概要
『逆転裁判2』第4話『さらば、逆転』に登場。年齢、身長、共に不詳。作中では2年前に死去しており、既に故人。
生前は華宮霧緒も尊敬する先輩マネージャーで、名だたる人気俳優の担当者だった優秀な女性。由利恵本人は知らなかった様だが、霧緒からは強く敬愛されると同時に依存対象ともされていた。「普段の霧緒のクールな敏腕マネージャーとしての振る舞いは、尊敬し依存している由利恵の模倣説」を唱えるファンもいる。冷徹な印象の強い霧緒とはまた違ったタイプの美女であり、由利恵は温和で落ち着いた大人の魅力を醸し出している。後に彼女の写真を見た綾里真宵は「綺麗な人」と称していた。
芸能界では王都楼真悟、そのライバルの藤見野イサオの担当マネージャーだった事で有名。実は彼らとは恋愛関係にもあった。最初は共に『英都プロダクション』に所属する王都楼と交際していた。だが彼に弄ばれた末に捨てられてからは『光映プロダクション』に移籍。今度は新たに出会った藤見野と交際を始めて最終的には婚約にまで至った。ところが王都楼が藤見野への対抗心から「由利恵は自分の元彼女」と暴露してしまい、屈辱感を覚えた藤見野に婚約を解消されてしまう。これに絶望した由利恵は遺書を遺して首を吊って自殺を遂げる。
「依存対象がいないと生きて行けない」という理由から霧緒は彼女の後追い自殺を図るが、失敗して未遂に終わった。図らずも命拾いした霧緒は由利恵の仇・王都楼と藤見野に復讐を決意し、彼女の真意を確かめる為に由利恵の遺書を探し求める様になった。この目的の為、影で好意があるフリをして藤見野に接近して情報を探り、彼と協力して王都楼を失脚させる計画を企てていた。2人の動向から王都楼も「由利恵の遺書の存在」を知るに至った。
当初は由利恵の遺書は見つからなかったが、遺体と化した彼女の右手にはインクの跡があった事から「遺体の第一発見者・藤見野が遺書を持ち去った」と警察は推理していた。実際、警察の推理通りに彼は遺書を持ち去り「王都楼の由利恵への仕打ちを公表して失脚させる為の奥の手」として保管していた。第4話の事件は「王都楼と藤見野による下らない意地の張り合い」に加えて「由利恵の遺書を巡っての王都楼、藤見野、霧緒の三者による攻防」が発端となっている。王都楼は「自身の失脚を防ぐ為、遺書の回収して廃棄する事」を、霧緒は「遺書を読んで由利恵の真意を知った後、もう誰にも利用されない様に焼却処分する事」を目的としていた。
実は「本物の由利恵の遺書」は藤見野によって隠蔽されており、作中に登場するのは「彼による偽造品」である。藤見野殺害事件を巡る法廷抗争の終盤、担当弁護士・成歩堂龍一が筆跡鑑定を要請した結果、藤見野が文章を書いたと判明した。どうやら本物には「王都楼を失脚させる決定打となり得る事」は書いていなかったらしく、藤見野はライバルの俳優生命を確実に断つべく「本物を遥かに上回る批判的な文面で、王都楼の悪事を暴露する内容が書かれた偽物の遺書」を偽造したのだった。争いの火種となった遺書が偽造品だった事に、空しさや徒労感を覚えたプレイヤーも少なくない。
アニメ版
アニメ版では、原作以上に悲劇性が強調されて描かれている。王都楼と深夜のレストランで会食していた所マスコミに極秘交際を知られてスクープされてしまい、これを面倒に思った彼にあっさりと見捨てられて一方的に別れを言い渡された。その上『英都プロダクション』は看板役者・王都楼の恋愛スキャンダルは揉み消してくれた反面、日陰者の由利恵だけの責任を追求して解雇に追いやってしまう。その後は転属先『光映プロダクション』で新たな恋人・藤見野と出会った由利恵が、彼との公園デートや『婚約発表・記者会見』を共に行うシーンが描かれた。記者会見での由利恵はマネージャーの役職に反して藤見野の隣で芸能人さながらの扱いを受けており、報道陣にも祝福されて幸福感に浸りつつ穏やかな微笑を浮かべていた。
その後、王都楼は「記者会見の終了直後という、ライバルにとって最もダメージが大きくなるタイミング」を見計らって、藤見野に由利恵との過去を暴露して彼女が婚約破棄される様に仕向けた。こんなにも残酷な仕打ちを受けた事から、とうとう由利恵も王都楼を憎む様になり、遺書に「王都楼への憎しみ、彼に人生を狂わされた絶望」を明確に綴ると命を絶った。そして「正真正銘、由利恵の遺書は本物」という設定に変更されるに至った。原作に比べると「遺書を巡る攻防」はアニメ版の方が少しは有意義に感じられる。原作以上に元彼2人との親密な頃の様子が描写された分、如何に由利恵の絶望が深いものだったかを如実に物語っている。
それから「原作通りの設定では、霧緒との同性愛を想起させたり、依存症に対しての誤解を招く恐れがある」とスタッフに判断されてか、霧緒との関係性に大きな改変が加えられた。由利恵は霧緒の実の姉となっており、名前も「華宮由利恵」に変更されている。霧緒の依存症設定も消去されて、彼女の動機も「姉の仇討ち」になっている。妹となった霧緒からは「姉さん」と呼ばれていて、彼女が由利恵の写真を片手に「もうすぐ復讐を果たす」と誓うシーンも挿入された。
余談
余り知られていないのだが、現実の芸能界では「芸能人が自身の担当マネージャーと恋愛関係になる事は御法度」とされている。それでも両者の立場上、極秘交際が簡単に行える利点から古今東西、両者の交際は後を絶たない。芸能記者の話によると「本来はタブーなのだが、密かに横行しているのが実状。結婚までしたカップルも多い。報道上はマネージャーを一般人と偽って結婚報告する事もよくある」そうだ。もしも藤見野と由利恵が結婚していたら、彼女は「一般人の女性」と素性を秘匿にされた上で2人の結婚報告がなされただろう。前述の通りアニメ版では彼らの『婚約発表・記者会見』が開催されていたが、現実で人気芸能人が同様の行動をすれば、芸能界からも一般社会からも白眼視される危険性がある。
作中では由利恵は一貫して「悲劇の人」として描かれ「芸能人と担当マネージャーの恋愛禁止ルール」も、近年になってネットを通じて極一部に知られるに留まっている為、脚本家は上記のルールを知らずにシナリオを執筆してしまったと思われる。GBA版の『2』が発売されたのは「2002年というネット黎明期」の為、知らなくて当然なので、一概に脚本家を責める事は出来ない。現実と照らし合わせると、由利恵も問題行動を起こしている事になるのだが『逆転』シリーズの世界では法律に限らず、様々な事柄が現実と異なっている上、脚本家の設定ミスが原因なので余り彼女を責められない。「あくまで王都楼の女性関係が、如何にだらしないかを強調付ける為の設定」と見るべきだろう。