御剣怜侍
みつるぎれいじ
「サイバンでモノを言うのは証拠品だけだ!」
『逆転裁判』シリーズの主要人物、および『逆転検事』シリーズの主人公である。主人公成歩堂龍一のライバルという位置づけ。検事シリーズでは一条美雲が(押しかけ)助手となっており、直属部下の刑事・糸鋸圭介や同門の検事狩魔冥らと協力して捜査を進めていく。
若き天才検事と呼ばれ、担当事件の法廷では無罪判決を許したことがない。一方で犯罪者を酷く憎み、有罪判決の為ならば手段を選ばないという悪評もある。成歩堂には彼が弁護士になる前から面識があるようだ。
冷静沈着にして頭脳明晰。しかし不器用でやや天然な一面もあり、他人と仕事以外の話をするのは苦手。責任感が強く、他人以上に自分自身のミスは許せない性格。名実共に天才なのだが、サイコロックの事を「さいころ錠」だと勘違いしたり、証拠品の建造物や置物の名前、人の名前等を間違えて覚えてしまう癖がある。この事を馬鹿にした成歩堂は、胸倉を掴まれたらしい。
『逆転裁判』シリーズでは特にこれといった特別な能力は持ち合わせておらず使用する場面もないが(但し『逆転裁判3』第5話では例外的にサイコ・ロックを使用している)、主人公となった『逆転検事』シリーズでは、事件の情報を集めて一つの情報にまとめる「ロジック」という推理能力を使用している。
また、『逆転検事2』では彼自身の固有能力としてロジックチェスというシステムが登場した。
(逆転裁判1第4話〜第5話・アニメ第8~12話ネタバレあり)
犯罪を憎む少年
成歩堂龍一および矢張政志とは小学校時代の同級生であり、ある出来事をきっかけに三人は親友となる。当時の怜侍は、弁護士である父親・御剣信のような弁護士を目指していた。
(イラスト左下は幼少時代の御剣怜侍。その右が幼少時代の成歩堂龍一)
しかし、父親は9歳の時に共に巻き込まれた「DL6号事件」で死亡した。この時、地震の影響で停止したエレベーター内に5時間以上閉じ込められた上に父を失ったトラウマで地震が苦手になってしまった。その裁判で容疑者だった男が無罪になったことから、父を殺した殺人犯、ひいては犯罪者の味方にはなれないとして検事を目指すようになる。
アニメでは父親以外に身寄りはいなかった事が語られており、事件後間もなく引き取りを申し出た狩魔豪に引き取られ、以後彼のもとで育った事が判明する。「DL6号事件」の後に転校したため、成歩堂達とは長い間会っていなかった。その後は伝説の検事と呼ばれる狩魔豪に師事し、弱冠20歳で検事になった(当時最年少)。師匠の娘であり、昔から共に検事を目指してきた狩魔冥とは義理の兄妹のような関係にあたり、血の繋がった家族がいない彼にとって唯一の家族とも呼べる存在である。
若き天才検事
検事になった当初は、師匠の豪と同様に証言の操作など強引な手段を使ってでも有罪判決を勝ち取ろうとするスタイルで、検事局始まって以来の天才と持て囃される一方で不正疑惑などの黒い噂が絶えなかった。大学の芸術学部時代に御剣の悪評を耳にした成歩堂は舞台俳優への道を捨て、御剣と再会してその真意を問うために弁護士を目指すことになる。一方で、この頃に無実の罪で逮捕された糸鋸圭介を救い、長年に渡って協力して事件捜査を進めることで絶対の信頼を得ることにも成功している。
若き天才検事として活躍を続け、成歩堂龍一と対決するまでは一度も無罪判決を出したことがなかった。弁護士となった成歩堂と法廷で再会し、無茶苦茶ながらも被告人の無罪を信じて真犯人を追求する姿を目の当たりにすることで、その頑なな心境に変化が起き始める。自分が被告人になり、最大のトラウマであった「DL6号事件」の真相が判明し、成歩堂に救われたことでさらに大きく変化。そのまま「検事、御剣怜侍は死を選ぶ」という言葉を残して法曹界から姿を消し、「自分探しの旅」とでも言うべきか失踪を遂げる(書置きは懇意にあったホテル・バンドー支配人が発見している)。
真実を追い求める検事
次に登場した時には、勝ち負けよりも真実を追求することを優先するスタイルに変わっていた(逆転裁判2)。それからは検事局最高の天才検事と評価されるようになり、成歩堂最大のライバルとして、あるいは自ら主人公としても活躍を続けていく。
なお、不正疑惑については『蘇る逆転』にて詳細が語られており、御剣自身は不正行為に関して一切関知していなかったものの、自身の上司(延いてはその裏にいる黒幕によって被告人を有罪にするために捏造した偽の証拠品を渡されており、捏造品とは知らずに被告人の有罪を立証したというのが真相である。
この事実を知った時は当然ながら相当なショックだったようで、辞表を用意するほど思い詰めていた。
逆転裁判3では彼の検事としての初法廷で弁護士綾里千尋と戦う過去のエピソードが見られる。その初法廷で彼は勝利とも敗北ともいえない苦々しい決着を受け入れることとなった。現代では、当初海外研修に出ていたが、天流斎マシスこと矢張政志に呼ばれて日本に戻る。そこで成歩堂から弁護士バッジを託され一時的にかっての夢だった弁護士になり、弁護士として現場の捜査をしたり検事狩魔冥と法廷で戦う。
DL6号事件の影響は消えておらず、地震に戸惑ったり霊媒師の力は信じられないとの意見を述べるなりした。
3の直後に、上述の海外研修で援助の手を差し伸べた天野河丈一郎との再会、その息子光の誘拐事件、父の死や狩魔一族、糸鋸刑事との因縁を巡って国際的な密輸組織の陰謀や過去の事件の真実追求へと戦う(逆転検事、逆転検事2)。この時には既に勝ち負けよりも真実を追求することを優先するスタイルをとっており、これによって信楽盾之と和解する。また、この「真実の追求」の為に自ら「検事バッジ」を返却するという大胆な行動も見せた。最終的に検事バッジはまた御剣の元に戻った。また、信楽からの「父の意思を継いで弁護士にならないか」という誘いを断り、「自分は検事として真実の追求と法曹界の闇に立ち向かっていく」という決意をしている。
さらに8年後の世界が舞台となる逆転裁判5では、逆転検事2の1話にセリフのみ登場した当時の検事局長から一目置かれていたこともあり、34歳の若さで地方検事局のトップである検事局長になっている。6ではその後、不正を行った検事達を一掃した事が語られている。
トノサマンのファン(当初このような設定はなかったが、攻略本掲載漫画で扱われたことから公式化した)で、六法全書に偽造したトノサマン大百科を持ち歩いている。
作品への愛が強いためか、きわめてトノサマンに類似した作品を目にした時はかなり憤り、成歩堂にあたっていた。
他には紅茶とチェスが好きで、その趣味は父・御剣信と共通している。
子供の頃から文武両道だったが手先は恐ろしく不器用で、小学生の頃は折り紙のツルさえまともに折れなかったらしい。
また、成歩堂と同様、携帯電話はかなり古いタイプを使用している(カメラ機能すらないほど古い)。
派手な服装通り、執務室も貴族みたいな調度品になっており、プライベートも貴族的なイメージのまんまらしい。
趣味にはとことん金をかけるようで、紅茶はイトノコ刑事の一ヶ月分の給料より高い特注品(もっとも、イトノコ刑事の給料は御剣らに下げられまくっているせいでかなり安いのだが)。
車は真っ赤なスポーツカーを所有しており、アニメ版では実際に運転して出勤しているシーンが挿入されている(そして対比のように自転車に乗る成歩堂の出勤シーンが挿入される)。反面、無駄な出費はたとえガム一つだろうとしない。
上述のように「DL6号事件」のトラウマから地震が苦手で、地震が起きると床にうずくまって震えたり、酷い時は失神や呼吸困難を起こす。またエレベーターも事件の影響で苦手としている(乗れないわけではない)。逆転検事では飛んでいる航空機の中の揺れでもトラウマの影響で気絶してしまい、そのせいであらぬ疑いをかけられた。
だが実写映画版では密室の資料倉庫、アニメ版ではDL6号事件発生の原因が停電に変更されているため、いずれにおいてはこの設定は事実上消滅している。
アニメ版の方についてはSeason1の放映時期に大きな地震が起こったため、それを受けとめての対応とTwitterの2019年3月15日に巧舟のツイートで語られた。
なお、「6」DLCの特別法廷でオバチャンにウブであることを指摘されており、「6」現在も嘗ての女性経験の話が出ないことも鑑みると女性経験はかなり薄いかもしれない(成歩堂は元カノがいたが)。もしかするとDTかも…おっと誰か来たようだ。
身長178cm。真ん中で分けた髪に端正な顔立ちをしており、女性受けが非常にいい。
考え事などをするときは腕を組むことが多い。
相手に余裕を見せるときや、相手を追い詰めるときは両手を広げ「やれやれ」といったポーズをとったり、顔の前で人差し指を立てて振るなど、ライバルの弁護士と比べると優雅なイメージを持つ仕草が多い。
が、そこは逆転裁判。うろたえると他のキャラの例に漏れず顔芸を披露する。
(過去の事件以来、地震が苦手)
服装はワインレッドのスーツの前を開け、中に黒いベストを着ている。クビに白いクラバット(通称ヒラヒラ)を巻いているのが特徴であり、成歩堂と比べ幾分派手な服装と相俟って、そのヒラヒラは作中でもよくネタにされる。ちなみにこの派手なファッションは狩魔一族の直伝で、本人も誇りに思っており、スタッフによればクラバットも狩魔家お抱えのデザイナーによるオーダーメイド製とのこと。
漫画版『逆転検事』では、このヒラヒラスタイルの服を仮装パーティーの衣装と勘違いされたり、事件現場に集まったマスコミにもみくちゃにされ、ヒラヒラを掴まれてヨレヨレになったりという目にあっている。
ちなみに、検事バッジは付けておらず、ポケットに入れている(「逆転裁判」の世界では、検事バッジは付けない方がオシャレであると狩魔豪が広めたため)。もっとも逆転検事2での一条美雲の証言によると、相棒に検事バッジを見せびらかすのは大好きなようで、その辺りは青くトガったマブダチと同類である。
デビュー当時は、師である狩魔豪張りに装飾が多い中世貴族のようなド派手な服装であり「あれでも年々地味になってきている(成歩堂評)」らしい。髪は現在と比べやや短く、瞳は大きめで若々しい。
『逆転裁判2』の空港のシーンでは黒いコートを着用していた。
『逆転検事』シリーズでは衣装に変化は無い。
『逆転裁判5』ではスーツの裾がロングになり、メガネをかけている。
髪色は黒~灰色で塗られる事が多いが、岩元氏のイラストではやや茶色掛かっているものもある。
ちなみに父親である御剣信の髪色は担当デザイナーの岩元氏によると「ロマンスグレー」とのことである。
企画段階では、髭を蓄えたオールバックに黒いスーツが特徴の36歳の男性となっていた。このデザインは没となったものの、後に吸血鬼風のアレンジを加えたものが師匠狩魔豪のキャラクターデザインとして採用される。
名前の由来
日本語版の「御剣怜侍」という名前は、脚本家曰く「切れ味鋭い剣を持った怜悧な侍」をイメージして名付けられた。他作品では「美しい剣」と書いて「美剣(みつるぎ)」という苗字のキャラもいる。
英語版の名前は「Miles・Edgeworth(マイルズ・エッジワース)」で、宝塚版での名前にも使用されている。この苗字は英語圏にて実在していて「価値のある刃」を意味する。実在の苗字を流用して「原語版に近い意味合いの名前」に仕上げている所に、ローカリゼーション・ディレクター(実質的な翻訳家)の秀逸なセンスが光る。愛称の「ミッちゃん」は「Edgey(エジー)」に変換され、苗字を短縮化したものとなった。
『銀魂』でのパロディ
アニメ版『銀魂』第94話『電車に乗るときは必ず両手を吊り革に』~第95話『男達よマダオであれ』では、ついに『逆転裁判』のパロディが描かれる事となった。この話では「大江戸線キン肉バスター痴漢事件」の詮議(現代での裁判)が行われ、主人公・坂田銀時が弁護士に扮して、旧知の仲にある被告人・長谷川泰三の無罪判決を勝ち取るべく奮闘する。銀時の役割は『逆転裁判』における成歩堂であるが、何故かスーツの色は御剣と全く同じワインレッドであった。「御剣は元々、弁護士を目指していた設定」を踏まえての配色であろうか。なお銀時のネクタイはターコイズブルーのごく普通の物だったが、変装の一環として眼鏡を着用しており、信と『逆転裁判5』以降の御剣をも彷彿とさせる出で立ちとなっていた。銀時の本業は依頼されれば何でもこなす『万事屋』であり、腐れ縁の友人の長谷川を救う為だけに、職業を弁護士と偽って自発的に弁護を行っている。
銀時は若手天才検事と名高い破牙を相手に善戦するも、第92話『人の短所を見つけるより長所を見つけられる人になれ』(詳細は関係者の項目参照)では、自身も覗き行為を犯していた事を暴露されてしまい窮地に立たされる。自分の前科を激しく追求する破牙に、憤慨した銀時は「だーかーらー俺は覗きなんてしてねぇって言ってんだろーが!!コイツ(長谷川)と一緒にすんじゃねぇぇぇぇ!!殺すぞ、コラァァァァ!!」と長谷川を指差して暴言を言い放った。弁護士にとって最大のタブーとも言える「被告人の犯行を認めた上で見捨てるという暴挙(専門用語で「利益相反」という弁護士法違反の犯罪。他には主張の穴を教える等、意図的に相手に勝ちを譲る行為もこれに当たる)」を銀時がやらかしたものの、救援に駆け付けた助手コンビ・志村新八と神楽が持って来た証拠品によって、今度は破牙の不正行為が暴かれた事で弁護側は逆転勝利を獲得した。
判事役のお奉行から長谷川には「女房の長谷川ハツを泣かせた罪」と「傍聴席にいた彼女を追い駆ける罰」のみが言い渡される結果となった。同業者の裁判長に負けず劣らず、お奉行も話の解るお人である。ラストシーンでは『逆転裁判』第4話『逆転、そしてサヨナラ』の真宵同様、新八と神楽が「縦書きで勝訴と書かれた大きな紙」を持って、長谷川の元に現れて勝訴を祝福した。
「弁護士役が務まるのであれば、本職の人間でなくとも構わない」と判断されたのか、最後まで銀時の職業詐称(これも弁護士法違反。「ヤの自営業との関係を匂わせる(暴対法違反)」と同じで、資格無く弁護士と名乗った時点でアウト)は1度も言及すらされずに終わった。閉廷後の破牙曰く「私は長谷川にとってハツを巡る恋敵なので、正々堂々と勝負したかった為あえて追求せずにいた」との事。破牙に詰め寄られた銀時が逆上した場面は「彼は所詮、本物の弁護士ではない」と示唆している様にも見える。しかし銀時は『逆転裁判3』第3話『逆転のレシピ』に登場した成歩堂の偽者とは正反対に「弁護士に成り済ましながらも、被告人の無罪判決を見事に勝ち取る偉業」を達成した。
この他にも「①主人公である弁護士の助手を務めるコンビ」「②主人公の弁護士が友好的な関係にある人物を冤罪被害から救い出す」「③若手天才検事との法廷抗争」「④弁護士と検事の「異議あり!」が飛び交う法廷」「⑤裁判の途中で差し挟まれる、笑いを誘う無駄なやり取り」「⑥検察側の不正行為を暴露して形勢を逆転する」「⑦主人公の仲間が突如として法廷に乱入し、逆転勝利の切っ掛けを生み出す」「⑧野次を飛ばす傍聴人一同」「⑨所々で間の抜けた面を見せるも、最終的には正しい判決を下してくれる裁判長=お奉行」「⑩ラストシーンで勝利を祝って「勝訴」と書かれた紙を持つ弁護士の助手」といった『逆転裁判』を意識したと思われる要素が随所に盛り込まれている。
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