキュアたちの最終フォーム・マザーハートスタイルが誕生した。このことからpixiv百科事典では女神の名前をマザーハートと仮に名付けているが、作中ではこの女神は単に「マザー」としか呼ばれていない。
しかしその後もマザーの背景については一切描かれることなく、曖昧なまま物語は幕を閉じた。
マザーに関して作中で判明した事実はわずかに以下の3つだけである。
- 未来世界のプリキュアであるキュアトゥモローはマザーの力を直接宿している。より正確に言えば彼女が変身に使うミライクリスタル・ホワイトにマザーの力が宿っている。
- キュアトゥモローはマザーの力を全開放して時間の流れを遡り、ハリハム・ハリーとともに未来から現代へと逃げてきた。しかしこのことでトゥモローはマザーの力を使い果たし、はぐたんに変わってしまった。
- クライアス社が現代世界にやってきてミライクリスタル・ホワイトを探していたのは、マザーの力を完全に消し去らないと未来の時間が動き出すリスクがあったため
上述のマザーハートスタイルを生み出すミライクリスタル・マザーハートはホワイトが変化したものであり、クライアス社の面々はこれを「力を失って姿を消したマザーが復活した」と表現している。
このマザーハートスタイルにおける決め技演出は、巨大なマザーの幻影がオシマイダーを抱きしめて浄化するというもの。プリキュアシリーズでは恒例の巨女召喚技である。これを持って「マザーが復活した」と言えないことはないが、逆に言えばマザーは最後まで喋らない幻影としてしか登場していない。なので、そもそも最初から肉体を持っていない、幻影だけでしか姿を現さない残留思念的なものかもしれない(未来世界というならAIの一種という考え方もできるかも)
また、未来に存在するのならそれ以前の歴史、つまり作中時点の時間軸にも存在している可能性もあるが、上述のえみるとルールーがプリキュアになった時に登場したのが現代のマザーと断言はされていない。
放映完結後に刊行されたコンプリートブックでも、マザーの詳細については言及されていない。
意地の悪い見方をすれば、プリキュア達にアイテムや技を授けてくれるわかりやすい存在として時の女神というものを設定はしてみたものの、この女神の背景について何かしら描いてしまうと「それではこの現代で未来のマザーにつながる何かに干渉すれば戦いそのものをなかったことにできる」となるリスクがあったので、できる限りマザーの描写は曖昧にするという方針がとられたのではないかと思われる。
(過去作であった似たようなケースとして、『キラキラ☆プリキュアアラモード』32話がある。この話ではプリキュアたちが敵幹部のビブリーと共に過去の世界へタイムスリップするのだが、脚本の初期稿は「過去の時代のビブリーが過酷な目にあっていたことで彼女が闇に落ちた事実をプリキュア達が知る」という流れになるつもりだったが、決定稿では現在のビブリーの脳内回想で過去のシーンが一瞬フラッシュバックすると言う抽象的な演出に変えられている。この理由は「過去のビブリーが救われると現代のビブリーがいなくなるので、過去のビブリーを助けることは脚本上ではできない。救われない悲劇を事細かに描くのは後味が悪くなるので、ここは抽象的な演出に変えた」ということ)
なのでそもそもこのマザーには背景設定のようなものはスタッフもいちいち考えていない可能性も結構ありそうだ。
が、その一方でアナザーはながマザーの雛形となったのではとの考察も存在する(詳細はクライアス社の項目の「残された謎/クライアス社の持つ技術のルーツ」の節にて)
アニメージュHUGっと!プリキュア特別増刊号での座古明史SDへのスタッフインタビューでは、マザーのデザインについて「時間にまつわる神話について調べたんですよ。マザーの原画はその女神を参考にして描いてもらいました」としている。
その女神が何かは語られてないが、女神で時間に関係するとなると、有名どころではギリシア神話の季節女神であるホーラ三姉妹がいる。
季節の秩序を守るこの三姉妹は、古代人にとっては生活そのものの支配者でもあった。よってこの三姉妹は花や植物の生長の守護者という身近な属性だけでなく、人間社会の秩序や平和の守護者という側面も持つ。この意味ではマザーのイメージに近い。
特に三姉妹の一柱であるディケーは正義の女神アストライアー(ローマ神話ではユースティティア)と同一視される。このアストライアー(ユースティア)は裁判所におかれている正義の女神像のモチーフとなっている。
マザーはビジュアル的に正義の女神像を彷彿とさせるものがあるので、このあたりがモデルになっているのかもしれない。
また座古SDは同誌で「キュアトゥモローはOPの女神に寄せた感じになるようにお願いしてデザインしてもらった」とも語っている。
本作のキャラクターデザイナーである川村敏江は、マザーをデザインした時はトゥモローのことは聞かされてなくズバリ神話に出てくる女神様そのもののような造形にしていたので、それを「はぐたんの成長した姿」として落とし込むのに苦労したということ。