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「春美はアタクシの宝物でござあます」


声:津川祝子(アニメ版)


概要編集

逆転裁判2』第2話『再会、そして逆転』に登場。身長165cm(頭込み185cm・頭回り150cm)。年齢不詳だが『2』の時点で47歳となる妹の年齢からして、推定50歳と思われる。『2』の若い女性キャラ限定で3サイズが設定されているが、既に中年に達しているキミ子はその代わりなのか、前述の通り「頭髪関係のサイズ」が事細かく設定された。


『倉院流霊媒道』を行使する霊媒師一族・綾里家の分家の出身者である女性。綾里一族の族長として扱われる『倉院流霊媒道』の家元・綾里舞子の姉で、彼女の2人の娘・綾里千尋綾里真宵の伯母に当たる。綾里春美の母親でもある。「母子家庭で女手一つで娘を育てている点」は姉妹共通だが、妹の舞子は夫とは死別するまで添い遂げたのに対し、姉のキミ子は娘の春美の出産後、間もなく夫とは離婚したという相違点がある。


家元一家に当たる本家の長女としてキミ子は生を受けたが、彼女は「霊媒師を生業とする、綾里一族には必要不可欠とされる霊力」を全く持っていなかった。反面、次女として生まれた舞子は生来、卓越した霊力の持ち主であった。この異例の事態を前に、特例措置として妹の舞子が家元の座を継承し、姉のキミ子は本家から分家へと追放されてしまった。綾里一族の霊力は先祖・綾里供子の血を引く女性にのみ遺伝する仕組みだが、条件を満たしていてもキミ子同様「霊力の欠片すら持たない女児の誕生自体は、ごく稀に起きている事例」となっている。


前述の生育歴や霊力が皆無である事から「分家の人間の中でも特に地位の低い人物」と見なされていた時期もあった。しかし「DL6号事件での霊媒を用いた極秘捜査の失敗」を世間に公表されて「綾里家の没落を招いた元凶」として国中から熾烈な誹謗中傷を受けた結果、故郷『倉院の里』を捨てた家元の舞子の失踪後、彼女の代わりにキミ子は「綾里一族の実質的な指導者」に就任する事となった。妹が残して行った2人の姪・千尋と真宵も母親代わりとなって育てて来た。2人からは「伯母様」と呼ばれる。普段は真宵や春美を始めとする後進の育成にも取り組み、里のマネージメント一般も請け負う。現在では行方不明の舞子から家元の座を継承し、数年後には就任する事が確定した真宵を側近の1人としても支えている。


唯一の家族にして一人娘・春美を溺愛しており、箱入り娘として大切に育てている。普段は娘を「春美ちゃん」と呼び、彼女からは「お母様」と呼ばれる。冒頭の台詞通り、春美を宝物と宣言するのが口癖となっていて『タチミ・サーカス』の団長・立見七百人とは異なる形で愛娘を宝物扱いしていると言える。その一方で「娘には将来、綾里家の未来を背負う優秀な霊媒師になって貰いたい」との願いから、厳しい躾と英才教育も同時進行で施している。まだ10歳手前の幼い少女に課すには厳し過ぎる試練も多い様だが、春美は「お母様は私の為を思って、厳しさと優しさの両面を持って育ててくれる」と心から母を慕い、どんな修行にも懸命に堪え忍んでいる。母親の英才教育にも後押しされて、天賦の才能を開花させた春美は、小学生にして「天才的な霊力の持ち主」との呼び声も高い。キミ子は「天才霊媒師である自慢の娘の才能」を誰よりも高評価しており「あの子の霊力なら本家の人間にだって負けていない!」と豪語するシーンも見られる。


舞子の代役として、綾里家の事実上の指導者を担っているのもあり、日常生活では『倉院の里』を出る事はせず、娘の春美にも「俗世間の汚れを知らないままでいて欲しい」と願う余り、彼女にも「なるべく里から出ない様に」と厳しく言い付けている。こうした生活環境から「外部の人間という時点で他人を快く思えない」らしく、弁護士に就職した千尋の弟子・成歩堂龍一にも、里帰りした真宵に彼の話を何度も聞かされていながら、出会う前から良い印象を持たず、成歩堂本人と初対面した時にも怪訝な態度を取った。「DL6号事件が原因で綾里家は一族揃って、世間から大規模なバッシングを受けた過去を持つ」のも影響しているのかもしれない。


厄介な事に「綾里家や『倉院流霊媒道』に関する知識に乏しい外部の人間」にも一族の仕来たりを強制する悪癖を持つ。綾里家でも重要な立ち位置を占める、姪の真宵や娘の春美を「ちゃん」付け等、砕けた呼び方をしようものなら、発言者には「様付けで呼ぶ様に訂正しなさい!」と怒り出し、白目から眼光を放ちながら睨み付けて厳重注意する。作中では成歩堂が厳重注意を受ける羽目になった。古来より分家の人間は主君として本家の人間を敬い、従属する使命が定められているので、キミ子なりに霊力では上の立場となる姪と娘に敬意を払っている模様。


普段は熟女らしく、年相応に落ち着いた上品な女性として振る舞っているが「怒りや敵意を露わにした時の形相、態度、言動から放たれる恐怖感と威圧感」は凄まじいもので、前述の厳重注意の場面では、成歩堂もキミ子の迫力に圧倒される程であった。娘の春美にも姪の千尋と真宵にも好意的に接しているが、何やら腹に一物持っていそうな雰囲気を漂わせている。


優れた頭脳と冷静な性格を併せ持ち、何が起きようと一切動じずに臨機応変に対応する精神力も持っている。真宵が医師・霧崎哲郎から部下の看護師・葉中未実の霊媒を依頼されて行った「霊媒の儀式」では立会人を務めた。その後「真宵に憑依した未実の霊が暴走して、生前から恨んでいた霧崎を殺害したと見られる事件」が発生するが、この緊急事態でも現場の指揮役を担い、成歩堂にも指示を出して的確な事後処理に当たり、被害を最小限に喰い止めた。霧崎殺害事件から数日後の法廷では、検察側の要請に応じ「事件当時の真宵の行動について証言したい」と名乗り上げ、目撃者の証人となって出廷する。


特徴編集

非常に巨大な結髪が最大の特徴で、髪の右上には桃色の花の簪(かんざし)を挿している。「全体に呪詞が書かれた黒い着物」を身に纏う。アニメ版では作画の都合から面倒と判断されたか、呪詞は省略されて「喪服の様な黒い無地の着物」に変更された。「綾里一族の装束」は真宵や春美が普段着としている着物だが、あれは霊媒師専用の物らしく、キミ子は霊力を持っていない上に「現在の綾里一族の指導者に当たる立場」だからこそ、自分の好みで独自の格好をするのが許されている可能性もある。一方、綾里一族の女性としては珍しく勾玉の首飾りは着けていない。初期案では役柄から「『極道の妻たち』を彷彿とさせる、和服姿の強面の中年女性」として描かれていたが、インパクトを狙って現在のデザインに決定した。


高い知能を持つ冷徹な女性なのだが、その口調は脚本家曰くデヴィ夫人をモデルにした独特の敬語で、どこかコミカルな印象を与える。一人称は「アタクシ」、二人称は「ああた」、語尾には「ござあます」を用いている。現在の外見はキミ子と同じく、巨大な結髪が特徴的な有名人である「塩沢とき黒柳徹子に似ている」と述べるファンも多いが、若い頃はデヴィ夫人と同じく顔の濃い美女だったのかもしれない。


いつも専用の大きな湯飲みを持ち歩き、好物の緑茶を愛飲している。法廷にも湯飲みを持ち込み、証言の合間に堂々とお茶を飲んでいた。キミ子本人曰く「言葉を失う程に苦いお茶、顎がひしゃげる程に甘い大福」を口にするのが趣味。『2』の攻略本のインタビューでは「もしかして甘党?」と質問された際「アタクシとびきり渋いお茶が好みなんですの。甘いお菓子はそのお供でござあます」と答えていた。この回答からは「あくまでも本命はお茶であり、その引き立て役としてお菓子は扱っている事」が解る。


名前の由来は、妹の「舞子」を「My(私の~)」と捉え、それに対する「君」とも言われている。


関連タグ編集

逆転裁判2

再会、そして逆転


逆転裁判・逆転検事シリーズキャラクター一覧


綾里春美

綾里舞子

綾里千尋

綾里真宵















ここから先は重大なネタバレがあります。閲覧にはご注意を!















分家の執念編集

次期家元への罠(『逆転裁判2』第2話『再会、そして逆転』)編集

霧崎哲郎殺害事件の首謀者にして、実行犯・葉中未実の共犯者。今回の殺人事件で真宵を真犯人に仕立て上げ、彼女から次期家元の継承権を剥奪して、春美へと移譲させる事こそが、キミ子の動機にして真の目的であった。


事の発端は、霧崎が院長を務める『霧崎外科医院』に勤務していた看護師・未実が激務に追われる中、医療事故をいつ起こしても不思議ではない程、疲労していた事による。その結果として、彼女は14人もの入院患者の命を投薬ミスで奪ってしまう。医療ミスが報道されると未実は勤務先と院長諸々、世間から痛烈非難を浴びせられ、心身共に完全に疲弊しきってしまう。更には報道から数日後、運転していた車で交通事故を起こし、同乗していた妹・葉中のどかをも死なせてしまった。背負い切れない程の大罪と不幸に耐えられず、未実はもう「自分自身として生きて行く事」すら激しい苦痛と感じる様になっていた。そこで彼女は交通事故の際、姉妹揃って顔に大火傷を負った事を逆手に取り、焼死体に変わり果てた妹を未実だと偽り、のどかの顔写真を提出し整形手術を受けて、事故以降の人生を妹に成り済まして生きて行く様になった。


だが事故から1年後、未実に関する一連のスキャンダルから経営難に喘ぐ霧崎は「真宵に未実を霊媒して貰い、一連の不祥事は全て自分の責任だと認める念書を書かせ、それを世間に公表する事で経営を建て直す」と言い出した。未実はオカルトマニアだった妹のどかに成り済ましていた事で、霧崎自身から相談を持ち掛けられると「霊媒をされたら、世間的には死亡者とされている、本来の自分が生存者だと露見して、これまでの罪状から逮捕される羽目になる」と危機感を抱いた。そして彼女からの極秘相談を受けたキミ子は「真宵に憑依した未実の霊が暴走して、霧崎を殺害した様に見せかける事件を起こし、彼の口封じと同時に真宵を犯人に仕立て上げ、次期家元の座から引き摺り下ろす計画」を考案し、承諾して共犯者に加わった未実と実行に踏み切ったのであった。


表向きは真宵に対して友好的な態度を取っていたキミ子だったが、内心では次期家元の姪を疎ましく思っており、常日頃から「真宵を排除して、春美を次期家元の座に就ける事」を画策していた。霧崎殺害事件を引き起こした理由も「①依然として行方知れずの舞子」「②真宵を率先して守る上、未熟な妹を見かねて次期家元に復帰する可能性も秘める、危険因子・千尋の死亡」「③昨年末のDL6号事件の解決後、開始された綾里家の復興」「④次期家元に確定したものの、未だに霊媒師としては未熟で家元継承に消極的な真宵」といった好条件が揃ったのも大きい。事件の捜査中、成歩堂には「事件現場となった綾里家の『対面の間』にて、舞子の写真を片手に邪悪な笑みを浮かべて「‥‥覚悟なさいな‥‥舞子‥‥!」と一人言を呟き、妹への憎しみを見せていた場面」を目撃されている。


キミ子の思惑通り、霧崎は未実に殺害されてしまい、真宵が容疑者として逮捕される事となった。そしてキミ子自身も真宵の容疑を強化する為、目撃者の1人である証人として出廷する。この裁判では担当弁護士・成歩堂は「母キミ子が逮捕される所を春美に見せない為にも、閉廷するまで春美に千尋を霊媒させておく事」も視野に入れた上で千尋に助手を任せた。聡明な千尋からも「伯母様はとても頭が良いわ」と評価と警戒を同時にされる程、キミ子自身の証言には隙が無かったが、後に続いた肝心の未実が偽証に失敗。成歩堂に犯行と正体を暴かれた彼女の共犯者として、キミ子は逮捕された。


「母・舞子の失踪から今回の事件に至るまで、自分達の世話役をも担って来た伯母の裏切り」に綾里姉妹は大変ショックを受けた。事件以前から姉・千尋も妹・真宵も「キミ子の隠し持つ本性と真意」は薄々は察しており、姉妹で異なる反応を見せた。最終日の閉廷後、真宵は「どうして伯母様はあんな酷い事をしたの?」と成歩堂に疑問を述べ、彼は「溺愛している娘を家元にする為だった」と回答した。それを聞いた真宵は動揺を見せた直後、悲し気に俯いて「やっぱり‥‥」と小さな声で呟いた。


千尋に至っては真宵に憑依して、留置所で成歩堂と会話した時に「真犯人は誰なのか心当たりはあるのか」と問われると、サイコ・ロックまで発動させてキミ子への疑惑と言及を避けようとした。今回の事件関係者の中では、真っ先に真相を悟っていた千尋だったが、法廷でキミ子の犯行が暴かれるまでは「どうか嘘であって欲しい」との願いを捨て切れずにいた。ここまでして姪の千尋に庇われたり、娘の春美に純粋な愛情を抱かれる辺り「キミ子は表面上ほぼ完璧に、良き母と良き伯母を演じていた事」が窺える。但し「原作であるゲーム版のパラレルワールド」として制作されたアニメ版では、姪の真宵との関係性には後述の変更が加えられた。


今回のエピローグでは『逆転』シリーズの完全な悪役の犯人としては珍しく「逮捕後の収容施設での様子」が描かれた。独房に収容されたキミ子は例の恐ろしい形相となって、モノローグの中で未実を「馬鹿な看護師」と吐き捨て、春美に「チャンスは、きっとまた訪れます。その時まで待つのです」と語り掛けた。キミ子の野望が再燃する日もそう遠くないと示唆する、不気味なラストシーンで今回は締め括られるのであった。


悪女の母(『逆転裁判3』第5話『華麗なる逆転』)編集

今まで公には「春美は一人娘」と語っていたキミ子だったが「実は春美の他にも、美柳ちなみ葉桜院あやめという2人の娘がいる衝撃の事実」が判明する。ちなみとあやめは双子の姉妹で、キミ子と最初の夫との間に生まれた娘達なので、春美にとっては異父姉に当たる。つまり春美は「キミ子の2人目の夫となる再婚相手との子供」だったのだ。キミ子は「自身が子供を持つ悪女」「ちなみという悪女を生んだ母親」という二重の意味で「悪女の母」だった訳である。


結婚適齢期を迎えた若き日のキミ子は「自分の娘を家元にする野望」を抱く様になった。そんな彼女の元に宝石商の美柳という男性が現れた。彼は「繁栄時代だった当時の綾里家の権力目当て」に家元の姉キミ子に接近し結婚を申し込んだ。美柳からのプロポーズを「渡りに舟」と受け入れたキミ子は、綾里家に移住した彼との娘である双子の姉妹ちなみとあやめを出産した。しかし双子の娘達は母親の性質が色濃く遺伝したのか、少しも霊力を持っていなかった。母のキミ子は「ちなみとあやめは野望実現の道具として役に立たない」と見なすと双子の冷遇を始めた。父の宝石商も「綾里家との結び付きを強化する為だけに生んだ2人の娘」に愛情を抱かないまま、母に追従して「家元になれない娘達に利用価値は無い」との理由から、ちなみとあやめを冷遇する様になった。夫は終生、妻のキミ子にも愛情を抱く事は無かった。


こうしてキミ子の家庭は夫婦愛も親子愛も欠落した、双子の屈折した姉妹愛だけが残る、冷え切った家庭となってしまった。それでも強欲な宝石商の夫は生涯に渡って、綾里一族を通じて得られる権力を維持する為、妻との離婚は避けていた。ところがDL6号事件によって綾里一族の権威が失墜すると、宝石商の夫は「こんな田舎にいる理由はもう何も無い」と即座に綾里家に見切りを付けて、妻のキミ子と離婚し双子の娘を連れて『倉院の里』を去って行った。


ちなみは後に当時の家庭事情について「私と妹には霊力が無かった。だから(母親に)捨てられた。父親と一緒にね」と語っている。だが妹のあやめに成り済まして、成歩堂に家庭事情を説明する場面では一転して「母は父に捨てられて2人の娘まで奪われた事で、身も心もボロボロになった。そんな話を聞きました」と述べた。恐らくちなみ自身の本音は前者の意見であり、あやめに成り済ました際の後者の意見は「妹なら、こんな意見を言うだろう」と推測して作った台詞を口にする事で、正体を隠そうと図ったに過ぎないと思われる。実際に本物のあやめは、裁判の終盤にて再会した成歩堂に「自分に成り済ました時の姉ちなみと同様の意見」を語り、母キミ子にも同情的な姿勢を見せている。事実はどうあれ、幼少期のちなみにとっては「母親によって、私は父親と妹と一緒に捨てられた」と見える状況だったのは確かであろう。


こんな惨憺たる状況に陥っても尚、野望を諦められなかったキミ子は離婚から数年後「次期家元になれる優秀な霊媒師の娘欲しさ」に一時的に恋愛関係を持った相手と再婚し、新たな夫との娘となる春美を出産した。前夫との結婚生活で散々、長年に及ぶ嫌な思いをして来た反動もあってか、キミ子は春美が霊媒師としての高い素質を備えていると確認すると、今度は自分から2人目の夫を切り捨てて離婚した。そして母1人子供1人の母子家庭を築くと、娘の春美を絶対的な支配下に置いて「溺愛、洗脳、英才教育の3つ」を施して、彼女が次期家元の座を得る機会を虎視眈々と狙って8年も待ち続けた。そして好条件が幾つも揃った2年前にて、霧崎殺害事件を引き起こしたのであった。


霧崎殺害事件での計画が失敗に終わった場合に備えて、キミ子は以前から考慮していた「真宵の暗殺という最終手段」を実行する為、逮捕直前に極秘で春美へと宛てた『犯行指示書』を書き上げて、自宅の一室に隠しておいた。その指示書には「長女のちなみの死刑執行後、綾里一族の分家筋に当たる寺院『葉桜院』に真宵を修行に行かせ、そこで三女の春美にちなみを霊媒させて真宵を殺害し、その罪を『葉桜院』で尼僧として働く次女のあやめに着せる」という3人の娘全員を道具扱いして犠牲にする、残忍極まりない犯行の指示が書かれていた。真宵を慕う春美に彼女への殺意に気付かれてはならない為、指示書は命令のみを抜粋すると「真宵と一緒に『葉桜院』に行って指定の時間になったら、ちなみの霊媒をして欲しい」とだけ記述されている。


それ以外の文章は、まだ小学生の春美に読ませるには難解な言葉と漢字ばかり並べられ、振り仮名と説明さえ一文字も書かれていない始末であった。最後の一文も「家元に華麗に引導を叩き付けてやりなさい」という、年齢が一桁の児童には確実に解読出来ないものである(「漫画や小説を読んでいるなら、その年齢でも解読は可能」と思うかもしれないが『倉院の里』の状況や育てられ方から、春美の周囲にそれらは無かったと推測出来る)。キミ子は何が何でも計画を成功させたい野心を抑え切れず、直接的な表現を避けた上で「次期家元・真宵の暗殺を必ず成功させなさい」という意味を込めて、この一文を書き添えてしまった。こんな指示書の内容からも「如何にキミ子が春美個人に対する、愛情と関心を持っていないか」が伝わって来る。


「真宵暗殺計画に向けての事前準備」としてキミ子は、自分よりも先に刑務所に入所していたちなみと再会し協力を約束させ、毎月1回は面会にやって来る春美に自分を完全に信じ込ませた上で、ちなみの死刑執行から1ヶ月後、自宅に隠した『犯行指示書』の在りかを教えて春美に読ませ『葉桜院』の修行へと真宵を誘う様に仕向けた。そして3人の娘達にそれぞれ指示を出して計画を実行させた。しかし「真宵暗殺計画」ではゴドーを筆頭に「次から次へと計画を妨害する邪魔者達」が現れる事となった。


ゴドーの正体は千尋の恋人だった弁護士・神乃木荘龍で、彼は千尋と共に凶悪事件を起こして逃亡犯と化したちなみを追跡していた。その結果ちなみは口封じ目的で神乃木毒殺を図るも、一命を取り留めた彼は5年間もの昏睡状態に陥った。恋人の昏睡中、千尋はちなみの告発に成功するも別の事件の犯人に殺害されてしまい、神乃木が覚醒した時には既に故人となっていた。最早ちなみも千尋を殺害した張本人も凶悪犯として重罰が科せられ、神乃木に残された役目は「今は亡き最愛の人に代わって、彼女の妹・真宵を命懸けで守り抜く事だけ」であった。その為には手段を選ばなくなった神乃木は、本来の自分を捨てて「謎の検事ゴドー」へと生まれ変わり、何としてもキミ子の野望を阻止しようと密かに彼女を監視する様になった。ゴドーは霧崎殺害事件から「キミ子の次の手」を予感して、彼女と春美の面会の様子を盗聴し「真宵暗殺計画」を察知すると2人の協力者を集めた。


1人目はあやめで、本来は母の命令を受けて暗殺計画の協力者となった、彼女を味方に引き入れる事により、ちなみとキミ子の裏を掻こうとしての人選だった。実際、事件当夜から霊媒師の体を借りて現世に居座り続け、真宵の命を狙いつつ現地の状況を監視していた「悪霊ちなみの存在」は大きな脅威と化した。「ちなみへの対抗策としてゴドーが提案し携帯電話を通じて、あやめに教えた現場工作を代行させる事でちなみの目を欺く作戦」は何とか成功させられた。その結果ちなみは裁判の最終日、敵対者達から「現在の真宵の居場所という真相」を教えられるまで「私達の暗殺計画は成功した」と勘違いまでしていた。その一方「双子の妹がスパイと言える裏切り者と化していた事実」は最後まで知らず終いであった。


2人目は絵本作家・天流斎エリスに転身し生きていた舞子で、彼女の当初の役目は『葉桜院』の宿泊客を装い、そこで春美を自分に懐かせて足止めしておく事だった。しかし「寺院の奥地で厳しい修行を積む真宵」を心配する余り、春美は舞子の言い付けを破って脱走し、真宵の元へと向かった為に足止めに失敗してしまう。「春美に霊媒されたちなみが真宵を殺害するという最悪の事態」を緊急回避するべく、舞子は「私が身代わりになって真宵と春美を守る」と死を覚悟した上で、ちなみを春美よりも先に霊媒した。舞子に憑依したちなみは真宵を襲撃するが、ゴドーに背中から刃物で刺されて冥界に逆戻りする羽目になり、ちなみに憑依されていた舞子は致命傷を負い命を落としてしまった。その直後ゴドーの指示の下「あやめが舞子の遺体に細工している場面」を『葉桜院』の住職・毘忌尼が運悪く目撃してしまい「あやめが舞子を殺害した」と誤解して通報した結果、殺人容疑であやめは誤認逮捕されるに至った。


ちなみの襲撃から暫くして、殺されかけたショックで気絶していた真宵が目を覚まし、暗殺の標的とされた彼女自身までもが計画の阻止へと加わる。真宵は自分の置かれた状況をメモに書き残して、千尋を霊媒すると姉に指示を求めた。召還された千尋は瞬時に機転を発揮し、ちなみの行動を抑制するべく妹に「すぐにちなみを霊媒して『修験洞』の牢獄に閉じ籠もる事」を命じた。こうして真宵は姉の指示に従い、霊媒によって暗殺者ちなみの前から姿を消して、最後まで自分の身を守る事に成功して生き延びた。一方ちなみは訳の解らないまま牢獄に監禁されてしまうが、2日後あやめが司法関係者に連行され、現場検証を目的に『葉桜院』へ戻って来た時、双子の姉妹は周囲の隙を突いて入れ替わった。


自分の代わりに妹あやめを牢獄に閉じ込めた姉ちなみは、妹に成り済まして現世の情報を探りながら「綾里姉妹への復讐の一環」として、真宵に舞子殺害の罪を着せようと法廷で偽証に及んだ。しかし成歩堂と春美に霊媒された千尋に「事件当時から現在に至るまで自分を霊媒しているのは真宵であり、暗殺計画は完全に失敗した真実」を突き付けられると、観念して真宵から離脱すると冥界へと敗走して行った。そして同時に弁護士師弟の手でキミ子の犯行計画も全容を暴かれて、ついに彼女の野望は完全に潰える結末を迎えたのであった。


その後のキミ子の動向は明らかにされていないが、春美に犯行を依頼する時「これが最後のお願い」と口にしている事、成歩堂に「今は刑の執行を待っている」と語られていた事からして、死刑が執行された可能性が高い。『YouTube』での『逆転』シリーズの実況プレイで人気を博した、現役お笑い芸人を兼ねる弁護士こたけ正義感も「逮捕から結構時間が経っているのに、未だに懲役刑の執行を待っているというのは変。執行を待つとなると、もう死刑しかない」と見解を示した。ただ『逆転』シリーズの世界は現実よりも刑罰が重くなっているとは言え、実行犯ではなく共犯者の立場で死刑判決が下されたとは考え難い。その為、何らかの形で刑を軽減・回避しようと抗っているか、或いは作品世界では終身刑や懲役刑が下されると、面会も中々許されなくなる(ので、春美に「最後のお願い」をした)可能性がある。もっとも『華麗なる逆転』にて「今回は殺人計画の立案者として関与した」と判明したので、いずれにせよ結局は死刑執行となったと思われる。


家元の座を巡る生涯編集

妄執と狂気が生まれた背景編集

『逆転裁判ファンブック』では、キミ子は「家元の座に執着する女」と紹介されていた。正にその通りの人物である彼女が最早「狂気的」とすら言える程、自分の娘を家元にしようと執着したのは「彼女の生い立ちと『倉院の里』の風習」に起因している。


「綾里一族の霊力の遺伝」には特殊性が含まれ、先祖代々、女性にのみ霊力が受け継がれるのは前述の通りだが、それに加えて「姉妹が生まれると、姉の方が強大な霊力の持ち主となるのが通例」となっている。その傾向は年長者であればある程、強くなるので「長女が最大の霊力の持ち主で、次代の家元に就任する事」はある意味、一族の恒例行事でもある。そんな風習が古くから根付いている『倉院の里』でキミ子は「綾里一族の異端児」として誕生した。不幸にも彼女は「通常は次期家元の筆頭候補に挙がる本家の長女」として生まれながら霊力は皆無で、家元はおろか霊媒師となるのも絶望的な程であった。


キミ子の誕生から数年後、次女として誕生した舞子は姉とは真逆に、生まれつき優秀な霊力を備えていた。連綿と続く綾里家の歴史上、稀に見る異常事態の発生を受けて、当時の里に住む大人達は特例措置を施す決断を下した。その結果として次女の舞子に次期家元の継承権が与えられて、長女のキミ子は本家から分家へと追放される事となった。この様な経歴と立場の持ち主とされたキミ子には更なる不幸が待っていた。里の心無い人々は、彼女を軽蔑や嘲笑の対象として扱い「元本家の出身者なのに霊力が無い」「姉でありながら、妹に霊力でも権力争いでも負けた」「長女のくせに家元の後継者になれなかった」という陰口を大勢で叩く様になった。この生育環境は当然、キミ子の人格形成に大いなる悪影響を及ぼした。


また「綾里一族はDL6号事件が起きるまでは、誕生以来ずっと繁栄の歴史を歩んで来た事」もキミ子自身の屈辱感や劣等感、妹の舞子に対する嫉妬や逆恨みを増長させる一因となった。かつての綾里家は政財界にも絶大な影響力を持ち、歴史の裏側で名門一族として君臨する栄耀栄華を誇っていた。失脚前の舞子も含めた「偉大なる権力者として裕福な人生を謳歌する家元の姿」を長らく見詰め続けて来ただけに「その栄光と幸福を手にする事が出来なかったキミ子の悔しさ」は日増しに強まる一方だった。DL6号事件を契機に『倉院流霊媒道』が没落の一途を辿ってからも、彼女の思いは変わる事は無かった。


双子の母親となった頃にはキミ子はすっかり「自分が就職する望みが叶わなかった職業に、自分の代わりに子供を就職させる事で、擬似的に夢を叶えた実感に浸ろうとする毒親」に変わり果てた。待望の天才的な霊力を持った三女・春美の誕生は「キミ子の野望への執着」に拍車を掛けた。更に春美が7歳の頃DL6号事件が解決して以降、綾里家の復興が始まると「いずれ一族は過去の栄光を取り戻すのも夢ではない状況への変化」もキミ子による2件の殺害事件に向けての暴走を加速させた。ちなみも「キミ子は春美に自分の夢を託したの。『倉院流霊媒道』の家元になるという、下らない、ちっぽけな夢を‥‥」と語っている。逮捕以前のキミ子は「春美が次期家元を継承した後は、幼い娘を主軸とする傀儡政権・摂政政治を『倉院の里』に築き上げ、綾里家の影の支配者になる事で、自分を侮辱して来た里の住人達にも復讐を果たす」という未来像まで思い描いていた。


霧崎殺害容疑で逮捕された時点で、とうとうキミ子は『倉院の里』からも追放されてしまい、前述の「綾里一族の影の支配者となる夢」は永遠に叶わぬ夢となってしまった。春美自身には何の罪も無いが、殺人犯の娘になった事で「次期家元としては論外の存在」と扱われる様になったのは確実であろう。それなのに「真宵さえ消えれば春美は家元になれる。春美が家元になれれば後はどうでも構わない」との妄執に取り憑かれて『葉桜院』での殺人事件を引き起こしたのだから、もう「狂気の沙汰」としか言い様が無い。


春美に対する溺愛ぶりも「我が子に対する母性愛」という高尚なものではなく「自分の望みも叶えてくれる、春美の才能へと向けられた歪んだ愛着」でしかない。ちなみは冷酷で屈折した性格と価値観の持ち主ではあるが、母親の醜悪な本質を正確に見抜いていただけに「春美の意志なんて全く関係ないの。キミ子にとって大事なのは春美なんかじゃない。家元の座。それだけなのよ」と的を射た意見を述べている。実際、春美と真宵が姉妹同然に親密な間柄なのを知りながら、平然と春美に真宵暗殺の片棒を担がせた所にも「キミ子の業の深さ」が反映されていると言えよう。


『犯行指示書』も「幼い年頃の娘に配慮した、平易な文章を書く事さえも怠っている有り様」である。これを春美が解読出来なかったのが災いして「計画の主な妨害者の1人・舞子に解説を求めて、指示書を読ませてしまう失態」を招いている。一応、指示書には「誰にも読ませない様にという注意勧告」は記述されていたのだが。成歩堂と真宵という身近な人ではなく、舞子という初対面の人物に解読を依頼した事にも「春美の計画を知られまいとする、せめてもの努力」が感じられる。舞子に教わり「家元に華麗に引導を叩き付けてやりなさい」の読みを知った春美だったが、今度はその言葉の意味が解らず苦悩する。思い悩んだ末に彼女は苦肉の策として「インドの名産料理カレーを『現家元・舞子の姿を描いた掛け軸』に叩き付ける頓珍漢な行動」に出てしまった。その結果、春美が「母の言い付けに従って、秘匿にしていた事件当夜の自分の行動」は成歩堂にまで把握されてしまい、法廷で犯行を暴かれる一因に加わった。


悲惨な境遇編集

長女ちなみは「キミ子の心はもう、とっくに壊れているわ」と嘲笑い語っている。その一方、次女あやめの育ての親でもある毘忌尼は「キミ子様の本家に対する執念が、事件を引き起こしたのかもしれないね‥‥。可哀想な(境遇の)人なんだよ」と同情を寄せる意見を述べていた。


作中では「生活環境によるキミ子の人格の変遷」は具体的には描かれていない。しかし「①立場を利用する目的で近付いて来た上で、彼女をあっさり捨てた元夫」「②古来よりの『倉院の里』の仕来たりに凝り固まった、里の人々がキミ子にした仕打ち」「③家元を継ぎながらも責務を果たせず『倉院流霊媒道』を衰退させる結果を招いた上、後始末もせず里を出奔し、2人の娘を置き去りにした舞子」「④家元の資格を持ちながらも「母を破滅させた事件の真相」を突き止める為、家元の座を放棄してしまった千尋」「⑤千尋に次いで家元の資格を得たが、前向きでなかった真宵の存在」といった、キミ子を追い詰めた外的要因も少なくない。少しでも何かが違っていれば、あそこまで「不幸な極悪人に転落する事」は無かったのかもしれない。


宝石商の元夫が最後まで妻子に対する愛情を持たず、彼女らを「只の権力を繋ぎ止めるだけの道具」として扱い、その利用価値がDL6号事件で無くなるやいなや、手の平を返して妻と次女を捨てたのも、家庭崩壊の一因となっているのは明白である。父親に引き取られた長女のちなみも、相変わらず娘の自分に無関心だった「父への復讐目的での狂言誘拐を引き起こした事」が犯罪者へと身を堕とす原因となるに至った。


次女のあやめは母親代わりの毘忌尼、三女の春美は姉代わりの真宵と、身内からの愛情を注がれて育てられた結果、純粋で優しい心の持ち主に成長した為に今も尚、母キミ子にも愛情を抱いている。それに対して長女のちなみは家族愛に恵まれず、美柳家という悪質な家庭環境の中で荒んで行き、元を辿れば「己の不幸の元凶である自分を冷遇した親達」を強く憎む様になった。その中でも取り分け「実母キミ子」に激しい憎悪と軽蔑を向けていて、彼女を母とも呼ばず「キミ子」と呼び捨てにしている。「真宵暗殺計画への荷担」も彼女を殺す事で、自分を死刑台送りにした千尋を絶望させる復讐がしたかっただけで、キミ子には利害関係の一致から手を貸したに過ぎない。成歩堂に「計画をどう思っていたのか」と尋問された時ちなみは「下らない。何の意味も価値も無い。自分の為にすらならない。この世で最低の計画」と一蹴した。彼女も母同様『逆転』シリーズのファンからは「悲惨な境遇ではあるが、人間性や所業が外道過ぎて同情出来ない」との意見が多い。


またキミ子には「いずれ春美を『倉院流霊媒道』の家元の後継者とする目論見」があったとは言え、綾里家の地位を貶めてしまった舞子が何の事後処理もしないまま里から出奔し、母親に育児放棄された千尋と真宵の面倒を見て来たのもキミ子である。そして舞子に代わって『倉院の里』の運営と指導者役を一手に引き受けて、事件を起こすまで支え続けて来たのもキミ子である。長年この2つの苦行に耐えて来た事は彼女の確かな実績と言える。そういう面では「故郷や環境に束縛されて自由に生きる事が出来なかった結果、人生と精神が歪んだ末に壊れてしまった哀しい人」と言っても過言ではない。それでも成歩堂が毘忌尼にも言った通り、キミ子の評価は「境遇には同情の余地はあるものの、許されない罪を犯した人物」という言葉に尽きるだろう。


アニメ版編集

「悪役側の重要人物の1人」であるだけに、複数の印象深い変更点、オリジナルシーンが追加されている。


第1期・第14話~第17話『再会、そして逆転編集

当初の未実は極秘相談で「霊媒をせずに上手く誤魔化して貰いたい」とキミ子に協力を求めていたが、この話を聞いた彼女は「もっと良い方法がある」と霧崎殺害計画を自ら発案する。これに未実が抗議すると「言う通りにしなければ、あなたの秘密を世間に公表する」と彼女の弱味に付け込んで脅迫し、犯行を強制させる展開に変更されていて、原作以上に悪人となっている。上記の原作では「実行犯でなく共犯者だったのに、極刑になった可能性の提示への違和感」に対し「極刑にされるだけの理由を付けた」とも解釈出来る。現実でも「殺人事件の首謀者として、実行者に殺人の教唆や代行を命じた場合、首謀者は実行者よりも重い刑罰が下される事態に陥る」のも珍しくない。


法廷で未実の正体と犯行が暴かれた時には、証言台の後部に置かれた「裁判関係者用の椅子」に座りながら大きな溜息を吐いた。


後述の第2期でのオリジナルエピソードでは、キミ子から冷酷な仕打ちを受けていた真宵だったが、伯母の本心に薄々気付いていた原作と異なり、アニメ版では「黒幕はキミ子」だと知ると激しく動揺しており、この時までは完全に伯母を信じ切っていたと思われる。あんなにも酷い仕打ちを受けて以降も、純粋な心から一途にキミ子を信じ続けていた真宵が実に哀れである。


原作のラストシーンで見せた「逮捕後のモノローグ」はカットされて、その代わり『3』の物語への伏線を張る、オリジナルシーンが挿入された。アニメ版のエピローグでは「閉廷後の連行途中、裁判所の踊り場にて成歩堂と春美に憑依した千尋に出くわすと、彼らに「アタクシ諦めませんわよ」と捨て台詞を吐いて、この先の再犯を予感させる不穏な退場シーン」を残して、キミ子は第1期での出番を終えた。


第2期・第14話『逆転の潮騒が聞こえる』編集

「ラスボスちなみとの戦いが一纏めにされた、終盤に向けての前日譚」として、今回のオリジナルエピソードが制作された。この話で初めて「キミ子は逮捕以前、普段の生活では姪の真宵にどう接していたか」が具体的に描かれたのだが、他人の目が届かない所では、露骨に嫌悪感を示し冷淡な態度を取っていた。「真宵が春美の願いを叶えようと密かに海に連れ出した」と知った時には、必要以上に姪に激怒して罵倒した。その台詞は当時、既に里を去っていた彼女の母・舞子、姉・千尋までも引き合いに出して「ああた方、本家は『倉院』の恥晒しでござあます!」という真宵を激しく傷付ける内容であった。


「千尋という真宵の護衛役にして、厄介な反撃を仕掛けて来る人物のいない隙」を狙って、真宵を攻撃しているのにも「キミ子の冷酷さと卑劣さ」が如実に表れている。彼女が春美を里から出さない様にしているのも「娘が外部の世界を知る事で、洗脳教育の弱体化を招くのを防ぐのが狙い」なのも酷い話である。いつでも「真宵様」と敬称を使って呼ぶ事こそ欠かさないものの、ここまで来ると「様付けすら皮肉の一環」にも見えて来る。あんな暴言を吐いておきながら「その後のキミ子自身の行動は『倉院』の恥晒しを通り越して、面汚しと言って良い凶悪犯罪」なのだから救い様が無い。この有り様をゲームユーザーとアニメ視聴者に、まざまざと見せ付けたのも皮肉な話と言える。


第2期・第17話~第23話『華麗なる逆転編集

最終章なだけに、物語を更に重厚化させるオリジナルシーンが追加された。原作のゲーム版では説明だけで済まされた「犯罪者の収容施設内で長女のちなみと再会し、彼女に真宵暗殺計画の実行犯になる様に促すシーン」が明確に描かれる事となった。幼い頃より母の冷酷さと狡猾さを熟知していたちなみも、流石に「実の娘に当たる自分の死刑まで悪用する犯行計画」を初めて聞かされた時には、若干動揺して冷や汗を流していた。


事件の捜査も大詰めを迎えた終盤では「孤独な独房生活を送る中、春美の写真に「春美ちゃん、もうすぐ家元ですわね」と哀愁を漂わせて語り掛けるキミ子の姿」が描かれた。牢獄にいる彼女は知る由も無かったが、ゴドーによる三女との面会の盗聴から「真宵暗殺計画」は既に崩壊が始まっていたのだから、これまた皮肉な描写である。恐らく「冷めた表情で、娘の春美の写真に歪んだ愛情を向けるシーン」は「悪鬼の様な形相で、妹の舞子の写真に歪んだ憎悪を向けるシーン」の対比として挿入されたのだろう。そして最終日の法廷では、ちなみの証言中での回想やイメージシーンにて登場するが、後者が「アニメ版でのキミ子の最後の登場シーン」となった。


余談編集

特殊なモーション編集

『逆転裁判123』における「複数の事件や悲劇の連鎖の元凶の1人」として描かれているキミ子だが、彼女は徹底的に黒幕として暗躍する人物として描かれているのも影響してか「ダメージモーションもブレイクシーンも見せない稀少なキャラの1人」となっている。ブレイクシーンは犯人専用だが、ダメージモーションは善悪や立場を問わず、ほぼ全ての登場人物に用意されているので、このキミ子の扱いは異例である。それだけに「彼女の底知れない恐ろしさ、巨悪感」を巧みに表現している。


英語版の名前編集

「Morgan・Fey(モーガン・フェイ)」という名前で『アーサー王伝説』に登場する魔女モーガン・ル・フェイが由来と思われる。「モーガン・ル・フェイ自体が、英語版での綾里一族=フェイ一族の苗字の由来」と有力視されている。9人姉妹の1人であるモーガン・ル・フェイは、文献や派生作品によって生まれた順が異なっているが、キミ子と同じく長女として設定される場合も見られる。「モーガン・ル・フェイは姉妹の中では、最も美貌も才能も優れているという設定」なので、妹の舞子との霊力や権力の差に劣等感を抱いていた、キミ子の名前に使われるのは皮肉にも捉えられる。名前のモデルと同じ位の魔力=霊力があれば、悲惨な境遇に陥る人生にはならなかっただろう。

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