曖昧さ回避
概要
「ぼかぁ小中 大(こなかまさる)。ここの社長、いやプレジデントだ。
ちょっと、アメリカぐらしが長いもんでねえ。ニガテなんだよねぇ、ニポンゴ。」
声:手塚ヒロミチ(アニメ版)
演:鮎川誠(実写映画版)
『逆転裁判』第2話『逆転姉妹』に登場。年齢39歳。身長178cm。
情報処理会社『コナカルチャー』の社長にして創設者。この会社は多種多様な情報の収集や売買を主な業務とし、莫大な各種情報を管理すると共に、顧客となった人物に金品と引き換えに一部の情報の開示や譲渡も請け負っている。小中曰く「時代を先取りした会社」との事。社名は文字通り「小中」と「カルチャー」を掛け合わせたもので、名付け親でもある小中本人は「お洒落だろう」と自慢する程、気に入っているが「幼稚、ダサい、馬鹿っぽいの三拍子」と言う他ない。本社は都心部に聳え立つ高層ビルで、その最上階が彼の社長室となっている。全国各地の権力者にも名が知られている規模の大企業だが、作中に登場する社員は社長・小中と秘書・松竹梅世の2人しかいない。『コナカルチャー』が情報売買に関しては日本有数の大企業であり、業務内容の詳細からして「シナリオ上は不必要だから登場させていないだけで、小中と梅世以外の大勢の社員がいる事」は確実であろう。「小中と梅世は愛人関係にある」との噂が、彼らの周囲では流れている。
元々は一般人のジャーナリストであったが、15年前に発生した難事件「DL6号事件の極秘事項という特大スクープ」を入手し、各種報道機関に働きかけて全国規模の報道を展開した。この報道の主導者になった事で「巨万の富と絶大な権力の一挙両得」に成功し立身出世を果たす。一連の成功劇を経て「情報を売買する職業」に味を占めた小中はジャーナリストを退職。情報処理会社『コナカルチャー』を創設し、その社長に転職した。最初は小企業だったものの、設立から現在に至るまでの十数年間で一気に業績を伸ばし、今や政財界や司法界の上層部の人間であれば知らない者はいない程、大企業へと急成長を遂げた。通常業務だけでも莫大な各種利益の入手に成功しており、社長から平社員に至るまで『コナカルチャー』は大変儲かっている。これらの背景から小中は起業してからというもの「悪趣味な成金根性が剥き出しとなった、悠々自適な豪遊三昧の生活」に耽溺している。
「アメコミのヴィラン」を連想させる彫りの深い顔立ちとマッチョな体型を併せ持つ。紫のオールバックの髪と無駄に美白された歯も目を引く。全体的に日本人離れしている上、西洋人的な容姿の持ち主。自慢の肉体の上には「悪質かつ強烈な成金趣味」が反映された衣服と装飾品を纏う。まともな男性であれば抵抗を覚える色合いの全身ピンクのスーツを着用し、過剰な程の金品や宝石でド派手に着飾っている。両手の親指を除いた8本の指にはゴツい指輪を嵌め、スーツの左襟には大型ダイヤのブローチを着け、全体に小粒のダイヤが鏤められたネクタイを愛用する。己の力を誇示する時には指輪を主点にして、全身の貴金属と美白した歯全体を輝かせるのが癖。その様子は公式の全身イラストでも描かれていて、全身に目が痛くなる様な「キラキラ」と言うよりは「ギラギラ」としたオーラを放っている。
小中の余りにも悪趣味なファッションセンスは『1』及び『蘇る逆転』のゲーム内、もしくは関連書籍で見られる『ストーリー・イメージ・イラスト』の解説では「下品ゴージャス」と表現されていたが、正にその通りである。この秀逸なコメントは2001年発売の『1』の攻略本でしか読めない。『オフィシャルファンブック』での『コナカルチャー』の紹介記事では、要約すると「彼の服装の総合価格は、数百万円と歩く身代金状態」と紹介されていた。幾ら金品が欲しくとも「こんな品性下劣な男は誘拐したくない」「奴の所有物なんて使用するのは嫌だ」と思う人物が大半を占めるであろう。
傲慢だが小物臭さが漂う性格をした、極めて胡散臭い人物。会話では誰を相手にしても傲慢な姿勢を一貫しており、怪しげな英語を交えて話す等、いちいち癪に障る言動が目立つ。英語交じりで話す事で自身の高い知性を主張しようとしているが、冒頭の台詞にもある様に「意味が重複している日本語と英語を同時に使う事」で、かえって愚かさが滲み出ている(英語の「president(プレジデント)」には「大統領」の他に「社長」という意味も含まれている)。また「‥‥良くないアクシデントは、君にハプニングだよ‥‥」等「同じ意味の英語を重ねて使う」という間抜けぶりまで披露している。「言い方は違えど同じ意味を持つ言葉」を2つ重ねて使用するのが口癖となっているのだろうか。一方で「秘書」の英語(正解は「secretary(セクレタリー)」)が直ぐに出て来ず「アレは英語で何て言うんだっけ?」と首を傾げる有様。こんな体たらくなのに、しょっちゅう小中は「僕は常に完璧でパーフェクトだからさ」と主張するので尚更、彼の話し方は聞くに堪えない。本人は「アメリカ生活の経験者だから、英語交じりなのは自然な口癖」と語るが、前述の言葉遣いの間違いを頻発している事や、自慢目的で平気で嘘を吐く性分からして、本当に渡米経験があるのかも怪しい。単に格好付ける為、故意に英語交じりの口調にしているだけの可能性も高い。渡米経験者だとしても「精々、短期間の旅行で豪遊していただけ」ではないだろうか。小中の語学力では短期旅行は可能としても、長期滞在は土台無理であろう。『蘇る逆転』の攻略本では「意味を解って使っているのか?英語力はかなり眉唾物」と低評価されている。
社長室にも「極度の下品ゴージャスな悪趣味」が反映されていて「目の毒とすら言える調度品の数々」が置かれている。その中でも「自分の肉体美を強調する為、制作した自身を象った調度品」が特に酷い代物で『自分をギリシャ神話の神・アトラスに見立てた銅像』&『座り込んだ自分の首無しの胴体が脚となった黄金のデスク』は見るに耐えない。部屋の奥にある棚には「十数個に上る様々な大会でのトロフィーや賞状」が飾られているが、どれもこれも「みみっちい分野での受賞歴」を物語っているだけである。恐らく受賞理由を作る為、各大会の主催者を脅迫して無理矢理、獲得したものと思われる。小中本人の容姿や性格、態度や言動と同様、全体的に不快感を催す内装となっている。『オフィシャルファンブック』では「頭が痛くなりそうです‥‥」と批判された。使用金額だけは立派で、その総額は334万円と彼は語る。何より本社ビル自体、地上階で20階(アニメ版では50階)建てと所謂、超高層ビルの部類に入り、その頂上に掲げられた看板にデカデカと自身の写真を使用し、自分自身は最上階の社長室からオフィス街を見下ろす様に眺望している辺り、自己顕示欲の高さが垣間見える。
名前の由来
名前の由来は文字通り「小中大」。英語版では「Redd・White(レッド・ホワイト)」という名前。人名として差別化する為か「赤」を意味する英語の「Red」より「d」が1つ増えている。流石に英語で「三拍子揃った名前」を作るのは難しかったからか、秘書の松竹梅世=「April・Mey(エイプリル・メイ)」共々「2点セットの名前」に変更された。『逆転』シリーズの英語版のキャラの名前では「狩魔家の人々等、高貴な出自の人物」にのみミドルネームを用いる設定なので、成金の小中は不適格と見られた模様。『コナカルチャー』は『Blue・Corp(ブルー・コープ)』なので、小中自身の名前と会社の名前を組み合わせると「星条旗カラーの三色」が揃う。
関連タグ
ガンス:ゲーム『ペーパーマリオRPG』の登場人物。ガボンという人外の種族だが、作中の役回り、芸人ルー大柴の様な英語交じりの口調等、小中と重なる点が多々ある。ちなみにガンスは小中と違って、日本語でも英語でも「言葉遣いの間違い」は一切犯していない。
「①英語交じりの口調で話す(ガンスは一人称は「ミー」、二人称は「ユー」で固定)」「②大企業を経営する悪徳社長(ガンスは大闘技場のプロモーターを兼ねる)」「③胡散臭い大柄なスーツ姿の男性」「④有能な美人秘書がいる(ガンスの秘書キノシコワは『2』での華宮霧緒と外見も性格もそっくりである)」「⑤あるエピソードでボス敵として主人公と戦う(ガンスはステージ3=第3章のボス)」「⑥マッスルボディの持ち主(普段のガンスはガボンの中ではやや大柄な位だが、強化形態になればマッチョに変貌する)」「⑦どこかコミカルな外見に反して、本性は極めて悪辣かつ冷酷な卑劣漢」「⑧自分の悪事の最大の犠牲者を失踪に追いやり、相手の家族に仇討ち目的で付け狙われる(しかも小中の追跡者)もガンスの追跡者も、家庭内における立場は「姉」である)
※以下ネタバレ注意※
悪徳社長の悪行三昧
母の仇にして師匠の仇
弁護士・成歩堂龍一の師匠・綾里千尋を殺害した張本人。そして千尋が「母を破滅させた事件」と呼ぶ事件の真犯人でもある。営利目的で「母を破滅させた事件」を起こしたのが災いし、密かに千尋から母の仇討ち目的で追跡されていたが「彼女に告発される危機が迫りつつある」と察知すると口封じ目的で千尋を殺害した。小中は成歩堂にとっては師匠の仇、千尋にとっては母の仇に当たる。秘書の梅世は千尋殺害事件での共犯者を担った。
綾里姉妹の「母を破滅させた事件」
全ての元凶は15年前に起きた難事件「DL6号事件」にある。この事件は『地方裁判所』のエレベーターにて弁護士・御剣信が、法廷係官・灰根高太郎に殺害されたと見られる事件で、警察は現場や関係者の職業故、世間への報道や情報収集にも難航する程であった。捜査が暗礁に乗り上げた末に警察は「最大の禁じ手とも呼べる手段」に出てしまう。それは名門霊媒師一族・綾里家の族長・綾里舞子に極秘捜査への協力を依頼し、彼女に被害者・信の霊媒をさせて真犯人の名前を聞き出すという内容だった。しかし信の霊が事件当時の状況から真犯人を灰根だと勘違いし、彼を被告人とする裁判では担当弁護士・生倉雪夫は卑怯にも「灰根は心神喪失が原因で、誤って信を殺害してしまった」との弁論の主張によって強引に無罪判決を獲得した。こうして舞子が力を貸した極秘捜査は無念にも失敗に終わり、警察も綾里家も自分達の歴史的過失を闇から闇に葬ろうとした。その動きを卑怯千万の方法で妨害し「DL6号事件における最低最悪の二次被害」を生み出して、私利私欲を満たした悪漢が小中だった。
小中は当時の生倉の上司・星影宇宙ノ介に大金を支払い「舞子による極秘捜査が失敗に終わった極秘情報」を買い取り、国中のマスコミにリークし「綾里家の霊能力は嘘っぱちという喧伝」までも積極的に行った。その結果、綾里家は日本中から誹謗中傷を受けて、瞬く間に没落してしまう。一族の故郷『倉院の里』では舞子自身は「一族衰退の元凶」の烙印を押されて迫害を受ける身に落ちぶれてしまい、惨状に耐えられなくなった彼女は失踪へと至った。千尋は母を失脚させた挙げ句、行方不明者にまで貶めた一連の事件を「母を破滅させた事件」と名付け、その真相を知って彼女の仇討ちをする為、弁護士に就職したのだった。
『コナカルチャー』の正体
『コナカルチャー』は滑稽な社名、情報処理会社という自称からは想像し難い程、強大な悪徳企業である。その実態は「ありとあらゆる情報を探り出しては、日本の政財界や司法界の上層部にいる人間達の弱味を握り、彼らを主な標的とした脅迫・恐喝行為によって暴利を貪る強請屋」に当たる。主に「恐喝のメインターゲットとされた人々」から高額の金品を巻き上げる事で私腹を肥やしている。各界の権力者に圧力を掛けて、自分達の権力を増強させるといった裏工作にまで及んでいる。「脅迫相手から何らかの利益を奪うという目的」の為には手段を選ばない為、脅迫の手法も非常に暴力的かつ残酷なものである。小中からの脅迫や圧力に耐えられず自殺や失脚、社会的抹殺に追いやられたり、彼からの圧力に屈して怯えながら、言いなりにされる生活を強要されている人物も数多い。一応、小中が直接的に殺害した被害者は千尋のみだが、彼の悪行三昧の犠牲者となった結果として人生を狂わされたり、自殺等の悲惨な末路に追い込まれた「間接的被害者の総数は桁外れ」と化している。この「自分の職業を悪用して、間接的に数え切れない人々の人生を狂わせる大罪を犯した事」は、皮肉にもDL6号事件の真犯人との共通点でもある。
小中の目論見と脅迫により、司法界と政財界の上層部にいる大勢の人間が彼の支配下に置かれており、今となっては既に小中は「事実上、警察や検察までも自由自在に動かせる立場」となっている。それにより彼はすっかり増長していて「司法界や政財界の奴らは僕の言いなり」「あいつら(脅迫被害を受けた各界の権力者達)は僕にとっては玩具」「この国を影で操るトップは僕自身」と誇大妄想に浸っての豪語までする。
小中の脅迫行為による主な被害者は、社会的抹殺の対象とされた舞子、長年に渡る主な恐喝被害者とされた星影の2人がいる。舞子の被害状況は前述の通りである。星影に至っては迂闊にも「DL6号事件の情報漏洩を犯した事実そのもの」が脅迫材料に利用されて、15年間も小中に言われるがまま金品を譲渡して来た。「初めてDL6号事件の情報を漏洩した張本人にして、押しに弱い裕福な権力者」なのにも付け込まれた星影は「脅迫被害者・第1号」に据えられた上「無尽蔵のドル箱扱い」までも受ける羽目になった。自業自得とは言え「星影は被害総額の面では、小中の最大の被害者」と言っても過言ではない。
最近でも、購入したばかりの時価4億円の愛蔵品『夕暮れ時の釣り人の名画(正式名称は不明)』を脅迫によって強奪されるという痛恨事に見舞われた。この名画は小中には戦利品の様に扱われ、彼の社長室に堂々と飾られた。成歩堂は先日は星影のオフィスにあった名画が、今は小中のオフィスに飾られている事からも「小中と星影は脅迫者と被害者の関係にある」と見抜いた。ちなみに、この名画は「悪趣味な調度品の巣窟と化している社長室」の中ではマシな部類に入る美術品だった為やや浮いていた。
美人弁護士殺害事件
千尋は舞子の失踪直後、事件関係者の霊媒を通じて「極秘捜査の情報漏洩の犯人は小中と星影」と突き止めた後は、ひたすら優秀な弁護士に成長して、小中の告発を成功させようと力を尽くして来た。新人時代は星影に弟子入りし、彼の事務所の所員になってまで情報収集にも励んだ。彼女は身近な人が小中の毒牙に掛かる事態に陥るのを防ぐ為「凶悪犯罪者である権力者の追跡という危険任務」を誰にも明かさず、長年に渡る独自捜査を続けた。捜査の中で千尋は「小中の脅迫と恐喝に耐え切れず、失脚や自殺に追いやられた権力者の記事」を捜査資料にも加えた。その中で彼女は資料に「脅迫を飯の種にしている寄生虫の様な男」と小中への批判を添え書きしていた。
弁護士に就職してから5年後、千尋はついに「母を破滅させた事件の真相」に辿り着いた。そして彼を告発するには「小中の脅迫の犠牲者となった者達の名前」を公表さえすれば、脅迫全体を無効化出来る上、告発も成功させられると思い付いたのだ。千尋は血の滲む様な努力の果てに、小中の被害者になった人々の事を調べ上げ、彼の犯行を立証する決定的な証拠品『脅迫被害者の名前リスト』を制作した。以前から「自分の背後に迫りつつある千尋の存在」に気付いていた小中は、殺人事件の数日前から彼女の経営する『綾里法律事務所』に盗聴機を仕掛け、向かいに建っている『板東ホテル』に潜伏して彼女の動向を探っていた。盗聴によって『脅迫被害者の名前リスト』の存在を知ると「口封じ目的で千尋を殺害してリストを強奪する犯行」を計画し、部下の梅世に命令して共犯者に加えると犯行の実行に踏み切ったのであった。
事件当時は現場の向かいにある『板東ホテル』に数日前から梅世と共に宿泊し、盗聴で千尋の行動を監視していた。そして彼女が深夜、電話で妹の真宵と会う約束をして事務所で1人きりになった所を襲撃。千尋も流石に「小中が自分の盗聴までする」とは読めず、鈍器で撲殺されてしまう。凶器となったのは彼女が事件の1ヶ月前、成歩堂の親友・矢張政志から贈られた『考える人の置き時計』だった。
その後、小中は梅世と協力して、これから事務所を訪れる真宵に罪を着せる為、様々な工作に及んだ。自分は事務所に残って現場を荒らし、千尋の血で「マヨイ」と書かれたダイイングメッセージを偽造した。もう1つの目的であった『脅迫被害者の名前リスト』の回収にも成功した。一方、梅世には目撃者を演じさせ、事件を通報させた上、証人として出廷させて偽証を行わせた。
法廷で迎えた破滅
当初は梅世だけを表舞台に立たせ、小中自身は雲隠れする算段だった。しかし梅世の偽証を失敗させた挙げ句、執念深く捜査を続けて『コナカルチャー』へと辿り着いた成歩堂に真犯人だと暴かれて、告発を宣言されてしまう。それにも小中は怯まず、その場で作戦を変更して電話で権力者の協力を取り付け、今度は成歩堂を「千尋殺害事件の被告人」に仕立て上げる。その仕上げとして、最初は嫌がっていた「証人として出廷する事」を決断し、法廷では成歩堂が犯人だと偽証する。また彼の担当弁護士を自分の息の掛かった者にする手回しも行った。
ところが成歩堂が「自分で自分の弁護を担当する奇策」に出た所から次第に追い詰められて行く。「脅迫者としてはプロでも、殺人者や証言者としては素人以下」と言っても過言ではない程の失言を連発する、醜態を演じる羽目になった。新人だった成歩堂にも瞬く間に追い詰められ、最後は真宵に霊媒されて現世に戻って来た、他ならぬ被害者である千尋にトドメを刺される結末を迎えた。千尋は生前から丸暗記していた『脅迫被害者の名前リスト』をその場で即座に復元し、師匠の指示に従い「リストに書かれた名前」を成歩堂が読み上げて行った。脅迫は秘密裏に行われてこそ意味がある。「自分が誰を脅迫しているか」を全て世間に公表されては、被害者やその身内からの復讐や、裏社会との関わりも深い権力者達の怒りを招いて、恐ろしい報復と破滅が待っているに違いない。そう悟った小中は成歩堂がリストを読み上げている途中で、必死になって彼を止めようと叫び出す。そして、とうとう小中は自分の罪を自白し逮捕される結果となった。
皮肉にも、かつて自分が国中に「綾里家の霊力は嘘っぱち」だと喧伝しておきながら「実際は紛れもなく本物であった、綾里家の霊力にも敗北した結果」とも言える。かくして「この国で最も質の悪い、他人の情報で商売をするプロ」とまで呼ばれ、大勢の人々を破滅に導いた小中は「雑魚だと侮蔑していた弁護士の師弟2人」によって、犯行が暴露されて破滅を迎えたのであった。
但し小中に脅された人物達の大半は「同情の余地があるか」と言われたら、それはまた別の話であり、小中以降、成歩堂や御剣が相手にする人物もまた、似た様な系統の人物達(関連的に交流を匂わせる人物もいる位)である。『コナカルチャー』は脅迫で成り立つ悪徳企業だが、司法に留まらず、法に外れた悪人にとっても、恐れられた会社(人物)でもあった。
そして、この事件から2年後、彼が千尋を殺害した事により、ある検事が誕生する事となる。この検事に関する事柄を含め、小中による千尋殺害は「主要人物達が後々に見舞われる、悲劇の連鎖を誘発する主因」となった。
松竹梅世との関係
『ストーリー・イメージ・イラスト』ではバカップルにも見える位のイチャイチャを見せている小中と梅世だが、その恋愛関係は極めて浅薄なものである。2人は共に互いに愛情は欠片も持っておらず「利害関係の一致から協力関係を強化する為、都合良く恋仲になっているだけ」なのだ。小中は優秀な部下に当たる梅世を寵愛する事で、より彼女を扱い易い忠臣に仕立て上げる為「お気に入りの部下扱い」している。梅世は小中に付いて回る事で手っ取り早く権力と資産を得て、豪遊三昧を楽しみたいだけに彼に取り入っている。2人が恋愛関係にある描写も「①ストーリー・イメージ・イラストでの様子」「②数日間ホテルに共に宿泊している事」とごく僅かなのも証左と言える。逆に「上記の2つを除く、作中の数少ない2人の関係性を物語る描写」からも、愛人関係にあるとは言えど「お互いに打算ずくめのビジネスライクな関係」だったと察しが付く。こちらも証拠となり得る描写は3つしかない。
1つ目は留置所での梅世との会話で、成歩堂が彼女に「ホテルで共に宿泊していた男性は如何なる人物なのか」と問い詰めた際のシーンである。この質問をされるやいなや梅世は怯え始め「喋るのが怖い。あの女弁護士みたいに消されたくない」と本音を漏らすと以後は黙秘してしまう。この一幕からは「小中は事件以前から梅世を部下としても、愛人としても真っ当に可愛がっていた訳ではなく、彼女の動向や事の成り行き次第では、いつでも捨て駒にするつもりでいた事」「前々から梅世も小中の本心を察しており、恐怖心に裏打ちされた忠誠心を抱いていた事」が解る。小中の命令を遂行したは良いが、自身の犯行を暴かれて逮捕されてしまった以上「私も口封じ目的で殺されるのは時間の問題かもしれない」との恐怖感が芽吹いて来たのだろう。梅世が小中の秘書として働く動機も「簡単に望むもの全てが手に入る環境欲しさから、危険を承知の上で極悪人の小中に付き従っているだけ」だと察しが付く。
2つ目は小中に「逮捕後の梅世」について聞き込みをした際、彼が「梅世君には悪い事をした」と嘲笑しつつ語っているシーンである。当初の小中は梅世だけを表舞台に立たせて、偽証や現場工作を行わせ、自分は雲隠れに徹するという算段を組み立てていた。それに失敗してしまったからこそ「もう役立たずに用は無い」と言わんばかりに、すぐさま切り捨てる思考に至ったのであろう。本当に「小中の梅世に対する愛情」が一欠片でも有ったならば見捨てる事は有り得ない。保身目的で見捨てるにしても、少しは「有能な部下・梅世との別れを惜しむ様子」は見せるだろうに、そういった動向すらも全く見せていない。
3つ目は「千尋殺害に対する2人の思考の違い」である。小中はかねてよりの願いだった「千尋という邪魔者抹殺」に嬉々として積極的に取り組んでいた。一方、梅世は単に保身目的から上司の彼の命令に従っていただけで、あくまでも「犯行は人生の必要な通過点」としか見ていなかった。惚れた相手の命令だからと喜んで従い「彼の役に立てた」等と、犯行成功に対する喜びや楽しさを感じる梅世の姿はどこにも無かった。
数は少ないながらも、多種多様な男女間の恋愛関係を描いた『逆転』シリーズだが、その中でも群を抜いて「空辣かつ殺伐としている、悪い意味での大人同士の恋愛関係」を構築していたのが、小中と梅世の2人だったと言える。
アニメ版
第1期・第2話『逆転姉妹-1st Trial』
『板東ホテル』で昼間からワインを飲み、カーテンを閉めて暗い室内で「綾里姉妹の会話」を盗聴している場面で初登場。千尋が真宵に『考える人の置き時計』の仕組みを説明する段階に差し掛かると「『考える人』とは考えたねぇ‥‥ミス・チヒロ」と呟いた。この直後に彼女の命を奪う凶器となってしまう『考える人の置き時計』と掛けた発言と言える。その後、真宵の弁護を引き受ける星影に脅迫の電話を入れた。『コナカルチャー』の看板に本人が映っているとは言え、この時点では口元やシルエット等、存在を仄めかす程度の登場しかしていない。これは梅世に関しても同様である。
第1期・第3話『逆転姉妹-2nd Trial』
上述のデスクに足を乗せてふんぞり返り、本社ビルに乗り込んだ成歩堂の忠告を無視し「警官を大至急プリーズだ」と電話を掛ける。そして社長室に乗り込んだ刑事・糸鋸圭介に成歩堂を逮捕させた。
第1期・第4話『逆転姉妹-Last Trial』
証言中の回想では、『板東ホテル』の303号室のソファに寛ぎ仕事の資料に目を通していた。
「自分の弁護を自分でする」という奇策に出た成歩堂の追及を受けて取り乱し、一瞬ではあるが一人称が「俺」になっていた。『脅迫被害者の名前リスト』に対しては、成歩堂が1人目の名前を読み始めた段階で「スタァァァァップ!」と絶叫するという醜態を晒した。
第1期・第8話~第12話『逆転、そしてサヨナラ』
上記エピソードの時点で逮捕された為、小中本人は登場しないものの、何と「DL6号事件の裁判中、小中は生倉の依頼に応じて、極秘捜査の情報を売り渡した」という衝撃の事実が判明する。生倉は無罪判決を望む余り、自ら小中との取り引きに向かい、法廷では「灰根はインチキ霊媒師に濡れ衣を着せられた被害者」という弁論を展開した。これが原因で「綾里一族への風評被害」は原作以上に深刻化してしまった。ちなみに生倉は小中とは情報の売買をしただけで、脅迫被害を受ける事は無かった。恐らく生倉は「綾里家の霊能力は偽物だと主張する、宣伝活動に協力するとの条件」と引き替えに、小中には見逃して貰ったと思われる。
実写映画版
「千尋を殺害した張本人である事」は変わらないものの、容姿や人物像に大きな変更が施された。容姿は如何にも悪質ジャーナリストといった感じの「黒ずくめの怪しい中年男性」と化して、ヨレヨレの黒い長髪でサングラスを着用する。体型も原作での「アメコミのヴィランの如きマッチョな巨漢」とは程遠い、ごく普通の背丈の痩せた男性である。職業も「DL6号事件の際、極秘捜査の暴露記事を書いたフリーの雑誌記者」となり、事件当時から現在に至るまで記者を続行している。転職も起業も行っていないので『コナカルチャー』は創設されていない。原作以上に「大物ジャーナリストとして世間から持て囃される人生」に味を占めたのだろうか。
梅世は「小中とも事件とも無関係のモブキャラ」に転身し、映画版での彼女は『AKB48』をモデルとしたアイドルグループ『TAR69』に所属し、雑誌に名前のみが登場する。
映画版の小中には「激昂すると拡声器を取り出して、博多弁で捲し立てる癖」があり、口調からして福岡県辺りの出身者と思われる。何たる皮肉かDL6号事件の真犯人からは捨て駒扱いを受け、逮捕後に留置所での食事に毒を盛られて殺害される事となった。