概要
主に欧米圏で「ドラゴンボールの続編」として広まった二次創作であり、その歴史は古く、1999年頃にはインターネット上で流布されていた。
『ドラゴンボールGT』の続きとして設定され、孫悟空が神龍に連れられてどこかへ旅立った後の時系列とされる。
「AF」という名称は一人のファンによって考案されたものだが、後に多くの人々によって「AFの設定」と称する内容が数々作られ、統一されたストーリーや設定は存在しない。そのため公式作品と比較すると整合性に欠ける内容も多く、日本のドラゴンボールファンの間でも話題となり、大きな影響を与えた。
「AF」の意味については、「After Future(アフターフューチャー)」や「April Fool(エイプリルフール)」など様々な推測があったが、近年「Alternative Future(オルタナティブフューチャー)」の略であることが明らかになった。「Alternative Future」は直訳すると「代替の未来」となり、「もう一つの未来」という意味合いを持つ。
近年では、『ドラゴンボールヒーローズ』や『ドラゴンボール超』などの公式メディアミックス展開において、『AF』を彷彿とさせる設定が見られるため、「公式がAF化」と表現されることもある。
Pixivでは、当記事で述べる『AF』の設定に基づかない作品でも「ドラゴンボールシリーズの正史の続編」として制作された二次創作作品に対し、このタグが付けられることがある。
背景
『ドラゴンボールAF』は長年、アメリカを中心とする海外のファンがドラゴンボールシリーズの続編として制作した二次創作作品であると広く認識されていた。・・・・・日本においては。
日本では「海外で作られたもの」だという通説が信じられている一方、逆に海外ではなんと「日本で作られたもの」と思われていたのだ。更には公式の続編かもしれないとの憶測まで飛び交っていたという。
ネット上で散見される『AF』に関連する画像の多くは、実際には海外ファンが噂に便乗して制作したネタ画像やファンアートに過ぎなかったのだが、言語の壁により元の画像制作者の意図は伝わらず、画像のみが拡散された結果、「海外ファンが大真面目に作ったものである」という一種の先入観に基づく誤解が広まった。
要するに、どの国にも『ドラゴンボールAF』という作品の実体は存在しなかったのである。『AF』とはネットを隔てる言語の壁によって生まれた摩訶不思議な都市伝説だったと言える。
発端
このような誤解が生じた背景には、1990年代末に「超サイヤ人5悟空の公式画像」とされるスキャン画像が英語圏のインターネット上に広まったことがある。この画像はオリジナルながら、一見すると鳥山明氏の画風によく似ていたため、公式の流出画像であると広く信じられた。
現在では高解像度バージョンが発見されており、鳥山氏の絵ではないと容易に判別できるが、当時は低解像度で流通していたため、所謂サムネマジック現象によって見た目の説得力が増し、噂の信憑性を高める要因となった。
噂が噂を呼び、海外ファンの間では「日本では『AF』という続編が出ているらしい」「いやそんな情報はない、ただの同人誌では?」「もしかするとお蔵入り作品か?」といった憶測が飛び交った。その結果、『AF』という名前だけが一人歩きし、真偽不明のまま関連画像や設定が積み重なり、架空の作品像が形成されていった。
やがて日本にもこの噂が伝わり、「アメリカのファンが勝手に続編を作った」と誤解された形で更に広まっていった。
真相判明、そして・・・
時は流れ2012年。スペインのファンが例の「流出画像」がスペインのゲーム雑誌に投稿された読者イラストではないかと気付く。
検証の結果、1999年にスペインのゲーム雑誌に掲載された二次創作イラストが、問題の「超サイヤ人5悟空の画像」と完全に一致することが判明。さらに、投稿者本人とのコンタクトを通じて、画像のキャラクターは悟空ではなく「タブロス(Tablos)」というオリジナルキャラクターであり、タイトルの「AF」は「Alternative Future」の略であることが確定した。
これにより、『AF』が実体のない都市伝説であることが明らかとなり、多くの謎が解明された。しかし、それまでに培われた『AF』のイメージや話題性は根強く残り、現在も『AF』のコンセプトをもとにした二次創作作品が制作され続けている。
結論
『AF』は、その自由奔放な設定や「海外のファンが勝手に作った続編」といった触れ込み、更には公式風に加工された画像の流布などによって多くの誤解を招き、表面的な情報だけを見ると「非公式の作品を公式と偽ったもの」といった否定的な印象を抱かれることもある。
しかし、その背景を踏まえると、『AF』が単なるデマや誤情報ではなく、ドラゴンボールという作品が世界中で愛され続けてきたことを象徴する現象であったとも言える。
原作やアニメシリーズが終了した後も、ドラゴンボールの新たな展開を求めるファンは世界中に存在し、『ドラゴンボール超』が始まるまでの18年間、ファンの間で「続編を見たい」という願望は広く根強く共有されていた。そして世間ではインターネットの普及により、言語の壁はあれども海外の情報にアクセスしやすいグローバルな環境が整いつつあった。これらの要因が重なり、『AF』はドラゴンボールを愛するファンの夢が生み出した『もう一つの未来』として生まれ、広まったと言える。
結果として、『ドラゴンボールAF』という現象そのものが、ドラゴンボールという作品がいかに世界中で深く愛されてきたかを示す証拠のひとつとなったと言える。
設定
『ドラゴンボールAF』は、その成り立ちの経緯から「公式な正史」となる設定やシナリオは存在しない。
『AF』というテーマを扱う人の数だけ異なる設定が生まれ、一つの定義に対しても複数の説が存在している。「GTの後日譚」「ザイコーという敵の登場」といった基本的な要素は共通していることが多いが、細部の内容は創作者ごとに異なる。
そのため、『AF』には無数のバージョン違いがあり、各々が自由に調整・創作を加えられるシェアワールド的な環境が形成されているとも言える。
これまでネット上で「『ドラゴンボールAF』の設定」として流通していた情報や画像の多くは、原作との整合性が取りにくいものが多く、主にネタとして注目を集めた。
代表的な『AF』の設定:
- 超サイヤ人の変身段階に超サイヤ人5~超サイヤ人10までが存在する(更には12や100まで存在するという説もある)
- 超サイヤ人3未来トランクスや超サイヤ人4孫悟飯など、原作でその段階に到達していないキャラクターの変身形態が登場
- クリリンや魔人ブウ、セルなど、サイヤ人ではないキャラクターが超サイヤ人化する。
※セルは悟空やベジータの細胞を持ち、また魔人ブウは吸収によって能力を獲得できるため、クリリンはともかくこの二人に関しては完全にあり得ない話ではない。
他に、特筆すべき点としてはフュージョンの多彩さも挙げられる。
代表的な例:
この他にもゴジータとベジットのフュージョン(両者の元が悟空とベジータであるため、双方二人ずつ存在しなければ成立しない)や、6人が合体するフュージョンなど、原作の設定を超越したものまで登場している。
こうした設定は突飛でありながらも、その奇抜さゆえに話題を呼び続けた。
公式がAF化
1999年頃から『ドラゴンボールAF』の噂が広まり、その独特な設定は賛否を呼んだ。多くは「所詮二次創作であり、原作の基準からすればあり得ない」と評価されていたが・・・・・
2004年のPS2タイトル『ドラゴンボールZ2』にて、ヤムチャと天津飯のフュージョン戦士「ヤム飯」が登場。
後のアーケードゲーム『ドラゴンボールヒーローズ』では、未来トランクス、ナッパ、ラディッツの超サイヤ人3化、孫悟飯の超サイヤ人4化が実現。
2016年には3DSタイトル『ドラゴンボールフュージョンズ』で、多種多様なフュージョンが可能になり、『AF』で取り上げられていたベジータとトランクスのフュージョンなども公式に登場。
更に『ドラゴンボール超』や近年のゲーム作品では「公式がAF化」とも言われるような展開や要素が数多く出ており、この流れを受け、『AF』が単なるデマや都市伝説にとどまらず、公式の展開をある意味で先取りしていたとも解釈できるようになった。
結果的に、『ドラゴンボールAF』という存在は、ドラゴンボールという作品が無限の可能性を秘めていることを象徴する例となった。
「どんな展開でも描くことが出来る」
「どこまでも世界を広げられる」
そんなドラゴンボールという作品の柔軟さが、『AF』という現象を通して改めて証明されたと言えるだろう。
『AF』のキャラクター
ザイコー(Xicor)
『AF』の最初の章に登場する主要な敵キャラクター。
母は「ライラ」と呼ばれる謎の女神で、父は孫悟空と設定されており、孫悟飯や孫悟天とは異母兄弟にあたる。
ライラ(Lila)
ザイコーの母であり、「女神」とされる立場を持つに相応しい超越的な能力を持つ。何らかの方法で悟空との間に子をもうけたとされる。
「悟空がナメック星から地球へ帰る途中に出会った」とされるが、その正体については諸説あり、瞬間移動を教えたヤードラット星の女神とする説や、西の界王神とする説が存在する。
タブロス(Tablos)
『AF』都市伝説の発端となったキャラクター。
スペインのファンが考案したサイヤ人のオリジナルキャラクターであり、「超サイヤ人5の悟空」と誤解されたことが、『AF』という伝説の起点となった。
この「タブロス」の姿は、現在では「超サイヤ人5」のビジュアルとして定着している。しかし、純粋にタブロスというキャラクターとして見た場合、これは超サイヤ人のどの段階にあたるのか、あるいはタブロス独自の変身形態なのかは不明である。
『AF』における超サイヤ人の変身段階
超サイヤ人5
『AF』都市伝説の象徴的な存在。
超サイヤ人4に近いデザインで、銀色の体毛と髪を持ち、尻尾も備えている。髪のボリュームは超サイヤ人3に近く、肌の色は赤みがかっている。
発端となったイラストでは眉毛があるが、流通した低画質の画像では顔の細部が不明瞭だったため、超サイヤ人3のような眉なしのバージョンで描かれている作品も多い。
この形態のビジュアルは本来「タブロス」というキャラクターのものだが、「超サイヤ人5の悟空」として認知され続けた結果、『AF』を扱った二次創作において超サイヤ人5として定義されることが多い。
『AF』における超サイヤ人の変身段階の多くはデザインが統一されていないが、超サイヤ人5は初出のイラストが存在しているため、細部の揺れを除いて大まかなビジュアルがどの作品でも共通している。
超サイヤ人6
超サイヤ人3の髪や肌の色を変更したデザインが主流。「善」と「悪」の二つの形態が存在するとされる。
悪の姿はダークブルーの髪に黒目と白目の反転した禍々しい風貌を持つ。
善の姿は超サイヤ人4に近い外見で、体毛や髪が全て金色。ただし、眉毛の有無は一定しない。
超サイヤ人7
超サイヤ人3をベースに、髪は銀色で中央に金またはオレンジのメッシュが入ったツートンカラー。
当初はオレンジのメッシュが入ったバージョンが流通していたが、この形態を超サイヤ人6とする説もある。
※画像の左下には「ベジータ&トランクス (画像が途切れている為不明)にウンザリ!」という日本語の文言が確認できる。一見すると「超サイヤ人7の(恐らく)悟空」の画像とは無関係な内容に見えるが、これは既存の商品を加工したものであり、元の商品に含まれていた日本語のフレーズがそのまま残ったものと考えられる。
日本語話者にとっては不自然に映るものの、日本語に不慣れな海外のファンにとっては「日本語が書かれている」というだけで「本場(日本)で制作されたもの」という印象を与えるには十分な説得力がある。そのため、『AF』が日本発の作品であると信じられる一因ともなったと推測される。
超サイヤ人8
デザインが一定せず、複数の異なるビジュアルが存在する。
などが見られる。
超サイヤ人9
超サイヤ人8と同様にデザインが統一されていない。
- 体毛と髪を金色にした悟空、黒にしたベジータ
- 4をベースにマゼンタの髪、銀色の体毛を持つ悟飯
などが見られる。
超サイヤ人10
『AF』における変身段階のインフレーションを象徴する形態。
これまでの6〜9は単に公式イラストの色を変えただけのものが多かったが、超サイヤ人10はオリジナルのイラストが存在し、デザインの統一性がある。
石のような灰色の肌、針のように尖った硬質な髪と肘の突起、尻尾を持ち、膝にも針状の突起がある。筋骨隆々の、いかにも怪物じみた厳つい風貌を特徴とする。
このインパクトの強いデザインにより、超サイヤ人5やザイコーと並び、『AF』を代表する要素の一つとなっている。
トイブル版『ドラゴンボールAF』
2006年4月より、トイブル氏(後のとよたろう)が自身のブログ「toyblog」にて連載した漫画。
『AF』の噂や設定を基に制作された二次創作であり、『AF』自体の元ネタではない。
物語はザイコー編を踏襲しているが、大部分がオリジナル展開となっている。作画は鳥山氏の画風に非常に忠実であり、ストーリーも原作との整合性を考慮した完成度の高いものとなっている。
トイブル氏がとよたろうとして公式の作画担当となった後、続編は描かれず未完となった。また、「toyblog」は閉鎖されており、現在は閲覧不可能。
有志によってミラーやアーカイブが保管されているため、閲覧を望む場合は各々検索されることを推奨する。
関連イラスト
その他
ドラゴンボールの二次創作やパロディ漫画のうち、完成度の高いものや、AFに並んで話題となった著名なものを幾つか紹介。
ドラゴンボール菜
鳥山氏の画風の再現度が非常に高い作画で知られるドラゴン画廊・リー氏によるパロディ漫画。
「もし、地球に来たサイヤ人がベジータだったら?」をテーマとする。
ドラゴンボール第43巻
原作が42巻「バイバイ!ドラゴンボール」をもって終了した直後に、インドネシアのファンが製作したとされる同人誌。
悟空がウーブら仲間達と宇宙パトロールを結成するストーリーだとされる。この概要だけならばドラゴンボール超の章『銀河パトロール囚人編』を先取りしたとも解釈出来る。
フランスの同人作家、Salagir氏による原作とGogeta Jr氏およびその後任であるAsura氏による作画による二次創作ウェブ漫画。
タイトルが題する通りに多元宇宙論(マルチバース)を物語の主軸に置いており、複数の平行世界を扱う。
『ドラゴンボール』の正史から様々な分岐の起きた世界(所謂「IFストーリー」)、あるいは『ドラゴンボールマルチバース』オリジナルの世界など、幾つもの平行世界において各世界の「最強」の座にあるキャラクター達が、宇宙を隔てて行う武闘会に召集され激闘を繰り広げる。
言語は有志による幅広い翻訳がなされ、日本語を含む33ヶ国語版が存在する。
Gogeta Jr氏および後任のAsura氏が手がける本編は鳥山氏の画風の再現度が非常に高く、全体的に完成度の高いものに仕上がっている。
様々なゲスト作家が手掛ける、各世界でのIFストーリーを描いた特別編も見どころである。
ドラゴンボールZ サイバイバトル
所謂公式が病気。
2016年にスマートフォン向けアプリドッカンバトルにて、「サイバイマン」を主役とした新サービス始動という肩書きで一日限定で公開されたエイプリルフール企画。
2017年における公式が病気シリーズ第二弾。
新入社員孫悟空の社会人生活を描く、「社会人生活の存亡をかけたサバイバル」・・・という概要のエイプリルフール企画。
関連タグ
「公式がAF化」の筆頭として挙げられることがある。
こちらも「公式がAF化」の例に挙げられることがある。
特に超サイヤ人ゴッドの変身条件が、トイブル版『AF』における悟空の復活方法と類似しており、この設定を公式が拾いベースにしたのではないかという憶測がある。
時系列的にはこの後日譚とされる。