須藤雅史
すどうまさし
連続失踪事件を追っている小竹署の刑事。28歳(ゲームや雑誌、秘密本によっては24歳だったり25歳などとはっきりしない)。
一見すると穏やかで紳士的な人物に見えるが、実は裏では刑事の立場を隠れ蓑にして悪事を働いていた。
裏の仕事仲間の加賀友之と報酬でもめてしまい殺害、加賀を行方不明事件の一つとして紛れ込ませようと彼の遺体をアンティークショップの壁に埋めていたところに神崎士郎と出会い、カードデッキを受け取って仮面ライダーシザースとなる(アンティークショップは加賀の経営していた店であり、士郎も訪れたことがあった)。
元々スリルに飢えている人物だったのか、ライダーの戦いで頂点を極めることを最終的な目的としている。それに必要な契約モンスターであるボルキャンサーのパワーアップのために一般人を襲わせて喰わせたり、自身が起こした殺人の被害者の遺体を与えて一石二鳥の隠蔽工作を図るなど、性格は冷酷非情そのものであるが、他のライダーとは違い叶えたい願いがあるわけではないためかある意味巻き込まれただけという点も見受けられる。
TV版第4話終盤にて初登場した時点で秋山蓮の変身する仮面ライダーナイトと互角に渡り合えるほどの力を持っており、ボルキャンサーにどれだけの『餌』を与えてきたかが窺い知れる。
当初は戦いを避けようとしていた城戸真司からも「俺はモンスターから人を守るためにライダーになったんだ。その為だけに戦うつもりだったし、これからも…。けど、アンタだけは許せないと思う。戦わなきゃいけないと思う」とまで言われてしまった。
第6話にて自身の殺人が露見し、警察から追われる立場となるも追って来た警官をボルキャンサーで襲撃。上記の台詞を発した真司と闘おうとするも、そこに蓮が乱入。彼自身も真司より「話が早い」と蓮を選び、彼が変身したナイトと交戦する。さらにパワーアップしたボルキャンサーと共にナイトを追い詰め、彼の飛翔斬も自身のシザースアタックで相殺する。
追い詰められたナイトを見て自身の勝利を確信し、記事冒頭の台詞を吐きつつトドメを刺そうと近づくが…
実は先程シザースアタックを放つ直前にナイトにベルトを斬りつけられていたことが原因となりカードデッキが破損していた。さらに先程の必殺技のぶつかり合いの反動か、デッキはベルトから砕け落ちてライダーの力を失ってしまう。
その現実にうろたえている中、契約が解除されたボルキャンサーに『餌』と認識され、ナイトが思わず目を背けてしまうほどの凄まじい勢いで頭から捕食されてしまった(これに関しては食らいつくアングルがぼかされているので「首や肩の辺りからでは?」という異説あり)。これを以て須藤雅史は、TV版におけるライダーバトルの最初の脱落者となってしまった。
「契約が!?馬鹿な…! 私は、絶対生き延びて……!」
仮面ライダー史上初の悪のライダーであり、たった2話だけの登場、極悪な人物像、死に様などから、『龍騎』ライダーの中ではコアなファンの間で非常に人気が高い。
今作の「仮面ライダー」と言う存在は単に「正義の味方だけではない」ということと、また戦いに敗れたライダーが辿る悲惨な末路を視聴者に示す存在となった。
TVSP『13RIDERS』
警視庁の刑事であり凶悪犯の浅倉威を逮捕するためにライダーとなったとされている(番宣で語られているのみでSP版本編では全く語られていないが、TVSPの裏設定では浅倉を逮捕する事だけの為にライダーになったため、カットされた描写ではライダーの力に心が呑みこまれる前の葛藤が描かれている)。
真司と共に闘いを止めたいと言って真司に近づくが、実は高見沢逸郎の指示による芝居であり、すぐに真司を裏切り彼を倒そうとする。だが、そこに浅倉=仮面ライダー王蛇が乱入してきてしまい逆襲に遭う。
そして最期は王蛇のベノクラッシュをシェルディフェンスで受け止めようとするも、連続キックにより盾を弾き飛ばされて技が直撃し爆死。
- 『龍騎』放送当時はまだ根づいていなかった「ライダーであっても死ぬ」という可能性をシリーズに持ち込んだキャラクターであり、後年出版された平成ライダー15周年記念本『語れ! 平成仮面ライダー』では小林靖子女史によって「殺すために登場させた」ライダーであることが明言された。彼の変身するシザース自体バンダイでも商品化予定が無く、制作現場の判断で登場させたという。
- 本編中には2話しか登場していないため劇中の描写は少ないが、須藤がライダーバトル内で起こした行動は無駄が無いものの、行動した後の結果がマイナスを生み出して自身の足を引っ張り、最終的に破滅に至ってしまう程に運が無い。特にTV版の彼の犯罪の露呈となった部分は顕著である。
- 彼の劇中での行動と結果を挙げると以下の通りになる。
- アンティークショップに夜中に一人いた所を偶然取材に来た桃井令子を(加賀の遺体が見つかることを危惧してか)突然襲う→鏡が割られて失敗してしまいやむなく逃走。事件化を恐れて刑事の立場を利用して登場し、その場では警察として動くもそこから加賀の殺害の足が付く原因を作ってしまう。
- 真司を上手く利用し、仮面ライダー龍騎=城戸真司と仮面ライダーナイト=秋山蓮の情報を聞き出しライダーバトル外での暗殺を目論む→どちらも失敗。蓮はトラックによる交通事故で、真司は廃工場に呼び込んで事前に仕掛けた荷物の下敷きにする事で暗殺を目論んだが、真司にはミラーワールドに逃げられてライダーバトルになり、その間に蓮がアンティークショップの壁に埋められていた加賀の死体を発見してしまう。
- ライダーの情報と共に神崎士郎の妹である神崎優衣に接触し、ライダーバトルに情報で優位に立つと考え拉致を決行しようとする→アンティークショップで優衣の名前が書かれたメモを見つけた蓮が偶々通りかかった須藤の車の中に優衣がいる事に気付いてしまい、カーチェイスの末に追いつめられ自身がシザースの正体だとばれてしまう。
- 加賀の死体が発見されたことを期に、アンティークショップでの令子が襲われた事件の被害届が署に出ていないことが同僚の刑事によって発覚。令子に呼び出されてその事を問い詰められ、加えて加賀殺しの犯人である事を同僚の刑事に問い詰められ追われる身となるが、直にボルキャンサーの餌として捕食させる(その際には「してやった」とばかりに狂気の笑みを見せて刑事達を動揺させる、真司に自身の経緯を告白した際には邪魔者を全て始末するだけの事と言い放つなど、この時点で完全にライダーの力に呑み込まれてしまったことが窺える)。
- ナイトとの闘いでは終始実力で圧倒するが、上記の通りシザースピンチで拘束した際に慢心して勝ち誇る→その直後にナイトの繰り出した反撃が偶然ライダーベルトに直撃してしまい、それが原因となってカードデッキにヒビが入り、ファイナルベントのぶつかり合いの衝撃で完全にカードデッキが破損。契約が破棄となり、ボルキャンサーに喰われてしまう。
- TVSPでは浅倉を逮捕するためにライダーになり、その悲願を達成する→悲願達成後はライダーの力に呑まれて「ライダーの戦いの頂点を極める」という目的にシフトチェンジした挙句、最終的に脱獄した浅倉に逆襲され倒されてしまう。
- 彼の劇中での行動と結果を挙げると以下の通りになる。
- 総じて言えることは、彼は良くも悪くも一般人に近い立場であり、巻き込まれる形でライダーの戦いに身を投じた人間の末路を表したキャラクターと言える。TVSPでの彼は最初は少なくとも浅倉を逮捕するという明確な目的があったことも考えれば、決して元から非道な人間とも言い難いため、別の世界線では正義の使者を全うしている彼を見られたかもしれない。
- 須藤雅史を演じた木村剛氏はDVDのインタビューの中で、須藤の退場後に街中で子供達に「あれ?死んだんじゃなかったの?」と聞かれた事に対し「実は本当はあの時、何とか助かって今は改心したんだよ」と返している。勿論、返し方がわからず嘘をいったつもりのだが、最終話の「ライダーもモンスターも存在しない世界」では善良な警察として存在している可能性も高い。
- また、木村氏はある雑誌のインタビューの中で須藤のキャラを分析している。以下の文は、そのインタビュー文を要約したものである。
- 「須藤も最初は普通の警察官の姿を追い求めていたと思うんですよ。でも現実は自分の思っているようにはいかなくて……。それで悪事に手を染めてしまったんじゃないかと思いますね。子供のように一度犯した悪事がスリルになってやめられなくてそのまま突っ走ってしまったんだと思います。城戸や蓮の様に何も背負っていない須藤だけど、須藤なりに必死に生きてきたんだと思います。その須藤の暴走が神崎士郎には輝いているように見えたんでしょうね。ワルだったけど、自分なりの理論は守っていたし、それを最後まで貫き通していたんだと思います」
- 確かに劇中での須藤の台詞を確認すると、意外にも真司の正義感自体を否定したり嘲笑ったりするような発言はしておらず、真司のモンスターから人を守るために戦うという信念を(本意かは分からないが)「素晴らしい」と評している。自分の正義を貫こうとする真司に対して内心では思う部分もあったのかもしれない。
- 因みに、当時のファンレターの中に「シザースがすごいムカつく」とか「(シザースが)死んじゃえ!」といった手紙が木村氏に届いたようである。それに対し木村氏はこの手紙で自分は悪役としての自分を演じられたんだなぁと喜んでいた。
- OPで友情出演表記になっている木村氏だが、士郎役の菊地謙三郎氏は「自分の知人が『龍騎』に出演予定だったが、不正行為発覚により降板した」旨をツイートしており、時期的にその知人が本来シザース役で、木村氏は代役だったのではと推測している(参考ツイート)。
- 木村氏は優衣役の杉山彩乃氏と同じ事務所に所属していたため、友情出演にあたっての筋は通るがあくまで可能性の話であることに注意(因みにDVDの特典インタビュー内で木村氏は「(須藤役)はオファーが来たので引き受けた」という旨の発言をしているため、一応友情出演の話としては辻褄は合う)。
南雅彦:こちらも仮面ライダーシリーズにおける悪徳警官ではあるが、須藤や仁良とは違い、怪人に対しては全滅させようとしていた。
仁良光秀:怪人と手を組み、殺人などを行っていた悪徳警官。
鳴沢益治:悪事に手を染めていた悪徳刑事。なお、こちらも全身を喰われて倒された共通点がある(流石に死ななかったが)。
豪徳寺武:20年後の作品に登場する同じくバトルゲームの参加者であるサブライダー。彼は1話の登場からわずか5分程で退場するという須藤もびっくりの退場最短記録を叩き出した。
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