満と薫
みちるとかおる
この記事はネタバレを含みます。
ダークフォールの幹部であり、『空の泉』の支配者。首領・アクダイカーンが同じ命の炎を分け与えて生み出した双子の姉妹である。
赤いショートヘアーの少女が満で青いロングヘアーの少女が薫。
第23話のアバンタイトルの満と薫の回想によれば、満より薫の方が先に生まれたようであるが、姉・妹の区別は特に無い。
外見があまり似ていないことも本人達は言及していない。また、公式ですら「双子だけど似ていない」とコメントしている。もっとも、現実でも双子だからといって全ての双子の顔が似るわけではないが。
出生上本質的には人間ではないため、人間の常識を適用するのも筋違いなのかもしれない。
自分たちに命を分け与え生み出してくれたアクダイカーンには強い忠誠心を持っている。
2人とも冷めた性格をしており、失敗続きのダークフォールの同僚たちをよくけなしていた。
外見は人間と大差ないが、人間界潜伏時は瞳が暗色系に変化する(普段は白みがかった赤/青)。
初登場は第14話。当初はプリキュアである日向咲と美翔舞の弱点を探るべく、緑の郷に潜り込んで夕凪中学校に転入し、咲と舞に接近しながら彼女達の親しい友人を演じるようにしていた。
初期は同話から登場していたドロドロンに対し作戦のヒントを与えるなどするだけで、本人たちは直接咲と舞に攻撃を仕掛けていなかった。
だが、ドロドロンの失態を見かねたのか第19話では自分たちで咲と舞の心がすれ違うように仕向け、ドロドロンが退場した後の第21話では初めてウザイナーを召喚した。
この時には既に「アクダイカーンへの忠誠心」と「緑の郷を心地よく感じる気持ち」との間で葛藤するようになっていた。
翌22話では意を決して遂に自分たちの正体を明かし咲と舞と直接対決を挑むことになるが、やはり緑の郷との関わりの中で心のあたたかさというものに強く感化されていたため、本気で打ち合うことが出来なかった。
やがて満と薫はアクダイカーンへの忠誠心と自分たちの心の中に芽生えた人間的な感情との強い葛藤の果てに、プリキュア(と人間)への敵意を失ってしまう。
続く第23話ではゴーヤーンにより咲と舞と共にダークフォールへ強制連行され、アクダイカーンの前でプリキュアとの和解について責められることになる。
アクダイカーンを説得しようとしたり、咲と舞が必殺技を放つ様から目を逸らしていたりしたが、それも虚しく裏切り者としてプリキュア共々消されかけてしまう。その力から咲と舞を緑の郷へ逃がし、空の泉を浄化させる分の「奇跡の雫」を託し姿を消した。
…と同時に、咲と舞を除いた全ての人間が満と薫に関する記憶を失ってしまう。
しかし第25話でミズ・シタターレが口を滑らせたことにより、実際はアクダイカーンの手でダークフォールで眠らされていたことが発覚する。
その後、第32話以降の後期EDで登場するも、長らく本編からは姿を消していた。
しかし第41話終盤、遂に本編に姿を表す。
そして翌第42話で咲と舞の危機的状況に呼応、2人の強い思い、緑の郷の精霊の力により遂に復活を果たした。生みの親アクダイカーンへの恩義と、かつての同僚に「裏切り者」と罵られることに葛藤を覚えるも、「自分達の気持ちに嘘はつかない」とダークフォールから遂ぞ離反。以降はプリキュア達のサポート役として戦いに身を投じていく。
ここからの3話では、和解済みのことと、周囲の彼女らに関する記憶が元通りになったこともあってか、緑の郷での日常的な姿を見ることができる。
ただし、その奥では「アクダイカーンへの忠誠心」と「咲、舞、緑の郷の人々と共にいたい気持ち」の間で葛藤し続けていた。
第43話ではこの点に関してキントレスキーから「筋が通っていない」と指摘されながらも、葛藤については一時的に退場する前のように「考えるのをやめて逃避しようとする」のではなく「正面から向かい合おう」としている様子が見られた。
加えて、第44話にてフィーリア王女から衝撃的な宣告が下される。
ダークフォールの滅びの力を元に生まれ、緑の郷の精霊の力で復活した彼女達は二種の力のもとに生きている存在になった。そのため、戦いに決着がつき、どちらかの力が滅びると存在が保てなくなり消滅する可能性を告げられる。
当然ながら恐れを抱くも、「運命は変えられる」「強い気持ちさえ持ち続ければ、いつかきっと願いは叶う」という咲と舞の言葉を胸に、悲観することなく立ち向かった。
第46・47話におけるアクダイカーンとの再戦においても満と薫は積極的な攻撃を行わず、アクダイカーンを説得することに従事していた。説得が通じず、「これ以上咲と舞を傷つけることは許さない」となったときでも説得を諦めていなかったため、忠義や恩義を忘れていないことが窺える。
そのためか、咲と舞と和解してからも一貫して「アクダイカーン様」と呼んでおり、一定の敬意を持っていたようだ。
最終決戦では独自の戦闘形態を得て戦いを繰り広げる。
全てが終わった後は、生みの親であるアクダイカーンが消滅、滅びの力が失われたことで自身達も消滅しかけるが、緑の郷の精霊たちの力とフィーリア王女の協力により命を繋ぎ止めた。
平和になった世界では咲や舞たちとともに暮らしているらしく、エピローグでは宮迫学や安藤加代らと交流するシーンや、咲と舞と共に四季を過ごすシーンが描かれている。服装も本編では見せなかったような、年頃の少女らしい私服が数多く見られる。
映画「プリキュアオールスターズ」にも、ゲストとして姿を見せている。
「キボウノチカラ〜オトナプリキュア‘23〜」では、「ダークナイトライトちゃんねる」という動画配信チャンネルを運営していると思わしき描写がある。
最終決戦時はムープとフープの力を受け、独自の変身形態を得た。
それまでの2人はプリキュアの仲間になってからもダークフォールの刺客としての姿(灰色の衣装)を着込んでいたが、この姿はムープとフープが源泉になっていることからキュアブライトとキュアウィンディと同じ色合いをしている(デザインもある程度似ている)。
ちなみに、後期EDで先行して見られるが、この時から目にハイライトが入るようになった。
妖精の力を受けて変身したことから満と薫がプリキュアに覚醒したと誤解されがちだが、この二人はプリキュアという扱いではない。公式から違うと言及されるまではファンの中ではプリキュア扱いをされることは多かった。
プリキュアでないという定義は、設定を作り上げた鷲尾天プロデューサーや小村敏明シリーズディレクター(監督)によってインタビューや公式のメモリアルブックで言及され、その際に演出やデザイン上においても(フリルや装飾を減らすなど)プリキュアと差別化していたことが示唆されている。
このため、映画「プリキュアオールスターズ」で登場しても変身はしていない。
これにより、二人はプリキュアではないということが明確に言及されたが、誤解を引きずったファンがプリキュア扱いしていることもある。
プリキュアではないということから、変身後の姿に特別な名前はないと思われていたが、アフレコ台本では「満ブライト」と「薫ウィンディー」(原文まま)。DVD-BOXのメモリアルブックでは薫・風フォームと満・月フォームという名前が設定されていることが明らかになった。また、プリキュアではない≒重要人物ではないという意味ではない。ただしプリキュアなど本来の変身ヒロインとは異なる存在であることには、本編中でも意味は持たされている。
『映画プリキュアオールスターズ春のカーニバル♪』では、主題歌である『まかせて★スプラッシュ☆スター★』の新作映像パートにて、最終決戦ぶりにこの姿のふたりが登場している。
HUGっと!プリキュア第37話後半にも後ろ姿で一瞬だけ登場している。この時、この姿に変身しているため、まだ変身自体は可能なようである。
本作『ふたりはプリキュアSplash☆Star』は二年構成として企画されたが、大人の事情で一年に縮まったことが各所で語られている。そして、キュアブライトとキュアウィンディは元々は二年目に登場させる予定だったものを、一年短縮により前倒しで登場させたことが判明している。
「ブライトとウィンディは元々は満と薫のために用意されたコスチュームではないか」と推測するファンもいたが、元々この姿は二年目があった場合の『咲と舞』のために用意した設定で、満と薫とは本来関係がないことが明確にスタッフから語られている。
二次創作においては咲をブルーム、舞をイーグレットにそれぞれ固定した上で、満にブライト、薫にウィンディを割り当てる事例も見られる。
元々満と薫は、成田良美がシリーズ構成に就任した後に提案されたキャラで当初は存在しなかった。
五行思想をモチーフとしているダークフォール五大幹部からやや外れた存在であるのはそのため。
プリキュアシリーズにおいては、シャイニールミナスやミルキィローズのように「プリキュアではない」と明言されていた番外戦士達がいるが、彼女らが後にプリキュアオールスターズの一員(プリキュア数)としてカウントされた例もある。ただしこれについては身も蓋もないことを言えば「当時の商品展開において制作された商品な都合」であり、便宜上そう数えられているに過ぎない例外扱いに過ぎない。
もしも当初の予定通りに二年目が作られていたならば、変身後の満と薫が毎週活躍するようになることで、ルミナスやローズと同様の何らかの変身キャラが用意されて商品化(この二体も当時はタイトルに「数」を示すものあったため、プリキュアとしては増やしづらかった)され、プリキュアオールスターズに仲間入りしていた可能性はあったかも知れない。
たらればの話ではあるが…。
シリーズでの位置づけ
組織を裏切ってプリキュアに協力するキャラの祖先としては、入澤キリヤが存在する。満と薫の画期的なところは、プリキュア達と長らく共闘、前作のシャイニールミナスのようにプリキュアをサポートする立場にあったことである。しかもルミナスとは違い攻撃面での援護も多かった。
関連性こそ特に言及されていないが、裏切ってプリキュアと友情を深め、共に戦うというコンセプトは、後にキュアパッションから始まる「寝返るプリキュア」が登場している。ある意味二人はそれらの始祖的な存在であり、後の似た展開の礎を築いたであろうことは想像に難くない。
逆に言えば、プリキュアに覚醒せずに寝返った敵キャラで、レギュラーという形でほぼ1クール近くバトルで共闘したというのは、長いプリキュアシリーズの歴史でも満と薫しかいない。
後の作品で、プリキュアに覚醒せずに寝返った敵キャラは、バトルではなく日常を支える支援者となるのが基本で、戦ったとしても決戦などごく一部となっている。
本来予定にはなかった、正にイレギュラーなキャラではあったが、スタッフからも作品上において大切な存在と考えられている。当時の子供向け製品のパッケージにこそほぼ登場はしていないが、デザインを担当した稲上晃は、後年のイラスト寄稿の際や、画集の表紙にはしっかり彼女達を描いているなど、関係者からの思い入れも強い。
オールスターズシリーズでも、大切な存在だからこそ「中途半端な立ち位置では出したくない」と語られており、『DX2』のようにしっかり役割を与えられた作品以外では背景に立つ群衆の一人としての登場に留まり、台詞も存在しなかった。NewStage以降はあまり登場しなくなったが、それでも出番や存在感はある方である。
立体化としては2011年に「グッとくるフィギュアコレクション」で満と薫の変身姿が1回、S.H.Figuartsでは2017年に「キュアブルーム&満セット」と「キュアウィンディ&薫セット」がラインナップされている。
フィギュアーツでは長らく『S☆S』がラインナップされていなくてファンをやきもきさせていたが、初の商品化でいきなり満と薫も入ってくるあたり、この2人が『S☆S』のファンの中でどれだけ重要視されているか(需要があるか)がわかるだろう。
中の人ネタ
満と薫「自身」の昇格は無理と承知していても、星空じゃない方のミユキさんの中の人がキュアエンプレスを演じたように、別な形でプリキュアとなれないものか、と考えるファンも少なくはない。
…しかし、その障害となる無視できない要素があった。
と、同じ作品の中で変身したケースを除けば、
「過去に妖精、もしくはプリキュアの家族役を演じた声優は、自身がプリキュア役として再登場していない」
というジンクスが存在していたのである。
そして、満役の渕崎ゆり子と二代目・薫役の岡村明美は同じく『Splash☆Star』に登場する月の妖精ムープと風の妖精フープを、初代・薫役の今井由香は『スイートプリキュア♪』で南野奏の母・南野美空を、『ドキドキ!プリキュア』ではキュアエースのパートナー妖精であるアイちゃんを演じており、見事にこの条件に合致してしまっている。
そして2014年、岡村が『ハピネスチャージプリキュア!』において、幻影帝国の女幹部ホッシーワとして久々の登場。しかし今回はかつてのパッションやビートのような展開も考えにくく、ジンクスは続行するものと考えられていた。
…だが、意外な形でこれが打ち破られる日がやって来る。
『ハピプリ』第8話のゲストキャラクターとして登場したアメリカのプリキュアチーム「ボンバーガールズプリキュア」。同話のEDクレジットでは伏せられていたが、後にアニメージュ別冊
においてクイーンミラージュ役の國府田マリ子とぐらさん及び石神りん役の小堀幸、そして岡村の三人が担当している(具体的に誰が誰の役なのかは不明)事が明かされたのである。
これにより8年越しの悲願達成となった。やったね薫ちゃん!
満役の渕崎にも何らかの形で登場を望みたいところだが…果たして実現はあるのだろうか?
ふたりはプリキュアSplash☆Star プリキュア プリキュアオールスターズ
入澤キリヤ - 前々作における改心キャラ枠。プリキュアに多少助力しているが、満・薫のようにレギュラー化はなく、続編では登場もせず。
種の三者 - 前々作において、主君ジャアクキングにメンバー全員で反旗を翻した敵チーム。ただしプリキュアとは協力せず第三勢力として行動。
フリーズン・フローズン - 前作の映画版第2弾に出てきた双子の敵幹部。ただし主君への忠誠心は皆無。
ストップとフリーズ(プリキュア) - シリーズ第12作に出てくる双子の敵幹部。
トーマ - 同年度にやっていたヒロインアニメにおいて同様の状況下に置かれていた。但し和解後の結末が違う。
電光石火ゴウライジャー - 濃い赤と濃い青の謎の二人組で、なんとなく雰囲気が似ている。
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