概要
業務内容は、簡潔に言えば、警察が捕らえた者に犯罪の嫌疑があると判断した場合、それを起訴して裁判に掛け、その人物に処罰を与えるよう裁判官を説得する事である。
職務
日本においては検察官法第4条でその役割について規定されており「刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う」とされている。
刑事事件全般の捜査権限を有しているが、自ら現場捜査の指揮を取るケースは少ない。現場で捜査するのは警察であり、検察官はその報告を受けて容疑者を犯人と見なして裁判を起こすかどうか(起訴するかどうか)を最終判断するのが捜査上の仕事である。容疑者の疑いが晴れたと判断した場合は「嫌疑なし」、また証拠が不十分と判断すれば「嫌疑不十分」として釈放する。また、犯罪は犯していると考えても軽微な事件で反省の程度や被害者との示談によって「起訴猶予」として釈放する場合もある。刑事事件の起訴を行う権限は例外を除き検察官しか有さず、その判断は検察庁としてではなく担当検察官個人の責任で行う(このため独任官庁とも呼ばれる)。捜査において、武器携帯と使用の権限は持っていないが、逮捕の為ならば邸宅等への立ち入りや物品の差押の権限もある(刑事訴訟法220条)。
犯人(被告)と見なして起訴したならば、被告側の弁護士と対決し、証拠を用いて犯罪の事実を裁判官に証明して法律上適切な刑罰を求める。判決が確定した後に懲役や罰金等の刑が執行される際も、検察官が指揮することになっている。
検察官は刑事起訴の権限を独占する引き換えに厳正な政治的中立が求められ、そのために非行による懲戒免職などの例外的なケースを除いてどのような政治的圧力を受けても解任されないことが保証されている。
検察官が自ら現場捜査を行う例外ケースは、政治家が関係する汚職事件や大型の経済犯罪である。こういった事件は捜査への政治的介入が起こりやすく、警察が捜査するにはかなりの困難が伴う。そこで東京・大阪・名古屋の地方検察庁に「特別捜査部」というこれらの犯罪専門の部署が設けられており、検察官主導でこれらの事件を現場で捜査する。政界のスキャンダルで大物政治家の事務所や邸宅を強制捜査する東京地検特捜部は、報道でもおなじみである。
弁護士との大きな違いは、検察官は公務員である事。また弁護士は民事事件をも扱って原告と被告の利害の調整や和解等も行うが、検察官は刑事の原告のみ、つまり一言でまとめれば「犯人を裁判にかけて有罪にする仕事」である。
組織
最高検察庁の長は検事総長、次長検事がこれを補佐する。全国8か所に設置された高等検察庁の長は検事長、概ね各都道府県に設置される地方検察庁の長を検事正と呼ぶ。また地方検察庁管内には簡易裁判所で扱う軽微な刑事事件に対処する区検察庁が地域別に置かれ、検事が指揮する(この検事を上席検察官ともいう)。
副検事と検察事務官
各検察庁で働く検察官は検事と副検事に分かれる。
副検事は主に区検察庁に配置され、検事に比して処理できる事件が比較的軽微であることが多いが、刑事事件等を単独で担当する。「副」という名称からたびたび誤解されるが、検事の指揮下で業務を行う検察官ではない。検事の仕事を補佐して捜査を行い、逮捕、被疑者や第三者の取調べ、罰金徴収などの事務を担当するのは検察事務官である。
一定の条件を満たした検察事務官や裁判所書記官などが副検事任用試験に合格することで採用される他、司法試験合格者のうち検事に採用されなかった者も副検事任用されることは可能。
検察事務官になるには国家公務員一般職試験を受け、検察庁に採用されることを要する。前述の通り、検察事務官が一定の年月と試験を経て副検事となることが可能であるが、さらに一定の年月と試験を経て検事に昇進する道もある。
法務省職員としての検察官
法務省本省に勤務する検察官は本来キャリア官僚として採用されている事務官たちより遥かに早く出世する。法務省歴代事務次官の全てやほとんどの局長級も検事が占めている。
このため法務省はキャリア官僚登用試験である「国家公務員総合職(旧Ⅰ種)」合格者が不遇な扱いを受ける珍しい官庁になっている。
逆転裁判シリーズにおける検事の位置付け
逆転裁判シリーズでは検事が事件の操作指揮を行い、現場の刑事に命令する立場であり、挙げ句には刑事の給与の査定まで行っているかのように描かれているが、実際の検事は刑事の上司でもなんでもない。全く別組織の職員であり、当然上下関係は無い(ただし、捜査について検察が警察に対し一定の指揮権を持つこと自体はある)。
また、「検事局」という組織名も度々登場するが、そのような名称の組織は存在しない。実在する組織は「検察庁」である。
上記は、あくまでもフィクションとして、分かりやすくするためのものと思われるが、誤解のないよう。
有名な検察官
実在の人物
日本
- 松田昇 元東京地検特捜部部長。特捜部検事として田中角栄元首相を受託収賄等の容疑で逮捕、同部長としてリクルート事件の捜査を指揮。
- 若狭勝 元東京地検特捜副部長。他にも横浜地検刑事部長と東京地検公安部長を歴任。その後コメンテーターとなり、一時は衆議院議員を務めた。
海外
- ジョセフ・キーナン 太平洋戦争の戦争犯罪を扱った極東軍事裁判の主席検察官。
- ナタリア・ポクロンスカヤ 美人検察官として話題になったクリミア共和国検事総長。
定年退官の年齢
検事総長だと65歳、それ以外は63歳(検事総長以外も65歳になる予定だったが、検察庁法改正案に抗議しますのせいでぽしゃった)。
定年退官後の天下り先
検察官の定年退官後の天下り先は、主に日本の上場企業でありトヨタ自動車等、様々である。
架空の人物
- 御剣怜侍(逆転裁判、逆転検事)
- 狩魔豪(逆転裁判、逆転検事)
- 狩魔冥(逆転裁判、逆転検事)
- ゴドー(逆転裁判3)
- 牙琉響也(逆転裁判4)
- 夕神迅(逆転裁判5)
- ナユタ・サードマディ(逆転裁判6)
- 一柳弓彦(逆転検事2)
- バロック・バンジークス(大逆転裁判)
- 藤井真冬(JUDGE EYES:死神の遺言、LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶)
- 泉田圭吾(JUDGE EYES:死神の遺言)
- 森田邦彦(JUDGE EYES:死神の遺言)
- 鷹野貞雄(LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶)
- 魅上照(DEATH NOTE)
- 中森碧子(まじっく快斗)
- 九条玲子(名探偵コナン)
- 久利生公平(HERO)
- 羽生晴樹(リーガルハイ)
- パオフゥ(ペルソナ2)
- 新島冴(ペルソナ5)
- 朝日奈耀子(「検事・朝日奈燿子」シリーズ)※1
- カルストンライトオの父親(ウマ娘プリティーダービー)※2
※1 医師の資格を持つ検事。どちらも最難関の国家資格なので、ネットではダブルライセンサーの話題になるとたまに名前が出たりする。実際に取得は不可能ではない(医師資格を持つ弁護士なら実在)が、現実的にはやや荒唐無稽。
※2 父親本人のグラフィックや立ち絵等は存在しないが、ライトオの育成ストーリーで父親の職業が検察官だと彼女の口から明言されている。