概要
『逆転裁判』第2話『逆転姉妹』に登場。登記名は『株式会社コナカルチャー』で、多種多様な情報の収集や売買を目的とする。作中では「情報処理会社」と名乗っているが、有り体に言えば「大きな探偵会社」である。アニメ版では「情報調査会社」とも言われていた。社名に関して小中は「小中とカルチャーを掛けていてオシャレだろう」と自画自賛しているが、一言で言うと「ダサイ」と言う他ない。
都心に20階（アニメ版では50階）建ての本社ビルを構えている。外観は割と普通なのだが、内装は社長の小中による「下品ゴージャスと呼べる、気分を害する程の悪質な成金趣味」が大いに反映されていて、最上階にある社長室はその極致である。作中では社内は社長室しか登場しないが、小中の趣味嗜好からして、他の部屋も「目の毒と言っても差し支えない内装」に仕上がっているのは想像が付く。訪問するのは勿論、どんな内装なのか想像するのも嫌になる会社である。
映画版では、小中は原作での最初の職業であるジャーナリストを続行していることから『コナカルチャー』は開設すらしておらず存在しない。
関係者
小中大
創設者にして社長。起業以前は一介の雑誌記者をしていたが、15年前に特大スクープを入手して、世間に大々的に報道した事で大きな社会的成功を収め、情報の売買に味を占めた事で現在の職業に転職した。恐らく「前述の立身出世が切っ掛けで、自分の力を誇示する目的も兼ねて成金趣味に目覚めた」のだろうが、それにしたって「悪趣味の上塗りと断言出来る実態」を見るに「出世以前から、お世辞にも誉められた趣味の持ち主ではなかった」のかもしれない。社長室に飾られたトロフィーや賞状も『特別残念賞』等の功績なのかも解らない様な物ばかり。
アメコミのヴィランの様な濃い顔立ちに、マッチョな体型を併せ持ち、笑みを浮かべる時は無駄に美白された歯をぎらつかせる。全身ピンクのスーツの各所に煌びやかな宝石類を鏤めており、両手の親指を除く8本の指にゴツゴツとした指輪を嵌めている。自慢する時は「指輪を主点に、全身の成金趣味全開の装飾品」を誇示して輝きを放つ。公式イラストでは目が痛くなりそうな位、全身にキラキラと言うより、ギラギラとしたオーラを纏っている。アニメ版では本社ビルの看板に自身の写真をでかでかと掲げており、総じて自己顕示欲の強さが垣間見える。
英語交じりの口調が特徴で、敬称として相手の名前の前に、男性なら「ミスタ」、女性なら「ミス」を付けて呼ぶ。小中本人によると「アメリカ暮らしが長かったので日本語が苦手」との事だが、日本語でも英語でも言葉遣いの間違いを頻発していて、聞いている方が恥ずかしくなる程、愚かしい話し方をする。彼の語学力では短期旅行は可能でも、長期滞在は土台無理であろう。「アメリカ暮らしが長い」という話も嘘であり「自慢目的で意図的に、英語交じりで喋っているだけ」の可能性が高い。
実写映画版では原作からの設定変更に伴い容姿や人物像が大幅に変更され、如何にも悪質ジャーナリストといった感じの「黒ずくめの怪しい中年男性」と化して、ヨレヨレの黒い長髪でサングラスを着用しており、「下品ゴージャス」とは正反対と言える。
松竹梅世
社長秘書。「魔性の女」とも呼ばれ、秘書でありながら多くの実務もこなしており、業務の主軸である情報収集を目的に、各地に潜入しては狙った男性を色仕掛けで虜にして、情報を引き出すのに長けている。23歳と新社会人の年齢からして大卒であるならば、入社から半年も経たない内に現在の地位に就いたと思われる。反面『コナカルチャー』は営業手段を選ばない大企業なだけに「社長のお気に入りになれる位の実力の持ち主であれば、どんな年齢でも入社も出世も可能」なので、高校時代もしくは大学時代から正社員は勿論、暫定アルバイト等の形で既に勤務していた可能性もある。
ピンクのセミロングヘアを靡かせ、巨乳と美脚を兼ね備えたグラマーな美女。胸元を大胆に開いた小中と同色のピンクのボディコンスーツ、大きなスリットの入った白いミニスカート、赤いピンヒールというナイスバディを惜しげもなく強調するような露出度の高い服装が特徴。多数のハートの装飾品を愛用し、全身の各所に身に着けている。潜入先によって異なる服装をすることがあり、公式イラストではナース服を着た姿がお披露目されている。自分の美貌と色香を誇示するのを好み、胸を揺らしたり、バスタブで美脚を上げて入浴する等のセクシーアピールで男性のリビドーを刺激するのが得意。「典型的なワガママなぶりっ子」を突き詰めた様な性格と口調の持ち主で、時に腹黒い本心や粗暴な一面が言動の節々から垣間見える。普段は猫手の様なポーズをしている。好物はワイン。趣味はテレビドラマ鑑賞。
小中と共にビジネスホテルに宿泊していた事から、彼とは愛人関係にあったとも思われるが詳細不明。もっとも2人の人間性や会社の内情からして「あくまで利害関係の一致から協力関係を強化する為に、恋仲になっているだけ」なのかもしれない。
実写映画版では原作からの設定変更に伴い『AKB48』をモデルとしたアイドルグループ『TAR69』のメンバーであり、雑誌に名前のみが登場する。こちらでもやはり「ナイスバディで人気のアイドル」として名が通っていると思われる。
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以下ネタバレ注意
情報処理会社の実態
表向きには「情報の収集、売買を行う」とあるが、その実態は「政財界や司法界の権力者、富裕層の人間を中心にターゲットに据えて、ありとあらゆる手段を用いて相手の弱味となり得る情報を入手し、それを脅迫材料に用いては多額の金品を奪い取って、私腹を肥やす『逆転』シリーズ屈指の悪徳企業」である。本社の業務の三大主軸となる「①相手の弱味となる情報の収集」「②情報を悪用しての脅迫で相手を隷属させる」「③脅迫した相手から高額の金品を巻き上げる」これらを行う上では全く手段を選ばず、違法行為にも積極的に及んでいる。上記の「小中のみみっちい受賞歴を物語る表彰品の数々」も、主催者を脅迫して無理矢理に創設させた賞であろう事は想像に難くない。正に「冷酷非情にして卑怯千万」と呼ぶに相応しい営業姿勢を持つ。アニメ版では「蜘蛛の巣に掛かった蝶が捕食されかけるシーン」が、さながら上記の性質を可視化したイメージの様に挿入されている。
梅世のナース服も、単なるサービスイラストではなく「彼女が情報を探り出す為の潜入捜査＆標的男性への色仕掛け目的に用いた物なのは確実」と見て良い。事実『オフィシャルファンブック』では「かつて病院に潜入した時のもの」と明確に但し書きがなされている。会社の内情からしても「梅世の凶暴な本性も、強力な脅迫の武器として有効活用されて来た事」も確実であろう。新社会人に当たる若輩者の梅世のスピード出世も、前述の通りに「彼女が美貌と才能を存分に活かして、会社に大きな貢献を果たして来た所以」と見て間違いない。
『コナカルチャー』は「徹頭徹尾、創設者にして社長である小中が、思うがまま私利私欲を貪る為だけに設立し、経営している会社」なので、この会社を取り引き相手にして「無事に文字通り、情報の売買だけを取り行う事が出来た客」は、まずいないと見られる。『コナカルチャー』は悪徳企業として有名なので「この会社と何らかの取り引きや交渉を行った事自体が、新たなターゲットの脅迫材料とされてしまう結果に陥る」のは明白である。「高確率で『コナカルチャー』を都合良く利用した上で、無事でいられる権力者」と言ったら『逆転検事2』に登場した『検事審査会』の会長・一柳万才位であろう。
しきりに小中は「政財界の奴らも司法界の奴らも皆、僕の言いなりなんだ！」と豪語していたが、自己保身を視野に入れた上で悪行三昧を行い、犯行開始から失脚するまでの15年間も逃げ延びて来た事を考えると、流石に万才を始めとした「自分を凌駕する巨悪には刃向かわない、身の振り方をしていた」と思われる。「各界の上層部にいる権力者は皆、僕の言いなり発言」も小中の小物ぶりを見るに、彼が正確に現状を認識しての発言ではなく『逆転』シリーズに登場する「正真正銘のトップクラスにいる巨悪の権力者達には“わざと泳がされていただけの現状”を自分に都合良く勘違いし、増長していた道化に過ぎない」と指し示していた様に見える。
「自分の隠れ蓑、便利な情報屋」等として利用する為に「小中の思い通りに動いている人物を演じて、彼を騙して利用している権力者」も何人かいたと思われる。多方面に強欲かつ非常に狡猾な万才は、その筆頭候補に挙げられる。そういった手出しの出来ない程の悪辣な人物だけが、金儲けの為ならば手段を選ばない小中には「文字通り、情報の収集や売買の取り引きだけして、危害は加えない特別な顧客」として扱われて来たのだろう。なお後述の場面では「小中が当時の検事局長に連絡して協力を取り付ける光景」が描写されているが、万才はDL6号事件当時は検事局長であったが、彼は『1』の時点で『検事審査会』の会長に昇進しているので、この検事局長は別人である。その証拠に小中から急用を言い付けられた当時の検事局長は、彼を「君」付けで呼んではいるものの、明らかに万才とは性格も口調も異なり、小中に怯えて狼狽し言いなりになっている。万才であれば、権威でも知能でも精神力でも小中を圧倒しているので、両者が深く関われば「万才に小中が一網打尽にされる結果に至る」のは火を見るより明らかである。
情報処理会社の経歴
創設の経緯
全ては2001年の年末、かのDL6号事件が発生した事によって始まった。この殺人事件は「現場は裁判所、容疑者は法廷係官、被害者は弁護士という極めて特殊な事件」であった。年明けの2002年から警察の捜査が活性化するも、事件の特殊性から世間に向けての情報公開も出来ず、幾ら捜査をしても決定的な証拠は見つからず、捜査は暗礁に乗り上げた。この難局にある状況を打破する目的から、ついに警察は「禁じ手と言える手段」を選んでしまう。それは政財界とも強く結び付いている「名門霊媒師一族・綾里家の霊媒師に被害者の霊媒をさせて、真犯人の名前を聞き出す」という手段だった。雇用する霊媒師には綾里一族の族長に当たる『倉院流霊媒道』の家元・綾里舞子が選ばれた。警察の依頼を引き受けた舞子は彼らに命じられるまま、被害者・御剣信を霊媒し、彼の口から「私を殺したのは法廷係官・灰根高太郎」という情報を獲得した。
こうして被害者自身の証言だけを頼りに、灰根は容疑者として逮捕される事となり、彼の担当弁護士には生倉雪夫が着任した。その後ようやくDL6号事件の裁判が開始された。当初は他ならぬ被害者自身の証言により、最有力容疑者とされた灰根の有罪は確定すると思われた。しかし生倉は「灰根は心神喪失状態にあり、極限状態に耐え切れずに暴走して、誤って信を殺害してしまった」との弁論を主張し、灰根には無罪判決と引き換えに、強制的に精神異常者を演じさせた。その結果、灰根は社会的地位を失うが、辛くも無罪判決が下されてしまい、舞子の霊力に頼っての極秘捜査は失敗に終わり、事件は迷宮入りとなってしまう。この時点でもDL6号事件は甚大な惨状を招いていたが、それを更に激化させて多くの関係者を生き地獄に突き落としたのが、他ならぬ小中である。
当時は20代半ばの一介のジャーナリストだった小中は「生倉の所属していた『星影法律事務所』の所長にしてベテラン弁護士・星影宇宙ノ介なら、極秘捜査の事を何か知っている筈」だと睨み、彼に大金を支払って目当ての情報の不正入手に成功する。直後に小中は「綾里家の霊媒師・舞子の霊力を使っての極秘捜査は失敗し、無実の人間だった灰根を告発した挙げ句、人生を崩壊させた」とマスコミにリークし大々的に報道させた。「元々は秘匿にされて来た有名事件の実態、警察と綾里家の歴史的な過失」が克明に報じられた事は国中を震撼させ、警察と綾里家は大規模なバッシングを受ける羽目となった。
アニメ版では「当時の小中の動向」に変更が加えられ、星影には「要求に従わないと、お前の事務所を潰す」と脅迫し、これに屈服した星影から無理矢理、極秘捜査に関する情報を奪い取っている。また生倉が裁判で確実に勝訴するべく『コナカルチャー』から「綾里家の霊媒師に協力させての極秘捜査の失敗の結果、灰根は誤って起訴されてしまった極秘情報」を買い取り、それを法廷弁論に用いる事で強引に無罪判決を勝ち取り、綾里家に対する風評被害を更に拡大させる惨状を招いた。泣く泣く脅迫に屈して情報漏洩を犯した罪にも付け込まれ、15年間も主な恐喝の被害者とされた星影と違い、生倉の方は「小中との交渉は極秘情報を買い取った際の1度切り」で終わり、脅迫被害を受ける事は無かった様だ。当時は既にベテラン弁護士に成長していた生倉は、たった1回の情報売買を通じて、小中が満足するだけの多額の報酬を支払えたのだろう。もしかしたら生倉は「綾里家の極秘捜査失敗を世間に広める計画にも手を貸す」という条件も提示する事で、小中の被害者にされる危険事態を回避したのかもしれない。何にせよ生倉は「小中とは文字通り情報の売買だけを行い、彼に見逃して貰えて無事でいられた貴重な客の1人」に加わったのは確かであろう。
特に望まぬ形で歴史の表舞台に初登場した、綾里一族への誹謗中傷は熾烈を極め、あっと言う間に名門一族は没落してしまい、貧窮にまで苦悩する身の上へと変わり果てた。家元の舞子自身は完全に失脚し、世間からも一族の人々からも「綾里家衰退の元凶」と評され、終わりが見えない非難轟々に疲弊した彼女は、幼い2人の娘を故郷『倉院の里』に残して失踪してしまう。この時、長女の綾里千尋は13歳、次女の綾里真宵は3歳であった。千尋は一連の事件を「母を破滅させた事件」と呼び、その真相を追い求める為に申し分ない霊力を封印し、次期家元の座を捨てて弁護士を志す様になる。姉が放棄した次期家元の継承権は、新たに妹の真宵に託された。
綾里家の没落とは裏腹に「DL6号事件の実態」を暴いて世間に公表した事で、小中は絶大な権力と巨万の富の一挙両得にも成功した。その結果「情報を悪用して利益を得る犯行」に味を占めて、ジャーナリストを退職。情報処理会社『コナカルチャー』を創設し、その社長に就任した。それ以降は自分に誘惑されて、極秘捜査に関する情報漏洩を犯した星影を「犠牲者・第1号」として、情報漏洩の失態を脅迫材料に用いて15年もの間「押しに弱い、裕福な権力者である星影」から多種多様な金品を巻き上げて来た。最近でも「星影の愛蔵品だった、時価4億円相当の『夕暮れ時の釣り人の名画』を脅迫により強奪し、自慢の逸品として社長室に飾る」という罪を犯している。
15年間もの繁栄時代
次第に小中は「星影と同類の被害者」を全国各地に爆発的に増加させて「悪趣味な成金としての豪遊人生」を謳歌する。彼の醜い欲望の為だけに犠牲者とされた人々は「脅迫や恐喝に耐え切れず、自殺に追いやられた人物」だけでも数え切れない程いる。舞子同様、社会的抹殺に追い込まれた被害者の数もまた然りである。小中による「“自分という黒幕の職業を利用しての悪事”に影響を受けた結果、人生を狂わされたり、間接的に殺害されたりした者を含む、被害者の総数が桁外れに多い点」は奇しくもDL6号事件の真犯人と共通している。真犯人と比較すると小物とは言え、小中は国中の政財界や司法界の大物達をも脅迫によって屈服させて行った事で「この国を影で操るトップは僕自身」という誇大妄想、自己顕示欲にも浸っていた。この間に松竹梅世が入社しており、DL6号事件当時は小学生の少女だった彼女も蠱惑的な美女に育ち、入社から半年も経たない内に社長秘書の地位にまで昇り詰めて陰では「魔性の女」と呼ばれつつも「小中のお気に入りの部下」に加わった。そんな多岐に渡る欲望を思い通りに満たす生活に「待った」を掛ける人物が初めて現れた。母の仇討ちの為に優秀な弁護士へと成長を遂げた、綾里千尋である。
千尋は里を出奔する前、自分で「母を破滅させた事件」の関係者の霊媒を行い「極秘捜査の情報漏洩の犯人は小中と星影」と突き止めると、名門大学の法学部に通った後に弁護士に就職し、新人時代は星影の事務所に所属して2人の犯人の事を探っていた。そして独立から数年後、血の滲む様な努力の果てに、小中を失脚に追い込める決定的な証拠品『脅迫被害者の名前リスト』を制作したのだ。彼女は親交ある人々に心配を掛けたり、小中から危害が加えられるのを回避する為、誰にも内密で独自捜査を行って彼を告発する準備を進めていた。ところが以前から「自分の背後に迫る千尋の存在」に気付いていた小中は、先回りして彼女の経営する『綾里法律事務所』に盗聴機を仕掛けて動向を知ると、千尋を口封じの為に殺害する事を決意。秘書の梅世に「共犯者になれ」と命令を下し、千尋を殺害して『脅迫被害者の名前リスト』を強奪する犯行に踏み切るのであった。
美人弁護士殺害事件(『逆転裁判』第2話『逆転姉妹』)
小中と梅世は、事件を起こす数日前から『綾里法律事務所』の向かいにあるビジネスホテル『板東ホテル』に宿泊し、盗聴も続行しつつ「千尋を殺すのに最適なタイミング」をうかがっていた。それから数日後、深夜の事務所に1人で残っていた千尋が、電話で「今から一緒にラーメンを食べに行く約束」を妹の真宵と交わした直後、小中は単身で事務所に押し入り、今は機械が抜き取られて代わりに『脅迫被害者の名前リスト』が入った『考える人』の置時計で千尋を撲殺。目当ての『脅迫被害者の名前リスト』も強奪した。その後は「これから事務所を訪れる真宵に姉殺しの罪を着せる目的」で現場工作に及び、梅世には「ホテルの窓から千尋殺害の経緯を見ていた目撃者」を演じさせ、わざと彼女に通報させる事で、真宵が「千尋殺害事件の容疑者」、身も蓋もなく言ってしまえば「姉殺しの妹」として逮捕される様に仕向けた。この時に梅世はアリバイを作る為、事件発生の21:00きっかりにルームサービスでアイスコーヒーを注文し、ボーイ長に接吻して印象付けた。
真宵が千尋殺害の嫌疑で被告人となった裁判が開廷されると、小中の命令に従って梅世は「事件の目撃者」を装って偽証を働き、真宵を有罪判決へと導こうと図るが、千尋の弟子である新米弁護士・成歩堂龍一によって「綾里姉妹の会話を盗聴していた犯行」を立証され、緊急逮捕されてしまう。最初は梅世だけを表舞台に立たせて、自分は雲隠れする事を計画していた小中だったが、綾里姉妹を救おうと懸命に捜査を進行する、成歩堂が事件の真相に辿り着き『コナカルチャー』を訪問した時「告発してやる」と宣言される。すると小中は、その場で自分に隷属する当時の検事局長に連絡し、今度は成歩堂を「千尋殺害事件の容疑者」に仕立て上げ、自分も「事件の目撃者である証人」を騙って出廷しての偽証を行い、成歩堂の担当弁護士には自分の息の掛かった人物を指名する事で、彼を破滅させようと企んだ。
完全勝利を確信した小中だったが、成歩堂が「自分で自分の弁護を行うという奇策」に出た所から目論見が崩れ始める。「元々、何かしら卑怯な方法を利用しなければ悪事も満足に出来ない位、知能が低い本質が丸見えの失言」を連発し、喋れば喋る程、自ら墓穴を掘る無様な姿を公衆の面前で晒した。こんな体たらくが災いして、呆気なく成歩堂にも追い詰められてしまい、天才と名高い担当検事・御剣怜侍の助力をもってしても、庇護し切れないまでの窮地に達した。最終局面では成歩堂の助手を務めていた、真宵が初めて霊媒に成功し、千尋の霊を自身に憑依させて現世に呼び戻した。こうして蘇った千尋は、生前から丸暗記していた『脅迫被害者の名前リスト』を即席で復元し、成歩堂に手渡すと「あなたは、もう裁判に勝っている。リストに書かれている名前を声に出して読みなさい」と指示した。彼女の指示に従い成歩堂が次々と「被害者達の名前」を音読すると、さしもの小中も「自分が最も恐れていた事態に陥りつつある事」を察知して、悲鳴を上げて必死にリストの名前の音読を阻止しようとする。
小中はプロの脅迫者だからこそ「脅迫は秘密裏に行われてこそ、真価が発揮されるものである事」「自分が誰を脅迫しているかを世間に公表されては、自分の魔手から逃れた被害者とその関係者による、残酷な復讐を招く危険性がある事」「最悪の場合は関係者を通じて、裏社会の人間からも命が狙われるかもしれない事」を人一倍、熟知していた。錯乱する彼に千尋は「このリストを公表されれば、あなたの破滅は決定付けられるでしょう」と言い放った。その言葉で社会的にも精神的にも、致命傷を負わされた小中は「恨みを買った相手に惨殺されるという最悪の最期」だけは回避したいと願い、とうとう観念して「僕が千尋を殺した」と認めて逮捕されたのであった。
悪徳企業、破滅の時(『逆転裁判』第2話『逆転姉妹』)
小中は逮捕を契機に失脚し、今までの悪事も全面的に世間に公表されてしまい、会社も倒産して再起不能となり、今度は自分自身が破滅の時を迎えるに至った。一応、直接的に殺害したのは千尋1人に限られるが、彼の莫大な罪状からして「死刑または終身刑」となる可能性は極めて高い。梅世も後々には釈放されたものの「有名な凶悪犯の協力者」として名が知れ渡ってしまった以上「肩身の狭い思いをする人生」から解放される見込みは薄い。彼女と違い、逮捕を免れた社員達も「事実上の前科持ち扱い」を受け、路頭に迷う生活を送っている事だろう。梅世も含めた社員達は皆「平然と私欲の為、社長の小中と共謀しての犯罪行為も働き、彼と同じ様に恐喝を元にした、豪遊生活を堪能していた共犯者」なので同情の余地は無い。「脅迫者として歴史に残る転落劇」を演じた小中の模倣犯も、完全に経営破綻した『コナカルチャー』の再興を目指す者もいないであろう。
『逆転』シリーズには『コナカルチャー』の他にも「所属者が殺人を犯す、大スキャンダルが巻き起こった企業」が大小共に幾つも登場し、代表的な存在としては『英都プロダクション』と『タチミ・サーカス』の2社が挙げられる。しかし、この2社は人事に関しては「極一部の問題人物は除いて、多少の難はあれど悪人に該当する者は存在せず、凶悪犯は即座に叩き出す構造」となっている。業務内容も「人々を喜ばせる事を目的として、娯楽提供に徹するという良心的なもの」であり、会社の内情は良い意味で『コナカルチャー』とは正反対である。だからこそ多くの人々に愛されて、社会からも必要とされる企業と高評価を受けて、トラブルが起きる度に救いの手を差し伸べられて、順調に復興を遂げて来たと想像が付く。
この2社に反して『コナカルチャー』は会社の内情からして善人の所属者は皆無で、何ら社会や人々の役にも立たない、正に「百害あって一利なしを地で行く、疫病神と言える悪徳企業」である。その悪行の代償として、小中にとっては「自分が王として君臨する夢の王国」だった『コナカルチャー』は、かつての綾里家の様に徹底的に世間から糾弾され、跡形も残さず崩壊してしまったのだった。
今回の事件は「美人弁護士と名高い千尋の殺害」「それを皮切りに明るみに出た情報処理会社の実態」「他ならぬ被害者である千尋の霊が、真宵に霊媒される形で現世に舞い降りる」「情報処理会社の社長・小中も自らの悪行が暴露されて失脚」「それを暴いたのは本件で2度目の勝訴となった、千尋の弟子にして新米弁護士・成歩堂」と話題性も重大性も非常に多大なものであった。やがて3ヶ月後には全ての元凶DL6号事件も解決された事で、更に世間からの注目も急上昇したのは間違いない。それも踏まえて「美人弁護士殺害事件」は世間の話題をさらうには十分過ぎる話であった。
余談
社長室の調度品の行方(『逆転検事2』第4話『忘却の逆転』)
『逆転検事2』第4話『忘却の逆転』では、一柳万才が会長を務める『検事審査会』によって開催される、歴代事件の証拠品や関連品を競売に掛ける『闇オークション』の実態に迫る展開となる。競売品は開催地『ビッグタワー』51階の倉庫に一纏めにされた上、無造作に置かれた状態で保管されている。そこでは『コナカルチャー』の社長室にあった「小中の肉体を象った黄金のデスク」「ギリシャ神話の神アトラスが地球を背負った姿を模した小中の銅像」もあった。どうやら『コナカルチャー』の倒産後「有名な凶悪犯が職場に飾っていた調度品だから、すぐに買い手が付くだろう」と見越して引き取ったは良いものの、余りにも悪趣味で使い所が見つからないデザインが災いして「美人弁護士殺害事件」から既に3年も経過しているのに、購入者が一向に現れない模様。
『夕暮れ時の釣り人の名画』も安置されていたが、こちらは本来の値段（時価4億円）からして、購入費が数億円は必要となる高額品であるが故に、どうしても買い手が付かない状況に陥っている可能性が高い。なお『闇オークション』の主催者は「情報処理会社の実態」の項目にて「高確率で都合良く『コナカルチャー』を利用している、悪辣な権力者の筆頭候補」としても名前を挙げられた万才であった。全ての競売品は『闇オークション』の関連事件の解決後、警察に押収されて「各事件の記録に役立つと判断された品」以外、廃棄処分されたと思われる。「小中の欲望と栄光の残骸と化した調度品」の末路も空しいものである。
社員の名前の由来
「小・中・大」と「松・竹・梅」という、大きさや等級の単位に由来する名前を持つ「小中大」と「松竹梅世」であるが、プロデューサーの巧舟によれば「小中も梅世も共に、テストシナリオ用に仮で付けられた名前が、そのまま製品版に採用された」との事。作中では2人以外の社員は登場していないが、巨大企業で業務内容からしても、他にも大勢の社員がいる事は確かだろう。彼らもまた「三拍子揃った名前の持ち主」である可能性は高いと見られる。因みに、1人ずつ割り当てられた形ではあるが『大江戸戦士トノサマン・丙!』の主役「トノサマン甲・乙・丙兄弟」も三拍子揃った名前の持ち主に該当する。
『逆転裁判3』第3話『逆転のレシピ』に登場したコンピューター会社『バグダス』も「社長・小池ケイコも含めた社員全ての名前が、一定の法則に基づいて命名」されており、こちらは「回文」となっている。
