「なるほど君、発想を“逆転”させるの」
概要
『逆転裁判』(成歩堂編)のメインキャラクターの1人。『逆転裁判』第1話『はじめての逆転』で初登場。当時の年齢は27歳。身長168cm。3サイズ・B92・W61・H89。
同作の主人公・成歩堂龍一の師匠である若手実力派弁護士。ヒロイン・綾里真宵の姉で妹とは10歳離れている。成歩堂の勤務する『綾里法律事務所』の所長でもある。事務所は唯一無二の弟子にして部下・成歩堂と二人三脚で切り盛りしている。大学卒業直前、弁護士資格を取得した才女で、就職から僅か5年なのもあって経歴上は常勝無敗である。この「千尋の維持する勝訴記録」は作中ではなく『逆転裁判3』の『開発コラム』にて語られた。弟子の成歩堂には「発想の逆転」「弁護士はピンチの時ほど、ふてぶてしく笑う」等の信条を伝授し、彼の育成も積極的にこなす。前述の2つの信条に加えて「どこまでも依頼者への信頼を貫く主義思想の持ち主」であり、この姿勢も成歩堂に強く受け継がれている。土壇場に瀕した彼が師匠からの教えを思い出して真骨頂を発揮、絶体絶命のピンチを切り抜ける場面は枚挙に暇が無い。
事務所の内装にも「依頼者に対する思いやり」が表れており、自分の使用する家財道具は質素な物で揃えている反面、来客用のソファやテーブル等、依頼者の使用品となる物はなるべく豪華な品々を用いている。千尋の敏腕ぶりが幸いして、事務所はかなり儲かっている模様。何でも完璧にこなす女性に見えるが「実は機械に弱いという欠点」を持ち、事務所の所長室にあるパソコンは殆んど置き物と化している。
霊媒師一族・綾里家の本家の出身者。綾里一族の族長に当たる『倉院流霊媒道』の家元・綾里舞子を母に持つ。千尋が生まれたのは母が19歳の時。父とは妹の真宵が物心付いた頃、死別している。舞子の姉・綾里キミ子は伯母に当たり、彼女の娘・綾里春美とは従姉妹同士。千尋は春美の20歳上で、従姉妹が生まれる前年に大学進学を契機に、故郷『倉院の里』を去ってからは都会暮らしに徹して帰郷せずにいた。この為に従姉妹間の面識は乏しく、春美も千尋の事はよく知らない。
容姿
高身長(168cm)で大人の魅力を醸し出すグラマラスで妖艶な美女。清楚なスレンダー美人が多くを占める、綾里一族の女性陣では「突然変異」と言っても過言ではない。低身長(154cm)でスレンダーの健康的な可愛らしさを纏う、妹の真宵とは正反対の容姿の持ち主。『逆転』シリーズの女性キャラの中では歴代トップクラスの美貌と巨乳を誇り、聡明で落ち着いた性格が如実に表れた理知的な雰囲気を漂わせる。髪型は栗色のワンレングスのスーパーロングヘアで腰を覆い隠す長さ。顎の右下には千尋の色気を強調する艶黒子がある。黒のボディコンスーツに、ベージュのスカーフを着用している。首に下げた勾玉は故郷にいた頃から身に付けていた物で、綾里一族の象徴でもあり、郷土愛から身に付けている模様。美麗な容姿、優れた知性、良心的な人柄を兼ね備えた彼女に魅了される男性は後を絶たない。
普段の装いからは洋風のイメージが漂うが、その本質は『倉院流霊媒道』の令嬢だけあって「和風美人」であり、故郷を離れる前は「真宵や春美と同様の一族の装束」を身に纏っていた。幼女時代は春美と同じ物を着用し、少女時代は真宵と同じ物を着用した。アニメ版では「一族の装束を着て『倉院の里』で暮らしていた頃の姿のシーン」が増加し、成人前後の時に一族の装束姿となった場面も描かれた。この姿は第2期・第14話のオリジナルエピソード『逆転の潮騒が聞こえる』でしか見られない。里を去る直前の時期だったらしく「髪型、顔立ち、胸の大きさ」は後述の新米弁護士時代と同じであった。
『2』の攻略本でのインタビューでは「霊媒師時代は真宵や春美の様に、奇抜な髪型をしていたのか」と質問されると「奇抜?あれが?私はそうは思わないけど‥‥。そうね、とりあえず私も、それなりに自分で似合うと思う髪型をしていたわね」と返答した。この思わせ振りな回答に反して、原作にしろアニメ版にしろ、千尋だけはごく普通の髪型でいる事が個性とされている。10代の頃は今の髪型をそのまま短くした様なセミロング、20代前半からは通常のロングヘア、後半からはスーパーロングヘアである。キャラデザイナー・スエカネクミコが手掛けた公式イラストでは「チャイナドレス姿」が描かれた。このチャイナドレス姿に対して『2』の攻略本の執筆者は「この姿で是非、法廷に立って欲しかったものだ」と中々ぶっ飛んだコメントを寄せていた。もしも実現していたら『1』の松竹梅世の様に法廷中の男性を虜にしていた事は想像に難くない。
性格
後述の事情により、他のメインキャラ達と比べると出番が少ない為、性格に関する具体的な描写も少な目となっている。基本的には聡明で落ち着いた性格の女性で、常に弟子の成歩堂と同じく「常識人のツッコミ役」の座を占める。極度の天然ボケ娘の妹・真宵とは正反対である。ごく稀に妹と弟子を彷彿とさせる天然気味な一面を見せる。初対面から成歩堂の苗字を「なるほど」と間違えて「なるほどさん」、直後に「なるほど君」と呼び、そのまま彼のニックネームとして定着させてしまった。この点は成歩堂の幼馴染・矢張政志も同じで、彼の方は「ヤッパリさん」と未だに間違えられて呼ばれている。千尋の勘違いから付けられた「成歩堂と矢張のニックネーム」は真宵と春美にも使用される事となった。一見、温厚な人柄に見える外見と立ち居振舞いをしている反面、その実態は重度のドSにして負けず嫌い。破天荒なキャラ達に囲まれる中、押しに弱いが為に翻弄されがちな成歩堂とは対照的に、何が起きようと冷静で強気な姿勢を一貫する。「正義感が強く常識を守る意識も高いが故に、それらを侵害する人々に怒りっぽくなる傾向」にある様だ。極悪人や敵対者を相手にすると、情け容赦ない激しい攻撃、痛烈な批判を展開する事もしばしば。さしずめ「正義のドS」と言った所か。
心優しさも兼ね備えた人物なのは確かで、いつも唯一の肉親に当たる真宵を気遣っている。その一方、弟子の成歩堂に対しては「厳しく指導しなければ彼の成長に繋がらない」との考え故か、主に法廷にて厳しい態度で接する事が多い。『1』及び『蘇る逆転』の攻略本のオマケ漫画では「初裁判の前夜、事務所で成歩堂の指南に当たる光景」が描かれているが、ここでは竹刀を振り回し、被害者・高日美佳の名前を間違えた成歩堂に顔面パンチを喰らわせたりと、正にやりたい放題であった。作中ではトップクラスの知能の持ち主であるだけに、千尋の助力が状況打破に貢献したり、彼女が事件解決の功労者となる場合も多く見られる。普段は穏やかな態度を取っているが、自分の美貌や知性を活かして魅了した相手から必要な情報を引き出したり、思うがままにする等の強かな一面も持ち併せる。現在の性格は弁護士としての経験を積み重ねた結果、構成されたものであり、後述の新人時代は今とは大いに異なる性格の持ち主だった。但し「正義感が強く負けず嫌い」等、根本的な精神性は変わっていない。
人間関係
たった1人の弟子・成歩堂からは「厳しくも優しい永遠の師匠」と敬愛されており、まだまだ未熟な彼を厳しく鍛え上げる一方、きちんと師匠としての愛情も持って接している。幼い頃より甲斐甲斐しく妹・真宵の世話もして来た為、真宵は「お姉ちゃん大好きっ子」に育った。綾里姉妹は姉は都会、妹は田舎に離れて暮らす様になってからも、ちょくちょく連絡を取り合い面会も行う程に仲睦まじい。その時は大抵、千尋が真宵に担当事件の重要な証拠品を預ける用件が設けられる。訳あっての事であるが「未来の家元の座を自ら放棄してしまった以上、故郷の人々には合わせる顔が無い」と考えている様で、真宵と再会したい時は「自分の元に妹を訪問させる形式」で固定している。やむを得ない事情故の事だが、未だに自分と妹への育児放棄をしてしまった実母・舞子へは深い愛情を抱き、彼女を失脚と行方不明に追いやった事件を「母を破滅させた事件」と呼び、その真相を長年に渡る独自捜査を続けて追い求めている。
舞子の失踪以降、綾里姉妹は母親代わりとなった伯母・キミ子に養育されて来た。2人共、薄々は伯母の本心を察してはいるものの、自分達の世話役を担って来た伯母に対する一定の感謝と信頼を寄せる思考は変えない。故郷の出奔後、誕生した春美との面識こそ皆無に近いものの、真宵と一緒に幼少期の従姉妹を可愛がり、愛称の「はみちゃん」と呼ぶ。
『地方検事局』の主席検事・宝月巴は大学時代の先輩に当たり、名実共にエリートの彼女から知識を学ぶべく、千尋の方から巴に接近して交友が始まった。大学卒業を目前にして、大ベテランと名高い弁護士・星影宇宙ノ介に弟子入りし、彼の経営する『星影法律事務所』に入所して修行を積んで来た。新米時代は師匠の星影に加えて、先輩の敏腕弁護士・神乃木荘龍からも指南を受けて着実に才能を伸ばして行った。星影の元から独立後には自身の事務所『綾里法律事務所』を開設し所長に就任した。その後、暫くは単独で弁護士の仕事をこなしていたが、弟子入りを希望する成歩堂の頼みを聞き入れて、彼とは「師匠と弟子にして、上司と部下という関係」となった。ここで名前を挙げられた人々とは、後々の事件の影響を受けて疎遠な間柄となってしまったキミ子、会った事も殆んど無い春美を除いては、全員とそれぞれの親密な関係を構築している。
経歴
霊媒師を生業とする名門一族・綾里家の本家の長女として誕生し、少女時代は「霊媒師の谷」とも呼ばれる故郷『倉院の里』で両親と妹と共に幸福な生活を送っていた。「綾里一族の長女は遺伝上、誰よりも強い霊力を備えて誕生する事が通例」となっており、妹の真宵からは「姉の霊力は本当シャレにならなかった」と語られる程、申し分ない優秀な霊力を持って生まれて来た千尋は、本来なら母の舞子から家元の座を継承する未来が約束された立場にあった。しかし「古代より歴史の裏側で、栄耀栄華を誇る神秘の一族であった綾里家」の権威が失墜する事件が引き起こされた事で、千尋の人生は大勢の人々と共に激変して行く。その事件は15年前の年末『地方裁判所』にて発生した弁護士殺害事件・通称「DL6号事件」と言い、捜査に行き詰まった警察は「被害者・御剣信を霊媒して犯人の名前を聞き出す、極秘捜査に協力して貰いたい」と舞子に依頼する。彼女は警察の指示に従い、自身に憑依させた信の口から犯人の名前を聞き出した。ところが信は事件当時の状況が原因で、真犯人は誰なのかを誤解していた。それを知らぬままに信の証言を真に受けた警察は、最有力容疑者とされた人物を誤認逮捕し被告人にまで仕立て上げてしまう。そうして強引に開廷した裁判では、担当者に着任した悪徳弁護士の暗躍もあって、被告人には心神喪失に起因する無罪判決が下されてしまった。
この「歴史的な極秘捜査の失敗」を警察も綾里一族も闇から闇へ葬ろうと図った。しかし不正手段を犯して「警察と綾里家による極秘捜査が失敗したという情報」を入手した悪漢ジャーナリストが隠蔽を阻んだ。彼は各報道機関に極秘情報を売り捌き、マスコミに警察と綾里一族に対する大規模なバッシングを展開させた。こうして不本意な形で初めて歴史の表舞台に引き摺り出された綾里家は、警察をも大いに上回る程の誹謗中傷を国中から受けてしまい、同時に前述のジャーナリストの主導によって「綾里家の霊力は嘘っぱち」だと喧伝されてしまう。バッシングの最大の標的とされた舞子は『倉院の里』の住人達からも「綾里一族の失脚を招いた元凶」の烙印を押されて見放された。この悲惨極まりない現状に耐えかねた舞子は、里にまだ幼い娘達を残して行方を眩ました。一連の事件当時、長女の千尋は13歳、次女の真宵は3歳であった。
千尋は母親が失脚し消息不明となる原因と化したDL6号事件と、その関連事件を纏めて「母を破滅させた事件」と名付け、その真相を追う為に弁護士となる事を決意し、事件関係者の霊媒を行い、ある程度の真相を掴むと霊力を封印し、故郷『倉院の里』も次期家元の座も自ら捨て去った。彼女が放棄した次期家元の継承権は、新たに妹の真宵に託される事となった。生まれつき強大な霊力を持っていた自分とは真逆に、微弱な霊力しか持っておらず次期家元としては不安が残る妹に、自動的に家元の座を押し付けてしまった事を密かに負い目に感じているのも、千尋が真宵への気遣いを重視する一因と化した模様。幼い頃から家元の座を巡って、不仲になった母と伯母を見て来た為「妹と次期家元の座を争いたくなかった事も里を出た理由の1つ」だった。同じく綾里家の長女として生まれた伯母のキミ子が「霊力の無さ」から分家へと追いやられ、その上で尚、家元の座に執着していたのとは好対照である。『2』の攻略本でのインタビューでは「弁護士に就任後、霊能力を利用しての捜査、事件解決はした事があるのか」と質問されると「『倉院の里』を出る時、私は霊能力を封印したの。だから、この能力を弁護士時代に使った事は一度も無いわ」と明言している。この逸話からも千尋の実力の高さ、母親の関わった事件がトラウマになっている事が窺い知れる。最初から最後まで「母を破滅させた事件」の捜査は、周辺人物への危害を防ぐ為たった1人で行っていた。
千尋は高校時代までは『倉院の里』に留まり、猛勉強の末に名門大学の法学部への入学が決まると都会へと移住し、里に残された真宵とは離れて暮らす様になった。大学に入学してから数年後、司法界の重鎮を担う弁護士・星影に弟子入りし、彼が所長を務める『星影法律事務所』の一員に加わった。そこでは事務所の若手No.1弁護士・神乃木と出会い、仲の良い先輩と後輩から最終的には恋人の間柄となった。実は星影も「母を破滅させた事件の関係者」だった為、彼への弟子入りは星影の秘密を探る目的も兼ねていた。弟子入りから数年後に師匠から独立すると、個人事務所『綾里法律事務所』を開設し、所長となって1人で経営する。通常の業務をこなしつつ「母を破滅させた事件」を追跡していた最中、新人時代の担当裁判を経て知人となった成歩堂から弟子入りを志願され、就職から僅か数年で師匠となるに至った。その後も弁護士として順調に成長を遂げて20代後半に差し掛かる頃には、すっかり司法界でも有名な若手実力派の一角を担うまでになった。そして、ついに弟子の成歩堂の初舞台を共に踏む日を迎えたのだった。それ以降の経歴、新人時代の詳細は下記項目を参照されたし。
新人時代
『逆転裁判3』では千尋がもう1人の主人公にして、全体のキーパーソンとなっている。彼女が主人公となるエピソードが2話収録され、まだ新米弁護士時代の千尋に物語の焦点が当てられ、彼女の過去が明らかになって行く。該当エピソードは第1話『思い出の逆転』&第4話『始まりの逆転』の2話である。『始まりの逆転』では千尋の初裁判、それから約1年後の『思い出の逆転』では2度目の裁判が描かれた。
容姿
髪が全体的に今よりも短く、前髪は左目の真上で綺麗に切り揃えられ、後ろ髪は胸を覆う平均的な長さのロングヘアとなっている。黒いスーツは現在の物と似通っているが、デザインが簡素化されてスカートの前部中央には短いスリットが入っている。胸のサイズも若干小さくなっている事で、スマートな印象を与える正統派美人と表現出来る容姿の持ち主。現在の千尋が妖艶な美女なら、過去の彼女は清艶(せいえん)な美女と言った所(「清艶」とは清楚と色香を兼ね備えた状態を指す)。今とは違った魅力を持つ美女であった千尋に、当時は同じく新米だった刑事・糸鋸圭介も「綺麗ッス」と初対面の際に見惚れていた。
性格
普段は落ち着いている方だが、不慣れな仕事に関する事ではアタフタしがちで、法廷に立つと極度の緊張を覚えてしまう。緊張する余り、度々そそっかしい面も見せる。ちょっぴりオドオドしつつも裁判を進行する様子は「可愛らしい」と『逆転』シリーズのファンからは好評を博した。そそっかしくも、如何なる事があろうと依頼者への信頼を貫き、何事にも一生懸命に取り組む千尋の姿に、恋人の神乃木は惹かれていた。敬愛する先輩の彼から千尋は「逆転の発想」「弁護士はピンチの時ほど、ふてぶてしく笑う」という弁護士の心構えを教わり、これは後に弟子の成歩堂にも受け継がれた。
(イラスト左)
演じた声優・俳優一覧
河原深雪 | 『逆転裁判3』 |
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大原さやか | 逆転裁判123 成歩堂セレクション 限定版ドラマCD、『CR逆転裁判』 |
中村千絵 | テレビアニメ『逆転裁判 〜その「真実」、異議あり!〜』 |
檀れい | 実写映画版 |
浜辺美波 | 実写映画版・少女時代 |
関連イラスト
関連タグ
南空ナオミ:漫画『DEATHNOTE』の登場人物。元FBI捜査官で、婚約者レイ・ペンバーとの結婚を控えている女性。弁護士と捜査官と役職こそ違うが、作中の位置付けや設定には「千尋との共通点」が実に多い。ちなみに作中での年齢は同じ彼女達だが「ナオミは1975年度生まれ、千尋は1989年度生まれ」なので14歳も年が離れている。
「①作中トップクラスの美貌を誇る、ロングヘアのグラマラスな高身長美女(千尋168cm。ナオミ171cm)」「②女性キャラでは作中No.1と言える優秀な頭脳の持ち主」「③正義感が強い聡明で落ち着いた性格」「④作中での年齢が27歳」「⑤ボディラインがよく解る黒い服を着用(千尋はスーツ。ナオミは革ジャン)」「⑥司法関係の職業に就職し、20代後半にして若手実力派へと成長を果たす」「⑦年上の同僚男性と職場恋愛をする(神乃木は千尋の4歳上。レイはナオミの1歳上)」「⑧ラスボスが保身目的で起こした殺人事件に、最愛の男性と共に巻き込まれてしまう」「⑨恋仲の男性に危害を加えたラスボスへの復讐に乗り出す」
※以下『逆転裁判(無印)』のネタバレを含みます。※
“霊媒”のチカラ
『逆転裁判』第1話『はじめての逆転』では、成歩堂の初法廷にて助手役を務め、無事に彼を初勝訴へと導いた。だが、その数週間後「母を破滅させた事件の真犯人」に追跡に気付かれた結果、第2話『逆転姉妹』で無念にも殺害されてしまう。享年27歳。残念な事に優秀な弁護士でありながら、千尋の弁護士人生は僅か5年で終わってしまった。無敗の経歴も「美人薄命を体現した生涯も一因」で成り立っているのが、また悲しい。殺害されなければ、天寿を全うするまで「生涯現役」として大いに活躍していたのは想像に難くない。
「主人公の師匠でありながら第2話の冒頭にて殺害される」という、その唐突かつ早過ぎる退場劇は多くのプレイヤーを驚愕させた。公式動画でも成歩堂に「どう考えても、あの展開は最終回に持って行くだろう、普通‥‥」とツッコミを入れられていた。なお当初は『逆転姉妹』が第1話として設定されていた。つまり千尋の死亡から物語が始まる予定だったのだが、キャラデザイナー・スエカネクミコから「それではプレイヤーがストーリーやキャラに感情移入出来ない」と忠告を受けた、脚本家・巧舟によって現在のシナリオ構成に変更された事が、関連書籍や各所のインタビューを通じて語られている。
千尋が殺害された事件で成歩堂と真宵は初対面し、彼女の弔い合戦で共闘した事を切っ掛けにコンビを結成した。千尋の仇討ちを成功させた成歩堂は、弁護士デビューから僅か1ヶ月後の身で「師匠の形見ともなった事務所」を受け継いだ。そして『綾里法律事務所』を『成歩堂法律事務所』に改名し、その所長を務める弁護士に着任し、助手に真宵を迎え入れて再出発を果たすのであった。なお生前の千尋は成歩堂に時折「所長」と呼ばれていたが、死後は事務所も所長の役職も彼に譲渡した為、一貫して「千尋さん」と呼ばれる様になった。
しかし千尋の出番はここで終わらず、真宵や春美の持つ「綾里家の霊媒の力」で度々、現世に呼び出されては成歩堂達に力を借している。春美が成歩堂の仲間になってからは、千尋の霊媒は真宵と春美の2人が状況に合わせて分担して行われる。彼女が霊媒によって現世に召還されるのは、主に「捜査や法廷抗争で行き詰まりを迎えた時の助っ人」として呼び出される場合が多い。なお霊媒によって霊媒師に憑依すると、相手の外観をベースに顔や身体の特徴が容姿に現れ、声に至っては生前そのままに再現される。小柄でスレンダーな真宵と春美が、大柄でグラマーな千尋を降霊中の姿は「胸元の露出がとんでもない格好」になっている。特に春美の降霊の場合、幼女の着物を大人の女性が着ている事になるので最早パッツンパッツンである。作中では千尋自身も初めて春美に憑依した際「ちょっと胸がキツイわ」と口にしていたが、どう見ても「ちょっと」ではない。これらの憑依姿でも千尋の美貌は遺憾無く発揮されており、序盤に落命した事を嘆くファンからも評価が高い。
母の仇に殺害されるという非業の死を迎えてしまった千尋だが、真宵への憑依を通じて弟子と妹に協力し、最後は自分自身の手で母の仇の告発を成功させられた。この背景にも後押しされてか『2』の攻略本のインタビューで「自分の死に未練は無いのか」と問われた際、実にサバサバと「別に特に未練は無いわ。なるほど君の事は心配だけどね」と語った。続けて「事ある毎に霊媒で呼び出されているが、成仏しているのか」と尋ねられると「ちゃんと成仏してるわよ。別にその辺を漂っている訳じゃないの。真宵が私を呼び出し過ぎてるだけね」と説明した。
上記の通り普段の千尋は「苦境での指導者役」を担っている。そんな普段とは一転して『逆転裁判2』第4話『さらば、逆転』にて真宵の誘拐事件が発生した際、彼女と春美に交互に霊媒される事で「両者を仲介するメッセンジャー」となって活躍した。真宵が定期的に春美に憑依した千尋を通じて「現時点で知り得る限りの拘束中の自分の現状と居場所」を成歩堂達に伝えた事は、彼女の救出に大いに役立った。
宿敵との戦い
千尋には『逆転』シリーズの諸悪の根源でもある2人の宿敵がおり、この2人との戦いは『逆転裁判』(成歩堂編)のストーリー全体に大きな影響を及ぼした。
悪徳社長・小中大
情報処理会社『コナカルチャー』の社長。小中こそが「母を破滅させた事件」の真犯人にして、千尋を殺害した張本人である。『コナカルチャー』は「情報処理会社」を名乗ってはいるが、その実態は「ありとあらゆる情報の収集や売買を通じて、権力者の弱味を握って恐喝し私腹を肥やす強請屋」に当たり、司法界の上層部の人間達を中心に、国中に被害者を生み出しては暴利を貪っている。小中との直接対決は第2話『逆転姉妹』にて繰り広げられるが、彼のDL6号事件に関する悪事の詳細が語られるのは、第4話『逆転、そしてサヨナラ』まで持ち越される。
「母を破滅させた事件」の真相(『逆転裁判』第4話『逆転、そしてサヨナラ』)
小中は星影から「警察と舞子の極秘捜査失敗の情報」を買い取り、国中のマスコミに大規模な報道をさせて綾里家への大バッシングを展開。その結果として瞬く間に綾里家は没落してしまい「一族失脚の元凶」と見なされた舞子は世間のみならず、綾里一族の者達からも迫害される身となってしまった。家元の権威も故郷での居場所も喪失した彼女は『倉院の里』に幼い娘2人を置き去りにして行方を消した。これこそ千尋が「母を破滅させた事件」と呼ぶ、小中の引き起こした事件の全容なのだ。警察の重要機密を各所に売り捌いた事で、巨万の富と絶大な権力の一挙両得に成功した小中は「情報売買という悪徳商法」に味を占めて、ジャーナリストを退職し『コナカルチャー』を創設した。そして千尋は「小中の悪事を暴いて母の仇討ちを果たす事」を目指して弁護士となった。
美人弁護士殺害事件(『逆転裁判』第2話『逆転姉妹』)
小中が「15年間にも及ぶ、国全土に大勢の被害者を生み出す犯行」を積み重ねた末、彼による脅迫と恐喝に耐え切れず、自殺や失脚に追いやられた被害者の数は膨大化していた。そこに目を付けた千尋は「脅迫は誰が誰に脅迫されているかを公表されてしまえば無効化される特性」を活かして『脅迫被害者の名前リスト』を制作した。「後は自作の決定的な証拠品を世間に公開さえすれば、小中の告発も成功させられる」と信じて千尋は慎重に準備を進めた。ところが盗聴によって彼女の動向を察知した小中は、千尋が事務所に1人きりとなった隙を突いて殺害しリストの強奪に及んだ。当時の犯行には秘書・松竹梅世を共犯者として同行させ、彼女には事務所の盗聴や現場工作、法廷での偽証を命令して行わせた。「これで千尋は死人に口なしの状態と変わり果てた」と高を括った小中だったが、成歩堂に千尋殺害の濡れ衣を着せるべく証人として出廷した裁判で、弁護席にいた真宵が千尋を霊媒してしまう。こうして現世に蘇った千尋は生前から丸暗記していた『脅迫被害者の名前リスト』を即席で復元し、成歩堂に被害者達の名前を音読させた。「脅迫関係が知れ渡ってしまえば、被害者達は自分の魔手から逃れた挙げ句、恐ろしい報復を仕掛けて来るに違いない」その事をプロの脅迫者だからこそ熟知していた小中は「被害者達や彼らの縁者から残酷な復讐を受ける、最悪の最期だけは回避したい」と願う余り、とうとう自分が千尋を殺害したと自白して逮捕されたのであった。この事件は「美人弁護士と名高い千尋の殺害」「それを皮切りに明るみに出た情報処理会社の実態」「他ならぬ被害者である千尋の霊が、真宵に霊媒される形で現世に舞い降りる」「情報処理会社の社長・小中も自らの悪行が暴露されて失脚」「それを暴いたのは本件で2度目の勝訴となった、千尋の弟子にして新米弁護士・成歩堂」と世間の話題をさらうには十分過ぎる話だった。
小中は犯行や人間性は極めて悪質な反面、凶悪犯罪者としては非常に小物で、脅迫行為に依存しなければ円滑に犯行も遂行出来ない程度の能力しかない。共犯者・梅世の加担も殆んど意味をなさず、上司に命令された事しかしていない彼女も法廷にて呆気なく犯行を暴かれた。悪事だけを見れば巨悪と言っても差し支えないものの、本人の人物像は小悪党同然と言って良い。千尋と成歩堂を「しがない弁護士」と雑魚扱いしていたが、本物の雑魚は小中の方だった。こんな男に「作中随一の知能を誇る千尋の命」が奪われた事は理不尽と言う他ない。小中による千尋殺害の爪痕は大きく、姉という護衛役を亡くした真宵を罠に嵌めようとする人物の出現、検事に転身した男の絶望、千尋の第2の宿敵の暴走等、数多くの悲劇の連鎖を誘発する主因となった。
美人令嬢・美柳ちなみ
宝石商の父親を持つ女子大生の令嬢。その正体はキミ子の実の娘で、父親はキミ子の前夫である。ちなみにとって、キミ子が再婚後に出産した春美は異父姉妹、母親同士が姉妹である千尋と真宵は従姉妹に当たる。互いの権力向上目当てで結婚しただけの両親から愛されず、綾里家の権威失墜を理由にキミ子と離婚した父親に引き取られて育てられた。家族愛に恵まれない環境から他者愛を軽視する程に荒んで行き、母に負けず劣らずの悪女へと成長した。「自分の為だけに生きる事」を信条に掲げる、極度の冷酷非情な利己主義者で、家族を愛さない父親への復讐心から犯罪者に堕落し、それ以降は自己保身の為だけに多くの人々を犠牲者として来た。その中でも特に人生を狂わされた被害者が、恋人同士だった千尋と神乃木であった。
才女と悪女の邂逅(『逆転裁判3』第4話『始まりの逆転』)
ちなみは父親に対する復讐として「協力者達と狂言誘拐事件を引き起こし、身代金代わりの数億円の宝石を奪い取る計画」を企てる。協力者には「孤独な自分の境遇に同情を寄せる人々」を招き入れ、父親の再婚後、義姉となった警官・美柳勇希、ちなみの家庭教師・尾並田美散の2人が選ばれた。当初のちなみは「宝石を換金して得た大金を3人で山分けする」と語っていたが、実は最初から宝石も換金で手にする大金も独占する算段を組み立てていた。彼女の動機には、父親とは絶縁して遠く離れた場所で裕福に過ごす、第二の人生をも獲得する事も含まれていた。この第二の人生での生活資金源に、ちなみは宝石の換金で入手した大金を充てるつもりだった。ちなみは尾並田には嘘の計画を教える裏で、勇希には本当の計画を教え、事件当日に義理の姉妹は尾並田を裏切り、全ての罪を彼に着せて死刑囚にまで貶めた。ちなみは尾並田に誤って殺害された被害者を演じて逃走し、警官である勇希に戸籍等を改竄させて「美柳ちなみは死亡者という偽物の記録」を作らせた上で、無久井里子という別人に成り済まして生活する様になった。ちなみが理想の暮らしを送り始めてから5年後。いよいよ尾並田の死刑執行の日が訪れる。
ところが彼は「どうしても自分を裏切った勇希の真意を知りたい」と願う余り、護送中の交通事故に便乗して脱獄。公衆電話から勇希に連絡し「最後の話し合いがしたい」と申し込む。尾並田の頼みに応じた勇希は義妹への誠意として、ちなみに事前に「尾並田との会話を終えたら自首して、狂言誘拐の事を全て世間に公表する」との説明を終えると指定の場所へと向かった。「勇希の自白が成功してしまえば、自分まで逮捕される」と危惧したちなみは勇希を殺害し、彼女に成り済まして尾並田との会話をやり過ごした後、彼を義姉を殺害した犯人に仕立て上げ死刑台送りにする事で、かつての共犯者2人を纏めて口封じする。ちなみの計画は尾並田に勇希殺害の罪を着せるまでは成功した。しかし尾並田の担当弁護士に就任した千尋、その助手を務めた神乃木によって真相を暴かれてしまった。それでも、ちなみには「過去の狂言誘拐でも今回の殺人でも、犯行を立証する物的証拠の欠如という最後の砦」が残っていた。この最終難関に直面した千尋と神乃木は「ちなみの犯行を立証するには両事件の関係者・尾並田の自白を引き出すしかない」と考慮し、苦肉の策として彼を「最後の証人」として法廷に召還する。
証人となった尾並田は終始一貫して、ちなみを庇護する証言に徹した挙げ句の果てに、狂言誘拐事件の際に彼女と交わした誓いを果たす道を選んでしまう。その誓いとは「お互いを死んでも裏切らない。この誓いを破る事態になったら毒薬を飲んで心中する」という内容だった。狂言誘拐の直前ちなみから託された「毒薬の入った、ガラスの小瓶付きペンダント」を密かに携帯していた尾並田は、その中身を飲み干して全ての証言を終えた時、服毒自殺を遂げた。数年前から洗脳していた共犯者に服毒自殺をさせる事で口封じを成功させたちなみは、まんまと法廷から逃げ延びてしまう。あと一歩の所で「全ての元凶である彼女」を取り逃がしてしまった千尋と神乃木は心に深手を負った。その後2人は尾並田の仇を取って、ちなみに法的制裁を下す目的で協力関係となり、彼女の追跡を開始するが、これが更なる悲劇を招き寄せるのであった。
毒殺魔悪女の逃亡劇(『逆転裁判3』第1話『思い出の逆転』)
尾並田の自殺から半年後。ちなみの追跡を通じて以前にも増して親交を深めた、千尋と神乃木は恋人同士となっていた。ちなみの方はと言うと、いつまでも自分を追跡して来る弁護士2人を目障りに思い、単独で「取り調べに応じて欲しい」と依頼して来た神乃木に卑劣な罠を仕掛ける。彼の提案で『地方裁判所』のカフェテリアにて、ちなみと神乃木は2人きりで会話する事となるが、この時ちなみは神乃木が飲んでいたコーヒーに致死量の毒を盛った。今回の毒薬も、尾並田に託した物と同じ「ガラスの小瓶付きペンダント」に入れて携帯していた。神乃木は卒倒し、混乱に乗じて現場から逃走したちなみは『地下資料室』へと逃げ込んだ。そこには当時、弁護士を目指して勉強中の大学生だった成歩堂がいた。
彼を見たちなみは「一定期間、事件とは無関係で身体検査をされる可能性が0の人物にペンダントを預かって貰おう」と思い付く。ちなみは成歩堂に接近し「一目惚れしたから交際して欲しい。このペンダントを記念品として受け取って欲しい」と願い出る。一瞬で彼女の美貌と魔性に魅了された成歩堂は、すんなりと唐突な申し出を受け入れて「魅力的な美女との交際開始」に舞い上がる。
今回の毒薬は、ちなみが通学する『勇盟大学』の薬学部が独自開発した薬品サンプルを盗み出した物で、警察に入手経路を知られるのも防げる優れものだった。ちなみは事前に必要となれば即座に毒薬を調達出来る上、薬学部をいつ出入りしても怪しまれない様、大学の先輩にして薬学部の生徒・呑田菊三と交際していた。ちなみの今回の犯行の時点で「彼女が毒薬を盗んで悪事を働いている」と察した呑田は「ちなみとの別れ」を望む様になる。その矢先に彼女の方から「新しい好きな人(成歩堂)が出来たから別れて欲しい」と打ち明けられた呑田は、無事にちなみと別れられた事に安堵して交際前の生活に戻って行った。
しかし前回も今回も「事件の最有力容疑者」として警察にマークされていた、ちなみ本人は自由に動けずにいた為、成歩堂と実際に交際したのは彼女の双子の妹・葉桜院あやめであった。ちなみに「姉の自分に成り済ましてペンダントを取り戻せ」との命令にあやめは従い、それを成歩堂と交際を重ねる中で返して貰おうとする。だが「理想の恋人との幸福な交際」に溺れて「四六時中・色ボケ状態」と化した成歩堂は「ペンダントを返して欲しいのは彼女の照れ隠し」と決め付け、あやめの訴えも録に聞こうともしなかった。彼女は次第に成歩堂の誠実な人柄に惹かれて行き、益々ペンダントの奪還がし難い状況になってしまった。そうこうしている内に半年もの月日が流れ、痺れを切らしたちなみは新たなる凶行に及ぶに至る。
一方、神乃木は奇跡的に一命は取り留めたものの、全身を猛毒に蝕まれた結果、昏睡状態に陥ってしまう。「最愛の人にして最大の味方・神乃木の廃人化」を千尋は嘆き悲しむ。肝心のちなみは前述の「事件とは無関係の他人に証拠品を押し付けて、身体検査をかわすという奇策」に出た為、取り逃がしてしまった。この2人の惨状とは裏腹に、成歩堂とあやめの交際は順調に進んだ。それでも千尋は恋人の仇を討つ為にも「ちなみの追跡」を続行し、とうとう彼女に復讐するチャンスが巡って来る。
愛弟子との出会いと絆(『逆転裁判3』第1話『思い出の逆転』)
成歩堂とあやめの交際開始から半年後。ちなみは彼をも毒殺しようと企み、再び薬学部の部室から毒薬を盗み出す。彼女は誰にも気付かれていないと思っていたが、呑田だけは「ちなみが毒薬を盗み、また誰かを殺そうとしている」と気付いていた。彼は良心から赤の他人である成歩堂の身を案じて、密かに彼を呼び出して「ちなみとは、もう会わない方が良い。彼女は毒薬を盗んでいる」と忠告する。だが恋人に心酔している成歩堂は「呑田の忠告」を拒絶し怒りを覚えた結果、彼を電柱に向かって突き飛ばしてしまう。この時の衝撃で気絶した呑田の背後には、老朽化していた送電線が切れて垂れ下がった。成歩堂が立ち去った後、彼と入れ替わる様に「一連の様子を密かに見ていたちなみ」が呑田の前に現れる。彼女は「このまま呑田を生かしておいては、更なる自分に対する疑惑が深まる」と危険視して即興で計画を変更する。その計画とは「呑田を送電線に突き飛ばして感電死させ、成歩堂に罪を着せて社会的に抹殺する事で、彼らの口封じを同時に行う」という内容だった。ちなみは起き上がったばかりの呑田を前述の方法で殺害するが、その直後、殺人現場で呑田を心配して謝りに来た成歩堂と鉢合わせしてしまう。ちなみは「私が事件当時、現場にいた事は誰にも言わないで欲しい」と成歩堂に頼んだ。それから駆け付けた警察に成歩堂は逮捕されて、数日後の裁判には目撃者の証人を騙るちなみも出廷する事となった。
この裁判における本来の成歩堂の担当弁護士は星影であった。しかし偶然「今回の裁判の関係者にちなみがいる」と知った千尋は唐突に師匠に懇願して、担当弁護士を代わって貰い、今度こそ神乃木と尾並田の仇を討ち、宿敵ちなみの告発を成功させる為にも約1年ぶりの裁判に挑む。法廷では成歩堂が溺愛している恋人のちなみを盲信する余り、被告人でありながら何度も弁護側の邪魔に入るが、それでも自分の無実を信じて戦う千尋の勇姿を見ている内に彼の心に変化が生じる。裁判の進行に伴い「ちなみの真意や事件の真相の大筋」も明らかとなった頃、ついに成歩堂は千尋の味方に着く道を選び「ちなみから口止めされていた呑田の忠告の詳細&事件当時、彼女が呑田の遺体の側にいた事実」を告白する。彼の自白を突破口にした千尋は、とうとう念願叶ってちなみの告発を成功させた。ちなみは「千尋に対する復讐を暗示する言葉」を残すと緊急逮捕されて法廷を去った。その後ようやく成歩堂には無罪判決が下されるに至った。
この裁判から暫くして千尋は独立し、個人事務所を構えた。その矢先、上記の裁判を通じて知り合った成歩堂から弟子入りを志願される。まだまだ千尋自身も駆け出しの身だったが、彼の熱意を汲み取り弟子入りを許可した。こうした経緯を経て2人の間には「師弟関係に基づいた強固な絆」が芽生えるのであった。
千尋の死後のちなみと神乃木(『逆転裁判3』第5話『華麗なる逆転』)
千尋の死後「ちなみと神乃木を取り巻く環境」には大きな変化が生じた。ちなみは千尋に告発されて以降、彼女とは会う事すら無く「千尋が不在の裁判」を重ねて行く内、最終的には死刑判決が下された。そして逮捕から約5年後ちなみの死刑が執行された。しかし彼女は生前から既に、母キミ子と手を組み「春美に次期家元の継承権を与える為、真宵を暗殺する計画の協力者」となっており、死後にも悪霊と化して事件を引き起こす。この暗殺計画はキミ子が3人の娘達と結託して行われた犯行で「ちなみの死刑、彼女の双子の妹あやめ、母に騙されている春美」に付け込んで組み上げられた。計画は「ちなみの死後、春美に彼女を霊媒させて真宵を殺害し、あやめの犯行に見せかける」という内容であった。
神乃木は千尋の死から1年後、覚醒を果たすが、その先に待っていたのは「最愛の女性・千尋の死という絶望」だった。不幸はそれだけではなく「毒に侵された全身に残る後遺症に悩まされる日々」も幕を開けた。特に彼を苦しめたのは視覚障害であり、専用のゴーグルを装着しなければ盲目状態の解除すら出来ない体に変わり果ててしまった。既に千尋の告発によって小中もちなみも社会的に抹殺された後であった為、神乃木は復讐の相手すら失っていた。彼が亡き恋人の為に出来る事は「次期家元の座を春美に移譲する為、真宵の排除を狙っているキミ子の魔手から真宵を守り抜く事」だけだった。
神乃木はキミ子を監視し、彼女の犯行を阻止するべく「謎の検事ゴドー」へと生まれ変わり、真宵を守る為には手段を選ばなくなった。「留置所でのキミ子と春美の面会の盗聴」を通じて「キミ子は最終手段として、真宵の暗殺を計画している」と察知したゴドーは2人の仲間を集めた。
1人目はあやめで、本来はキミ子の協力者である彼女を仲間に引き入れる事で、ちなみ達の目を欺いた上で裏をかく為の人選だった。以前から家族愛と正義感の強さから「これ以上、母にも姉にも罪を重ねて欲しくない」と考えていたあやめは快く協力を引き受けた。彼女は犯行現場に指定された綾里家所縁の寺院『葉桜院』の尼僧なので、現地の状況に詳しい人物を仲間にするという面からも欠かせない人員であった。
2人目は絵本作家・天流斎エリスに転身し、生きていた舞子である。実は失踪後も彼女は警察にマークされていた為、検事に転身したゴドーが接触するには容易い相手となっていた。「娘の真宵の命・姪の春美の潔白」の両方を守るべく舞子もゴドーに手を貸した。
余談
名前の由来
日本語版の名前は『開発コラム』によれば「弁護士らしく千回でも尋ねましょうという意味」を込めて名付けられた。英語版の名前は「Mia・Fey(ミア・フェイ)」。妹の真宵=「Maya・Fey(マヤ・フェイ)」、母の舞子=「Misty・Fey(ミスティ・フェイ)」なので「親子3人共イニシャルがM・Fとなる名前」に設定されている。
制作裏話
『3』の攻略本で脚本家・巧は「実は千尋は当初、常に敬語で話す設定だった。その為『1』のあちこちに敬語を使う彼女の姿が残ってしまっている。良かったら探してみて欲しい」と明かした。とは言え、これはこれで『倉院流霊媒道』の令嬢らしい育ちの良さが如実に表れていると言えなくもない。「常時、敬語口調の女性メインキャラという立ち位置」は春美に引き継がれた模様。
『サバイバン』での初期設定
『逆転裁判』のプロトタイプ『サバイバン』では、千尋のポジションに相当するキャラクターは「霞真涼山(かすま りょうざん)」という陶芸家風の壮年男性だった。彼のデザインは裁判長の元ネタとして流用された。