美柳勇希
みやなぎゆうき
声:水沢史絵(アニメ版)
『逆転裁判3』第4話『始まりの逆転』に登場。年齢23歳。身長160cm。
本編から約6年前、新人時代の綾里千尋と御剣怜侍が初めて担当した裁判の被告人・尾並田美散に殺害されたと見られる女性。生前は現職の婦人警官で、階級は巡査部長だった。
第4話から更に5年前、新米警官だった勇希は14歳の少女を誘拐して『吾童山』に立て籠もった、尾並田を山中にある『おぼろ橋』の上で発砲して追い詰め、人質を橋の上から突き落として殺害した彼を逮捕した。尾並田の裁判では証人として出廷し、事件当時の様子を詳細に語った彼女の証言が決め手となり、尾並田には死刑判決が下された。これらの功績が評価されて勇希は出世し、若くして現在の地位を手にした。
それから5年が経った現在、因縁の場所『吾童山』の『おぼろ橋』にて再び事件が起きる。護送中の交通事故に便乗して、脱走した尾並田に公衆電話を通じて「最後の話し合いがしたい」と呼び出された勇希は、待ち合わせ場所に指定された『おぼろ橋』へと向かい、そこで「尾並田との会話を終えた直後、彼に自分を死刑台送りにした私怨から刺殺された」と推測されている。遺体は「尾並田が移動に使った盗難車のトランク」から発見され、その背中には凶器のナイフが刺さっていた。勇希の勤務先の机には「死亡する数時間前、彼女が書き残したメモ」が置かれていて、内容は以下の通りであった。なお午後1時は尾並田からの連絡を受けた時間で、指定された待ち合わせの時間が午後4時30分となっている。
「2月14日/午後1時21分。オナミダ、午後4時30分。例の吊り橋。目印に白のマフラー用意。※ちなみに相談。今度こそ伝える(全て世間に公表する)」
勇希を殺害した真犯人は尾並田ではなく、勇希の義妹にして、5年前の事件の被害者とされている美柳ちなみである。勇希にとって、ちなみは母親の再婚相手の連れ子に当たる。
5年前に尾並田が起こした誘拐事件は「尾並田と勇希、そしてちなみの3人による自作自演の狂言事件」であり、勇希は警察官の身分を利用して犯人と取り引きする役だった。
尾並田達に遅れて、『吾童山』に入った勇希は『おぼろ橋』の上で2人と合流するのだが、ここで勇希はちなみと共に尾並田を裏切った。勇希は拳銃で尾並田を撃ち、ちなみはその混乱に乗じて、身代金替わりの宝石が入ったリュックサックを持って、橋から飛び降りて12メートル下の急流に姿を消した。勇希はそのまま尾並田を逮捕し、裁判では彼に全ての責任を押し付けて死刑に追いやった。事件後、勇希はちなみが身分を偽わる為に必要な書類を用意し、ちなみを世間的に死んだ事にしている。
警察官でありながら、犯罪に手を染めた勇希だが、彼女はちなみと違って、まだ良心的な人物だった様で、脱走した尾並田から呼び出された事で「5年前の事件の真相を世間に公表しよう」と決意し、尾並田が待つ『吾童山』に向かった。しかし、あろう事かその決意をちなみにも伝えてしまった為、勇希は尾並田と再会する前に、ちなみの手で殺害され、その口を封じられてしまったのである。
単純に考えれば「尾並田と共に家族愛に恵まれていない、孤独なちなみの境遇に同情しての事」と思われる。第5話『華麗なる逆転』では、双子の妹あやめに成り済ました、ちなみ自身が「狂言誘拐の動機は、父への復讐だった」と明言しており、これは妹のあやめも同じである。「ちなみが子供には完全に無関心であった、父から愛されていない事」は彼女の身内から見れば、明白だった事が作中では示唆されている。「憎んでいる冷酷な父親に一矢報いてやりたい」と語れば、尾並田と勇希は簡単に情に絆されただろう。
彼らは、ちなみの父親の再婚後に彼女と知り合ったので、父親の前妻の子であり、ちなみにとっては「影の協力者にして理解者であった、双子の妹あやめ」の存在も知らされていないとしたら、尚更であろう。もしも教えられていたとしても「双子の妹がいて、両親の離婚以降は別居している」という説明に留まっているだろう。当初の計画では、あやめを人質役にする予定だったが、ちなみは共犯者の2人には、あやめも仲間だった事まで伝えておらず、あやめに関しては尾並田も言及していない。
勇希自身は「何の罪も無い尾並田を陥れた人物」として描かれているが、ちなみに「尾並田がストーカー化して困っている」と騙されていたが故に、妹を守る為にも彼を破滅に追いやったとしても不思議ではない。
「14歳のちなみと尾並田が、心中の約束をしていた事」を知っていたとしたら、彼女の行動も理解出来ないものではない。下手をしたら、ストーカー殺人でちなみが殺されているかもしれないので、妹を守る為にストーカーを排除する方法が、他に思い付かなかったのかもしれない。
少なくとも尾並田は橋の上で、ちなみを引き渡さなかったので「ちなみが幸せなら、それで良い」「どんな時も、ちなみの安全が第一」等と考える人間ではない事は確かである。また尾並田も狂言誘拐に参加しているだけで、犯罪者(しかも大事な存在の筈の、ちなみを巻き込んで)であるので、同情に値するのかどうかは疑問が残る人物である。だからこそ、法廷で糾弾したとすれば、全面的に彼女が悪いとは言い切れない(死刑判決になったのは、想定外だった筈)