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「ホントは、もうあまり思い出したくないんだ‥‥」


概要編集

逆転検事』第3話『さらわれる逆転』に登場。年齢21歳。身長169cm。左利き。


世界規模のネットワークを誇る、大企業の貿易会社を経営する『天野河コンツェルン』の御曹司。同コンツェルンの総裁を務める父親・天野河丈一郎に溺愛されている極度のファザコンで、既に20代前半の男性でありながら、公衆の面前でも平然と父を「パパ」と呼んでいる。丈一郎にとっては「唯一人の我が子にして跡取り息子」でもある為、光は父の愛を独占している。丈一郎は御剣怜侍の師匠・狩魔豪とは友人で、その縁から御剣を新人検事時代から支援して来た為、彼にとっては恩人に当たる。


父親だけでなく、実家の召し使い全体からも大いに甘やかされている模様で「甘ったれのとっちゃん坊や」なのが性格や言動に表れている。「権力者の息子として生まれ育った身の上」だからか、見栄っ張りな一面を持ち、自身に送られて来た女性からの手紙を恥ずかしげもなく「ラブレター」と口にして、手紙の内容を誤魔化す場面もある。丈一郎も光に追従し「息子は心の優しい美男子で、毎日の様に女の子からのラブレターが届く」と言い張っていた。


実家のメイドの1人・織戸姫子は幼馴染で、最近では婚約者にもなった間柄。常日頃から「気障で浮世離れした言動と態度を取るのが癖」になっていて、ロマンチストの姫子を完全に魅了している。彼女は本気で光に惚れ込んでおり「彼は理想の王子様で、私が夢見ているロマンチックな恋のお相手になってくれる」と盲信する余り、光に盲目的に従う傾向に陥っている。通常状態では、常にプレイヤーに対してカメラ目線を向けて来て、どこか哀愁を帯びた雰囲気を醸し出して格好付けて来る。正直言って反応に困る行動である。


人間性は勿論、外見もイケメンとは言い難い(かと言って、ストレートにブサメンとも言えない)ものだが、光本人は父に容姿を称賛されて育てられて来たのが主因で、自分をイケメンだと思い込んでいる。福耳瓢箪の様なふっくらした下膨れ顔、微妙に小太りの体型が特徴。福耳は父親からの遺伝。その容姿は、どことなく『戦国BASARA』の小早川秀秋と似ている。ぽっちゃり体型の小早川に比べれば痩せているが。ちなみに10代の少年である小早川よりも、20代の青年である光の方が当然ながら背が高い。


一応、顔のパーツと造形自体は良い為、輪郭を整えさえすれば、本物の美男子になれそうな中途半端な容姿を持つ。2009年に発売された攻略本では、スタッフからは「美形になり切れない容姿の持ち主という意味」で「残念なイケメン」と呼ばれていた。現在での「残念なイケメン」という言葉は「容姿は完全に美形だが、性格や素行に何かしら残念な部分がある男性という意味」で使用されている。光も前述の方法で本当に美青年になれば「現在の意味での残念なイケメンの該当者」にはなれるだろう。


青いシャツにピンクと黒のベスト、黒いリボンタイ、黒のズボンを着用している。「服の配色が主に青と黒で構成されている事」が天野河親子の共通点である。ベストの左胸のポケットには懐中時計が入っていて、ポケットからはチェーンがぶら下がっている。この懐中時計は姫子が自身の後ろ髪をバッサリと切って売却して得た、なけなしの金で購入した婚約者の光へのプレゼントで、御曹司の彼には似つかわしくない安物であるものの、2人の愛の証として身に付けている。後述の事件直後からは、自分を誘拐した犯人によって両手に手錠が掛けられている。手錠は拘束具のみならず、光の心情を如実に反映するアイテムにもなり、手錠の扱いからも彼の心境を窺い知る事が出来る。


御曹司という立場からテーマパーク『バンドーランド』で何者かに身代金目的の人質として誘拐されてしまう。父・丈一郎は何としてでも愛息子を救出すべく、実力を高く評価している御剣に事件の捜査を懇願し、御剣は「長年の付き合いがある恩人の頼み」とあって快く引き受ける。この時、丈一郎は対抗策として「事件現場=身代金の受け渡し場所」とされた『バンドーランド』のアトラクション『ホラーハウス』を軽々と1億円で買収した。捜査を進めていく内に天野河家の執事・小倉真澄の遺体が事件現場から発見される。小倉の死因は拳銃による射殺だった。段々と光にとっては不利な状況となって行く中、彼は監禁場所から自力で脱出して這々の体で帰って来る。それ故に光は事件の中心人物でありながら、物語の中盤からの登場となる。冒頭の台詞は脱出直後、御剣に事件について質問された時に発した。



関連タグ編集

逆転検事


逆転裁判・逆転検事シリーズキャラクター一覧


マキシミリアン・ギャラクティカ

天杉優作

優木誠人:『逆転』シリーズにおける、残念なイケメンに該当する男性キャラ達。ただし彼らは光と違って、誰が見ても端正な容姿を持っている。












※以下ネタバレ注意※












御曹司の本性編集

第3話での小倉真澄こと鞍馬純夫の殺害事件の真犯人。光の誘拐事件も彼自身が首謀者で「父親の丈一郎を脅迫して、多額の身代金を獲得しようと引き起こした、営利目的での狂言誘拐」であった。姫子と鞍馬は狂言誘拐の共犯者に当たり、鞍馬は途中で光の犯行に異を唱えたばかりに殺害される事となった。


事件現場の『ホラーハウス』の仕掛けを利用して、身代金を届けに向かっていた御剣にプロトタイホくんの着ぐるみを着て襲い掛かったのも光である。彼と姫子は正体を隠して犯行を遂行する為『バンドーランド』のマスコット・タイホくんファミリーの着ぐるみを盗み出して着用する事までしていた。姫子を誘惑して婚約したのも共犯者に引き入れる為で、御剣達の前に姿を現してからも手錠を嵌めていたのは「先程まで拘束されていた誘拐事件の人質を演じる為」であった。ちなみに御剣が「身代金の収納要具」として使用したのは、第2話『逆転エアライン』にて事件関係者のCA木之路いちるがデザインし、彼にお礼の品として贈った『サイケデリックなデザインのスーツケース』である。悪い意味で人目を引くデザインなので「使い所は今しかない」と思って利用したのだろうが、御剣はいちるに失礼だとは思わなかったのだろうか。


「親馬鹿な父にすら言えない様な理由で多額の借金を背負った」との事だが、光の立場や人間性、作中の描写からして、借金の原因は確実に「豪遊生活で限度を越えた散財に及んだ為、丈一郎からも資金援助を得るのが難しくなり、それでも放蕩三昧を止められないが故に、遊興費の獲得目的で鹿羽うらみの経営する闇金融『カリヨーゼ』からの借金を重ねた結果」であろう。光と丈一郎が親子揃って「女の子からのラブレター」と言い張っていた手紙は、実際には『うらみからの督促状』であった。


万年筆で書かれたと思しき督促状は、黒い血痕の様なインクの染みが全体に点在する不気味な様相となっていた。肝心の文章は「天野河光様。また会いに行ってもいいですか?あなたのウラミより」と記述されている。確かに文面だけならラブレターでも違和感の無い言葉が並んではいるが、この手紙の本当の意味は「借金を返済しなければ近々また脅迫に向かうが、それでも良いのか?」というもので、身から出た錆とは言え、光にとっては「実質的な脅迫状」とも言える代物である。何も知らない人が読めば「脅迫被害者に宛てられた手紙」だとは気付かれない文面にしてある辺り「闇金融の社長」と「プロの脅迫者」を兼ねるうらみの優れた経営手腕が窺える。この督促状をラブレターと強調して誤魔化す、天野河親子の大胆不敵かつ厚顔無恥な言い分には驚かされる。


おまけに、うらみは町の闇金融の総元締めも担う暴力団『鹿羽組』の組長・鹿羽権太の溺愛する孫娘でもある。光は当初、彼女の素性を全く知らずに迂闊にも『カリヨーゼ』に手を出してしまい「うらみ本人や彼女の背後にいる組員達に、借金を返済する様に脅迫される危険事態」へと陥ってから『鹿羽組』の恐ろしさを初めて痛感し、危機感を抱いた末に「狂言誘拐で騙し取った大金で借金を返済するという凶行」に及んだと想像が付く。「光が豪遊天国と借金地獄を往来する生活を送り続けた結果、今回の狂言誘拐事件は引き起こされた」と纏められる。身代金の金額は1億円で、これがそのまま借金の総額となっていると思われる。奇妙な因果だが、数ヶ月前に起こした交通事故で、うらみに怪我を負わせた闇金融『カリヨーゼ』の社長・芝九蔵虎ノ助が『鹿羽組』に「落とし前として請求された金額」も1億円であった。


国際捜査官・狼士龍の推理通り、父の丈一郎は『国際警察』が追っている密輸組織の幹部で、10年以上前から組織とは繋がりがあった。反面、息子の光は組織とは無関係の人間であり、あくまでも個人的なトラブルの解決を目的として、独断行動による犯罪行為に走っていたに過ぎない。それに加えて、ファザコンとして父の丈一郎に依存する反面「時には平然と肉親を利用してまで、私利私欲を満たす事が通常運転となっている事」からも、光の父親とは異なる悪人ぶりが発揮されていると言えよう。前述の「光と容姿が似通っている人物」として名を挙げられた『戦国BASARA』の小早川秀秋は「見た目通り臆病で愚鈍だが、根は純粋な少年である愛すべき馬鹿」として描かれている。彼とは正反対に光は「見た目に反して肝の据わった、狡猾な冷血漢の青年である愛されない馬鹿」として描かれている。


光の所業と人間性は既に「極悪非道」と言っても差し支えない領域に達していて、本当に美形ならば「残念なイケメン」は勿論「残忍なイケメン」にも該当してしまう。それが顕著に現れているのが鞍馬殺害の経緯である。鞍馬は「天野河家に長年仕える忠臣」と言える男性で、KG-8号事件当時は丈一郎の秘書を務めていた。『天野河コンツェルン』の密輸疑惑が浮上した時には、身代わりとして1人で密輸犯の罪を被って自首までしている。その後、収監先の『赤逗野刑務所』から脱獄した鞍馬は天野河家に舞い戻り、本名のアナグラムから作った偽名「小倉真澄」を名乗り、新たに「天野河家の執事にして光の家庭教師」にも就任した。唐突に自分の犯行に抵抗したからといって「こんなにも天野河家に献身的に仕えて来た忠義に厚い人物」を容赦なく殺害した所にも「光の腐れ外道ぶり」が反映されている。


鞍馬の一人娘の姫子への愛情もまた深いもので、偽名を名乗って別人に成り済ましながらも彼女を見守っていた。一方、姫子は前述の鞍馬の自首当時は9歳で、その時に父親と生き別れになった為に彼の顔を忘れてしまい、ずっと小倉と名乗る鞍馬の正体に気付かず他人だと思い込んでいた。その忠誠心と愛情の深さ故に「丈一郎に次ぐ主人に当たる光にも、実の娘に当たる姫子にも罪を犯して欲しくない」と鞍馬は考えていたのだ。彼は当初、光の為になると信じて狂言誘拐に手を貸したが、脅迫相手が丈一郎なのもあって罪悪感に駆られる様になった。そして犯行途中『ホラーハウス』にて、光に犯行を止める様にと諫言した上で妨害を始めた結果「逆上した光によって殺害される非業の死」を迎えてしまったのだった。「父親・鞍馬の正体と死、彼の命を奪ったのは婚約者・光という真相」を知った姫子は嘆き悲しんだ。


光にとっては鞍馬の殺害以降の行動は全て突発的な犯行であったが、そうとは思えない程に犯行は緻密に練り上げられていた。「父の丈一郎の狡猾な卑劣漢ぶりは若干形を変えて、しっかりと息子の光に受け継がれていた」と評価出来る。光は元から捨て駒にするつもりだった姫子に全ての罪を着せて、息子に騙されて彼の救助目的で『バンドーランド』に駆け付けた、丈一郎に弁護役を頼む事で逃げ切ろうと図るが、名実共に天才検事の御剣相手には敗北を喫する事となった。


ブレイクシーンでは、これまで焦りや苛立ちを覚える度に乱暴に扱って来た手錠を、とうとう様々な感情を爆発させて素手で引き千切り、逮捕を前にしての恐怖感と絶望感から、子供に戻ったかの様に泣き出して「ごめんなさぁぁぁい!!」と絶叫し、号泣しながらの謝罪に及んで御剣と仲間達への許しを乞いた。この号泣シーンも「小早川が怯えて泣き喚いて、平謝りして許しを乞おうとするシーン」を彷彿とさせるものとなっている。


この醜態を晒した息子を丈一郎は非情にも、普段の溺愛ぶりが嘘の様にあっさりと見捨てて、自分だけでも逃げ延びようとする。この一幕からは皮肉な事に「自分の目的の為ならば時と場所と場合を問わず、容赦なく肉親をも犠牲にする精神までもが父親から息子に引き継がれている」と解る。しかし以前から丈一郎に目星を付けていた狼が現れ、彼率いる捜査官チームによって丈一郎はあえなく御用となった。一見お互いを甘やかして馴れ合う、共依存関係にも見える天野河親子だったが、その実態では幾多の親子関係が描かれて来た『逆転』シリーズにおいても、歴代屈指の空辣な親子関係を見せたのであった。そして丈一郎とは密輸組織の幹部仲間にして、彼の起こした事件の担当検事に任命された優木誠人に丈一郎の身柄は引き渡される事となった。このラストシーンから第3話『さらわれる逆転』は第1話『逆転の来訪者』の前日譚である事が解る仕掛けとなっている。


シリーズ全体を通じて「真犯人と共犯者の逮捕後」は極一部の例外を除いて、基本的には明確に描写されない方針を取っているが「国際的な密輸組織の幹部が総裁を担い、その跡取り息子までもが凶悪犯罪を犯した」と世間に公表された『天野河コンツェルン』は丈一郎の代で没落、最悪の場合、崩壊してしまった可能性は極めて高いだろう。夜空に広がる天の川の如く、世界規模のネットワークを誇る『天野河コンツェルン』だったが、最後はその美しい名前に反して醜い実態を晒し、永久に権威を失う結末を迎えたのであった。

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