曖昧さ回避
『逆転』シリーズでは『板東ホテル』及びその後身である『ホテル・バンドー・インペリアル』のボーイは2人登場している。
- 1.『逆転裁判(無印)』等に登場する若い男性。
- 2.『逆転裁判2』に登場した初老男性。
商魂逞しい出世頭(1の概要)
「おかげさまで、当ホテルはこれから、ビッグになりますので」
「あんなお美しいレディですから‥‥お連れ様が羨ましゅうございました」
声:不明(アニメ版)
『逆転裁判』第2話『逆転姉妹』に登場。年齢26歳。身長172cm。本名不明。
『成歩堂法律事務所』の向かいにある、ビジネスホテル『板東ホテル』のボーイ長。メッシュが入ったオールバックの髪型に、ベージュを基調としたクロスタイの制服を着用し、「いつ如何なる時でも、お客様の喉を潤せる様」右手には常にティーセットを持っている。ホテルマンらしく、尊敬語主体の丁寧な口調を崩さず「モチのロン」等、気取った言い回しをする事もある。御剣怜侍からは「ボーイのイメージに忠実な男」と称された。
美女客の部屋で(『逆転裁判』第2話『逆転姉妹』)
綾里千尋殺人事件の折、宿泊客である松竹梅世が宿泊する303号室にルームサービスを届けに来た所に偶然、彼女から聞き込みをしようと再び訪れた成歩堂龍一と出くわし「『コナカルチャー』の小中という人物から電話があった事」を託ける様に頼み、その場を退室した。その時に成歩堂には「どうぞごゆっくり。おたのしみを‥‥」と意味深に呟いていた。
丁度その時、梅世は入浴中で、こちらに気付いておらず、その隙に成歩堂がドライバーが挟まっていた引き出しから、盗聴器を発見している。直後バスルームでトレードマークの美脚を上げる梅世は「ボーイさぁん。まだいるのぉ?」と呼びかけるが、ボーイ(と成歩堂)は今しがた部屋を後にしていた。
翌日の裁判にて担当弁護士・成歩堂の手引きで、勤務中にもかかわらず証人として召喚されると「梅世のチェックインを担当しており、その時に彼女の美貌に取り入り、ルームサービスのアイスコーヒーをきっかり9時に運んだ時、接吻を貰った事」を話し、梅世がアリバイ作りで自分を印象付けようとしていた事も露知らず「きっとワタクシにホの字だったのではないかと」と、赤面しながら鼻の下を伸ばして惚気気味に語る。彼自身は事件当時、いつも通りに接客していたに過ぎず、現場を見ているわけでもないので、証言で嘘をつく理由など存在しない。しかし、この時いた「もう1人の宿泊客の存在」は検察側から口止めされており、成歩堂の追求を受けて、その事をうっかり話してしまった時は担当検事・御剣から「この‥‥バカボーイが!」と罵倒された。
丸儲けのブルース
更に翌日、ホテルを訪れた成歩堂に303号室を「殺人犯が盗聴に使っていた部屋」、自身を「殺人犯に茶を運んだボーイ」、更にホテルそのものを「殺戮の館」として売り出し、事業拡大しようとしている事を話しつつ、改めて「宿泊客の男こと小中大に関する情報」を宣誓書として纏めている。その上あれだけ取り入っていた梅世に対しては、彼女が逮捕されるや手の平を返して「一目見て私はこう思いました。この人は、やる!と」と成歩堂に自慢気に語った。そして数十分後、鼻歌を歌いながらバスルームを掃除していた。ちなみに梅世は真犯人の共犯者ではあったが、命令されて盗聴や偽証を働いただけなので殺人は犯していない。
この様な「事件を利用し、ホテルを発展させようと画策する」という思考や『丸儲けのブルース』なる鼻歌のフレーズ等から、商魂逞しさが窺える。成歩堂は「今回、一番の危険人物は、こいつなんじゃないか?」「悪い夢を見ているみたいだ。‥‥ぼくも、コイツも」とやや引き気味だった。
『蘇る逆転』の攻略本でも「如何にボーイが危険人物であるかを、雄弁に物語る説明文のオンパレード」だった。「礼儀正しいホテルのボーイは、実は危険な目立ちたがり屋」「見かけは一番まともだが、その脳内はある意味、一番危険」「一見、至極まともだが、会話を進めるにつれ、その壊れっぷりが解って来る」本当にそうとしか言い様がない人物である。
法廷にティーセットを持ち込んだ男
『蘇る逆転』の攻略本では、脚本家の巧舟は「『1』の証人の中ではボーイが一番のお気に入り」とコメントしている。また初期のシナリオではホテルのみの登場だったが、シナリオの変遷に伴い急遽、証人に加わる展開となり、新しい画像を制作する暇が無かった為、ティーセットを持ったまま入廷する事となった。これを切っ掛けに「現実の法廷では禁止されている、私物を持ち込む証人達」というシリーズの恒例の1つが生まれた。今やボーイは、その先駆者に当たる存在である。
「ボーイの後に登場した、私物を持ち込んだ証人達」には『1』では特撮キャラグッズ、キセル、弁当箱の詰まったバスケット、髭剃り用のナイフとスキットル、科学薬品、『2』では湯飲み、腹話術の人形、ペットの小鳥、光線銃、『3』では日傘と蝶々、升に入れた豆、画材道具を持ち込んだ面々が続く。「現実の法廷で持ち込んでも問題視されない物」は『2』で登場したレースのハンカチと手帳位だろう。
アニメ版
法廷に立つ事も無ければ、出番自体も非常に少なく、ほぼモブキャラに近い扱いを受けている。第1期・第2話では、梅世の宿泊する303号室にルームサービスを届ける時に丁度、同室から退室した成歩堂とすれ違っている。その梅世は先程、入浴中の所をバスルームのドアから自慢の美脚を覗かせて、ルームサービスで注文したワインを運ぶボーイのリビドーを刺激しようとしていた。第3話ではフロントで成歩堂から「もう1人の宿泊客」について聞き込みを受け、小中に関する情報を話した。その際に冒頭2行目の台詞を発言している。原作では、2日目法廷での「チェックインのこと」を選んだ際の発言に近い。
検事局に茶を運ぶ支配人(『逆転裁判』第5話『蘇る逆転』)
その後、「美人弁護士殺害事件」及びその元凶たるDL6号事件の解決によって、ホテルの経営陣の期待を遥かに上回る注目と収益を集めたことと、前述の事業拡大が功を奏してか、後に『板東ホテル』は『ホテル・バンドー』に名称を変更し、事業の中心地となる超豪華ホテル『ホテル・バンドー・インペリアル』へと大いなる発展を遂げた。後述の『2』の最終話である『さらば、逆転』では、芸能界の一大イベントの開催地にも選ばれる名誉をも得るに至った。彼もボーイ長から支配人へと昇格しており、事件を通じて生じた縁から、成歩堂には年賀状や暑中見舞いを度々送っている。その反面『1』のエンディングでは、やや見下しているようで、彼について聞かれると「ワタクシが宣誓書を書いてやった弁護士」と、恩着せがましい発言を述べている。この辺は成歩堂の「妙に他人に舐められ易い気質」を支配人にも付け込まれているといった所か。おまけに第5話『蘇る逆転』で成歩堂と再会した時に至っては彼の顔まで忘れていた。ちなみに『4』で成歩堂が弁護士資格を剥奪されて以降、支配人からの手紙は途絶えたらしい。
御剣からは贔屓にされている様で、定期的に検事局の彼の執務室まで、わざわざ紅茶のセットを持って出向く専用の仕事を請け負っている。後日、支配人が御剣の執務室を訪れると、部屋の主である御剣の姿は無く「検事・御剣怜侍は死を選ぶ」の書き置きが残されていた。これを読んだ支配人は寂しそうに落胆していた。『3』の後日談に当たる『逆転検事』での描写を見るに、御剣の復職後は支配人との交友関係も復活した模様である。
バンドーランドでは(『逆転検事』第3話『さらわれる逆転』)
年齢28歳。この時点ではテーマパーク『バンドーランド』を抱えたグループ企業と化しており、彼自身も更に役員に昇格している模様。『バンドーランド』ではプロトタイホくんの着ぐるみを着て園内を回っている。今回では終始一貫して着ぐるみ姿だが、話しかけると支配人その人だと解る会話を展開する。この事から幾ら出世しても、お偉方の仕事から平社員の雑務まで満偏なくこなす、彼はボーイとしても経営者としても、大変優秀な人物である事が解る。「儲かる事に繋がるのであれば、どんな仕事をするのも大好きな仕事人間」なのであろう。
謎に包まれた紳士(2の概要)
『逆転裁判2』第4話『さらば、逆転』に登場。年齢不詳。身長184cm。同話時点で支配人である1のボーイと違い、この2のボーイは今回のみ登場する。
支配人の物と同じ制服を着用しているが、こちらは長身痩躯で柔和な顔に口髭を生やし、ショートヘアの前髪の中央部が白髪に染まっており、顔の中央を縦一文字に走る縫い目、左目に掛けたモノクルと個性的な外見をしている。初老の男性なので「ボーイ」と言うよりは「爺や」という呼称が似合う佇まい。
『ホテル・バンドー・インペリアル』にて、日本一の特撮ヒーローを決める式典、第3回『全日本ヒーロー・オブ・ヒーロー』授賞式と授賞記念パーティーが同時開催される運びとなり、初代トノサマン役として列席した荷星三郎に招待されて、成歩堂と助手の綾里真宵もパーティーの参加者に加わった。そこで御馳走を堪能していた真宵に、今回のボーイは「お電話が入っております」と呼びかけるとフロントまで連れて行った。その直後ボーイは荷星にトランシーバーを渡しており、彼を経由して成歩堂に渡している。アニメ版では該当シーンが「館内放送での呼び出し」に変更された為に登場しない。
それっきり戻って来ない真宵を心配する成歩堂達だったが、直ちに通信が入ったトランシーバーの向こうから彼女の叫び声が聞こえた。そして通信相手からは「真宵が何者かに誘拐された事」を知らされ、同時に授賞式の閉幕直後に発生した「今回の殺人事件の被疑者・王都楼真悟の担当弁護士となり、無罪判決を勝ち取らなければ人質の真宵を殺害する」と脅迫される。王都楼は『ヒーロー・オブ・ヒーロー』に参加する為、関係者一同と共にホテルに宿泊しており、グランプリ授賞直後に被害者・藤見野イサオの殺害容疑で逮捕される憂き目を見る事となった。2人は同期の人気俳優同士だった事から「互いに異常なまでのライバル意識を抱く険悪な敵対関係」にあり、今回の授賞式でもグランプリを巡って争っていた。更には「王都楼が藤見野を直接的に殺害したと示す、複数の証拠品が発見された事」によって「私怨から藤見野を殺害する人物がいるとすれば、王都楼しかいない」と警察に判断されたが故の逮捕だった。
今回のボーイは事件前後に不審な行動を幾つか見せていて、先輩俳優として後輩俳優の王都楼にグランプリ授賞を祝福する言葉を贈ろうと、彼の控え室へと向かった荷星に行動の一部始終を目撃されている。藤見野が殺害される少し前には王都楼の控え室を訪れ、彼からチップと言うには破格の大量の分厚い札束を貰っており、その数分後には藤見野の控え室から何故か手ぶらで退室している。その後は熊好きで知られる、藤見野の控え室から盗んだと思わしき「木彫り細工の熊のアクセサリー」まで王都楼に手渡して姿を消した。王都楼とボーイのやり取りに只ならぬ気配を感じた荷星は、その場で後輩に話し掛けるのを諦めて去り、最終日の法廷では事件当時の2人の様子を証言する証人として出廷した。それから暫くして審理中に明らかになったボーイの正体は‥‥。