概要
燕尾服は、男性の夜の礼服のひとつ。裾(すそ)が燕の尾のようなのでそう呼ばれている。
燕尾服を中心に構成される服装は白い蝶ネクタイを用いることから、ホワイトタイと呼ばれる。
戦前日本の服制について定めた「明治5年太政官布告第339号」では、この服装が「通常礼服」とされている。また、「通常礼服」は「小礼服」とも呼ばれ、「大礼服」が制定されていない下級官吏や民間人の最上級正装とされていた。
歴史
18世紀、革命前夜のフランスでは自然主義の影響でイギリスの乗馬および乗馬服が流行していた。そのひとつに長いコートの前裾が直角に切り取られ、後裾だけが長い上着があった。裾が割れているのは、乗馬の際に鞍の上でもたつかないように適した形に改良されたためである。これらは貴族が朝の日課である乗馬のあと、そのまま宮廷に上がれるようにとのことから礼服化し、今日でも馬場馬術の上級競技では、燕尾服とトップハットの着用が規定づけられている。
19世紀のイギリスでは、紳士服には黒が流行していた。これには、産業革命によって工場が増え、その煤煙が服にかかるため、それが目立たない黒が好まれたという面もある。これが元になり、やがて黒色が男性用の正式な正装服装色とされるようになった。
第二次世界大戦後はヨーロッパの宮廷でも、それまで最上級正装であったコートユニフォームが着用されることは少なくなり、代わりにホワイトタイが最上級の礼装として、公式の晩餐会、皇族などの格式高い結婚式や披露宴、勲章授与式、あるいはそれに準じる舞踏会、音楽会、着席型のパーティなどで使われている。
以上のように特別な意味を持つ礼服であるため、フィクションであるように執事や使用人が常に身にまとっているということはない。一方、ディズニーランドでゲストを歓迎するミッキーマウスが普段着ている衣装は「燕尾服」である。