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概要編集

はみちゃん

逆転裁判』(成歩堂編)のメインキャラクターの1人。『逆転裁判2』第2話『再会、そして逆転』で初登場。当時の年齢は8歳。身長125cm。『2』に登場した若い女性キャラ限定で3サイズが設定されているが、まだ幼い春美は代わりとして「成績表」が公表された。国語5・算数3・理科4。


『倉院流霊媒道』の使い手の霊媒師一族・綾里家の出身者。綾里一族の族長に当たる、現在の『倉院流霊媒道』の家元・綾里舞子の姪で、舞子の姉である綾里キミ子を母に持つ。舞子の2人の娘・綾里千尋綾里真宵とは従姉妹同士。20歳上の千尋と10歳上の真宵からは「はみちゃん」と呼ばれて可愛がられている。


再会、そして逆転』での殺人事件で「被告人となった真宵を救うという目的の一致」から主人公・成歩堂龍一と初対面し、真宵に続いて弁護士を務める彼の助手に加わった。それ以降は真宵と分担して千尋の霊媒を行いながら、成歩堂の補佐役を務め、多くの事件解決に貢献を果たした。真宵同様あくまでも本業は霊媒師であり、弁護士の助手は副業として扱われている。真宵が成歩堂に託した後に彼から手渡された、特別な勾玉に霊力を込めてサイコ・ロックの力を利用出来る様にしてくれたのも春美である。


容姿編集

浦島太郎』のヒロイン乙姫の様な2輪状に結った髪を、紫の数珠の髪止めで纏め上げている。真宵と同じ綾里家の装束を身に纏っているが「成人前後用の濃い紫の羽織り」を着用する真宵に対して「年少者用の薄い紫の羽織り」を着用する。自分専用の勾玉を中心とした首飾り、両手首の和風のミサンガ、赤紫色の横向きで結ばれた長い帯、履き物が草履で固定されているのは全世代共通。『3』のエンディングでは、綾里姉妹も幼少期は春美と同じ装束を着ていたと明らかになった。


アニメ版では度々、紫の風呂敷に何かを入れて持ち歩いているシーンが描かれている。またアニメ版の終盤では、最後の事件が真冬に起きた為、屋外での行動の際には「サンタクロースを思わせる、首元に白いボンボンが付いた赤いコート」を普段の装束の上から着込んでいた。


家族関係編集

真宵とは血縁上は従姉妹関係であるが、本当の姉妹の様に仲睦まじい。反面、千尋が弁護士を目指して18歳で『倉院の里』を去ってから春美は誕生しているので、千尋とは会った事もほぼ無い為、彼女の事はよく知らない。綾里家の風習では家元一家だけが「本家」と呼ばれ、それ以外の一族の者達は「分家」と呼ばれ、本家の人間達に従属する事が定められている。将来は母の舞子から家元を継承する事が確定している真宵は「本家」に属し、霊能力を持たない母のキミ子と共に春美は「分家」に属している。その様な身分の差や一族の薄暗い背景を感じさせない程、真宵と春美は綾里家の風習には囚われていない、本物の家族同然の絆を築いている。


母子家庭育ちなのは千尋と真宵と共通しているが、2人の母の舞子は夫婦円満で幸福な家庭を築き、真宵の幼い頃に夫と死別するまで連れ添った。そんな妹一家に対して、キミ子は優れた霊力を持った娘・春美が生まれるやいなや「お役御免」とばかりに、彼女の父親に当たる元夫とは離婚している。この生い立ち故に春美は父の事を覚えておらず、唯一の家族の母にも素直に甘えられない家庭環境にいる反動もあってか、健全な形で自分を妹代わりとして可愛がってくれる真宵を心から慕い「分家から本家に捧げる敬愛と忠誠心」を持ち併せつつ、姉同然の存在として見ている。


人間関係編集

『逆転裁判123』の時代では、主要人物の中では最年少の子供である事から、既に大人の成歩堂とその仲間達からは可愛がられていた。春美自身も成歩堂を始め、自分の世話をしてくれる大人達には素直に懐いていて、これらの関係は高校生に成長した『456』の時代でも継続している。


しかし『再会、そして逆転』での霧崎哲郎殺害事件を巡る裁判で、被告人とされた真宵に徹底的な攻撃を仕掛けた当時の担当検事・狩魔冥には、この一件から『2』から『3』に至るまで悪印象と嫌悪感を引き摺っていた時期もあり、その頃には彼女に面と向かって「真宵様を虐めた悪い検事さん‥‥。私‥‥嫌いですっ!」と非難した事もある。この反応に対して常日頃から女性や子供等、弱い立場の人々への気遣いを心懸けている冥はショックを受けていた。


アニメ版では冥との仲は改善されていて、彼女の狙撃事件の際には「鞭の検事さんは大丈夫でしょうか‥‥?」と冥を心配したり、終盤の『葉桜院』での事件では「前述の嫌いと発言するシーン」がカットされて、最終回のラストシーンでは冥が『葉桜院』に残っていた春美を裁判所に連れ出したりもしている。


性格と趣味嗜好編集

純真無垢な心を持った少女で、まだ幼いながらも「天才的霊力の持ち主」との呼び声も高い。母キミ子からは「春美ちゃん」と呼ばれている。母親には優秀な霊媒師となる様、厳しい英才教育を施されていると同時に、箱入り娘として溺愛されている。こうした教育環境の影響により、小学生の少女とは思えない程、礼儀正しく落ち着いた性格、古風で丁寧な言葉遣いの持ち主に育っている。純粋な少女なのは同じだが、元気一杯な真宵とは対照的に穏和な気質。キミ子からは厳しい躾や修行を科される事も多いが、並行して宝物扱いまでされる程に溺愛もされているので、心の底から慕っている彼女の為を思い、如何なる修行にも耐えている。キミ子の「春美は私の宝物」という口癖に呼応する様に母への愛をよく口にする。『3』の終盤では「お母様はいつだって優しくて大好きです!」と嬉々として発言していた。


独自の教育方針から「なるべく娘には俗世間の汚れを知らないままでいて欲しい」と願う母に「故郷『倉院の里』から出来るだけ離れない様にすべし」と厳しく言い付けられている。アニメ版の第2期・第14話『逆転の潮騒が聞こえる』では、こっそり春美の願いに応じて彼女を海に連れ出した真宵が、激怒したキミ子に里を去った母・舞子と姉・千尋と一緒くたにされた上で「ああたがた本家は『倉院』の恥晒しでござあます!!」と罵倒されるシーンもあった程である。こういう閉鎖的な環境に置かれているのに加え、まだ幼いが為に俗世間に関しては、従姉妹の真宵以上に疎い。極度の天然ボケ娘の彼女から世間に関しての間違った知識を教わる場面も見られる。『2』の攻略本でのインタビューでは「『倉院の里』には綾里一族専用の学校があり、そこに私も通学している」と語っていて、この背景も春美の世間知らずに拍車を掛けている。サーカスや電車の存在も知らなかったり「弁護士を始め名前の最後が「し」で終わる職業全般は、霊媒師と何らかの関係がある」と思い込んでいた時もあった。


趣味が毬付き、ゴム飛び、綾取り、お手玉と、現代の小学生だとは思えない程に古風。『倉院の里』では修行の一環として精進料理が主食とされている為、ベジタリアンに育った春美は肉料理を苦手としている。テレビ番組では『世界子ども名作劇場』というアニメがお気に入り。特技は裁縫。図画工作は苦手で学校での成績も芳しくない上に、これに関しては人並外れて不器用。毬付きに夢中になっていた所、誤って綾里家を代表する家宝『倉院の壺』を割ってしまった際には1人で修復に当たったが、結果として余りにもチグハグな状態にしてしまった。『倉院の壺』には綾里一族の先祖・綾里供子の名前が大文字で「供子」とだけ書かれているのだが、彼女の名前がひっくり返って「子供」になってしまった程である。


特殊な恋愛観編集

普段は基本的には穏やかで心優しい少女だが、歳の割にませている上、非常に思い込みが激しい一面があり、特に恋愛方面となると発言と行動が過激化し、時として暴力的にもなる傾向にある。幼い少女らしく「恋に恋する側面」もある模様。前述の通り、夫婦愛の欠落した家庭に生まれ育った身の上だが、これは春美に限った話ではない。先祖代々、綾里一族の霊能力は女性にのみ受け継がれ、一族の女性全体が霊媒師を生業としている為、完全なる閉鎖的な女性優位社会が『倉院の里』では形成されている。そうした環境から「必然的に隅に追いやられる男性陣と、恒常的に自然と優位に立つ一族の女性陣の仲」は拗れる事が多く、最終的には夫婦関係が破綻する事例も枚挙に暇が無い。


自分の両親も含む「綾里一族の歴代夫婦の離婚」を数多く見届けて来た立場だからこそ、春美は「大好きな真宵には絶対に幸福な恋愛をして欲しい。彼女に相応しい相手は成歩堂しかいない。2人は既に恋人同士である」と誰よりも激しく思い込んでいる。事ある毎に「成歩堂と真宵は運命のカップル」と夢想に耽ったり、ちょくちょく彼に「もっと積極的にアプローチするべき」と迫ったりもする。更には成歩堂が形を問わず、真宵以外の女性と仲良くしている所を見かけると、即座に浮気扱いして「多岐に渡るお仕置き」を彼に喰らわせる。お仕置きは無言で睨み付けたり、叱咤や説教を浴びせたり、仕舞いにはパンチやビンタまでお見舞いする。パンチやビンタは連続で繰り出される時もあり、少女の攻撃だとは到底思えない程の威力を発揮する。春美の攻撃を受けた青年の成歩堂がよろめいたり、往復ビンタを喰らった末に気絶した事さえある。こんなにも高い攻撃力の持ち主であるが、これらの武力行使の被害者とされるのは成歩堂限定なので、この力が何かの役に立った試しは無く、不憫な事に唯一の被害者・成歩堂がひたすら無駄に痛い思いをしているだけである。


この様に過激なまでに成歩堂と真宵が恋仲となる事を推し進めて来たが、彼がみぬきの義父となってからは、流石に空気を読んで、前述の思想を表に出すのを控える様になった。また理想の恋愛をしているカップルへの憧れはあるものの、自分の思い描く理想の成歩堂と真宵のみを対象としていて、自分自身の恋愛に対しては余り興味を持っていない。


霊能力編集

春美は母キミ子が望んでいた通り、生まれつき絶大な霊力の持ち主として誕生した。「真宵よりも優れた霊能力者」と言われる事も多く、分家出身者の10歳手前の少女にして、毎回必ず霊媒に成功する程その力も安定している。彼女に引き替え、真宵は本家出身者でありながら微弱かつ不安定な霊能力の持ち主で、17歳になるまで1度も霊媒に成功した試しが無かった。初めての成功体験から「霊媒師としての覚醒」もようやく始まったものの、その霊能力は10歳も下の春美に遅れを取っている状態でもあった。


但し「家元になれるか否かの判断基準」は霊能力の高低よりも、遥かに家柄に重きが置かれている。「次期家元の最有力候補とされるのは、現家元の実母と一定の霊能力を併せ持った人物」で固定されており、何らかの例外となり得る事態に発展しない限り、どんなに霊能力が優れていようと「分家出身者の時点で家元になるのは叶わぬ夢」とされる。以上の背景からの影響を受けて、次期家元に確定していながら霊媒師としての実力と自信に欠ける真宵が「はみちゃんの方が私よりも家元の素質がある」と弱音を吐いた事もあった。春美の母キミ子は全く霊力を持たずに生まれて来た為、元々は本家出身者だったのに分家へと追放された過去を持ち、それ故に娘を家元にする事が出来ない現状を歯痒いと感じている。


真宵より上と言われる春美の霊力だが、作中では「実は真宵の方が能力が高いと思わせる描写」も散見される。「早熟型で常時、安定して高い能力を発揮出来る春美」「大器晩成型で時折、爆発的にずば抜けた潜在能力を発揮する真宵」と差別化されているかの様にも見える。『逆転裁判2』第4話『さらば、逆転』では、春美が霊媒している千尋の霊を後から、極限状態の真宵が引き剥がして自身に憑依させている。更には『逆転裁判3』第5話『華麗なる逆転』では前回とは逆転して、春美は「真宵が先に霊媒している霊」を後から何度も霊媒しようとしたが、全て失敗に終わった。高い霊能力の持ち主でなければ長時間の憑依は不可能とされる中、真宵自身の霊能力の成長もあって「2人が霊媒対象とした霊」は事件当夜から約3日間も真宵が憑依を独占する成果も挙げた。作中では春美の口から「先に他の霊媒師に霊媒されている霊は自身に憑依させられない」と説明されているが、同時に複数の霊媒師が同じ霊の霊媒を試みると、霊能力が高い者が優先される傾向にあると思われる。前述の2件は『2』と『3』の最終話であるだけに、真宵は人生最大の危機的状況に陥っているからこそ、火事場の馬鹿力が発揮されたという面も影響しているのかもしれない。


2人目の霊媒師・女子高生編集

はみちゃんビフォーアフター

逆転裁判4』は未登場となり『逆転検事』シリーズでは、成歩堂や真宵と共に「背景に登場するモブキャラの1人」として登場する形に留まった。『逆転裁判3』から8年後が舞台となる『逆転裁判5』では17歳の高校生となって再登場を果たす。『123』の時代の真宵に続く、現役女子高生の霊媒師にもなった。上記のイラストからも解る通り、容姿や衣服には大した変化は無く「小学生の頃の面影を色濃く残したまま、身長が140cmに伸びただけ」といった所。真宵を意識してのお洒落の一環か、左耳に掛かる髪には髪飾りとして紫の数珠を着けている。


実はかなり低身長なのを思い悩んでいて『6』のDLC『遊べる!逆転劇場・成歩堂編』では、諸事情あっての事だが「私の身長は148cm」とサバを読んだりもしていた。日本の17歳の少女の平均身長は158cmなので、平均よりも18cmも低い春美が気に病むのも当然であろう。おまけに140cmは10歳女児の平均身長でもある。


実は『4』本編以前の成歩堂の弁護士資格の剥奪直後からも、既に『成歩堂なんでも事務所』を定期的に出入りしては、成歩堂に代わって事務所の掃除、彼の養子みぬきの世話に勤しんでいたとの事。真宵から預かった言伝や手紙、その他の贈り物を届けに来る事も多かった。


『5』では「法廷爆破のニュース」を聞き付け、修業により『倉院の里』を離れられない真宵の代わりに事務所の掃除を目的として訪問した。立て続けにショックな出来事が起きて意気消沈していた成歩堂も、春美の笑顔と彼女が持ってきた真宵の手紙で元気付けられた。続編の『6』では『倉院の里』を訪れた、成歩堂の一番弟子・王泥喜法介と彼のライバル検事・ドゥルク・サードマディを出迎えた。その他にも里中で傍迷惑な選挙活動を行う地元の政治家・清木まさはるにウンザリした様子を見せていた。


英語版の名前編集

「Pearl・Fey(パール・フェイ)」という名前で「真珠の英訳」がそのまま用いられた。愛称は「Pearly(パーリー)」となっている。英語では「~y」の雰囲気が「~ちゃん」とほぼ同じ扱いとなる。英語版のローカリゼーション・ディレクター(翻訳者)によると、アメリカの小説『緋文字』のキーパーソンの少女パールが由来。パールは両親の不倫の結果として生まれ、母の重い罪を背負う存在でありながらも、春美と同じく低年齢に反して鋭い面もある一方、年相応の無邪気さも兼ね備えた、何の罪も無い純粋な少女として描かれている。春美の出生の背景を知ると解るが「彼女も母の負の側面から生まれた上で、その象徴的存在として描かれる反面、本人は純真無垢な少女として描かれている所」がパールと重なって見える。


母親のキミ子は「Morgan・Fey(モーガン・フェイ)」という名前で『アーサー王伝説』に登場する魔女モーガン・ル・フェイに由来する。英語版でのキミ子と春美は親子揃って「西洋の有名小説に登場する、重要女性キャラが名前の由来」となっている。


演じた声優俳優一覧編集

佐伯美由紀逆転裁判5
豊崎愛生『CR逆転裁判』
久野美咲(※)テレビアニメ逆転裁判〜その「真実」、異議あり!〜
漆原志優舞台『逆転裁判2 〜さらば、逆転〜」』
髙野友那舞台『逆転裁判2 〜さらば、逆転〜」』

(※)『大逆転裁判』および『大逆転裁判2』でアイリス・ワトソンの声を担当している。


関連イラスト編集

はみちゃん真宵さまは、いつも


関連タグ編集

逆転裁判


逆転裁判・逆転検事シリーズキャラクター一覧


成歩堂龍一

綾里千尋

綾里真宵

綾里キミ子

綾里舞子















※以下ネタバレあり※


天才霊媒師、出生の秘密編集

誕生の経緯編集

公の場では「春美はキミ子の一人娘」として扱われているが、実際には春美は母親の再婚相手との娘に当たり、キミ子が最初の夫との間に生んだ16歳年上の双子の姉妹・美柳ちなみ葉桜院あやめという異父姉がいる。片親違いではあるものの、この双子と春美は顔立ちが似ている。特にあやめと春美が真剣な顔で正面を向いている時の顔立ちは重なって見える程である。春美には「あなたは一人っ子」と言い聞かせて、そう思い込ませた上で「一人っ子の母親」を演じて来たキミ子だったが、本当は彼女の子供は「長女のちなみ、次女のあやめ、三女の春美の3人の娘」がいたのだ。十数年前に離婚した元夫に連れられて『倉院の里』を去って行った双子の姉妹は、キミ子からは隠し子として扱われている。


綾里一族では「先祖・供子の血を引く女性にのみ霊能力が受け継がれるのに加えて、姉妹が生まれると姉の方が強い霊能力を持って生まれて来る特殊性」を持つ。そんな環境の中でキミ子は「綾里一族の異端児」として生を受けた。彼女は「供子の直系の子孫に当たる本家の長女」に生まれながら霊能力は皆無であった反面、次女にして妹の舞子は姉とは比べものにならない位、卓越した霊能力を持って生まれて来た。この異例の事態に対する特例措置として、キミ子は本家から分家へと追放されて、舞子が家元の継承者に選ばれた。この背景から『倉院の里』の人々の多くが、キミ子を軽蔑や嘲笑の対象として扱い「元は本家の出身者でありながら霊力が無い」「姉なのに妹に霊能力でも権力抗争でも負けた」「長女のくせに家元を継承出来なかった」等、長年に渡って執拗に陰口を叩いて来た。それ故に彼女は「自分の娘を家元にする事で、里の連中を見返してやる」という執念に取り憑かれる様になった。


当初は綾里家の繁栄時代、一族の権力目当てで近付いて来た宝石商にして最初の夫との結婚を「渡りに舟」だと思って受け入れ、娘を授かる事までは成功したものの、キミ子の遺伝が強く作用してか双子の姉妹は共に霊能力を持っていなかった。「ちなみとあやめは野望実現の手駒には使えない」と見放したキミ子は2人への冷遇を始めた。「自分と強大な権力を持つ綾里家との血縁関係を強化する為だけに、家元の姉に当たる妻との子供を作ったに過ぎない」父親も母親に追従し「家元になれない娘に利用価値は無い」と双子の姉妹を冷遇する様になった。DL6号事件が原因での綾里家の権威失墜直後「こんな田舎にいる理由はもう無い」と見切りを付けた最初の夫とキミ子は離婚し、彼は2人の娘を連れて『倉院の里』を去って行った。


それでも尚、野望を諦め切れなかったキミ子は「優秀な霊媒師の娘欲しさ」から、春美の父親と一時的に恋愛関係となった後に再婚し「待望の優れた霊能力者の娘・春美」が生まれると、間もなく彼を切り捨てて離婚した。詰まる所「春美は母親の野望の為だけに生み出された子供であり、DL6号事件が発生しなければ誕生しなかったであろう存在」と言える。作中でも「春美への同情の有無という違い」はあれど『葉桜院』の住職・毘忌尼にも、異父姉のちなみにも「キミ子の執念から春美が生まれた」と語られている。


2人目の夫も『倉院の里』を去った後シングルマザーとなったキミ子は「春美への溺愛と厳しい英才教育」を同時進行させるが、娘可愛さからの行動ではなく「全ては家元の実母になる事で、一族の人々から受け続けて来た屈辱を晴らす野望実現」だけが目的である。春美への溺愛も「娘である彼女個人へと向けた母性愛」という高尚なものではなく「春美が持っている、野望実現の礎となり得る優れた才能への愛着」に過ぎない。まだ幼い春美は母の胸に秘めた真意も知らずに「お母様は私の将来の為を思って、厳しさと優しさの両面を持って育てて下さる」と心から信頼しているが、キミ子の考えているのは自分自身の将来に限られている。彼女は後述の事件で逮捕されるまでは「真宵を排除して家元の継承権を奪い取り、春美が家元の座を手にしたら『倉院の里』に娘を主軸に据えての傀儡政権を作り上げて、綾里一族の影の支配者となる事で、今まで私を愚弄して来た奴等をも屈服させる未来像」まで思い描いていた。


その野望実現を目的として、ついにキミ子は真宵から次期家元の座を剥奪するべく、姪に当たる彼女を罠に掛ける。『逆転裁判2』第2話『再会、そして逆転』では「真宵に死去した部下の霊媒を依頼した医師・霧崎哲郎が、真宵に憑依した霊の暴走によって殺害された様に見せかける犯行」が実行された。キミ子の計画通りに真宵は霧崎殺害容疑で逮捕されるも、彼女の担当弁護士・成歩堂と助手役を務めた春美、妹と従姉妹に助っ人として召還された千尋の3人によって、裁判中に犯行を暴かれたキミ子は逮捕される事となった。殺人犯にまで身を堕とした事で綾里一族から追放され、余生を独房に収容されたまま送る羽目になったキミ子だったが、未だに野望に燃える彼女は約1年後、再び恐るべき凶悪犯罪を犯すのであった。


2人の異父姉編集

キミ子は自分の仕打ちが元で心が荒み、最終的には死刑囚となった長女のちなみと収容施設内で再会し、彼女に「最終手段・真宵暗殺計画」の協力者となる様に話を持ち掛ける。この計画は「綾里一族の分家筋の寺院『葉桜院』に真宵と春美を修行に行かせ、死刑執行後のちなみを春美に霊媒させて真宵を暗殺し、その罪を現在『葉桜院』の尼僧として働くあやめに着せる」という娘全員を野望実現の道具としか思っていない、キミ子の酷薄さや残忍性が全面に押し出された内容であった。彼女は自身の逮捕以前から「最終手段・真宵暗殺」を考案していて、実家である『綾里邸』に『犯行計画書』を隠しておき、ちなみの死刑執行後、春美に計画書の在りかを教えて読ませると計画を実行させた。この計画書には命令のみを抜粋すると「真宵と一緒に『葉桜院』に行き、指定の時間になったら美柳ちなみという人物の霊媒をして欲しい」とだけ書かれており、彼女の顔写真も同封されていた。


それ故に春美は「母の従姉妹に対する殺意」には気付かず、指定の時刻から頻繁にちなみを霊媒しようと試みるが、全て失敗に終わってしまう。何故なら「ちなみに憑依された春美が真宵を殺すという最悪の事態の回避」を目的として、春美よりも先に別の霊媒師がちなみの霊媒を続行していた為である。1人目は「真宵暗殺計画」の妨害者・舞子で、彼女は自分に憑依したちなみが真宵を襲撃した際、協力者であったゴドーに制止目的で背中を刺されて命を落とした。2人目は真宵で、霊媒とメモを通じて姉の千尋に相談した彼女は、機転を利かせた姉から「真宵自身がちなみを霊媒し続ける事で彼女から身を守る奇策」を授けられ、ちなみ自身が犯行を諦めて冥界に逃げ帰るまで憑依は続いた。これらの背景が理由となって、舞子と真宵がちなみを霊媒した事も知らない春美は、事件が解決するまで一度足りとも「ちなみの霊媒に成功する事」は無く、その上「私は母の手伝いも満足に出来ない悪い子だから、罰が当たって霊力が突然消えた」と勘違いして自責の念に駆られる羽目になった。


成歩堂達は捜査中は春美への気遣いから、彼女の口から手掛かりを引き出すだけで、具体的な事件に関する説明は徹底的に避けていた。その後、最終日の法廷で春美は裁判の傍聴を通じて「母の本性、異父姉の存在、犯行計画の実態」と全ての真相を知るに至った。アニメ版では「傍聴席にいる春美の様子」が描かれ、残酷な真実の全容を知った彼女は「悲しみと苦しみが入り交じった表情」を浮かべていた。


2人目の異父姉のあやめも良心からゴドーと舞子に協力し、キミ子の野望の為だけに真宵は勿論、春美が犠牲となる事態を回避する目的で行動していたのだが、複雑な諸事情から春美にとっては「素直に好感が持ち難い相手」となっている模様。事件解決後には正式に再会するものの、2人の間に姉妹意識が芽生える事も姉妹として接する事も無かった様だ。春美にとって姉と呼べる存在は、あくまでも従姉妹の真宵だけだった。

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