「そういう目をした人が絶望に染まる瞬間…… 好きですよ」
CV:平川大輔
概要
『キラキラ☆プリキュアアラモード』第24話より登場するノワールに仕えるしもべの一人。自称「ただの空っぽの道化師」。
長い銀髪を後ろで束ねた執事風の青年で、同じ上級幹部であるグレイブとは対照的に柔らかい物腰や丁寧な口調で話しかけるなど、慇懃な佇まいをしているが、決意に満ちた人物の顔を絶望に染めることに喜びを見出す残忍な一面を持っている。
しかし彼が浮かべる不気味な笑みは、野心というより、何処か空虚さを感じさせる。特に瞳孔のデザインが独特でいわゆる「目が死んでる」キャラである。
人の心が秘めている闇を感じ取ると「美味しそうだ」と舌なめずりするという悪趣味な性格をしている。アニメージュ増刊号での暮田公平シリーズディレクターへのインタビューによると「エリシオは心に虚無を抱えていて、人間の心が潜在的に持つ闇に興味があり、それを観察したがっている」とのこと。
相手を精神的に追い詰める心理戦を得意としている為、彼が出撃する回はプリキュア達が精神的に追い詰められる展開が多くなる。
また、41話から発揮する真の力を得る為に他の仲間達を嗾け闇の力を増大させるように仕向けたり、その時が満ちるまで長い間待ち続ける(少なくとも100年間待ち続けていたという描写がある)等、自身が力を得る為に忍耐強さと執念深さ、そして手段を択ばない狡猾さを持っている。
能力
カードモンスター召喚
「そこまでです。ノワール・ミロワール!」
キラキラル吸収・怪物召喚用のアイテムはカード。
召喚される怪物の名前はカードモンスターと呼ばれるが、カードが直接怪物に変化するのではなく、他の物体にキラキラルを吸収したカードを纏わせてその物体を怪物へと変化させている。
また、このカードはプリキュアのキャンディロッドと同じくクリームエネルギーを生み出す武器としての機能もある、更にカード自体を投擲用の武器として用いることも可能。生身での戦闘能力も高く、初戦闘ではキュアショコラを軽くあしらっている。
「どんな小さなチャンスであっても逃しはしない」というように自分に有利な状況は見逃さずプリキュアの弱点を遠慮なく突く。
プリキュア達はメンバー個々の弱点をチームワークで補っているということをエリシオは理解しているので、カードの力で相手を拘束する檻やロープを作り出したり移動を塞ぐバリケードを生み出すことで「プリキュア達を分散させる」のがエリシオの基本戦術となる。プリキュア達をバラバラに孤立させてから一人ずつ攻略していくのである。
また、各プリキュアの心を揺さぶる言動でチームワークを乱す姑息な戦法も辞さない。
キラキラルの収集方針はキラキラルが集まりそうな場所や人物をターゲティングし、カードを使ってスイーツはおろか、心からもキラキラルを吸い出して奪い取る。ただし、人の心のキラキラルの量が大したことなければそちらは無視するなど、収集方針はビブリーに近い。
ミロワールとはジャムなどでお菓子の表面をコーティングすることであり、中身ではなく上っ面を飾り立てるという点では彼の本質(後述)を幾分示している。
エリシオが召喚したカードモンスターは以下の通り。
話数 | 外見 | 能力 | キラキラルを奪われた存在※1 | 怪物の素体 |
---|---|---|---|---|
25話 | 百合の花をあしらったモンスター | 葉で攻撃する | ナタ王子と自作スイーツ | 百合の植木鉢 |
27話 | アイスバーとアイスモナカをあしらったモンスター | アイスバーで攻撃する | 立神あおいとモブ男性が持っていたアイスバー | アイスモナカ |
29話 | 時計台と抹茶マカロンをあしらったモンスター | 時計の時刻針(→)で攻撃する。抹茶マカロンを発射する。 | 琴爪ゆかりと抹茶マカロン | 時計台 |
30話 | 不思議の国のアリスのトランプ兵 | ガードを固め、跳ね返す。槍で攻撃する | 剣城みくおよび学園祭にいた人々と、彼女らが作ったフォーチュンクッキー | トランプ兵の形をした看板 |
37話 | ジャック・オ・ランタン | クッキーをブーメランのよう縦に投げて攻撃する。かぼちゃを分裂して落下させて潰す。パルフェの拘束技を分裂により破る | シエルが作ったパンプキンプリン | ハロウィンのクッキー |
41話 | 偽ジュリオ | 黒樹リオの振りをしてスイーツからキラキラルを奪う | なし | ネンドモンスター |
44話 | 雪だるま | 剣城みくの心の闇を利用してキュアショコラを闇に染める | なし | 剣城みく |
※1…カードを見せて、キラキラルをカードに溜めて抜き取る。
人心操作
実はエリシオの能力で最も恐ろしいのは戦闘能力ではなく、人間の心を操る話術である。
エリシオは、人の負の感情を感じ取り、その感情を言葉巧みに増幅させることによって、対象者の心を操ることができるのである。
エリシオはまず、操りたい相手が隠し持つトラウマやコンプレックスを暴露して言葉責めを行う。彼の語る言葉にはある種の魔力のようなものがあるらしく、自分の心の闇を指摘された犠牲者は強烈な自己嫌悪に陥る。それこそ、自分を消してしまいたいと絶望するくらいに。
この状態になると、犠牲者達の心は鬱状態になり、正常な判断力は失われ、催眠術にかかったような状態となる。
そこでエリシオは囁くのである。自分の中にあるドロドロした思いに従えば楽になれると。闇を否定しようとするから苦しいのであって、闇に堕ちれば苦しむことはなくなるのだと。
心が苦しくてたまらない犠牲者達にとってはその言葉は甘美な福音に聞こえる。そして、心の闇が命ずるままに暴走するようになるのだ。
エリシオの人心操作能力はノワールの「負の感情を持つ者をしもべにする」という行為にも似ていると言えるかもしれない。
ただ、ノワールのしもべ達は自らの意思で闇の力をノワールから享受することを同意した「契約関係」であり、明確に自分の意志で正気のまま悪事を行なっていることは注意が必要である。
一方、エリシオによって闇に落とされた者は「夢を見ているようなふわふわした状態」にあるため、説得で正気に戻すことができれば、普通はそれ以上の悪事は行わない。
ただし、既に取り返しのつかないことをしてしまった場合、正気に戻された後に自己嫌悪や後悔で心が闇に沈むことは想像に難くなく、その状態になればノワールとの「契約」に正気の元で同意することにもなるかもしれない。
エリシオの人心操作能力の最も重要な点は、プリキュアさえも闇に落とすことができることだ。
ディアブルが使うような「闇を植え付けて人間の心を荒れさせる力」であればキラキラルの輝きに守られているプリキュアには効かない。
しかし、エリシオの能力はあくまで本人の心の内側に秘めた闇に干渉するもの。そしてプリキュアであっても、恐怖や嫌悪などの負の感情を持っていない訳ではないのだ。
人の心の観察に長けたエリシオは、プリキュア達が心に秘めている負の感情を正確に把握することができる。そして狙ったターゲットを心理的に追い詰める為の周到な罠を用意し、相手が一人きりの時にその罠に落とす。
この効果は抜群で、本作のプリキュア達6人のうち、4人もがエリシオの罠によって一時的にでも闇に落とされている(27話のあおい、29話のゆかり、43話のひまり、44話のあきら)。
その中でも27話のあおいの闇堕ち具合は半端なく、キュアジェラートに変身して無差別な破壊活動をするというショッキングな事件まで起こしている。しかし、いちかの呼びかけによって取り返しのつかないことをする前に正気を取り戻している。
闇のカード
上述した様にエリシオはカードを使って、カードモンスターを召喚したり、プリキュアを攻撃したりできる。
このカードについて、第40話でエリシオによって驚愕の秘密が明かされた。
彼が持っているカードは全て「ノワールが見出した闇のしもべ達」を襲って封印したものだというのだ。つまり、彼が今までカードを駆使して使っていた能力は、かつての同朋の力であるということになる。実際、この40話ではプリキュアに敗北して満身創痍だったグレイブとディアブルが抵抗できないことをいいことにカードに封印している。仲間を犠牲にする非情なやり口にビブリーとリオは戦慄していた。
これがノワールの意を汲んでのことなのか、それともエリシオの個人的な意思なのかは不明だが、41話ではノワールはエリシオが同朋を封印した行為に対して叱咤するどころか、新たな力を得たのならばプリキュアを倒す為に更なる邁進を期待すると奨励の意を示していた。
エリシオはこの封印したカードを使って様々なことができる。
わかりやすい例では、かつてのしもべ達が使っていた能力をカードを介して発動させるというものがある。41話ではディアブルの「人心を荒廃させる能力」を発動させたり、グレイブの手下であるネンドモンスターを自らの手下として使役していた。
そもそも今までカードを武器のように投げつけて攻撃していたが、それも過去のしもべの能力を発動させたものなのだろう。
そしてエリシオの封印カードの使い方の真骨頂は、カードに封印されたしもべの力を自らの身に宿すことである。これは、カードを持った状態で「ノワール・メタモルフォーズ」と唱えることで発動し、エリシオはカードに封印されたしもべの姿に似た衣装に変身する。
戦闘形態に変身した状態で浄化されるとエリシオは無事だが、変身に使ったカードは砕けてしまう。カードの根源を考えると、これはカードに封印されたしもべの消滅を意味し、ノワールのしもべになった者達が最後に行きつく末路とも言える。
しかしこれは逆に考えればエリシオの闇の力の本質はカードであり、本人は文字通り“空っぽの器”とも捉える事ができる。もしかすると、この能力自体が彼の素性に何か関係があるのかもしれない。
因みに、メタモルフォーズとは英語で「変身」を意味するメタモルフォーゼの動詞系である。
各話で変身した戦闘形態は以下の通り。
話数 | 外見 | 能力 |
---|---|---|
41話 | ヴァルキリー | 飛行能力と黒い稲妻で攻撃 |
42話 | マジシャン | 手品を使って様々な現象を引き起こす |
43話 | 映画監督(或いは映写技師) | 任意の映像を見せたりフィルムや円盤で直接攻撃できる |
44話 | 氷の騎士 | 剣術に特化した形態で、冷気を操る能力に秀でている |
45話 | ランスロット | 炎のような羽を背負っている。巨大なランスで攻撃。コンプリートブックによると『火の鳥』がモチーフ |
正体
46話で明かされたその正体は「ノワールの抜け殻」。
100年前の戦いで傷ついたノワールは自分の体を捨てて魂だけの存在になり、「闇そのもの」の塊である現在の姿へと変化した。
そして抜け殻になった自分の体に「エリシオ」という名前と役割を与え、自らの操り人形として闇のキラキラルを集めさせていたのだ。
「空っぽの道化師」という異名は、比喩でもなんでもなく心が空で体だけの抜け殻だったということに由来している。
人工知能やアンドロイドに近い存在と言えるが、本作の前例でいうならばビブリーが持つ自動人形のイルのより高度なバージョンだったとも言えるのだろう。
なお、映画公開に合わせて10月下旬(37話放映後)に発売されたアニメージュ増刊号のプリアラ特集誌でのスタッフインタビューで、貝澤幸男SDから「エリシオは心を持ってないので、それを見透かされないように、カードを使って相手の目を自分の内面から逸らさせているという、ちょっと詐欺師的なところがある」と、彼の正体に関するヒントが出されていた。
48話での描写から精神態となったノワールの依り代として活動していたことが示唆されている。
また、同じ48話では仮初とはいえノワールとルミエルのキラキラルを与えられた影響で長い年月をかけて心と自我が芽生え始めてきており、その為、決して終わる事のない光と闇の対立を眺めている内に永遠に終わる事のない争う人間達を哀れに思い、全てを無に帰すことを思い立つようになった事が語られている。
物語の終盤で彼が決行した人々から“感情”というものを奪い去り管理しようとした行為も、空っぽの自分なら人々をより良い方向に導いて幸せにできると信じた結果であり、決して私利私欲の為ではない。
各話の動き
■第24話
- ネンドモンスターを作っていたグレイブに近づき、ビブリーの邪魔をしたプリキュアの存在とノワールからの伝言を伝える。
■第25話
- いちご坂新聞から「スイーツの国の王子様であるナタ王子が来日する」という情報を見て「甘美なキラキラルの香り」を感じ、ターゲットに定める。早速彼の宿泊するホテルを襲撃し、ナタ王子が作ったスイーツと王子自身のキラキラルをカードに移し抜き取った。
- ゆかりとあきらに見つかったエリシオは、「ステイ!」と叫びつつカードを鉄棒の武器にして攻撃。うっかりゆかりがスイーツパクトを落としていた隙を見逃がさず、カードを用いて鉄柵の檻を作り、ゆかりを変身できなくした。
- ショコラの技を受けて一瞬たじろいだ顔を見せるが、ただの演技であり「なーんてね」と余裕で反撃。「ハウス!」と叫び、カードでの攻撃(鉄棒)でショコラを動けなくした上で、「行儀の悪いワンちゃんにはしつけをしないと!」とさんざんにいたぶった。
- ちなみに「ステイ」は「おとなしくしなさい」、「ハウス」は「犬小屋に入りなさい」という、犬をしつける英語での用語。犬モチーフのショコラ相手に煽る目的でそのような言葉を選んだようだ。
- 「つぎはあなたですよ」とゆかりを襲おうとしたエリシオだったが、半失神状態だったはずのショコラが「ゆかりに手を出すな!」となおも抵抗。「なぜ他人のためにそこまで身を削るのか」と問いただしたが、ショコラは「好きだから……それ以外に理由なんてない!」という情熱的な愛の力で鉄棒の拘束から脱出した。
- 見つめ合うショコラとゆかりに対しエリシオは「そこまでです!」と叫んで「百合の植木鉢」をモチーフにしたカードモンスターを作成した。この二人のあれに付き合いきれなかったかどうかは、定かではない。
- しかしいちか達が駆けつけ、ゆかりのスイーツパクトを取り返した上で全員プリキュアに変身。カードモンスターはプリキュア6人と戦うが、ホイップ・カスタード・ジェラートのクリームエネルギーにつかまり、動けなくなった後、キラクルレインボーで浄化されてしまった。
- 「私はエリシオ、お見知りおきを」と、遅ればせながら自己紹介をして去ってゆく。新幹部としてはごく普通の登場回であったが、実は彼が恐るべき働き者である事が第27話以降明らかになってゆく。
■第27話
- 真夏のロックの祭典「BLUE ROCK FES」の会場にやってくる。スイーツの屋台も並んでいるので通りすがりに少しずつキラキラルを奪いながら、一番美味しい獲物がいないか吟味する。そのとき、フェスに参加していたあおいが泣きながら走っていく姿を見かけ、彼女を追跡する。
- この回ではあおいが憧れの岬あやねとの人気対決で屈辱的な敗北をしてしまっており、心がモヤモヤする中で気晴らしにやってみたキラパティでのスイーツ作りも上手く行かず、八つ当たりとしていちかに暴言を浴びせかけキラパティから逃げ出してきたところだった。自分がすごく嫌な女の子になっていることに自己嫌悪しながら、人気のない場所で「なんでこんなに苦しいんだよ」とうずくまりながら呟く。そこにエリシオが現れ「ならば教えてあげましょう。それを嫉妬というのですよ」との言葉とともにあおいをカードの力で拘束する。
- 今回はあおいが変身前ということもあってか、前回のように串刺しのような形でなく、地面から触手状の闇のエネルギーが噴出してあおいの四肢を縛ってから硬化するという形で彼女の自由を奪っている。
- 動けなくなったあおいに対し、「あなたはわたしにかなわない。スイーツ作りでもお友達にかなわない。伝わってくるんです。あなたの暗い感情」「あなたの闇、わたしが育ててあげましょう」と囁き、抵抗できないあおいの心からキラキラルを抜き取りながら、あおいを催眠状態のようにして操り人形にしてしまう。
- 「あなたを苦しめるものを消し去ってしまいなさい」とのエリシオの言葉に導かれるように、あおいはジェラートに変身して音楽フェス会場を破壊し始めてしまう。他のプリキュアたちは暴走を止めようとするがエリシオはアイスバーのカードモンスターを召喚して他のプリキュアがジェラートに近づけさせないように妨害。
- 最終的にはホイップの必死の呼びかけによってジェラートは正気を取りもどしたが、正直なところギリギリに近かった。プリキュアが操られて敵の手駒になったことは過去にもあったものの、一般人に対して直接的な破壊行為をしたことはシリーズでも初。初出撃ではあきゆかのイチャイチャに当てられっぱなしであまりいいところがなかったエリシオだが、今回は彼の本当の恐ろしさを視聴者に印象づけることとなった。
■第29話
- いちご野高校の尖塔の上に立ちながら、アンニュイな気分になっていたゆかりを観察する形で登場。「あなたの心はなんだか美味しそうだ。琴爪ゆかりさん…」
- 余談ですが、他のノワールのしもべ達とは遅れる形にはなったがついにエリシオも高いところから登場のノルマを今回で果たすことになりました。
- ゆかりが一人になった時を見計らい、エリシオはその前に堂々と現れる。驚きキュアマカロンに変身するゆかりだったが、エリシオは今日は戦う気はないとばかりに一枚の全身鏡を生み出す。「それはあなたの心の中への入り口。自分の本当の心を知りたくありませんか?」 それはもちろん罠でありそんなものにゆかりが簡単に引っかかるわけはないはずだったが……
「怖いのですか? 自分の心が」
- その上から目線の煽りは、マカロンの心を大きく揺さぶる。自分の心の奥にある「何か」から逃げている自覚のあった彼女は、あえてその挑発に乗ることにした。そして、マカロンは鏡の中の世界で幼少期の自分自身と対話し、自らの心の闇と対面することになる。
- 幼少期のゆかりは、他人より優れているがゆえに生まれる強烈な孤独感と、自分より劣るくせに楽しそうに生きている周囲の者達への嫌悪感を今のマカロンに見せながら、精神的そして物理的に容赦なく攻撃。幼少期のゆかりは私と一緒に闇に堕ちようと今のマカロンを誘う。
- そこに仲間達が現れ、鏡の中で闇の触手に囚われたマカロンを見て驚愕。ショコラはマカロンに何をしたとエリシオは問い詰めるが、別に自分は何もしていないとエリシオは涼しい顔。「これは彼女自身が望んだこと。闇に身を任せれば苦しみから解放される」とあっさりと言ってのける。
- しかし、マカロンは自分の中にある闇は消せないことを肯定した上で、光の中で闇を抱えながら生き続けることを決意した。そして鏡は割れ、マカロンは脱出。ショコラと息のあったコンビネーションでカードモンスターを倒した。エリシオは撤退を余儀なくされるが、「残念です、あなたは私が期待していたような女性ではなかったようだ」と呟く彼は、負けた悔しさと言うより、ゆかりが「闇の側の人間」ではなかったことを失望し、軽蔑するかのような表情を浮かべていた。
■第30話
- いちご野高校の学園祭を観察。あきらが「みんな」のために学園祭実行委員長を引き受けたが、そのせいで久しぶりにあきらに会いに学園祭にきてくれた妹のみくの相手をしてやれないことに心を痛めている様子を目撃する。「人々を救い、慕われる王子様にもままならない悩みがあるようで… 王子様の闇、美味しそうだ」 ニヤリと笑ったエリシオはいつものようにカードを取り出し、客たちからキラキラルを奪って、ドーム状の闇の結界を作り出す。
- その結界の中に閉じ込められたのは、キラキラルを取られた客たち(みくを含む)と、あきらだった。結界の中には『不思議の国のアリス』第11章(ハートのジャックの裁判)をモチーフとした裁判場が広がっていた。(※アリスのパロディなのはこの学園祭のテーマ自体がアリスだったので、それを皮肉ったエリシオの茶目っ気である)
- 一方、いちかたち他のプリキュアは結界の外側に置かれて分断される形に。さらにはエリシオの作ったカードモンスターが他のプリキュアたちの接近を防いでいた。
- あきらは裁判場の被告席に立たされており、他のみんなは意識を奪われたまま巨大な鏡の中に閉じ込められていた。みんなを閉じ込めた鏡は2個あり、一つにはみくだけが、もう一つにはそれ以外の客たち全員が入れられていた。そして鏡とは別にこの裁判場には巨大な天秤が設置されていた。あきらはキュアショコラに変身し、護衛のトランプ兵たちと戦いながらガラスケースに近づこうとするが、たった一人では力負けしてなかなか近づけない。裁判長役のエリシオはそんなショコラを無視して原典どおりの「でたらめな裁判」を行う。
「被告人・剣城あきらは他人ばかりを優先し、体の弱い妹をないがしろにした。あなたは一体誰を守りたいのですか?」
「妹? それとも他の誰か? まさか、全員などと言うつもりですか? そんなことは不可能なのに…… なんて罪深い!」
「判決を言い渡す。剣城あきらは有罪! あなたには『究極の二択の刑』を与えましょう」
- そう言うと2枚の鏡からキラキラルが抜き取られ、天秤皿に設置されたガラスケースの中にそれぞれ吸収されていく。右側にはみくのキラキラルが、左側には多くの学園祭の来客者達が……そして「みく」と「それ以外の全員」は等価値と扱われ、天秤は揺らがない。エリシオは言う。「このままでは鏡の中に閉じ込められている者たちのキラキラルを奪い尽くされる。だが、あなたの守りたいほうだけは助けてあげる」と。どちらを助けるか、いや、どちらを見捨てるか決断しろと言うのだ。
- だが、あきらはどちらの選択もしなかった。彼女は自分のキラキラルを自ら放出し、二つのガラスケースに注ぎだしたのだ。そして両方のガラスケースに許容量以上のキラキラルが注ぎ込まれたことで天秤のキラキラル吸収は止まった。だが、その代償は重く、キュアショコラは苦しそうに呻いて膝をつく。キラキラルは心身の活力そのもの。それを大量に差し出した以上、まともに立っていられないほどの疲労困憊状態になってしまったのだ。(もっとも、いちかがキラキラルを奪われた時ほど致命的にはなっていなかったようで、こんな状況でも変身は解けておらず、目もまだ死んではいなかった)
- あきらを自己嫌悪に沈ませる闇の選択を決断させることは失敗したことを残念がるエリシオだが、もうキュアショコラに戦う力はない。「愚かなことを」と嘲笑し、ショコラにとどめを刺すべくカードを投げつける。しかし、人質たちのキラキラルが集まってその攻撃を防ぐ盾となった。意識を失っている彼らだが、心の奥底で記憶にも残らない部分で、ショコラを助けたいと強く思っていたのだ。そのときようやく他のプリキュアたちが結界を壊して突入してきて、またまた逆転の流れに。
- カードモンスターが浄化されたことで、エリシオは素直に撤退する。最後にはゆかりに「あなたとも、また是非」と華麗に挨拶する余裕さを見せたものの、やはりエリシオにとっての鬼門はあきらであるようだ。
■第31話
- キラキラルをうばう存在のアジトにて、ノワールに見捨てられたかもしれないと虚ろな目で怯えうずくまるビブリー。その姿を軽蔑するような興味深いような、非常に微妙な表情で見つめていた。
- プリキュアの6つの結晶が全て動物の彫像の形に変化したのと同じタイミングで、アジトで待機していたエリシオは虚空を見つめながら呟く。「光の心を闇に染める。それがあなたの望みなのですね。ノワール様」
- この直後、ビブリーの心の中にノワールが語りかけるので、エリシオもノワールと思念で会話していたのだと思われる。ただ、エリシオに何を語ったのかは視聴者にもわからないようになっていた。
- 本話のエンディングのクレジットの並び順が、ノワールとエリシオの間にビブリーが入り3番目になっている。通常はノワールのすぐ下で、ノワールが登場しない回では悪役のトップにクレジットされるので、ビブリーの登場が特別なイベントであるとわかる。
- 次回はノワールとビブリーのみが登場でエリシオとグレイブの出番はなし。
■第33話
- 100年前のしもべ、ディアブルが復活する。エリシオが珍しくその姿に恐怖するようなそぶりを見せた。曰く、ディアブルは「ノワール様の心を見ているかのよう」とのこと。
- ここからしばらくはディアブルの出撃が続くためエリシオの出番はなし。
■第36話
- 浄化されて肉体が消滅しても、その魂が消されない限り「闇の繭」の中で進化して復活するディアブル。その様子をグレイブと観察しながら呟く。「彼は闇の力を無限に増やせるのでしょうか。羨ましいですねぇ。私たちにもそんな力があれば。ねぇ、グレイブ」
- それは独り言というには、口調が妙にねちっこく誘っているような感じだったので、グレイブの野心を刺激してたきつける意図があったようだ。(グレイブはディアブルの登場からずっとその力に惹かれ続けている描写が続いていた)
- そしてグレイブはエリシオの言わんとしていることを汲み取り、この話の終盤にディアブルを不意打ちしその闇の力を奪い取ってしまう。
■第37話
- ハロウイン回にて久々の出撃。シエルの作ったパンプキンプリンのキラキラルを奪い、「キラキラルを渡さないとイタズラしますよ?」と言い放つ。そのねちっこい口調があまりに事案めいた感じだったが、エリシオ相手には今更というところだろうか
- ジャック・オ・ランタンのカードモンスターを作り出しプリキュアとバトル。キュアパルフェのパルフェエトワールを食らって拘束されたかと思いきや、エリシオは余裕の笑みで「そう上手くことは運びませんよ?」
- なんとカードモンスターが上半身と下半身が分裂して拘束から脱出。そして下半身が地上に落下してプリキュアたちを押しつぶし、空中にいたパルフェは孤立する。やはりエリシオは分断戦法が基本。
- しかし、押しつぶされたと思われたプリキュアたちが根性の怪力で下半身を押し上げて脱出。そして浄化技をくらい撤退へ。
- アジトへ帰った時は、ディアブルの闇の力を自分の愛車に組み込み歓喜するグレイブを、満足そうな笑みで見つめていた。
■第39話
- アジトのある空間でディアブル・カスタムを疾走させて悦に浸るグレイブに、「素敵な車をおもちですねぇ」とねちっこい口調でエリシオが近づいていくる。流石に何かを企んでそうと警戒するグレイブだったが、エリシオは「おっと、怖い顔をしないでください」と言うが、その目はグレイブではなく車に張り付いたディアブルの顔の方に向いていた。
「私は興味があるだけですから。同胞の力を奪ってでも叶えたいと言う、あなたの闇の力に…」
- 本気でグレイブに何かを期待しているような感じてそう語るエリシオ。そして「ですが、あなたはまだディアブルの本当の力を使いこなしていないのでは?」と焚きつける。
- グレイブはエリシオが何か企んでるような気がしながらも、ディアブルの本当の力とは何かを考えて、答えに至る。ディアブルの力は人間の心の闇を膨らませるもの。その力を使えば生意気なプリキュアたちに敗北感を味あわせてやることも可能なはず。そしてグレイブはいちご坂の住人全員の精神を支配しゾンビのように操ってプリキュアたちと戦わせると言う作戦を実行に写すことになる。
■第40話
- いちご坂を闇に染めたグレイブと、街を取り返そうとするプリキュアとが熾烈な戦いを繰り広げる中、それをただ観察するエリシオ。そして最終的にグレイブはディアブルの闇の力に逆に乗っ取られてしまい暴走。それをアラモードスタイルの力を手に入れたプリキュアによって浄化されると言う展開に。
- もっとも、浄化されても善人になる訳ではないのが本作の特徴。大ダメージを受けて地面に倒れたまま動けないグレイブだったが、改心する気などさらさらなく、苦悶の表情のまま悪態をつき続ける。プリキュアたちも彼の処遇を逡巡していると、そこにエリシオが現れる。プリキュアたちの隙をついてグレイブを回収してそのまま撤退・・・と思いきや・・・
- エリシオが自分の懐から白紙のカードを取り出しかざすと、なんとグレイブを吸い込んでしまう。ボロボロの状態のグレイブは争うこともできず、カードの中に封印された。そしてエリシオの手元には、グレイブ、ディアブル、グレイブのオープンカーの絵柄がそれぞれ描かれた3枚のカードがあった。突然のことに驚くプリキュアたちに、エリシオの真の目的がノワールが見出した闇を育ちきったところで刈り取ることだと告げる。
※カード集め違いです。
そしてプリキュアたちに改めて宣戦布告して去っていった。
「これからは本気を出しますよ。ルミエルの遺志を継ぐ者たちよ……」
■第41話
- リオとシエルがいちご坂商店街を仲良く散歩し、街の人たちに朗らかに挨拶する様子を屋根の上から監視しながら「最も隙がありそうなのは、あの姉弟でしょうか…」と今にも舌なめずりしそうな感じで吟味。エリシオのご馳走になる次なるターゲットが決まったようだ。
- エリシオはネンドモンスターをリオの姿に変身させ、街中のスイーツショップから夜中にキラキラルを奪うように指示。ただし、逃げるときの姿を襲った店の店主達にわざと人々に目撃させるようにして…… リオは商店街の人たちにとってはよそからやってきた新参者だ。シエルの弟という以外に人柄もまだわからない。だから、襲われた店の店主たちがリオが犯人じゃないかと疑ってしまっても仕方がないだろう。とりあえず事情を聞こうと翌朝みんなでシエルの店に押しかけてきた。
- だがここでエリシオは最後の仕上げに、グレイブのカードを使って店主達の心をほんのすこしだけ闇に染めた。これにより、押しかけてきた店主たちの中でのリオに対する猜疑心が強化されてしまい、もしかして今までこの街で起こってる怪物騒ぎもリオの仕業だったんじゃないかと攻め立ててくる。普通なら何の根拠もない言いがかり。リオも怒って反論していい。だけど、商店街の店主たちが指摘していることは悲しいことに真実であるので、リオはただ押し黙ったまま。そのことは店主たちの疑念をより強めることになってしまう。ついにはリオを庇おうとするシエルまでグルだと疑われる始末。
- とはいえ確たる証拠もないので、商店街の店主たちは一旦は引き上げたのだが、姉弟の立場は急速にいちご坂で微妙なものとなってしまう。そしてリオは自分が姉と一緒にこの街にいることは迷惑をかけると一人で出て行こうとする。
- リオを止めるために追いかけようとする中学生組だったが、そうはさせませんとエリシオが立ちふさがる。そして自分が黒幕であったことをあえて話す。プリキュア達は怒りを見せるがそれは彼女達が焦っている証拠。それ自体がエリシオの愉悦だ。リオがシエル達の知らない場所にいってしまえさえすれば、エリシオに怒りをぶつけたところでシエルの悲しみが癒えることはない。
- せめてシエルだけには道を作ろうと、いちか・ひまり・あおいの3人はプリキュアに変身しエリシオに戦いを仕掛ける。その甲斐あってシエルはなんとかエリシオの邪魔を突破し走り抜けていく。エリシオはシエルがリオを説得すればせっかくの仕掛けが台無しになると、前回に宣言した通りに本気でプリキュアを倒すために「ノワール・メタモルフォーズ」の力を解放する。
- カードに封ぜられていたかつての同朋の力を取り込んだエリシオは、黒い甲冑に身をまとい、黒い羽を生やし、雷槍を手にした戦天使の姿となる。
- リオの偽物の正体を暴いて商店街の店主たちの疑念をはらしたゆかりとあきらも合流し、シエルを除いた5人でエリシオに立ち向かう。だが、高速で飛行しながら雷撃を放つエリシオに5人は終始不利な状況。だが、エリシオがシエルを追うのを止めることだけは成功した。シエルがリオを説得することに成功し、再び戦場に戻ってきたのだ。そして飛行能力のあるパルフェの加入で形勢は逆転。アラモードスタイルに変身してエリシオを浄化する。
- ・・・が、浄化されたのはエリシオと同化していたカードの方だけ。エリシオ本人は全くの無傷で、「なるほど、興味深いですね」と余裕のつぶやきとともに撤退していった。
◾︎第42話
- ワイルドアジュールのリーダーである園部が受験勉強のため脱退を決める。フェスの雪辱戦でもある対バンが決まって夢に一直線だったあおいは大ショック。それを遠方から見つめるエリシオの姿が……。
- 対バン当日。キラパティの皆の励ましもあって立ち直ったあおいだが、ステージにはエリシオが立っていた。
「あなたの夢を壊しに参りました」
- マジシャンに変身したエリシオがステッキを一振りすると観客はネンドモンスターに、ワイルドアジュールとプリキュアは布をかけられ異空間に。それでもあおいの夢が消えてないと見るや、キュアジェラートも声を失った状態でガラス張りの檻に閉じ込めてしまう。
- だがこんな有様でもジェラートは諦めない。声が出ずとも心で歌えばいい。聞こえないはずの歌が聞こえ不思議がったエリシオは、心で歌い続ける姿を前に狼狽する。
- ファンタスティックアニマーレを受けてもやはり浄化されたのはマジシャン服のカードだけ。「人は夢を諦めないものなのか……」と呟き何処かへと去っていく。
■第43話
- オタク気質を暴走させオーディションに大失敗したひまり。そんな彼女の心の闇をエリシオが見逃すはずもなく、更なる闇に染めるため動き始める。
- スタッフやオーディション参加者など邪魔者はディアブルのカードで自我を奪いひまりに接近。いつの間に奪っていたスイーツノートがひまりの心を照らす光だと気づくや、ためらいなく全部燃やしてしまう。
- ここで映画監督スタイルに変身。パッと見探偵にも見えるため勘違いしてしまう視聴者も。
- その場のシネマにあるスクリーンで何事かを上映。それは第2話でひまりがフラッシュバックさせていた幼少期の失敗だった。友達とスイーツ談義ができなくなったひまりは1人で読書や台所での実験にのめりこみ、ますますひとりぼっちになってしまったのだと語り掛ける。極めつけに「無理せず、こちらにいらっしゃい」と誘うが……
- ひまりの足元にはノートの切れ端が運よく燃えきらずに残っていた。それはいちかと友達になった時一緒に作ったバケツプリンのレシピ。そう、ひまりはひとりぼっちなんかじゃない。スイーツが大好きで、そのおかげで同じ想いを抱える友達ができて、ほんのちょっと勇気を出せるきっかけまで得た。
- 異変に気付き動揺するエリシオだが、あとから駆け付けたキュアホイップたちをすかさずフィルムで拘束する。
- 更にキュアカスタードも拘束し「フフフ、そのままのあなたじゃ、またいつ周りから人が居なくなるか分からない。どうせまた失敗ばかり」と往生際悪く言葉攻めのするが最早遅かった。カスタードはそれが自分だから仕方ないと笑顔で答える。フィルムを自力で弾き飛ばし、更に投げられたレンズとカチンコもカスタードイリュージョンで壊され……
- そろそろ決着をつけるべきだと考えながら撤退。そうですね、残り10話切ってますからね。
■第44話
- アバンにて、あきらが自分の卒業後の進路希望が「みくの病気を治療法を調べるために研究者になりたい」ということだったことが明かされる。しかしそれを知った当のみく本人は、姉の人生を自分が縛っているのではないかと罪悪感を感じてしまう。入院している病院の待合室で一人物思いにふけるみくであったが、突然公衆電話が鳴り出す。たまたま周囲には誰もおらず、その呼び鈴にみくは誘われるように受話器を取ると・・・
『あなたはお姉さんの未来を奪おうとしています。お姉さんは何にでもなれるはずなのに…』
- そこから聞こえてきたのはエリシオの声。そう、みくはエリシオの罠にかかってしまったのだ。エリシオの数々の言葉責めは言葉はみくの心に直接突き刺さる。そしてエリシオの洗脳能力により彼女の心は闇に染められていく。「わたし、今までずっと、お姉ちゃんのこと縛り付けていた…?」『そう、あなたはお姉さんの重荷であり続ける』「嫌! 嫌だよ、そんなの! こんな私、もう…」
『その願い、叶えてあげましょう』
- そしてみくはエリシオによってノワールのしもべたちのアジトである「ノワールの世界」へと誘われる…… 行方不明になったみくを必死に探すプリキュアたちだったが、あきらは路地裏であるはずのない電話ボックスを見つける。その受話器から聞こえてくるみくの声に反応し、それを手に取ったとき、彼女もまたノワールの世界へと閉じ込められた。当然、これはエリシオの罠だ。不倶戴天の宿敵であるキュアショコラの弱点が妹であることを知っているエリシオは、あきらを徹底的に追い詰めるたけにみくに手をかけたのである。
「彼女の世界はあなたから深い闇を引き出すでしょう。見せてください、キュアショコラ」
- ノワールの世界に閉じ込められたあきらは、そこでこの世界の闇そのものと同化したみくからの洗礼を受ける。「わたしがいなくなって嬉しい?」「こんな私、いなくなった方がいい!」 あきらの救いの手を拒否し、雪だるまの怪物となって襲いかかるみく。それを嘲笑するエリシオ。
「もうとっくに気がついているんでしょう? 妹を思い、選んだはずの未来が、逆に彼女を苦しめ追い詰め、こんなにも闇を積もらせた」
- 仲間たちの駆けつけてみんなでプリキュアに変身するが相手がみくだと手出しもできない。そしてショコラはみくの生み出した闇の中に吸い込まれてしまう。その世界の中では闇の繭に包まれてうずくまるみくと、エリシオがいた。そして周囲に浮かぶのは入院する前の幼い頃のみくがあきらとともに過ごした楽しい思い出の数々。現実の全てを拒否したみくは今、姉と一緒にいれた幸せだった頃にただ浸っているのだ。「みくさんはずっとここであなたと一緒にいる方が良いのではないのですか?」と問うエリシオに否定の言葉を返せないショコラ。
- だがそれだけじゃない。闇によって生み出された氷がショコラの体を拘束して動けない。これはエリシオの力?それともみくが? いや違う。ここは人の心の闇が具現化する世界。つまりショコラをこの場から離れさせまいとしているのは自分だ。自分だってあの幸せだった時間に浸りたいのだ。
「病気の妹のために強がっていたけど、本当はさびしかったんでしょ?」
- ついにエリシオは、あきらの中にある「闇」を見つけ、それを暴露した。そうだ。依存しているのはあきらの方。あきらは妹と離れて自立することがいまだできていない。みくを縛りつけているのはあきらだ。お姉ちゃんを自由にしてあげたいというみくに比べると何と未熟なのか。みくを追い詰めたのはあなただというエリシオの言葉は明らかに真実なのだ。自分の弱さを自覚してしまったキュアショコラの体を闇が覆う。新たなノワールのしもべの誕生を確信したエリシオだったが…
- だが、あきらは自分の弱い部分こそが強さと愛の源だと言い切り、自らを覆っていた闇には染まらず、それをそのまま飲み込んでしまう。「あきらが寂しくならないため」にみくには元気になってもらいたい。そしてみくを治すことができれば同じ病気で苦しむ子供たちにも希望が与えられる。妹と「みんな」を天秤にかけずに全てを救おうとするのはあきらの矜恃。だから、自分は妹に縛られているのではなく、何から何まで自分のわがままでやりたいことをやるだけなんだとエリシオとみくに宣言する。剣城あきらは「みんなのヒーロー」である格好いいお姉ちゃんであり続けるのだと。
- その勢いでショコラはみくを闇の繭からそっと救いだしこの世界を脱出した。エリシオは「どんなに闇に落とそうとも、プリキュアは闇に染まらない」と悔しがる。敗北を重ねるたびにゲス度を増していくエリシオの作戦だが、どこまでいくのだろうか?
■第45話
- 流石にプリキュアの脅威を感じつつある今日この頃だったが、キラキラルを闇に染めて回収する任務はプリキュアとの戦いとは別に地道にこなしており、今までにしもべ達が集めたキラキラルも合わせて、世界を闇に染め上げるまでもう少しというところまでになっていた。つまり後はプリキュアさえ倒せばノワールの目的は達せられる。今一度ノワールのために戦う決意を表明するエリシオの顎を一撫でするノワール。そう、ゆかりがいつもペコリンにしてるように……。
- 手段を選べなくなったか珍しく正攻法でキラパティに乗り込む。キラパティの客できていたゆかりファンクラブの会員達からキラキラルを大量に奪い取り、それを糧にして手持ちのカードの力を次々と発動させていく。特にディアブルのカードの力は強力でじわじわとプリキュアを追い詰めて行った。
- そんな中、キュアマカロンが単身乗り込むのに気づくや彼女をターゲットにしようとする。エリシオはチームワークを無視した戦い方をする彼女に対し、仲間から離れて一人で留学しようとすることを絡めて「相変わらずあなたは孤独が好きなようで」と評しあざ笑う。
- だがキュアマカロンは孤独などではない。ただ、離れていても心を通じ合える仲間を信頼しているだけである。その証拠に風や炎といった遠距離攻撃のカードはキュアカスタードたちが、ランスによる近距離攻撃はキュアショコラが何も言わずともフォローしてくれる。あとは持ち前の身のこなしで攻め込むだけ。
- 手札を次々破られ焦るエリシオに、キュアマカロンは「心が空っぽの道化師にはわからないでしょうね」と同情まじりに呟き、引導を渡すべく猛攻を続ける。そしてまたまた浄化されてしまい撤退するが、この時に「光と闇、どちらか一方を消すことは不可能」と悟ったように呟く。この言葉が意味するところは・・・?
- 今回はいつも以上に苦戦をしたため、かなり満身創痍でノワールの世界に戻った途端に木陰で眠りについてしまった。すると、そこにノワールが近づいてくる。「おおエリシオ。私の可愛い人形よ……」と地味に衝撃的な表現を交えつつ「まだまだ戦ってくれるな?」と問うと、聞こえていたのかうっすら目を開けるエリシオだった。
■第46話
- 機が熟したと判断したノワールは、前回の戦いでボロボロになったエリシオを優しく抱擁すると彼と一つとなり、ノワールはかつての肉体を取り戻す。その過程でノワールは自身とエリシオの関係をプリキュアに語っている。(エリシオの正体については上記の「正体」の節を参照)
- 前回の「まだまだ戦ってくれるな?」とは、最後に自分のためにその身を返せという意味合いだったのである。これでエリシオという人形の役割は終わったことになる。
終盤の目的(46話以降ネタバレ注意)
【警告】これより先、この男の運命が記載されているため閲覧には注意されたし
「あなた方のスイーツから始まった戦いに終わりはない。ならばどうすればいいと思います? 全てをなくせばいいのですよ」
プリキュア達はエリシオと戦い続けたことで、光と闇は隣り合わせであることに気づき、自分達が持つ心の闇は光が生み出す影のようなもので、恐れることはないという勇気を得た。
だが、エリシオもまた不屈のプリキュア達の姿を見続けたことで「光と闇は隣り合わせ」ということに気づいてしまう。
ノワールは、愛や慈しみなどというものは心の闇を直面したくないが故の誤魔化しの感情であり、人の本質は闇であると言う。だがそれは、人の心をいくら闇に染めようが、そこから光が生み出されると言うことではないのか。
ノワールは心の闇に縛られているがゆえにその現実に直面しようとしていない。エリシオは心を持たないからこそノワールの矛盾と弱さに気づいてしまい、やがてノワールとは異なる目的を持つようになった。
その目的とは光と闇の戦いに自ら終止符を打つこと。
人に心ある限り、それは光にも染まれば闇にも染まる。つまり、光と闇のどちらかだけを消すことなんて不可能なことなのだ。
そこでエリシオが至った結論は、人の心を闇に染めることではなく、心そのものを世界から無くすことであった。
空っぽの世界
47話でノワールとルミエルの力を取り込んだエリシオによって、地球は全く違う世界へと作り変えられる。それがこの「空っぽの世界」である。
見た目は大きくは変わらないのだが、建物や背景が灰色となり、空虚な雰囲気が流れている。そこに取り込まれた人々は目から光が消えており、みんな無個性な灰色の服をまとっている。
彼らからは「大好き」も「大嫌い」も全ての感情が奪われている。心の中のキラキラルも異質な状態で、明るい光の輝きもドス黒い闇の暗さもなく、ただ透明になっている。
人々の記憶は改竄され、世界は初めからこのようなものだったと認識している。
しかし人間の心の闇はそう簡単に消えるものではないのか、ひょんなきっかけで怒りや憎しみの感情を呼び起こして喧嘩をするものもいる。だが、そういう感情を表した人の下にはエリシオのしもべとなったグレイブやネンドモンスターが扮する警備隊が駆けつけ、感情を奪い取ってしまう。
エリシオはこの世界において「生きているものを傷つけてはならない」という掟を敷いており、それは警備隊にも適用される。エリシオの究極の目的は「光と闇の永劫の戦いを終わらせること」であり、その為にどんな小さな諍いさえ許さないという歪んだ平和主義に陥っている。
そしてエリシオはプリキュアとの戦いを通じて、闇とは光が生み出す影に過ぎないという考え方をしている。人々が争う原因は心の闇が生み出す「大嫌い」という気持ちだが、それは「大好き」という気持ちの裏側にあるものだ。だから「大好き」という気持ちを誰も持つことがなければ、同時に「大嫌い」なんて感情もなくなると考えた。
なので、この世界では人々は「大好き」という気持ちを持つことを禁じられている。かつて「大好き」だったものはゴミとして破棄するように仕向けられており、いちご山だった場所にはそれを処分する焼却施設が設けられている。人々は自分がかつて大好きだったものをゴミ袋に入れて捨てる為に列をなしている(劇中ではエレキギターをゴミ袋に入れて担いでいるワイルドアジュールのメンバーが確認できる)。
人々は闘争無き絶対的な平和と引き換えに、ただ空しく生き続けることを強いられている。
エリシオはかつて敵対したプリキュア達でさえ、その存在を排除することなく、思い出と感情を奪った上でこの「完璧な世界」に迎え入れてその命を守っている。ただしこれは彼女達がプリキュアでなくなったからの処置であり、万が一、彼女達が再びプリキュアとなったならば、力を持って排除することは辞さない。
第2形態
46話終盤で見せた姿で、ノワールから分離した後のデフォルト形態。
髪留めが外れ普通のロングヘアとなり、先端に黒いグラデーションがかかっているのが特徴。また髪全体が横に広がったため右目が常に露出している。
この状態でもしもべ時代と変わりなくカードを使った戦術を使える。
最終形態
48話で見せた姿で、カードに封印したルミエルとノワールの力を纏うことで変身した姿。
右半身がルミエル、左半身がノワールをモチーフにしている。両端が三日月のような形状をしたロッドを操り、光と闇の力を自在に綾る事が可能。
基本的にカップケーキを逆さにした形状の空飛ぶ台座の上に立っている。
また、最終奥義として自分の胸に虚な穴を開けて、そこからブラックホールの様にあらゆる物を吸収することができる。
エリシオの体内に取り込まれた者は最初は眠ったように意識を失い、しばらくすると肉体が消滅してキラキラルの輝きだけの存在になり、そのキラキラルも少しずつ消滅してやがて無に至る。
終盤での各話の動き
■第46話(続き)
- エリシオを取り込んで100年前の姿と力を取り戻したノワールが全世界を闇に染め上げようと自ら出撃し、それを防ごうとするプリキュアとノワールの最終決戦が始まる。だがその戦いのクライマックスで、エリシオが自らの意思でノワールの体から分離。
- 驚愕するノワールをよそに、ノワールをカードに封じてしまい、さらにプリキュアを支援するためにこの場に現れていたルミエルの魂のカケラさえもカードに封じる。
- そして、ノワールの闇の力とルミエルの光の力を同時に展開させ、反発する二つの力は互いを食いつくしながら世界中へと拡大していく。世界からは光も闇も失われていき・・・
「さあ、愛も憎しみもない世界に行きましょう。空っぽの世界の誕生です」
◾︎第47話
- 『空っぽの世界』では皆大好きなものがない、大嫌いなものもない空虚な心の持ち主になってしまった。そんな人々を鏡の中の世界で見つめるエリシオだが……。
- ペコリン改めキュアペコリンの奮闘によりプリキュアたちの心と力が取り戻された。その事態にエリシオが姿を現し、彼にしては珍しく苛立ったような視線を向ける。
- 心を取り戻したプリキュア達は、さっきまでの自分たちがいかに寂しく苦しい状態だったかを改めて自覚する。しかし、今は「大好き」の気持ちを取り戻したからこそそんな寂しさや苦しさも乗り越えられている。だから寂しさや苦しさを感じないように感情をなくす必要なんてない、それをエリシオに伝えるため、「大好き」を込めたキラキラルをあなたに思いっきりぶつけてあげると宣言。その啖呵に思うところがあったか僅かに反応する。
◾︎第48話
- プリキュアを迎え撃つため、ルミエルとノワールのカードを使って自らを強化する。たった1人ながらプリキュア7人がかりでもとうとう肉弾戦を辞さないほどの実力を見せつけた。
- そんな中キュアマカロンに自分たちの心を散々弄んだときにあなたは愉悦を感じていたと、キュアパルフェには人間たちと同じく怒りや侮蔑の表情をいまも浮かべていると指摘される。これについてはあくまで人間の心を観察して知るために人間の真似をしているだけだとしており、決して心があるからではないと反論。
- エリシオにフルパワーの「プリキュア・ファンタスティックアニマーレ」がぶつけられた時、そのキラキラルの輝きが流星となって世界中に降り注ぎ、それを浴びた人間たちの心に「大好き」の気持ちが戻った。これを目の当たりにしたエリシオは人類の管理のやり方がまだ甘かったと認識し、決定的な無の世界を作るため自らの身体をブラックホール状にして地球を丸ごと飲み込む暴挙に出る。プリキュアもなすすべなく飲み込まれてしまい、更に人間たちもキラキラルを残して消滅していく。当のエリシオもそのまま深い眠りにつき、あとは時の流れるまま自分の体が朽ちていけば全ては終わる・・・
- だが、プリキュアたちはそんなことでは諦めない。エリシオの体内に広がる擬似空間の中、長老やビブリーたちの励ましもあって再び地球を取り戻すべく動き出したキュアホイップたち。世界を構成していた全てのキラキラルがここにあるのなら、それを漏れなく全てかき集めて混ぜ合わせれば世界は元に戻るはず。ところがキラキラルを混ぜ合わせようとしても途中で失敗してしまう。それもそのはず、まだ1人分キラキラルが足りないから。
- キュアホイップがこのまま消滅を望むエリシオに手を伸ばすと、突如その場に過去の映像が浮かび上がった。それはエリシオが生み出されてから彼が見てきたもの走馬灯であった。
- 始まりは100年前。闇の存在として覚醒したノワールが、ルミエルと激しい戦いを続けていたとき、いちご山の山頂に打ち捨てた自分の抜け殻に一つのカップケーキが供えられているのを目にした。それはルミエルがノワールの笑顔を取り戻したいと作ってくれたもの。このカップケーキに込められていたキラキラルが「ノワールのためだけの思い」だったのか「みんなを笑顔にしたいという思い」と変わらなかったのか、どちらなのかはわからない。だがどちらにせよ、もう遅すぎた。闇に堕ち切った今のノワールにとっては、ルミエルの行為は全て欺瞞と偽善にしか感じられない。
- そんなノワールは「何がスイーツだ」と憤りながら、ルミエルのカップケーキに込められたキラキラルを闇に染める。そしてそれを抜け殻の身体に注ぐとそこに心なき知性と命が宿った。これがエリシオが生まれた瞬間である。ルミエルが自分のために作ったものをあえて穢すことで溜飲を下げる意味もまったのかもしれないが、結果的にはエリシオはルミエルとノワールの2人によって生み出された存在だったことになる。エリシオがかつてのノワールの姿よりも中性的な雰囲気があるのもルミエルのキラキラルの影響なのだろう。
- ノワールの命を受けてから100年間、エリシオはたくさんの心の光と闇を見てきた。大好きという気持ちが満たされなければ人は苦しみ、誰かのせいにして傷つける。誰かの大好きと大好きがぶつかり合った時はそれは加速し、自分の大好きを守るために相手を憎悪する。大好きと言う思いが生み出す心の光が強ければ強いほど、そこから生まれる影もまた濃い闇となるのだ。
- 闇に染まりたいなんてみんな望んでいなかったはずなのに人間はそれを繰り返してきた。この光景をホイップたちとともに見ていたエリシオは今までの100年を思い出し、ただ「あまりに哀れな……」と呟いた。そう語る表情はいつものように人間を見下したものではなく、明らかに哀しみを露わにしたものであり、その目には光るものが。
- 抜け殻という出自故ふたをされていただけでエリシオにも心が、キラキラルが確かにあった。それも光と闇、その局地から生まれたキラキラルが。地球を構成していた要素に足りなかったキラキラルはエリシオのものだったのだ。ならばプリキュアがすることは「エリシオのキラキラルも一緒に混ぜる」こと。
- だがエリシオは、自分にキラキラルがあったとしてもそれが他と混ざりあおうとするわけないと切って捨てた。ホイップは「大好きがみんな違うからぶつかりあうのは仕方ないけど、それなら別の大好きを次々ぶつけていけばいつかは相手と同じ大好きが見つかって繋がることができる」とエリシオに笑顔で語りかける。プリキュアたちが思いの丈を込めてキラキラルを混是合わせるとそれは大きな輝きになり、様々な動物たちのデコレーションを施したアニマルプラネットスイーツとして調理される。
- 元どおりになったいちご坂の上空にエリシオが現れる。ここに存在するということは、結局彼もまた自分の心が消えてなくなることを拒否したということだ。エリシオは言い訳はしなかったが、プリキュアたちの偉業をいっときの奇跡にすぎないと軽口を叩く。全てを元どおりにしたということは、この世界から苦しみは何も無くなっていないということ。エリシオにとっては何も変わっていないし誰も救われてもいないのだ。
- だが、もはやエリシオに戦意はなかった。ホイップが脳天気に語った「バラバラの心が繋がりあった世界」が本当に作れるというならば、それをいつか見せてみろと挑発する。そして作中で初めての柔らかな笑顔を見せた。
「それは、とても美味しそうな未来ですから」
- そしてルミエルとノワールのカードをあるべき場所に返すべく、空の彼方に向かって放り投げる。カードから光と闇のキラキラルが抜け出て霧散していくのを見届け、エリシオは何処かへと去っていくのだった。
◾︎第49話(最終話)
- エリシオの別れ際の言葉は、いちかにとって大切な「約束」となり、彼女のその後の人生を決定づけることになった。いちかがその約束にどのように向き会ったのかが最終回のテーマとなる。
- 一方、エリシオ本人のその後の動向は最終回でも描かれておらず、彼がどうなったのかは不明。いちかが「約束」を果たしてくれるその日を待ちながら、今もどこかで人間たちの営みを観察しているのだろうか。
余談
役者について
演じる平川大輔氏は、プリキュアシリーズは今作が初出演。
本人も出演自体考えてもいなかったらしく、アニメージュキラキラ☆プリキュアアラモード増刊号によるとオファーの際に「まさかプリキュア役ですか!?」と聞き返したとか。
名前の由来
名前の由来はおそらく、ギリシャ神話に登場する楽園「エリュシオン」であると思われる。
ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」では永遠の平和を手に入れる場所とされ、エリシオが実現しようとした理想を表しているといえる。