「お前と私で作るんだよ。皆を笑顔にする最高のサーカスをな!」
概要
声:佐々健太(アニメ版)
『逆転裁判2』第3話『逆転サーカス』に登場。年齢52歳。身長168cm。
『タチミ・サーカス』の団長。ピエロのトミーとはサーカス団を結成する前からの旧友で20年以上もの付き合い。金髪の薄毛頭に黒い燕尾服を着た、恰幅の良い紳士で立派な口髭を蓄えている。興行では司会進行を担当。長年の苦労と努力が実を結び『タチミ・サーカス』は今年で創立20周年を迎え「今世紀、最高の魔術師」と誉れ高いマキシミリアン・ギャラクティカ(通称マックス)の専属契約先でもあるだけに大盛況を迎えている。
非常に誠実で部下思いな人物で、生前はサーカスの財政が厳しくても身銭を切って団員に給料を払った過去を持つ。同時期には生活苦から弟夫妻に捨てられた、幼少期の甥・木下大作と木下一平を引き取り、父親代わりとなって養育もして来た。元々は兄・大作、弟・一平は一般人だったが、七百人への恩返し目的でアクロバット芸人となって「アクロとバット」という芸名で活躍する「サーカスの花形メンバー」にも加わった。親友のトミーは「団員の皆、団長が好きだった」と語る。「万人に愛される人格者」だった彼を団員達も慕い続け、後述の事件以降も誰一人としてサーカス団を離れようとしなかった程、厚い人望と強い影響力を持っている。
「聖人君子」と言って良い程の人物である反面、一人娘のミリカこと里香を溺愛しており、親馬鹿気味なのが玉に瑕。団員の話によれば「ミリカを宝物の様に大切に育てていた」らしいが、娘の教育に関しては幾つかの問題点が見られる。「いつまでも娘には俗世間の汚れを知らない、純粋無垢な存在でいて欲しいから」と願う余り、ミリカに通学もさせずに俗世間から隔絶してサーカスの中だけで教育を済ませるという「行き過ぎた純粋培養」を施している。ミリカの余りにも幼稚な知識と人間性からして、七百人が団員達には「娘に俗世間の事は教えない様に」と箝口令まで敷いていた可能性も高い。結果としてミリカは実年齢は16歳でありながら、精神年齢はその10歳も下の6歳児並に停滞してしまっている。精神年齢相応に一般常識や道徳観も幼児並で、これを良しとしている所からも「七百人の屈折した教育観」が透けて見える。
第3話でサーカスの年末興行の最中のある夜、撲殺死体となって発見された。凶器は見つかっていないが「首の後ろから鈍器を落とされて、首を骨折したのが死因」だと判明している。事件直前の夜、七百人に「ギャラの値上げ、ミリカへのプロポーズの相談」を持ち掛けていた上、現場から所持品のシルクハットが発見された事からマックスが容疑者として逮捕された。
『2』の攻略本では『2』に登場したキャラほぼ全員のインタビューが掲載されているのだが、基本的に「各事件の被害者を始め、成歩堂と会話した事が無い人物」は除外されている。被害者の中では例外として、霧崎と七百人にもインタビューの場が設けられたのだが、霧崎は彼本人が登場して質問に答えているのに対し、七百人は不憫な事にスタッフが代理人として質問に答えていた。このインタビューにて「若い頃は娘と同じく、猛獣使いをしていた」「本作の中で最も誠実な人物として描いた」という設定が明かされた。一方、娘のミリカはインタビューで「通学はしているのか」との質問に「学校?ミリカよく解んない」と回答しており、父親からは通学を禁じられている所か、学校の存在まで秘匿にされて、教育されて来た事が解る。
スタッフによると七百人の外見は『モノポリー』のマスコットキャラ、ミスター・モノポリーがモデルで、名前は「知り合いに五百人と書いて「いおと」と読む名前の人がいたので流用させて貰った」との事。
英語版での名前は「Russell・Berry(ラッセル・ベリー)」。『タチミ・サーカス』も団長の苗字に合わせた上「とても大きな」を意味する「very big(ベリー・ビッグ)」とも引っ掛けて『Berry・Big・Circus(ベリー・ビッグ・サーカス)』に変更された。アメリカの著名なサーカス団『リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス』(通称リングリング・サーカス)の「ベイリー」も由来に含まれているのかもしれない。2017年『タチミ・サーカス』は「半年前の事故」と「団長殺害事件」という不幸が降り掛かったが、同年には英語版での名前の由来となった『リングリング・サーカス』も廃業するという不幸に見舞われた。
関連タグ
ここから先はネタバレ
星になった団長
実は真犯人の本来の標的は娘のミリカだったが、後述の半年前の事故の責任から娘を守りたい一心で、身代わりとして所定の場所に訪れた末に誤って殺害されてしまった。
事件の発端は半年前に起きた事故にある。この事故は当時ミリカのパートナーとしてサーカスで飼っていた「ライオンのレオン」が混乱の果てに暴走し、アクロとバットに大怪我を負わせて障害者にしてしまう惨状を招いた。事故の原因は数日前のバットからの些細なイタズラの仕返し目的で、ミリカが多量の胡椒が振り掛けられたスカーフを彼に送った事による。その後、前々から彼女に惚れていたバットはスカーフを身に着けたまま「レオンの口内に頭を入れても無事だったら一緒に映画を観に行く」という賭けを持ち掛けた。
この賭けはバットのスカーフの胡椒が原因で、レオンがクシャミをしてしまった為に最悪の結末を迎えた。レオンに頭を深く噛まれたバットは植物状態となって、現在も入院中で一向に回復の兆しが見られない。弟の助けに向かったアクロも混乱していたレオンに両足を噛まれて、下半身不随となって車椅子が無ければ生活出来ない身となった。レオンは「事故を起こした猛獣だから」と全責任を押し付けられて、七百人に銃撃される形で殺処分される事となった。
元を辿れば「元凶」と言える肝心のミリカはというと、七百人の「娘に罪悪感を教えて苦しませたくない」という溺愛の延長にある親心から、まともにバットの昏睡もレオンの死も説明されず「誰でも死んだら、お星様になる」の子供騙しの説明をされるだけで済まされた。これだけで極度の世間知らずのミリカには十分な説明となり、彼女は自分が罪を犯した意識を持たないまま、事故の被害者達と違って事故以前と変わらない平穏な日常を過ごしていた。
事故から半年後。事故以降の悲惨な現状に耐えかねて、真犯人はミリカへの復讐を決意し、彼女のポケットに「殺人者に告ぐ。半年前の事故の決定的な証拠を預かっている。今夜10時、宿舎前広場に来い」と書かれた脅迫状を入れた。何に対しても罪悪感を持っていないミリカは、この脅迫状を「別の人間に宛てた物」だと勘違いし、食堂の掲示板に貼り付けてしまう。脅迫状を見つけた七百人は瞬時に「真犯人の思惑」を悟り、娘の身代わりとなって脅迫状に従って所定の場所へと向かった。その時、真犯人は自分の置かれた状況から、七百人をミリカだと誤解して殺害してしまったのだった。
七百人はマックスとの話し合いを終えた後、彼には「すぐ戻る。10分も掛からんと思うよ」と言い残しているので、短時間で真犯人との会話を終わらせる気でいた様だ。この発言からは「真犯人が誰なのか察していた」と窺える。「あの真犯人が相手ならば、その人間性や自分との関係性からして、こちらの訴えも大人しく受け入れてくれる」と踏んでいたのだろうか。また真犯人とは密談する事になる為、密かにマックスのシルクハットとマントを借りて変装した上で現場へと向かっている。変装の理由については「あえてサーカス内で嫌われているマックスに成り済ます事で、他の団員から話し掛けられたり、密談に他の団員が巻き込まれるのを防ごうとしたという説」が一部のファンに提唱されている。アニメ版では、マックスが団長の寒空での外出を気遣い、防寒具としてマントを貸し出した設定に変更された。
事件直前ベンとリロが見かけたマックスの正体は「変装した七百人」であり、この格好が災いして目撃者のトミーや警察には「マックスが七百人を殺害した」と誤解される事態を招いた。