概要
正確には『逆転裁判3』から芸術活動に勤しむ様になった、矢張政志のペンネームである。
矢張は初代『逆転裁判』で初登場してからというもの、その軽薄でお調子者な性格故に、行く先々でトラブルメーカーとなっては、フリーターとして転職を繰り返す生活を送っていた。彼の引き起こした迷惑行為は切りが無いが、これまでは大して気に留めずにいた。
だが『3』第2話『盗まれた逆転』で発生した、アルバイト先の『KB警備会社』社長・毒島黒兵衛が殺害された事件が、矢張の一大転機となる。毒島は事件当時は社長室にいた所を襲撃されて、備え付けの防犯ブザーを鳴らして当直の警備員だった矢張に助けを求めた。しかし彼は恋人との別れ話に応じる目的で、無断で会社を抜け出していたせいで、毒島は誰にも助けて貰えないまま無念の最期を遂げた。とうとう毒島殺害事件での失態で、あろう事か上司の死の一因を作ってしまった事で、流石の矢張も心の底から後悔や罪悪感を痛感する羽目になった。
苦悩する最中、新人絵本作家・天流斎エリスの授賞作品として話題になっていた『まほうのびん』を読んで、いたく感動した矢張はエリスの元に押し掛けて弟子入り。彼女の弟子だと強調する為、作ったペンネーム「天流斎マシス」を自称する様になった。芸術活動を始めた所、画力は高く芸術家としての適正が認められた為、彼は「芸術家こそ我が天職」と確信して定職とするに至った。そもそも『1』の時点で考える人の置時計を製作する位であるため、芸術的才能には恵まれていると言える。第5話『華麗なる逆転』では、師匠のエリスが殺害される悲劇に見舞われるが、その画力で一見とんでもない構図を描いたことで、事件解決の一助となり、彼女の死後も矢張は「天流斎の名と作家活動」をエリスから引き継いで仕事を続けている。『3』以降の作品でも、芸術関連の仕事に打ち込んでいる姿を見せてくれる。
ペンネームだけはエリスと酷似しているが、作家としての服装や作風は彼女とは丸っきり異なっている。まず服装であるが、芸術家のシンボルとされるベレー帽を被り、私服の上から『英都撮影所』のマスコットキャラ・サルマゲどんの顔がプリントされた、ピンクのスモックを着ている。スモックには絵の具の跡が点々と付着している。
次に作風だが、エリスが子供向けの内容に終始していたのに対し、矢張は至って自由奔放に大人も楽しめる内容を描いている。ムチ使いの狩魔冥から着想を得た、メジャーデビュー作となった『メイちゃんのムチムチ大冒険』はスマッシュヒットを起こした。エリスの絵柄が如何なるものであったかは不明だが、矢張の方は写実的な画風から絵本にも適した画風に至るまで、多様な絵柄を使い分けている模様。
元から高い画力と独特のセンスを持つ、彼が描いたスケッチの1枚は『華麗なる逆転』での事件においては、真犯人のトリックを暴く突破口となる役割を果たした。この絵は「見た者に衝撃を与える、恐るべき光景が描かれた問題作」であった。『3』のエンディングでは、最後の事件解決を祝福して『成歩堂と仲間達の集合』をスケッチブックに描いた。こちらのスケッチは「モデルとされた成歩堂達の姿を現実に忠実に描いた上で、見る者に温かみを感じさせる名作」に仕上がっている。
デビュー作にして出世作に当たる『メイちゃんのムチムチ大冒険』以降、余り売れていない為、世間からは所謂、一発屋として評価されている。しかし画家としては、小さな仕事をこなしながら細々と生計を立てており、本屋で小さなサイン会を開く位の人気は残っている模様。また、6の特別編『時をこえる逆転』では、セレブの結婚式のウェルカムボード制作の依頼が来ており、芸術的センスの評価は認められている。矢張の性格上、集団の中で働くとなると確実に問題行動を起こしてしまうので、単独で自営業に携わる方が被害も少なく、自分のマイペースな気質にも合っているのは、彼自身も了承していると見られるので、芸術家を引退する可能性は低いと思われる。