概要
『逆転裁判2』第4話『さらば、逆転』に初登場。『光映プロダクション』製作の子供向け特撮ヒーロー番組。主人公・忍者ナンジャ役は、人気イケメン俳優にして『光映プロダクション』の看板役者・藤見野イサオが担当する。『逆転検事』シリーズで再登場し、メインヒロイン一条美雲が忍者ナンジャのファンである為、たまに彼女の台詞に忍者ナンジャへの言及が散見される。
制作背景
元々は映画だったが、TVドラマとしてリメイクされて一定の評価と人気を得た。今では『忍者ナンジャ』と言えば、TVドラマ版を思い浮かべる人の方が多い。「多くの他作品を圧倒して、人気No.1特撮番組として君臨する『トノサマン』シリーズに対する挑戦状」として制作された、名実共にライバル番組である。『忍者ナンジャ』の主演俳優・藤見野は同期の人気俳優・王都楼真悟とは険悪なライバル関係にあり、2人の所属事務所『光映プロダクション』と『英都プロダクション』もお互いを商売敵として強烈に敵視していた。
ライバルの王都楼陣営が制作する『大江戸戦士トノサマン・丙!』を人気や評価の面で出し抜いてやろうと、藤見野陣営が躍起になって制作したのが『忍者ナンジャ』であった。放送枠も日曜朝8時放送の『トノサマン・丙!』の裏番組という敵対者への対抗意識が剥き出しで「自ら裏番組となる道を選ぶ自爆行為」によって、視聴者の流出も招いてしまった。更に「主人公とヒロインのラブストーリーを主軸とする構成」も『トノサマン・丙!』と重複していて、藤見野陣営による王都楼陣営と世間へと向けた「『トノサマン』シリーズとは同じ土俵に立っているが、我々の方が高品質な作品を作れる格上の存在である」という主張が如実に表れている。
絶大な人気を誇る『トノサマン』シリーズの影に隠れがちだが、特撮番組としては戦闘描写を排除して「主人公・忍者ナンジャの歌手としてのサクセスストーリー」「忍者ナンジャとヒロイン・ミソラ姫のポップな恋物語」を主軸とした、異色の作風が女子高生を中心に高い人気を獲得した。作中では『トノサマン』シリーズと比べて『忍者ナンジャ』の人気に関する説明や描写が乏しいので、プレイヤーには実感し難いが、意外と高い人気を持っている模様。『トノサマン』シリーズが誇る圧倒的なハイクオリティと大衆人気の面では流石に及ばないだけで、決して駄作ではなく評価に値する点も多々ある。放送枠の重複さえ無ければ、今よりも高く人気を上昇させられたのは確実の作品なだけに、スタッフも勿体無い事をしたものである。
但し『逆転』シリーズの登場人物にはトノサマンファンが多数いるのに対し、忍者ナンジャは見向きもされない存在として扱われている。「忍者ナンジャのファンだと公言している人物は『逆転検事』シリーズのメインヒロイン一条美雲だけ」という惨状にある。彼女のパートナー御剣怜侍はトノサマンファンの代表格なのだから皮肉とも言える。
『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』との関係
製作陣と俳優陣の努力の甲斐あって、とうとう『忍者ナンジャ』は日本一の特撮ヒーローにグランプリが授与される式典『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』に2年連続でノミネートされる快挙を成し遂げた。しかし『忍者ナンジャ』の躍進もここで打ち止めとなってしまい、2年連続でノミネートされる栄誉を得た反面、2年連続で『トノサマン』シリーズにグランプリを奪われる屈辱を味わう事となった。これまで『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』は第3回まで開催されている。第1回では初代『トノサマン』はスタッフの不祥事で打ち切り、『忍者ナンジャ』は放送開始前だった為ノミネートもされていない。第2回は『小江戸剣士ヒメサマン』、第3回は『大江戸戦士トノサマン・丙!』にグランプリを拐われる結果に至った。この1件も災いして「いつもあと少しの所で『忍者ナンジャ』は『トノサマン』シリーズに勝てない永遠の二番手」と評価される事もある。
グランプリ授賞は『忍者ナンジャ』のスタッフとキャストにとっては悲願だったのだが、その願いを打ち砕かれた挙げ句、正に「泣きっ面に蜂」と言わんばかりの災厄に見舞われる。何と第3回『ヒーロー・オブ・ヒーロー』授賞式の閉会直後、主演の藤見野が何者かに暗殺されてしまったのだ。この殺害事件の真相には「被害者・藤見野の本来の人間性、彼の対人関係と今までの行い、そして『ヒーロー・オブ・ヒーロー』の存在」が密接に関わっている。藤見野の死亡は元より、事件の捜査と裁判の進行に連れて明らかになった「藤見野にも落ち度があった事実」も公表された以上、確実に『忍者ナンジャ』は打ち切り処分が下されたのは間違いない。
作品解説
物語の粗筋
主人公・忍者ナンジャはうだつの上がらない駄目忍者。しかし彼は天性の美声と歌唱力を併せ持ち、歌手への転職を決意。舞台となる室町時代の城下町を本拠地とする「当時の芸能界」に殴り込み、幾多の苦難を乗り越えてスターダムを駆け上がって行く。ロマン溢れるサクセスストーリーとは同時進行で、主人公・忍者ナンジャとヒロイン・ミソラ姫のお互いを一途に愛するラブストーリーも描かれる。作中では忍者ナンジャは忍者を引退している為「徹頭徹尾、悪役との戦闘は皆無」という特撮番組としては前代未聞の構成となっている。その反面「芸能界を舞台に忍者ナンジャが大物歌手として成長して行く筋書き」なだけに「喉自慢大会での敵対者に当たる歌手、芸能界での出世街道を邪魔する者達との戦い」はそれなりに描写されている。関連事件によって打ち切りとなってしまったが、本来の予定では「ストーリーは忍者ナンジャが芸能界の頂点に立つ、大物歌手へと成長を果たした所で完結する構成」だったと思われる。ストーリーに「主演俳優・藤見野の出世願望、芸能人ライバル全体への対抗意識」が反映されている気がしないでもない。
「主人公とヒロインのラブストーリーが第二の主軸」に据えられているのは『トノサマン・丙!』と共通しているが、あちらとは対極に位置する内容となる様きちんと差別化されている。『トノサマン・丙!』では、主人公が恋敵である実兄2人とヒロインを巡っての四角関係、通称「恋の鞘当て」が展開される上、メインキャラ4人はヒロインが悪の組織のボスの娘という事実に苦悩するという、昼ドラ並にドロドロした恋愛が描かれている。それに対して『忍者ナンジャ』では、ライバル不在の中お互いを一途に愛し合い、順調に親密となって行く公式カップルの心温まる純愛ストーリーが展開される。『トノサマン・丙!』が「片思いの中での純愛」を描いているのとは対照的に『忍者ナンジャ』は「両思いの中での純愛」を描いている訳である。本作の明るくポップなラブストーリーは女子高生から大いに人気を集め、現役女子高生の美雲からも好感を寄せられる一因にもなった。
登場人物
忍者ナンジャ(SA:藤見野イサオ)
本作の主人公。忍者としては駄目駄目だが、歌手としては天性の才能の持ち主で、類い稀なる美声と歌唱力を持ち併せ、更にはギターの演奏も優れている。この3つの才能を武器に、室町時代の芸能界で着実にスターダムを駆け上がって行く。作中では披露される事は無かったものの、こんな設定にするからには藤見野は演技力と同じ位、歌唱力も高かったのだろう。歌唱シーンは忍者ナンジャの特技「ギターの弾き語り」が多くを占め、作中でのイメージイラストでも「森の木の根元に座って弾き語りをする、忍者ナンジャの歌声と演奏に魅了された、様々な動物の群れが彼の周りに集まって来る光景」が描かれた。忍者ナンジャの歌唱と演奏は人間のみならず、動物でも聞き惚れる程の魅力を備えている様だ。このイラストからして「日常生活でも歌唱と演奏を趣味としている事」が窺える。代表作『抜け忍ララバイ』で奏でられるギターのメロディは「ウルッとさせられる」と、作中でも『逆転』シリーズの世界でも評判。
物語の冒頭で忍者を引退し、歌手に転職するのだが、いつまで経っても忍者の格好をしている。元々ああいう外見をした種族なので、姿の変更のしようが無い設定なのかもしれない。青を主体に各部に赤いラインが走る独特の派手な忍装束を着用し、首にはトレードマークの白いロングマフラーを巻く。頭には黄色い手裏剣の飾りを付ける。見た目だけならトノサマン・丙にも匹敵する格好良さを持つ上に、未だに現役の忍者で戦闘を得意とするキャラにも見える。『キン肉マン』の超人のザ・ニンジャとウォーズマンを掛け合わせた外見に見えなくもない。担当俳優・藤見野の「赤色が大好きという趣味」に合わせて、常に真っ赤なギターを愛用し持ち歩いている。
ヒロイン・ミソラ姫を最愛の人として一途に愛する上で、誰よりも大切に扱っている。恋敵もいない為、彼女との恋路は序盤から終盤まで順風満帆に進行する。「喉自慢大会での最終決戦で愛しのミソラ姫を前にして、忍者ナンジャは如何なる曲を披露するのか」という山場を迎えた所で、番組は藤見野殺害事件によって唐突な打ち切りを喰らってしまった。おまけに皮肉な事に藤見野も、ライバルの王都楼同様「主演作品での担当キャラとは、正反対の人間性の持ち主だった実態」が事件の捜査、裁判、報道を通じて世間に知れ渡る事となった。
ミソラ姫
本作のヒロインで名家の姫君。室町時代の城下町が舞台という設定からして、室町幕府の征夷大将軍の娘である可能性が高い。名前は「ドレミファソラシド」から抜粋した「ミソラ」と、伝説の歌姫・美空ひばりに由来していると見られる。忍者ナンジャとは相思相愛の関係にある。但し恋愛描写が「忍者ナンジャとミソラ姫の明るくポップなラブストーリーが繰り広げられるという一文」しか存在しない為、彼との恋仲がどの様なものであるかは不明瞭。2人が相思相愛なのは確かなのだが、正式に交際しているカップルなのか、今は諸事情あって交際出来ないが、お互いの思いには気付いているのか、はたまた両片思いの間柄なのか真相は定かではない。
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※以下ネタバレ注意※
敗北の末に迎えた末路
藤見野殺害の経緯(『逆転裁判2』第4話『さらば、逆転』)
第3回『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』のグランプリも『大江戸戦士トノサマン・丙!』に決定し、この授賞式では『忍者ナンジャ』は『トノサマン』シリーズに2度目の敗北を喫した。授賞式の閉会直後には、藤見野が殺害されてしまった。これだけ聞くと「藤見野は運に見放された気の毒な人」にも思えるが、実際には彼が殺害されたのは「完全なる自業自得」であった。
「正攻法ではライバルの王都楼には、どうしても勝てない現状」に業を煮やした藤見野は、余りにも卑劣かつ冷酷な方法でライバルへの復讐に手を染めた。それは生前、藤見野と王都楼のマネージャーにして交際相手・天野由利恵との恋愛スキャンダル、その犠牲者となった事に耐えられず自殺を遂げた、彼女の死を愚弄し利用する内容だった。由利恵は王都楼に弄ばれた末に手酷く捨てられてしまい、その後は藤見野と真剣交際し婚約にまで至った。ところが「自分の元マネージャーとライバルの結婚」が面白くない王都楼が藤見野に「由利恵との過去の関係」を暴露した。これに激怒し屈辱感を覚えた藤見野から、婚約破棄されたショックで由利恵は遺書を遺して自殺してしまう。
以上が「由利恵の自殺に至るまでの経緯」なのだが、卑怯にも藤見野は自分の彼女への残酷な仕打ちは秘匿にしたまま、記者会見の場で王都楼だけの恋愛スキャンダルを暴露する事によって、彼の俳優生命を断ち切る復讐に走ったのだ。しかも本物の由利恵の遺書には「王都楼への恨み事、彼の悪事の決定的な証言となり得る文章」が書かれていない事に痺れを切らして、本物の遺書を隠蔽した挙げ句の果てに、自分で望み通りの内容を書き綴った遺書の偽造まで犯していた。この記者会見は「もしも『ヒーロー・オブ・ヒーロー』でグランプリを逃した場合、王都楼への報復措置として行う」という藤見野の下心にも基づいて計画された。
藤見野の自宅の盗撮によって「ライバルが自分を陥れる罠を用意している」と知った、王都楼は彼を口封じ目的で殺害すると決断し、凄腕の殺し屋・虎狼死家左々右エ門に依頼して殺害を代行させた。そして藤見野は『ヒーロー・オブ・ヒーロー』の閉会直後、楽屋に1人でいる所を虎狼死家に襲撃され、彼に忍者ナンジャのマフラーを凶器に用いられて絞殺される最期を迎えた。あくまでも虎狼死家は「極力、証拠を残さずに殺人依頼をこなす完璧主義者」なので、合理的な殺害方法を実行するべくマフラーを利用しただけで他意は無いと思われる。それでも婚約者の由利恵を理不尽に捨てた結果、首吊り自殺へと追いやった藤見野自身も「首を絞められた事が死因」となったのは「皮肉」とも「因果応報」とも言える。
藤見野の死後の展開(『逆転裁判2』第4話『さらば、逆転』)
藤見野の因果応報は死後も続き、彼の殺害事件の捜査と裁判が進行するに伴い「藤見野も王都楼と同類の冷酷な卑劣漢であり、由利恵の人生を破滅へと追いやり、彼女の遺書を偽造してまでライバル失脚の道具として利用する等、幾つもの悪事に及んで来た事実」が世間に全て公表されてしまった。事件の担当弁護士・成歩堂龍一と仲間達の手によって、真犯人・王都楼も全ての犯行を暴かれて社会的に抹殺される事となった。常日頃からお互いを蹴落とそうと目論んでいた藤見野と王都楼だったが、最終的には「ライバルへと仕掛けた罠が原因となって、自爆を招く形により共倒れするという末路」を辿った。王都楼とは異なる形で藤見野も重い罪を犯しており、ライバルと同じく恋愛要素の強い特撮番組で「ヒロインを真摯に愛する誠実なヒーロー」を演じていながら、実生活では「平然と恋仲の女性を弄んで捨てるという鬼畜の所業に及んでいた事」までもマスコミに包み隠さず報道されるに至った。
作中ではスタッフに「わざわざプレイヤーに説明するまでもあるまい」と判断されてか『忍者ナンジャ』も『トノサマン・丙!』も「事後処理に関する説明」は省略されている。だが『忍者ナンジャ』も『トノサマン・丙!』に負けず劣らず、著しいイメージダウンと無念の打ち切りを招いたのは確実であろう。この頃には既にシリーズ3代目に突入し、前作の時点で人気は頂点にして盤石の地位を築き上げていた『トノサマン』シリーズは、翌年には即座に復活して今も尚、順調に続編の制作が進行している。まるで番組関連のスキャンダル等、無かったかの様に錯覚する位である。
それに引き替え『忍者ナンジャ』の方は「続編や後継作の情報」が下記の復活劇を除くと、全く見受けられない状況にある。元々『光映プロダクション』は、かつての『英都プロダクション』を上回る経営難に苦悩しており、看板役者の藤見野にも由利恵の死後、専属のマネージャーすら付けられない窮状にあった。『忍者ナンジャ』は藤見野の野望の為だけではなく「特撮制作という新機軸、新たなるファン層の開拓」を目指して『光映プロダクション』が起死回生をも狙って制作に携わった作品に当たる。しかし会社の威信と運命すらも賭けて、精力的に働いた制作陣の営業戦略は最悪の形で失敗に終わってしまった。それだけに『光映プロダクション』は「特撮番組の制作会社としては再起不能」「特撮制作からは完全に足を洗う」のどちらか、もしくはこの2つに近い難局に陥った可能性が高いと見られる。特撮番組では『忍者ナンジャ』が最初で最後の作品にして、唯一無二のヒット作で終わったのも確かだろう。
まさかの復活劇、予期せぬ救済措置(『逆転検事』第5話『燃え上がる逆転』)
このまま特撮の歴史の闇へと葬られるかと思いきや、藤見野殺害事件から1年後、思いも寄らない所から『忍者ナンジャ』への救いの手が差し伸べられた。その手の主は『ババル共和国』からの大使ダミアン・ヒンジであった。彼は母国から派遣されて『日本大使館』で働いている身にある。この度、内乱によって長き時を経て分裂していた『ババル共和国』と『アレバスト王国』は統合されて、本来の姿である『コードピア公国』に戻る事となった。いずれの国も古くから日本とは親交の深い間柄で、日本の関係者一同も和解と統一を果たした国々を祝福した。そして盛大な祝祭が開催されるに至り、祝祭の正式名称は『アレバスト王国VSババル共和国・国際親善イベント』とされた。開催地には『ババル共和国』と『アレバスト王国』の『日本大使館』が選ばれ、両国の大使館の連結箇所にある『永世中立劇場』での舞台公演を中心に、祝祭を開く事となったのだ。舞台公演の演目は「日本で高い人気を誇る、特撮ヒーローのアクションショー」に決定し、日本政府から『ババル共和国』と『アレバスト王国』は「自分の希望するヒーローショーの主催国となって欲しい」と通達された。こうしてダミアンが選んだヒーローが忍者ナンジャだった訳である。
『逆転』シリーズの世界では「スタッフやキャストが如何なる問題を起こそうとも、作品とキャラに罪は無いと寛大に対応する思想」が現実よりも遥かに強く広く浸透している様だ。数年前から在日外国人として職務に励む生活を送っているダミアンも、そういった思想に賛同する人物だったのだろう。彼の職業柄、昨年に日本中を激震させた「藤見野殺害事件」を知らない事は有り得ない為、ある程度は事件を知った上で「忍者ナンジャの舞台公演の主催国となる選択肢」を取ったと思われる。ダミアンは誰に対しても非常に親切な人格者なので「昨年の転落からの苦境を未だに脱け出せずにいる『忍者ナンジャ』という作品と関係者一同」を見かねて、救済措置を与える為にも舞台公演への出演を依頼してくれたのかもしれない。
単に『アレバスト王国』が海外からも「日本一の大人気ヒーロー達」として認定された、トノサマン一家の舞台公演を先約してしまった為、仕方なく残っている二番手・忍者ナンジャを起用しただけの可能性もあるが。何にせよ「国際的なイベントという晴れ舞台にて、堂々の復活劇を開演するチャンス」が巡って来た事により、往年の『忍者ナンジャ』の制作陣営、全国のファンが歓喜したのは間違いない。
舞台公演の成果(『逆転検事』第5話『燃え上がる逆転』)
そして「文字通りの復活劇」を舞台公演を通じて披露した『忍者ナンジャ』であったが、その成果は芳しくはなかった。本作は作中や関連書籍で内容に言及されていない点からして、恐らくは無難に「TV版の延長線上の様なストーリー」が展開されたと思われる。放送途中で打ち切りを喰らっただけに、ファンを満足させる為にもTV版のストーリーの補完も担った可能性も高い。
対抗馬の『大江戸亭主トノサマン・OTTO』はと言うと、贅沢な事に正当なシリーズ最新作を制作し、ストーリーやキャラ設定の面で大きな前進と変化を遂げた続編を披露した。「初代主人公トノサマンと2代目主人公ヒメサマンの結婚。2人の一人息子ワカサマンの誕生」と誰もが驚愕する展開は、トノサマン陣営にとっては再度の大ブレイクを始め、良い事づくめの成果を得られた。おまけにトノサマンとヒメサマンのSAの2人が『国際親善イベント』の開催中、発生した殺害事件の解決に大きな貢献を果たした。この1件は『トノサマン』シリーズが史上最高の絶頂期を手にする千載一遇の幸福を招いた上、世間からは「トノサマンとヒメサマン(のSA)が事件解決の功労者となった」と大絶賛を受けて、舞台公演は予想を遥かに上回る千客万来の様相を呈した。
その反面、復活早々『忍者ナンジャ』は再び話題の中心を『トノサマン』シリーズに独占されてしまい、事件とは全くの無関係のままだったのも災いして「『トノサマン』シリーズに圧倒される構図」は最初から最後まで変わらなかった。今回のスタッフとキャストの誰にも罪は無いのだが、悲しい事に「お情けで取り敢えず、復活させて貰えただけの実情」が露見する羽目になった。しかも、この舞台公演の悲惨な結果が追い討ちとなってか、本作を最後に『忍者ナンジャ』の制作は完全終了してしまった模様で、作中で名前が挙がる事すら無くなった。対照的に『トノサマン』シリーズの方は『逆転裁判1』から約10年後の世界が舞台となる『逆転裁判4』以降でも、初代の面影こそ無くしたものの『電動伝道師サマンサマン』『ボージャク武人ナニサマン』等、続編全般が好評放送中である。『忍者ナンジャ』の制作以前から深刻な経営難に喘いでおり、ライバルの『トノサマン』シリーズの存在によって、常に劣勢に立たされていた『光映プロダクション』は最早「曰く付きの作品にまで成り下がった『忍者ナンジャ』の扱い」に困り果てた末に、ついに見切りを付けたといった所だろう。所詮は一発屋のまま終わってしまった事も踏まえて、本作の実態や末路は「空しい」という一言に尽きる。