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トノサマン

とのさまん

トノサマンとは、『逆転裁判』及び『逆転検事』シリーズの劇中劇の登場人物、または『大江戸戦士トノサマン』を初代とする特撮ヒーローシリーズの通称である。
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概要編集

逆転裁判』及び『逆転検事』シリーズの世界にて、絶大な人気を誇る特撮ヒーロー番組。社会現象を巻き起こした大人気シリーズで、後続作品が幾つも制作されている長寿番組である。初代の『大江戸戦士トノサマン』は放送開始から瞬く間に社会現象と化し、主な続編として2代目の『小江戸剣士ヒメサマン』3代目の『大江戸戦士トノサマン・丙!』が存在する。それ以降も作中で一定期間が経過する度、続編が制作されては社会現象となる歴史を繰り返している。歴代作品は皆「全体的に完成度が高く大人にも楽しめる。特にストーリーや演出が高品質」と大評判。制作会社は『英都プロダクション』が担い、この企業に所属している俳優がメインキャストを務める。


既に初代『逆転裁判』から10年もの年月が経過している『逆転裁判4』の時代でも、続編が制作されており『電動伝道師サマンサマン』と『ボージャク武人ナニサマン』の2作のタイトルが話題に上げられた。それから更に2年後を舞台とした『逆転裁判6』の時代においても精力的に続編が制作されている。『逆転検事』の時代では『トノサマン』シリーズは「日本を代表する特撮ヒーロー作品」として海外からも好評を博し、当時の最新作『大江戸亭主トノサマン・OTTO』の舞台公演が日本と親交深い『アレバスト王国』主催のイベントとして『永世中立劇場』にて上演された。


「登場人物としてのトノサマン」は『大江戸戦士トノサマン』の項目にて後述。


登場人物達からの評価編集

メインヒロイン綾里真宵の他、男子小学生・大滝九太、制作スタッフの一員・間宮由美子も熱狂的なファンで『トノサマン・カード』の収集にも熱を上げている。真宵は『トノサマン』シリーズをこよなく愛するが故に、関連グッズを幾つも所持している。着メロを主題歌『大江戸戦士トノサマンのテーマ』に設定したり、携帯電話にはヒメサマンのストラップを着けたり、更にはトノサマンがプリントされた下着まで持っている。パートナーの成歩堂龍一への布教活動にも余念が無く、彼の着メロも『トノサマンのテーマ』にしたり、一時期は『成歩堂法律事務所』のオフィスに貼られるポスターが『トノサマン』シリーズの1作だったりもした。このオフィスのポスターは定期的に様々な物に貼り替えられているが、真宵が「剥がすと呪われる」と脅し付けた為、成歩堂が中々『トノサマン』以外のポスターに変更出来ず、小さな悩みになる一幕もあった。


この様な真宵からの押し付けも影響してか、成歩堂は今一つトノサマンに好感が持てず「シュールなビジュアル」と称したり、彼女に渋々と付き合って映画館での鑑賞、事務所での視聴にも参加している。自宅では暇潰しも兼ねて、真宵が宣伝目的で貸してくれたDVDを見ていたりもする。但し着メロを何年経っても『トノサマンのテーマ』に固定したり、基本的に真宵からの誘いには応じている為、本気で嫌っている訳ではない。アニメ版の成歩堂は「子供の頃から『トノサマン』シリーズの前身となった『大江戸交通安全シグナルザムライ』のファンだった設定」故、原作よりは『トノサマン』シリーズへの一定の愛着は持っている様で、DVDボックスでの全話視聴も大して嫌がりもせずに終えている。


御剣怜侍との関係編集

天才検事・御剣も「トノサマンの熱心な隠れファン」である。今や彼は『逆転』シリーズのメインキャラでは、真宵と双璧をなす代表的なファンとして扱われている。当初の御剣にはファンという設定は無く、後述の裁判にてトノサマン役の俳優・荷星三郎に対して「いつも楽しく拝見しております」と挨拶していたが、それを聞いたライバル弁護士・成歩堂は内心で「嘘つけ」とツッコミを入れる程、本気にしていなかった。『1』及び『蘇る逆転』の攻略本では、キャラデザイナーの1人スエカネクミコによる、前述の作中での描写を逆手に取って描かれたオマケ漫画・第3話『御剣よ、お前もか!?』にて「実は御剣は隠れトノサマンファンと明らかになる話」が公開された為この設定が定着した。


この話では、裁判所の控え室にて真宵と九太が「トノサマンの最強必殺技は何か」で口喧嘩をしていた。真宵は「トノサマン・ダイナミック・ハリケーン」九太は「トノサマン・スピアーX(エックス)」だと主張していた。成歩堂は一応2人の仲裁に入るものの無駄に終わり、高校生なのに小学生と本気で張り合う助手・真宵に呆れる一方だった。そこへ颯爽と現れた御剣は自信満々に「真の最強必殺技は「トノサマン御乱心大乱舞」だと長広舌で説き伏せ、自分達を遥かに上回る知識を披露した、御剣を尊敬した九太は「先生」真宵は「師匠」と呼び始めて慕う様になった。


弟子入りした2人を引き連れて、ご満悦に「はっはっはっ」と高笑いして去って行く御剣に、困惑した成歩堂は「御剣って一体!?」と胸中で述べた。その直後、証人として法廷に召還された『トノサマン』シリーズの監督・宇在拓也を前にして、御剣の顔には文字通り「サイン欲しいな」の本音が書いてあった。先程からの困惑を引き摺る成歩堂は「御剣っ!審議中だぞっ!何だ、その顔は!!」とすかさず指を突き付けて言い放ち、盛大にツッコミを入れた所でオマケ漫画は終幕した。ちなみに控え室での一件を知らない宇在は、状況に対する理解が追い付かず、戸惑いの表情を浮かべて冷や汗を流していた。


御剣が主人公のスピンオフ『逆転検事』シリーズでは、彼は以前と比べてトノサマンファンである事を隠さない様になり、勤務先である検事局の自分の執務室の窓辺には、堂々と初代トノサマンのフィギュアが置かれている。その隣にはトノサマン関連の事件を通じて知り合った、大場カオル(通称オバチャン)から贈られた花の鉢植えを飾っている。本棚には『六法全書』のカバーでカモフラージュされた『トノサマン大百科』が収納されていたりもする。作中では描写されていないだけで、その他のグッズも幾つか潜んでいるのかもしれない。また他人からトノサマンについて聞かれると、御剣は「私はよく知らないが」と前置きした上で的確な説明を披露してくれる様になった。


アニメ版は基本的には『逆転裁判』の『1』『2』『3』限定で映像化する構成であったが、幾つか『逆転検事』の要素も取り入れられており、御剣の執務室も登場している。後述の『トノサマン・丙!』の関連事件への対処に苦悩する親友・成歩堂を見かねた御剣は、彼を執務室へと招待し相談相手となる。その際に御剣が成歩堂を「我々はヒーローではない」と諭す場面では、初代トノサマンのフィギュアを背後から映して、物語の重味を増す演出がなされた。


制作背景編集

誕生の経緯編集

幾多の実写映画、特撮作品の名作を世に輩出した『英都プロダクション』の看板番組の1つとして扱われている。同社の撮影所を再建した凄腕プロデューサー姫神サクラが、以前は無名でB級映画ばかり撮影していた宇在拓也の才能を見抜き、監督に起用した事を切っ掛けに誕生する事となった。ちなみに『英都プロダクション』は『トノサマン』シリーズの開始前は、主に時代劇やアクション映画の制作に携わっていたらしく、撮影所には「当時の作品のポスター数点」が貼られているのが確認出来る。今となっては『英都プロダクション』は、特撮作品の制作会社としては名門に含まれている。「本社に所属する大柄で鍛え上げられた肉体を持ち、身体能力にも恵まれたアクション俳優の男性陣をメインキャストに据える事」が主な制作方針として挙げられる。


社会的影響編集

関連商品では『トノサマン・カード』が大ヒット商品となり、九太や由美子といった熱烈な大勢のファンによる、コレクションやトレードが盛んに行われている。初代の放送当時は『小学生がなりたい職業ランキング』では「殿様」が第1位にランクインするという珍事も起きた。


『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』との歩み編集

毎年1回だけ開催される「日本一の特撮ヒーロー」と認定された、ヒーローキャラと担当俳優にグランプリが授与される式典『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』でも輝かしい授賞歴を誇る。この授賞式はまだ3回しか開催されていないが『トノサマン』シリーズは「2作続けてグランプリを授賞するという歴史的偉業」を達成している。第1回は初代『トノサマン』が関連事件の結果、授賞式の開催前に打ち切りとなってしまい、ノミネートすらされない不幸に見舞われた。しかし続編の2作品にて、その悲劇を打ち消すが如く「特撮ヒーローの栄光の頂点」を手にする成果を挙げた。第2回ではキャラとしては『小江戸剣士ヒメサマン』の主人公ヒメサマン、担当俳優としては荷星三郎が授賞した。第3回ではキャラとしては『大江戸戦士トノサマン・丙!』の主人公トノサマン・丙、担当俳優としては王都楼真悟が授賞した。


2019年頃から高級ホテル『ホテル・バンドー』がスポンサーに加入し、本店『ホテル・バンドー・インペリアル』にて、前述の「第3回授賞式と授賞記念パーティー」が豪華絢爛な空間で盛大に同時開催された。


アニメ版では『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』は、原作よりも長い伝統のある授賞式となっていて、少なくとも十数年間に渡って開催されている。少年時代、成歩堂と御剣が親友の矢張政志と共に熱中していた「『大江戸交通安全シグナルザムライ』の主人公トリオ・シグナルザムライと担当俳優陣も、過去のグランプリ授賞者である」と語られた。


主題歌編集

『大江戸戦士トノサマンの唄』編集

この曲はシリーズ通して主題歌に用いられ、当初ゲーム内で流れるのは曲だけであったが、初代『逆転裁判』の発売10周年記念に満を持して『逆転』シリーズの生みの親・巧舟の手で、初めて公式の歌詞が付けられるに至った。『トノサマン』シリーズは子供向け番組という設定に反して、非常に過激で暴力的な言葉が並ぶ歌詞に仕上がっていて、現実だったら放送禁止待ったなしである。「息の根止めるまで正義の怒りでぶち殺せ」「平和を守るぞ、ぶち殺せ」といった歌詞を知ると、トノサマンの正義感に疑問を抱いてしまう。『逆転検事』では作中に歌詞の一部が初登場した。ちなみに歌詞の冒頭ではトノサマンの設定への言及が含まれ、仮面ライダーを意識したと思われる「改造手術の古傷が疼く」という歌詞が流れる。


下記のリンク先で見られる公式MVも制作されて、歌手は「アニソン界の帝王」と名高い水木一郎が担当した。ゲーム版の初期作品では、作詞担当の巧は成歩堂の声を担当し、作曲担当の杉森雅和は狩魔豪の声を担当し、BGM全般の作曲も手掛けている。なお狩魔は「トノサマンファンの代表格」として描かれている御剣の師匠に当たる。


『大江戸戦士トノサマン』編集

『作品解説』編集

逆転裁判』第3話『逆転のトノサマン』に登場。記念すべきシリーズ第1作。恐らく『英都プロダクション』にとっても初代となる特撮ヒーロー番組なので、まずは手堅く子供達の人気を集めようとしてか、シリーズ随一のオーソドックスな作品となっている。毎回、正義のヒーロー・トノサマンと悪のボス・アクダイカーンが宿命の戦いを繰り広げる、単純明快な勧善懲悪のストーリーが描かれる。絶妙な塩梅のシンプルな構造が功を奏して、10代を中心とした低年齢層のファンの大量獲得に成功した。登場人物のトノサマンとアクダイカーンは終始一貫して着ぐるみ姿で、SAを担う担当俳優が中から声を出して演じている。「実力派俳優による豪快なアクションシーンの数々」「時代劇風の世界観に囚われない秀逸かつ独特な台詞回し」が各界から大絶賛を浴びる事となった。不幸にも後述の関連事件の影響で打ち切りを迎えるも、事件の翌年には完結編なのか劇場版が放映された。


『登場人物』編集

トノサマン(SA:荷星三郎編集

本作の主人公。担当俳優に合わせてマッチョな体型とされ、全身が銀色に輝く屈強な肉体の持ち主となっている。殿様がモチーフなのが一目で解る丁髷(ちょんまげ)頭に、筋骨隆々の上半身を露出して赤いを着用する。一人称は「ソレガシ」で「ござる」を語尾に付けるのが口癖。武器は「トノサマン・スピアー」というを使う。戦闘にも使用するかは不明だが、トレードマークとして日の丸扇子を用いる。アニメ版では『暴れん坊将軍』の徳川吉宗よろしく「メカ白馬」に跨って登場する。舞台となる都市『ネオ・エドシティ』の征服を目論むライバル兼ラスボス・アクダイカーンとは幾度も死闘を演じ、都市の平和を守っている。『ネオ・エドシティ』には富士山がモデルの『ネオ・フジヤマ』が聳え立ち、よく作中の背景に登場する。担当俳優の荷星はトノサマン役としての抜擢を契機に、初めて脚光を浴びる事となった。


複数の技を持ち、ファンの間では「どの技が最強必殺技なのか」が議論される事もある。大技として「トノサマン・ダイナミック・ハリケーン」を持ち、最も有名な技は「トノサマン・スピアーX」である。前述のオマケ漫画にて長台詞を用いて説明した、御剣曰く真の最強必殺技は「トノサマン御乱心大乱舞」と言う。この最強必殺技を繰り出す時トノサマンは多くの代償を支払う羽目になるので、多種多様なドラマを生み出す舞台装置としても機能している。他にも補助技の「トノサマン・ビンタ」も備えていて「このビンタを喰らった者、目撃した者、全てを改心させる効果」を発揮する。正義の味方としてはチート級の効果を持つ技と言って良い。


初代トノサマンかつシリーズの看板キャラである為、歴代キャラの中では群を抜いて設定が作り込まれている。その設定の作り込みは一言で言えば「現実世界での様々な有名ヒーロー達の寄せ集め」である。ウルトラマンに丁髷や袴といった和風要素を付け足した様な外見、ウルトラマン並びにキカイダーを彷彿とさせる名前、主題歌では前述の通り仮面ライダーを意識した「主人公が改造手術を受けた設定」を散らつかせている。「変身しない特撮ヒーローという点」は『ロボット刑事』を想起させる。ある意味「特撮ヒーロー全般のパロディの象徴」として、初代トノサマンは位置付けられているとも言える。


アクダイカーン(SA:衣袋武志編集

本作の悪役。トノサマンの宿命のライバルでラスボスをも担う。悪代官がモチーフなだけにトノサマンと同じく丁髷頭で着物姿だが、ライバルとの相違点の多いデザインとなっている。但しアクダイカーンも演者に合わせて、厳つい体型の持ち主とされた背景はトノサマンと共通する。毛先がギザギザに尖った丁髷と立派なカイゼル髭を生やし、紫の着物の上には大きな肩当てとマント髑髏が描かれたバックルのベルトを装着している。如何にもな悪人面の顔には歌舞伎隈取りに似た模様がある。総括してアクダイカーンは「巨悪の年長者に相応しい威厳を放つ壮年男性」として描かれている。「飾り気の少ないシンプルなデザインを持ち味とした若々しい男性」と設定されたトノサマンとは何から何まで対照的である。


『ネオ・エドシティ』を我が物とすべく暗躍する悪の象徴で、日本刀を武器に宿敵トノサマンと激闘を展開する。名悪役ではあるのだが、人気面においてはトノサマンに完敗状態で、後述の関連事件にて担当俳優の衣袋が死亡したのもあってか、事件以降は作品内外を問わず再登場した試しが無い。実は密かに衣袋は「自分とアクダイカーン、荷星とトノサマンの人気の格差」に頭を悩ませていて、これが下記の関連事件にも関わって来る。最終的には「衣袋にとってアクダイカーンは、晩年の代表作にして最後に演じた役」となった。ちなみに前述の攻略本のオマケ漫画では、御剣の口から「アクダイカーン以外にも彼との関係の有無を問わず、複数の悪役が存在していて、文字通りトノサマンは全ての悪と戦っている設定」と説明された。こうした設定にも、正義感の強い御剣は心惹かれているのかもしれない。


『関連事件』編集

放送開始と同時に社会現象を巻き起こしたが、その数ヶ月後「トノサマン役の荷星が、アクダイカーン役の衣袋を殺害したと見られる事件」が発生し、公式関係者らは窮地に立たされる事となった。荷星の裁判が進行する中、担当弁護士・成歩堂によって事件の全容が明らかとなり、最終的には荷星の無罪が立証された。しかし彼の無実の証明と同時に暴かれた事件の真相は、子供向け番組制作の裏側だとは思えない程「『トノサマン』の俳優陣と制作陣の間に生じた、大人達のドロドロした悪質な内情」だった。


かつての衣袋は天下無敵のスーパースターであったが、5年前に新作映画の撮影中、誤って共演者タクミを転落死させる不祥事を起こしてしまう。タクミとは懇意にしていた姫神からの恨みを買った衣袋は「多方面から徹底的に冷遇され、末端の役者へと貶められる復讐」を受けた。5年間にも渡る惨状の中、堪忍袋の緒が切れた衣袋は姫神への復讐殺人を決意し、その罪を自分とは真逆の出世街道を歩む嫉妬の対象・荷星に着せようとした。ところが姫神の激しい抵抗を受けた衣袋はタクミ同様、誤って階段から足を滑らせて事故による転落死を遂げた。自分の逮捕を忌避する姫神もまた、荷星に罪を着せる事で事件の隠蔽を図り、部下の宇在にも協力させて現場工作も施した。その結果、荷星は誤認逮捕される羽目になってしまった。


事件解決後「メインキャスト、プロデューサー、監督の3人による犯罪」が公表された事により、人気絶頂期に物語も途中という段階で、初代『トノサマン』は無念の打ち切りを迎えるに至った。スタッフとキャストの合計3人が殺人関係の犯罪に及んでしまった以上、避けて通れない道ではあったのだが。「社会現象を巻き起こした伝説の名作の行く末」としては余りにも空しい。逮捕された姫神はプロダクションを懲戒免職となり、現在も正当防衛だったものの殺人罪で服役中の身にある。それ故に彼女は『トノサマン』シリーズの原案者の1人でありながら、制作に携わったのは初代『トノサマン』が最初で最後の作品となった。


姫神とは強固な主従関係にあり、彼女から圧力を掛けられて現場工作だけを行った宇在は、情状酌量が適用された為に極めて短期間で釈放された。作中の描写からして「勾留期間はほんの1、2週間」だった可能性もある。各方面から「人気番組の枠を消滅させてはならない」と判断されて再雇用にまで至ったらしく、釈放直後から復職している。そんな彼が急拵えで制作したのが下記の作品である。


『小江戸剣士ヒメサマン』編集

『作品解説』編集

逆転裁判』第3話『逆転のトノサマン』に登場。「初代『トノサマン』の打ち切りという緊急事態」に即座に対応する為、穴埋めとして急造されたシリーズ第2作。監督にして原案者の宇在は前述の「衣袋武志殺害事件」の際、捜査目的で成歩堂と一緒に『英都撮影所』を訪問していた真宵と出会った。事件に関する聞き込みをしたい彼女の都合を無視して「和装の健康的な美少女・真宵」に魅了された宇在は、その場で彼女の格好から着想を得て「今後『トノサマン』シリーズの続編となる新作、その主役を飾る新ヒロインキャラ」を構想した。それが『小江戸剣士ヒメサマン』と新主人公ヒメサマンである。本来は初代『トノサマン』が無事に放送終了を迎えた後、新作の続編として『ヒメサマン』は放送開始する予定だった。しかし初代『トノサマン』が前述の事件の影響で突然の打ち切りを喰らい、急遽その代役を請け負う形で新番組『ヒメサマン』は放送が開始された。


「作品の全てを急造しなければならない過酷な制作環境」だった為、人材獲得にも難航した様で「女性キャラ・ヒメサマンのSAを男性の荷星が担当する異常事態」を招いた。この人選は「前作に関する事件で辛酸を舐めた荷星への労い」も兼ねているとも取れる。トノサマンと違ってキャラとSAの性別が一致していないので「ヒメサマンは女優もしくは女性声優が、SAの演技に合わせて声を当てる形で動かしている」と見られる。慌ただしい状況下で誕生し制作された作品であったが、監督の宇在を筆頭に「本物の才能を備えたスタッフとキャストの尽力」によって、めでたく前作にも引けを取らない大人気番組へと成長した。最終的には第2回『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』のグランプリ授賞をも果たす大躍進を遂げて、無事に全話の放送を終了させたのだった。


作中での説明や描写が極めて少ないので『ヒメサマン』の作風は不明瞭であるが、恐らく初代『トノサマン』同様、無難な制作方針を取り「爽快感を伴う勧善懲悪を主題とした時代劇風の物語」が展開されたと見られる。ヒメサマン以外のメインキャラが公開されていない所からして「前作でのアクダイカーンに該当する特定のライバル」は不在であり、初代『トノサマン』との差別化も考慮した上で「主人公にして正義のヒロイン・ヒメサマンが単独で、毎回ありとあらゆる事件を解決して行くストーリー」が展開された可能性が高い。前作から引き続き『ネオ・エドシティ』が舞台とされ、基本的には「何らかの事情で不在のトノサマンに代わって、新主人公のヒメサマンが街の平和を守る為に奮闘するという筋書き」の模様。この舞台設定は「打ち切り処分を受けた、前作のやり直しやリベンジ」も考慮して付加されたのかもしれない。


『登場人物』編集

ヒメサマン(SA:荷星三郎編集

本作の主人公。確認出来る限り「シリーズ唯一の女性主人公」に当たる。トノサマン同様ウルトラマンの様な顔立ちだが、正義のヒロインに相応しく華やかで可愛らしい装いをしている。江戸時代お姫様日本国花大和撫子を象徴する振り袖をモチーフとした「全体にピンクの空間で桜吹雪が舞う様が描かれた衣装」は実に美麗。ポッコリとしたお椀型の巨乳が目を引く。SAが身長185cmのガチムチ巨漢だとは思えない程、スリムなモデル体型の持ち主。不思議な事に体型の格差は巧妙に誤魔化せているが、流石に身長は無理があるのでSAと同じになっていると思われる。もしかしたら身長と体格は、ある程度の加工編集で誤魔化しているのかもしれない。ピンクの結髪には2本の簪(かんざし)を挿している。『逆転裁判2』の攻略本では「その姿は『ネオ・エドシティ』に羽ばたく可憐な蝶の様」と称賛された。ピンクの柄のレイピアを武器とする。作中では実現しなかったが、公式イラストには「トノサマン・ヒメサマン・アクダイカーンのトリオ」を描いた物が存在する。


当初は「トノサマンとヒメサマンの関係」は謎に包まれていた。現実での制作事情、作中の設定と世界観から推測するに「ヒメサマンはトノサマンの留守を預かり、彼に代わって『ネオ・エドシティ』の平和を司るヒーローとして活動している」または「トノサマンがいないパラレルワールドにて、ヒメサマンは舞台の『ネオ・エドシティ』の秩序を乱す悪役陣と戦うヒーローとなっている」といったシナリオが展開されたと思われる。本作の放送終了から2年後、思いがけない形でトノサマンと共に復活し、後述の当時の最新作にて再登場を果たした。この時ようやく「トノサマンとヒメサマンの関係」が明言されたが、衝撃の後付け設定が公開される事となった。


『関連事件』編集

「事件」と言う程ではないものの、作品とほぼ無関係の場所で「ちょっとしたトラブル」が起きている。真宵との出会いから宇在は本作を構想した訳だが、その際に彼女に「ロリコン臭い危険な視線と言動」を向けていた。アニメ版では構想の元となった「宇在の妄想」が更に過激化しており、彼が脳内で思い浮かべた「ヒメサマンのコスプレをした真宵の姿」までもが描かれた。現実での真宵は貧乳だが、妄想での彼女は姉の綾里千尋には劣るものの巨乳と化していた。原作の時点でヒメサマン自身も巨乳として設定されている。


『1』のエンディングでは『逆転裁判』シリーズの恒例となった『登場人物達の後日談』が挿入されていて、トノサマンの過激派のファンだった九太も登場する。今では本命をヒメサマンに乗り換えてシリーズに熱中しているが、その意向を変更させかねない出来事が彼の身に起きた。相変わらず撮影所に潜入しては「憧れの特撮ヒーローの隠し撮り」に専念していた九太だったが、運の悪い事に「ヒメサマンの着ぐるみを脱ぐ荷星の姿」を目撃してしまう。作中の描写から「ヒメサマンの担当者は美人女優」だと思い込み、憧れの対象としていた九太は大ショックを受けて「もうショックだよ!あんなムサイのがヒメサマンだなんて‥‥」と泣きべそをかきつつ語っていた。これを機に撮影所の職員達からも迷惑行為と見なされていた、彼の隠し撮りという悪癖が失くなる事を願いたいものである。


『大江戸戦士トノサマン・丙!』編集

『作品解説』編集

逆転裁判2』第4話『さらば、逆転』に登場。子供向け番組から脱却し、大人向けとしても楽しめる作品の制作という、新機軸を打ち立てたシリーズ第3作。前作『ヒメサマン』でも社会現象を巻き起こし、見事に再建を果たした『英都プロダクション』は、初代トノサマン関連の殺人事件によって付着した「トノサマンというキャラ&作品に対する悪印象の希薄化」も視野に入れて新作の制作に乗り出す。初代の悪印象を完全に払拭する新しいトノサマン像を作り上げて、確実に大ヒット作品となる様に制作陣が徹底的に計算して世に送り出したのが、2代目トノサマンを主役に据えた本作『大江戸戦士トノサマン・丙!』であった。前作の時点で既に子供達からの人気は盤石となったので、今回は関連商品の購入も積極的に行ってくれる「大人の女性である新規ファン層の開拓」を主目的として制作されるに至った。その為に主人公トノサマン・丙役には、シリーズ出演以前から「人気イケメン俳優」として高い人気と実力を誇っていた王都楼真悟が起用された。ストーリーも今までとは打って変わって「大人も楽しめる一筋縄では行かないラブストーリー」が主軸に据えられた。


主な粗筋は「主役のトノサマン三兄弟の甲・乙・丙がヒロインのサヨを巡る恋の鞘当てを演じるも、彼女の正体は悪の組織『エチゴグループ』のボスの娘であり、宿命の戦いと恋路の狭間で揺れるメインキャラ4人を描いた切ないラブストーリー」である。わざわざ数年前から「若手実力派の美形俳優として、女性人気が非常に高い王都楼」を主役に据える辺り、今回は前作までとは異なり「トノサマンの変身前や仮の姿といった設定に基づき、人間としての姿が頻繁に登場する構造」だったと推測される。こうした作中での設定と扱いはトノサマン三兄弟全員に適用されて、王都楼と同様に客寄せ役として存分に利用したと見られる。女性向け要素となる「美男美女の恋物語」を展開する為にも、トノサマン・甲とトノサマン・乙も「今が旬のイケメン俳優」が、サヨも「今をときめく美人女優」が担当者とされたのだろう。


制作陣の営業戦略は期待以上の大成功を収め「前作から2回連続で『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』のグランプリを獲得するという歴史に残る快挙」まで成し遂げた。こうしてトノサマン・丙と王都楼は栄光の頂点に君臨するに至ったが、後述の関連事件が原因で瞬く間に「手にしたばかりの栄光と幸福の絶頂」を手放す羽目になった。残念ながら本作も関連事件が原因で打ち切りを迎えてしまったが、数年後には主人公をトノサマン・丙から彼の長兄の甲、次兄の乙へと変更しての続編が2作も制作された。この為、主人公を交代したものの『トノサマン・丙!』から続く、本筋のストーリー自体は何とか完結させられたと思われる。


『登場人物』編集

トノサマン・丙(SA:王都楼真悟編集

本作の主人公にしてトノサマン三兄弟の三男。キャラとしては2代目トノサマンに当たる。初代トノサマンと同じく一人称は「ソレガシ」だが、丙は語尾に「なり」を付ける。末っ子なので長兄のトノサマン・甲、次兄のトノサマン・乙からは粗略に扱われる時もある。現在ではヒロインのサヨを巡って、2人の兄とは恋愛方面での敵対関係に陥っている。サヨとの恋路のみならず、宿敵である悪の組織『エチゴグループ』のボスの娘が彼女と知って思い悩んでいる。唯一人の女性を一途に愛して尽くす誠実な人柄で、後述の関連事件を通じて明るみになった担当俳優・王都楼とは全く異なる人間性の持ち主である。彼は本作の出演以前から「トップクラスの人気イケメン俳優」と高評価されていたが、王都楼を「名実共に日本一の若手人気俳優」の座へと押し上げたのが『トノサマン』シリーズであった。それ故に彼自身も作品に対する思い入れは深く、自宅の居間には「栄光の証」として関連グッズを数点飾っている。


王都楼のキャッチフレーズが「春風の様に爽やかなアイツ」なのに合わせてか、春風を連想させる桜吹雪が登場シーン等の演出道具に用いられる。作中で入手するブロマイドでも「桜吹雪の舞う夜中、決めポーズを取るトノサマン・丙の姿」が写っている。初代トノサマンに倣って担当俳優と同様の体型に設定され、長身痩躯で細身の筋肉質になった。「殿様」と言うよりは「」と言う方が似合う出で立ち。初代と同じく「裸の上半身に袴を履いた格好」をしていて、水色の袴には富士山と荒波が描かれている。丁髷の毛先からは背丈と同じ位の長さのポニーテールを靡かせる。金色で「天晴(あっぱれ)」と赤い文字で書かれた大型の扇子を背負い、木製のカラクリ細工で出来た右手の義手が特徴。武器は「刃が丙の型の2代目トノサマン・スピアー」を使用。初代トノサマンが「至ってシンプルで男らしい熱さを纏う造形」であったのに対し、トノサマン・丙は「各部に派手な要素を盛り込み、全体的にスマートな印象を漂わせる造形」に仕上がっている。最強必殺技は「トノサマン・ザ・ご乱心」で「名前に乱心が入る技が最強必殺技」なのは初代と共通。


サヨ編集

本作のヒロインで、トノサマン三兄弟から好意を寄せられている。現在はサヨを巡る恋の鞘当てが原因で、若干ではあるものの三兄弟の仲が悪化している。普段は茶屋看板娘として働いていて、作品内外で「サヨちゃん」と呼ばれる事も多い。トノサマン三兄弟には出会った当初は一般人と思われていたが、後に実は悪の組織『エチゴグループ』のボスの娘だと判明した。倒すべき宿敵の娘が想い人という現実に、どの様にしてトノサマン三兄弟は立ち向かって行くのかが、本作の大きな見所の1つとなっている。


トノサマン・甲編集

トノサマン三兄弟の長男。2人の弟とは家族にして恋敵という複雑な関係にある。甲と乙もトノサマンである事には変わりないのだが、如何せん説明不足の為、弟の丙と同じく『エチゴグループ』と戦っているのか、それとも「日常パートで単なる恋敵として登場するだけの存在」なのかは定かではない。この点は乙も共通している。後にトノサマン・甲を主役とした続編『大江戸戦士トノサマン・甲』も制作された。この作品は成歩堂と仲間達の台詞によって「制作された事だけが一言で説明されるのみ」で具体的な内容は不明のままである。タイトルから察するに、恐らく制作陣による無難な方針の下「主人公を変更し、これまでとは異なる視点から描いた『トノサマン・丙!』の後日談に当たる続編」として制作されたと思われる。


トノサマン・乙編集

トノサマン三兄弟の次男。兄の甲と組んで弟の丙に冷たく当たる事もあるらしい。兄弟揃って同じ女性に恋しているが、兄弟なだけに好みのタイプも似通っているのかもしれない。後々には弟の丙、兄の甲に続いて、乙の主演作品『大江戸戦士トノサマン・乙』も制作された。その結果「トノサマン三兄弟全員の主演作品」が出揃う事となった。乙の主演作品もまた「たった一言で制作された事が説明されるだけ」なので、内容に関しては不明瞭である。この作品も上記の『トノサマン・甲』同様、主役の人選とタイトルからして『トノサマン・丙!』の延長線上にある物語が展開された可能性が高い。


『関連事件』編集

若手人気俳優のトップに君臨した王都楼であったが、常にその座を脅かすライバル俳優・藤見野イサオの存在を目障りに思っていた。彼らは同期で人気と実力は拮抗していた事もあって「お互いに異常なまでのライバル意識を抱く、極めて険悪な敵対関係」を構築していた。王都楼と藤見野は悪い意味での似た者同士で、共にライバルを蹴落とす為には手段を選ばない冷血漢でもあった。そんな2人に恋愛感情を玩弄・蹂躙された挙げ句、下らない意地の張り合いにも巻き込まれて自殺に追いやられた、不幸な被害者に当たる女性が1人いた。生前、王都楼と藤見野のマネージャーにして交際相手だった天野由利恵である。彼らは第3回『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』のグランプリも争っていたが、藤見野が演じる忍者ナンジャは敗北してしまう。彼はグランプリを逃した時に備えて「王都楼への報復措置」を用意していた。


それは「トノサマン・丙の着ぐるみを着て王都楼に成り済ました上で、記者会見を開いて由利恵との恋愛スキャンダルを暴露する事により、ライバルの俳優生命を断絶するという復讐計画」であった。盗撮を通じて藤見野の計画を察知した王都楼は「ライバルを口封じ目的で殺害する」と決意し、凄腕の殺し屋・虎狼死家左々右エ門に依頼して殺害を代行させた。しかし以前から「敬愛する先輩・由利恵の仇討ち」をしようと影で動いていた、王都楼のマネージャー華宮霧緒が「藤見野イサオ殺害事件」に便乗して現場工作を働き、彼を直接殺害した容疑で王都楼は逮捕へと追い込まれてしまう。大切な依頼人の助太刀をすべく虎狼死家は独断行動に及び、真宵を誘拐して成歩堂に「王都楼の担当弁護士となって、無罪判決を勝ち取らなければ、人質の真宵を殺害する」と脅迫した。これが原因となって、成歩堂と仲間達は事件に巻き込まれてしまい「真宵の救出目的」で一致団結して捜査にも裁判にも挑む事となる。


成歩堂は捜査を進行させた末に「醜悪な本性を隠し持つ王都楼こそが真犯人であり、卑怯にも虎狼死家の弱味を握ろうと犯行の盗撮まで犯した真相」に辿り着く。最終日の法廷では、無線機越しに虎狼死家と会話する事となった成歩堂は「王都楼の最悪の裏切り行為」を虎狼死家に暴露し、裏切り者を何よりも憎む彼が王都楼との依頼を打ち切る様に仕向けた。予想通り虎狼死家は激怒し、王都楼からの依頼を強制終了すると今度は彼を新たな標的に据えた。「無罪判決を受ければ、凄腕の殺し屋に惨殺される未来が待っている」と悟った王都楼は「刑務所に匿って貰う為、有罪判決と長期間に渡る懲役刑を受け入れる妥協案」を選択した。「どうあがいても絶望の未来」を前にして恐怖と絶望から発狂して、自ら有罪を求刑した彼はお望み通りの判決と刑罰を受ける結末を迎えた。霧緒も現場工作の罪で逮捕されたが、自分の犯行と成歩堂と仲間達の介入があってこそ、ようやく王都楼を失脚させて由利恵の無念を晴らす念願が成就した為、救われた霧緒は新しい人生への第一歩を踏み出す事が出来た。人質から解放された真宵も無事に保護されて、めでたく事件は最善の形で解決したのであった。


今回の事件は「成歩堂と仲間達にとっては大団円」を迎えられたが、世間に全て公表された「王都楼の本性、醜聞、凶悪犯罪」によって『英都プロダクション』は大損害を生じる羽目になった。「初代『トノサマン』による悪印象を希薄化させ、新たなる栄光の歴史を紡ぐ事」を目指して制作されたのが『トノサマン・丙!』だったのに、皮肉な事に「史上最悪の悪印象と黒歴史を生み出す結果」となってしまい、関係者一同は膨大な事後処理に駆り出された。今まで絶え間なく「爽やかな好青年」というイメージを売りに高い人気を維持し、女性向け恋愛ドラマの側面も担う本作の主役でありながら「女の敵と言える鬼畜な本性と前科の持ち主と暴かれた、王都楼が招き寄せた各方面へのイメージダウン」は非常に深刻なものだった。即刻『トノサマン・丙!』が打ち切られて封印作品として扱われる様になったのは言うまでもない。ここに来て『トノサマン』シリーズも大幅な仕切り直しを余儀なくされた。そうした背景の元で一から十まで安全策に徹した上で、下記の次回作は制作される運びとなった。

『大江戸亭主トノサマン・OTTO』編集

『作品解説』編集

逆転検事』第5話『燃え上がる逆転』に登場。基本的にはTV番組か特撮映画として制作されるシリーズ中、本作のみ舞台公演となっている。前作での「次世代トノサマン新生計画が、担当俳優のせいで大失敗に終わった痛手」が未だに癒えていない製作陣は、完全なる安全策として「今でも安定した人気を維持している初代トノサマン&ヒメサマンを主人公コンビとして復活させる」という決断を下す。この二大ヒーローは本来は他人同士だったのだが、ただコンビを組ませるだけではなく「トノサマンとヒメサマンは結婚して夫婦となった後、息子であるワカサマンを授かり、一家揃って悪に立ち向かう新世代ヒーローチームにもなったという設定」を追加した上で再登場させた。この世間の度肝を抜く後付け設定の元、新作として発表されたのが本作『大江戸亭主トノサマン・OTTO』である。


映像メディアを媒体として来た今までとは異なり、初めての舞台公演という形を取った事から一見すると本作は番外編にも見えるが、正当なシリーズ続編にして初代『トノサマン』と『ヒメサマン』の後日談に当たる。トノサマン一家の存在を全面的に押し出している辺り「家族愛の尊さを伝えるホームドラマ」と「特撮ヒーローのバトル」を組み合わせたシナリオ構成だったと推測される。この万人受けをとことん追求した方針転換が功を奏して、ついに『トノサマン』シリーズは前作による災難を乗り越えて、海外からも好評を博した末に「名実共に日本を代表する特撮作品」として認められた。華々しい復活を遂げたトノサマンも一家揃って「日本を代表するヒーローキャラ」として認定されて、特撮ヒーローにとっては歴史に残る破格の扱いを受けた。何と日本と親交の深い『アレバスト王国』と『ババル共和国』が主催する「両国の国際親善イベントのイメージキャラ」に抜擢されたのだ。このイベントは『アレバスト王国VSババル共和国・国際親善イベント』と名付けられた。


元々『アレバスト王国』と『ババル共和国』は『コードピア公国』という1つの国であったが、国内の争いが原因で長らく分裂していた。しかし長年に渡る確執を軟化させた両国は統合されて『コードピア公国』に戻る事となった。『アレバスト王国』と『ババル共和国』の『日本大使館』は本来の両国は同じ国だった事から連結した構造となっており、中間地点には『永世中立劇場』という立派な劇場を備えている。そこで今回は『国際親善イベント』の一環として「『アレバスト王国』と『ババル共和国』の大使が正式に親善大使として任命した、日本の人気特撮ヒーローを主役に据えた舞台公演」が行われたのだ。『アレバスト王国』はトノサマン一家を、『ババル共和国』は忍者ナンジャを指名した。


同盟国からの正式な任命を受けてトノサマン一家は親善大使に選ばれた訳だが、日本側のスタッフは前述の複雑な事情を無視した上、相手の2ヶ国を馬鹿にした様な暴挙に及んでいる。「本来トノサマン一家を演じる予定だったプロの俳優陣」がドタキャンしてしまった為に代役を雇用したのだが、とんでもない事に『アレバスト王国』の大使館にて警備員のアルバイトに従事する、一般人の男女にトノサマンとヒメサマンの代役を担当させる愚行に走ったのだ。ワカサマンに至っては人形となっている。最悪の場合、相手国から「国辱」と受け取られても不自然ではない対応である。これだけでも十分過ぎる位の大事件であったが、恐ろしい事に『アレバスト王国』の大使館にて関係者が殺害される事件が発生してしまう。だが驚くべき事にトノサマンとヒメサマンのSAが事件解決に大きな貢献を果たし、役者は代役ながらも舞台公演も見事に成功させた事から『トノサマン』シリーズの評価は飛躍的に向上し、関連事件が史上初の役得をもたらす結果を迎えた。


ちなみに『ババル共和国』の舞台公演では『忍者ナンジャ』の復活劇が開催されたのだが、こちらは事件とは全くの無関係のままで、更にはトノサマン一家の大活躍に話題を独占されてしまい、哀しい事に完全に日陰者となってしまった。この1件が追い討ちとなってか、制作陣に『忍者ナンジャ』は「幾ら制作を続行した所で利益には繋がらない」と判断され、舞台公演を最後に制作終了を迎えたらしく『逆転裁判4』以降の時代では続編や後継作の情報どころか、登場人物による言及すらも見られない惨憺たる状況に至っている。


『登場人物』編集

トノサマン・OTTO(SA:矢張政志編集

本作の主人公。名前は「トノサマン・オット」と読む。本作ではヒメサマンと結婚し、彼女の夫となった設定を反映して名前が変更された。第二武器として「トノサマン・ソード」が追加されて、これを武器にした時の専用技「トノサマン大根切り」も追加された。強敵と本気で戦う場合は奥の手として、従来の武器「トノサマン・スピアー」を用いる。「①上記の新しい名前が付けられた事」「②新しい武器と技が追加された事」「③妻子持ちとなった事」これら3つの変更点を除くと、過去の作品との大きな相違点は無い。夫婦揃って外見は全く変わっていない。ただ妻のヒメサマンと一人息子のワカサマンを連れて、一家揃って登場する様になっただけである。


今回の舞台公演では、本来はプロの役者がトノサマン役とヒメサマン役を担当する予定であった。しかし何らかの事情で本来の担当者の男女が公演不参加となってしまい、大使館で警備員のアルバイトをしていた男女がトノサマンとヒメサマンの代役を担う事態に発展した。トノサマン役には御剣の幼馴染・矢張、ヒメサマン役には御剣の追っかけ・オバチャンが起用された。この2人は共に御剣にとっては「自分に馴れ馴れしいトラブルメーカー」なので、愛着ある二大ヒーローの代役を演じられるだけでも大きな精神的苦痛を味わう羽目になった。無事に本職の役者が出演していれば、御剣には「良い思い出・夢の共演」となったのは確実なだけに不憫である。御剣の悲痛な心境とは裏腹に、本作は素人ながらも好演した矢張とオバチャンのアドリブも評判を呼び、コミカルな演出に仕上がった事でも盛り上がりを見せた。


ヒメサマン・YF(SA:大場カオル編集

本作のヒロインにして、もう1人の主人公。名前は「ヒメサマン・ワイフ」と読む。夫のトノサマン同様、基本的な設定は過去の登場作品を踏襲していると見られる。夫以上に改名して子持ちの既婚者となった事以外、大きな変更点は加えられていない。


本来のSAは現在、売り出し中の若手劇団員・七三(ななみ)であり、黒髪の七三分けの髪型が名前の由来の女性であった。具体的な理由は不明だが、諸事情あって彼女が出演出来なくなった為、急遽オバチャンが代役に任命された。作中では「ヒメサマンは若い美女のヒロイン」として設定されているのに反して「過去の主演番組では、ヒメサマンのSAが強面で筋肉質の暑苦しい男性という惨状」に陥っていた。それに追い討ちを掛けるかの如く「今回の舞台公演でのヒメサマンのSAは、キツイ顔立ちをした素人の中年女性が代役という惨状」で、これまたショッキングな配役となっている。今回の代役の人選は『トノサマン』シリーズ全般の大ファンにして、矢張とオバチャンに苦手意識を抱いている御剣にとって「悪夢の共演」となったのは言うまでもない。


ワカサマン編集

トノサマンとヒメサマンの息子で一人っ子。父親のトノサマン以上にウルトラマンそっくりの顔立ちをしており、初期案ではウルトラマンと同じ黄色い目を持つデザインもあった。これを採用すると流石に不味いと思われたのか、最終的には両親と同じ白目となった。金太郎同様「自分の名前の一文字が書かれた赤い腹掛け」を身に付ける。金太郎が「金」なのに対し、ワカサマンは「若」となっている。髪型は髷を結っているが元服前なので前髪がある。生まれたばかりの赤ん坊らしく、黄色いおしゃぶりを咥えて乳母車に乗って移動する。本作のエンディングでは「主人公夫婦にとっては第一子となるワカサマンの誕生」により物語は大団円を迎える。本作では結末にて「これからは一家総出で悪と戦う」とトノサマンが宣言するだけなので、ワカサマンによる戦闘シーンは見られない。両親の協力者を担う形で「主人公とヒロインの仲間というポジション」も占める。開発者には「いつか立派なトノサマンになる事でしょう」と語られているので、もしかしたら一定の成長後、続編に当たる作品で本格的な活躍の場が与えられたのかもしれない。


大使館のイベントでは赤ん坊役の人材確保は不可能だったので、両親の代役の人選よりもお粗末な事に「ワカサマンの代役には縫いぐるみが当てられる結果」となった。恐らく本来はワカサマンは赤ん坊の子役に演じさせる予定だったと思われる。その上トノサマンのSAがいい加減な性格の矢張なのが災いして、人形なのを良い事にトノサマンには頭を鷲掴みにされて無理矢理に立たされるという、父親が赤ん坊の我が子にするとは思えない程、酷い仕打ちを受けている。しかも「どうせ人形なんだから」との理由で、母ヒメサマンのSAオバチャンも矢張にまともな注意もせずに放置している有り様である。このブラックジョークも交えた、悲惨でシュールな光景は記念写真や舞台等で見られる。


『関連事件』編集

数十年前『コードピア公国』という国があった。この国では国民が思想に基づいて、二大派閥に別れて敵対しての内乱が勃発してしまい、最終的に内乱の鎮圧の為にも二大派閥は大きな決断を下した。それは派閥ごとに国を二分して軍事的衝突を回避し、当面の多岐に渡る問題解決を先送りにするという対応策の実行であった。こうして『コードピア公国』は分裂し『アレバスト王国』と『ババル共和国』という2つの新興国家が誕生した。但しこの2ヶ国は国交においては完全に関係を断絶した訳ではなく、元は同じ国だった事から切っても切り離せない関係にあり、お互いに隣国となった相手から政治面や経済面での協力を続行しなければ、国を維持するのは困難と言える状況にあった。『アレバスト王国』と『ババル共和国』は過去の確執から一定の距離を置いた国交を継続していたが、前述した国難が簡単に解決する訳もなく、両国共に経済的に疲弊して行き、国際社会における地位も依然として低いままだった。只でさえ貧窮していた『アレバスト王国』は「国際的な密輸組織の誕生と暗躍」によって追い討ちを掛けられて国力は低下。隣国の『ババル共和国』もとばっちりを喰らい、経済に大打撃を受ける羽目になった。


この国家存亡の危機を前にして、とうとう両国は統一して『コードピア公国』に戻る道を選択した。内乱から数十年が経過した為、国民達の敵国に対する敵意や悪感情もすっかり緩和されて来た。「元来の国家『コードピア公国』に戻りたい」と願う国民も日増しに増加し、正に統一するには最適の時期と環境に変化していた。『アレバスト王国』の国民も『ババル共和国』の国民も揃って「母国が本来の姿を取り戻し『コードピア公国』が復活を遂げる事」に大歓喜し、盛大な祝祭も開催される事となった。その祝祭『アレバスト王国VSババル共和国・国際親善イベント』は両国の『日本大使館』が舞台に選ばれた。日本は元々、分裂以前の『コードピア公国』とも『アレバスト王国』とも『ババル共和国』とも親交の深い国であった故「祝祭開催に関する協力」も快く引き受けて積極的に取り組んだ。『国際親善イベント』には『アレバスト王国』と『ババル共和国』の日本大使が、それぞれ指名した「日本を代表する特撮ヒーロー達がイメージキャラを担い、イベントの盛り上げ役として舞台公演も開演される」と決定した。


そこで『アレバスト王国』の大使カーネイジ・オンレッドが指名したのがトノサマン一家、『ババル共和国』の大使ダミアン・ヒンジが指名したのが忍者ナンジャであった。このヒーローの人選は恐らく「日本国内で1番人気のヒーローと、2番目に人気のヒーローだからという単純な理由故」だと思われる。それにしたって職業柄カーネイジもダミアンも、昨年に日本全土を震撼させた「トノサマン・丙の俳優が、忍者ナンジャの俳優を殺害した事件」を知らない訳ではあるまいに、よく今回の人選に踏み切ったものである。前回の事件から約1年の沈黙を破って、やっと復活を遂げた忍者ナンジャにも話題性はあった筈だが、日本人全体の意表を突く設定を追加された末に「一家で戦う新世代ヒーローへと生まれ変わったトノサマン&ヒメサマン、2人の息子ワカサマンの誕生」に完全に話題の的を奪われてしまった。忍者ナンジャは折角の復活に漕ぎ付けても、相変わらず「いつも必ずトノサマンに美味しい所を持って行かれる位置付け」には変化は無かったのであった。『永世中立劇場』での『ババル共和国』主催による『忍者ナンジャ』の舞台公演の終了後。続いて『アレバスト王国』主催の『大江戸亭主トノサマン・OTTO』の舞台公演の開始直前「密輸組織による最後の犯行となる事件」が発生する。『ババル共和国』の大使館職員マニィ・コーチンの遺体が『アレバスト王国』の大使館にて発見されたのだ。


今回の事件の真犯人はカーネイジで、彼の正体は国際的な密輸組織のボスである。マニィの正体も密輸組織の幹部であり、彼は自分がボスに成り代わろうとの野心からカーネイジに楯突き、返り討ちに遭ったが故に射殺されてしまった。この組織の犯行は世界規模に達していて『国際警察』でも「エリート捜査官達への極秘任務」が下されて、世界を股にかける大規模な捜査を進行する最中だった。更には「日本の重要機関の幾つか」にも、数人の幹部がスパイとして紛れ込み暗躍している現状にあった。『国際警察』からはダントツの検挙率を誇る一流捜査官・狼士龍が派遣されて、彼は秘書のシーナを筆頭に「99人の部下で構成された自分専属の捜査チーム」を率いて密輸組織を追跡していた。御剣も検事局から指令を受けて「主に日本に潜伏する密輸組織の幹部の面々を逮捕する任務」を担い、2人の助手である刑事・糸鋸圭介、義賊の少女・一条美雲と協力して関連事件の捜査に当たっていた。その結果ついに「カーネイジこそ密輸組織のボスにして、マニィを内部抗争を理由に殺害した真犯人」という真相に辿り着く。御剣一行と狼率いる捜査チームは協力してカーネイジを追い詰めるが、ここで予想外の邪魔者が登場し「カーネイジを守る壁」として立ち塞がる。その人物とは数年前、弁護士・葛氷見子の名を騙って多くの罪を犯して逃亡した後、密輸組織から『国際警察』に送り込まれたスパイという正体を持つシーナであった。密輸組織の幹部にして狡猾な凶悪犯という本性を現した「彼女の妨害工作という数々の試練」が御剣と仲間達に襲い掛かるが、全力を尽くして突破した彼らは、ようやくシーナの逮捕に成功したのだった。


そして、いよいよ「御剣と仲間達VSカーネイジ及び密輸組織との最終決戦」が始まった。彼は大使という自分の職業や権力、治外法権の行使等によって、八方手を尽くして逮捕から免れようとする。余りにも往生際の悪い「カーネイジによって執拗に繰り返される悪足掻きの連続」に御剣達は苦戦を強いられる。しかし「カーネイジの犯罪全般を単なる娯楽として扱い、ゲームと称して軽視する悪逆非道ぶり」に義憤と執念を燃え上がらせた御剣は、幾多の困難を乗り越えて、全ての元凶の彼を着実に追い詰めて行く。そんな状況下でも余裕を保って反撃を繰り出す態勢に徹するカーネイジであったが、トノサマンとヒメサマンのSAの矢張とオバチャンの証言、2人が発見した決定的な証拠品の出現によって、次第に立場的にも精神的にも疲弊の一途を辿る。最後は今までの犯罪の全容を『アレバスト王国』の上官にも知られて、大使を懲戒免職される処分を受けた。「職業に基づく権力や特権という最大の武器」を失ったカーネイジは弱体化してしまい、今まで犯罪をゲーム扱いして来た姿勢に対する皮肉も交えて「ゲームオーバーだ」と告げた、御剣の手で引導を渡される。こうしてカーネイジは長年に渡る悪事の報いを受けて失脚し、全てを無くした彼は生気までも尽き果てて「枯れ切った古木の様な弱々しい姿」に変わり果てると同時に逮捕の時を迎えたのであった。


一連の事件の解決後、平和を取り戻した『永世中立劇場』にて『大江戸亭主トノサマン・OTTO』の舞台公演が開幕した。これまでは『トノサマン』シリーズが殺人事件の発端や一因となっていたが、今回の事件では立場が逆転して「事件解決の功労者」となる名誉を得られた。


放送・公演一覧編集

タイトル放映年月タイムテーブル登場作品
『大江戸戦士トノサマン』~2016年10月21日毎週金曜17:00『逆転裁判1』
『小江戸剣士ヒメサマン』2017年ごろ毎週金曜17:00『逆転裁判1』
『劇場版・大江戸戦士トノサマン』2017年劇場版『逆転裁判1』
『大江戸戦士トノサマン・丙!』2017年~2018年3月毎週日曜8:00『逆転裁判2』
『大江戸亭主トノサマン・OTTO』2019年3月14日舞台公演『逆転検事1』

歴代関連作品編集

大江戸交通安全シグナルザムライ編集

アニメ版に登場。オリジナル劇中劇で『トノサマン』シリーズの前身となった特撮番組。作中では「第1回『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』のグランプリを授賞した伝説の作品」として語り継がれている。原作では『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』は『逆転裁判2』の時点で3回しか開催されていないのに対し、アニメ版では「十数年もの歴史を持つ伝統ある授賞式」に設定が変更され、その初代王者の座に輝いた『シグナルザムライ』が如何に歴史に残る名作だったかを如実に物語る。後継作『トノサマン』シリーズでは頻繁にトラブルが発生しているのに対し、1度もトラブルが起きずに放送を終了させられた辺り、ある意味『トノサマン』シリーズよりも高評価されているのかもしれない。


名前からして一目瞭然だが「信号機をモチーフとした3人の戦士」が悪と戦い活躍する物語である。シグナルザムライは「5人編成を基本とする戦隊ヒーロー」と酷似した外見だが、信号機をモデルとしている為、最初から最後まで3人編成のチームだったと推測される。この3人の男性以外のメンバーと見られるキャラも登場していない。を武器とするシグナルブルー、を武器とするシグナルレッド、ハンマーを武器とするシグナルイエローの3人でチームを構成しており、各々に名乗り専用の台詞が設定されている。主題歌は『シグナルザムライの唄』というタイトルで、作詞・作曲は巧舟、編曲は北川保晶と『大逆転裁判』の音楽コンビが手掛けている。この主題歌はアニメ版で聞く事が可能で、タイトルや作風も後継作『トノサマン』シリーズを彷彿とさせる曲に仕上がっている。


今から十数年前、幼馴染である成歩堂、御剣、矢張の3人が揃って夢中になった思い出の作品。放送当時の3人は小学生だった。作中では『トノサマン』にも匹敵する重要な劇中劇として扱われ、幼馴染トリオの友情劇を巧みに象徴・演出している。成歩堂と御剣と矢張の親交が始まった頃、彼らは駄菓子屋で購入したシグナルザムライのキーホルダーを「友情の証」に三分して、大人になった今でも「大切な思い出の品」として愛用のバッグに着けている。原作からの3人のイメージカラーに合わせて、成歩堂がシグナルブルー、御剣がシグナルレッド、矢張がシグナルイエローのキーホルダーを所持する。


『電動伝道師サマンサマン』編集

逆転裁判4』に登場。『トノサマン』シリーズの正当な後継作品。登場人物の会話にタイトルが登場するだけなので詳細不明だが、タイトルだけでも「トノサマン時代を彷彿とさせる要素が殆んど無くなっている事」が窺える。初代『トノサマン』から既に10年もの歳月が経過しているので、マンネリから脱却する為にも、一定の改変は避けられない頃合いに差し掛かっているのかもしれない。


『ボージャク武人ナニサマン』編集

逆転裁判4』に登場。上記の『サマンサマン』と内情は殆んど同じ。こちらも名前のみの登場で詳細不明。但しタイトルが『サマンサマン』以上に『トノサマン』とかけ離れている辺り、こちらの方がより一層「トノサマン時代の面影が感じられない作風」となっていると想像が付く。


異国での盗作被害編集

冥界戦士トリサマン編集

逆転裁判6』に登場。霊媒師一族・綾里家と強い繋がりを持つ遠き異国『クライン王国』限定で放送された。「王国の伝説の人物・鳥姫」をモデルとした女性主人公が、正義の戦士トリサマンとなって『ネオ・クラインシティ』を舞台に悪役のドゥルクとの戦いに挑む物語。「この国ではチャンネルが1つ、特撮番組が『トリサマン』1つしか存在しない現状」にも後押しされて絶大な人気と高視聴率を誇る。本作には見習い僧侶の少年ボクト・ツアーニ、高僧の夫を持つ貴婦人サーラ・アータム、更には『クライン王国』の王女レイファ・パドマ・クラインまでもが魅了されている。王国では姫巫女として崇拝を集めるレイファが登場人物の1人として登場するが、どう見ても身長や体格からして似ていない役者が演じている。但し現実では「イギリス女王エリザベス2世が実写映画に本人役としてゲスト出演」を果たしているので、やろうと思えば「レイファ本人によるゲスト出演」も行える可能性はある。


「勧善懲悪」を主軸とした作品だが、その実態は正義とは乖離した悪辣なものである。現実でも起きている問題ではあるが「自国の国民による知名度が低く、今後も知れ渡る事は無いであろうと見越して、遠い異国の作品を盗作して自国の作品だと名乗る事で楽して儲けようと企んでいる、腐敗した制作背景が見え見えの構造」となっている。主題歌や登場人物も明らかに『トノサマン』シリーズを強く意識して制作されているのが丸解りの作風で、一目見た成歩堂が「パクリ」だと口にする程ありとあらゆる面において酷似している。本家『トノサマン』シリーズの愛好家でありながら、真宵は寛大にも「これはこれで良い」と『トリサマン』を気に入っていた。


一方、彼女と並ぶ本家『トノサマン』シリーズの愛好家・御剣は「本家のイメージをぶち壊しにされた」と激昂していた。彼の怒り様からして「所詮『トリサマン』は『トノサマン』シリーズの劣化パクリに過ぎない実態」を如実に物語っている。『クライン王国』の国民からの人気が異様に高いのも、前述の「チャンネルも特撮番組も1つしかない環境」は勿論、国民がパクリ元でハイクオリティに定評のある本家『トノサマン』シリーズの存在を知らずにいるのも大きい。万が一この国で本家『トノサマン』が放送開始されようものなら、あっと言う間に世間から『トリサマン』が盗作であると認知されて人気は失墜し『トノサマン』が人気を独占する結果となるだろう。


ゲーム本編のアニメシーンでは本作の一部が視聴出来るのだが、それは「革命を叫ぶ怪人とその手下が民間人の女性に襲い掛かろうとした所、彼女を救う為にトリサマンが現れるという内容」であった。卑劣な事にレイファ役には平然と似ていない役者を起用している反面、悪役は王家打倒を目指す革命家ドゥルク・サードマディがモデルとされているのが明白である。彼率いる悪の組織の戦闘員のスーツには「ドゥルクが束ねる革命派組織『反逆の龍』のシンボルを模したマーク」を描いてもいる。「国民全体にドゥルクと『反逆の龍』は悪だと認識させて、革命派の活動を抑え込もうとする意図に基づいて制作された、王家による悪質なプロパガンダ」としても利用されていた事が透けて見える。本家『トノサマン』シリーズの高い人気や完成度に便乗した上で、政治的に悪用するスタッフのやり口もまた、強固な遵法精神の持ち主・御剣の逆鱗に触れたのかもしれない。最終的には今までの悪事の報いを受けてか、王家のしょうもない理由で放送中止されたり、更なる『トノサマン』シリーズのパクリ要素が露見する一大事へと発展した。


余談編集

初代『逆転裁判』の開発段階では、劇中劇には『トノサマン』と『メタルマスク』という2つの作品が候補に挙げられていた。脚本家兼プロデューサー巧は「流石にトノサマンというヒーローが流行する世界は有り得ない」と思い、無難に万人向けするであろう『メタルマスク』を採用するつもりだった。しかし自分以外のスタッフ全員が『トノサマン』の方に強い魅力を感じて支持した為、彼らの意見に迎合して『トノサマン』が劇中劇に選ばれた。この1件は『逆転』シリーズの持ち味である「スタッフの悪乗りの姿勢がもたらすギャグ要素」が構成されるのに一役買ったのであった。

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