「プロのCAとして断言させていただきます」
概要
『逆転検事』第2話『逆転エアライン』に登場。年齢24歳。身長165cm。
大手航空会社『ゴーユーエアライン』のCA。非常に真面目で礼儀正しい性格の女性で、常に毅然とした態度と敬語口調で他人に接する。24歳という年齢からして「CA歴は僅か約2年という身の上」にありながら、既にプロ意識は高水準に達しており、冒頭の台詞が口癖となっている事にも「高潔な職業精神」が表れている。三重のスクエア状に結った黒髪をシニヨンにして纏めている髪型が特徴。
同期のCA白音若菜はビジネスパートナーに当たり、彼女とは外見、性格、勤務態度のいずれも正反対。いちるは黒髪を纏め上げた髪型の高身長スレンダー美人で、制服も規則正しく着用し「謹厳実直」を体現する性格と働きぶりを見せている。それに対して若菜は茶髪のスーパーロングヘアを無造作に下ろした、小柄でグラマラスな美女で、だらしなく制服を着崩しているのに加え、サボりや規則破りの常習犯という有り様である。常時ずぼらでマイペースな若菜には「いつでも何事にも真剣に取り組む性格」に付け込まれ、仕事から私生活の雑用に至るまで面倒事を押し付けられている。ビジネスパートナーという関係上、いちるが自発的に若菜の尻拭いに奔走させられる場合も多く、何かと気苦労が絶えない立場にある。
それ故に若菜との関係はギクシャクしており「怠惰精神の体現者である彼女の勤務態度」を全面的に容認している、直属の上司・機長にも不満や不信感を抱いている。社内では、機長には幾ら問題行動を起こしても無罪放免として扱われる、唯一無二の特権と寵愛を与えられている若菜の立場から「2人が愛人関係にあるとの噂」が流れているが、いちるもこの噂を信じている様子。社内全体の業績や秩序を保つ為にも、いちるは苦手意識を持っている若菜の世話も甲斐甲斐しく行っている。若菜の方も表向きには、いちるを何とも思っていないかの様に振る舞っているが、とことん反りが合わず、しつこく業務に携わる様に注意して来る彼女を快く思っていない様で、若菜の語る「自分の職場でのストレス」には、いちるの存在も含まれていると思われる。2人をビジネスパートナーとしてコンビを組ませる人選は、機長が「寵愛対象の若菜の世話役を続行してくれるのは、いちる位しかいないという現状を踏まえての事」なのかもしれない。
現在、彼女の勤務する『ゴーユーエアライン』には「国際的な密輸組織の一員が潜伏し、犯行拠点として利用している疑惑」が浮上中で、各司法機関から派遣された人物達が捜査に当たっている。その最中いちるは出張帰りに『ゴーユーエアライン』の航空機に搭乗していた検事・御剣怜侍と出会う。今回の殺人事件の現場は「彼女の担当する航空機の内部」であり、そのエレベーターに被害者アクビー・ヒックスの遺体が押し込められていた。彼は『国際警察』から派遣された国際捜査官だった為、密輸組織の人間に口封じ目的で殺害されてしまったのだ。エレベーターの前で「アクビーの遺体の第一発見者」となって驚愕していた御剣に続いて、いちるは第二発見者となるが「状況からして御剣が真犯人ではないか」と疑惑の目を向けて彼の拘束にまで及んでしまう。その直後、機長の命令により御剣の臨時の助手役を担い、事件の捜査協力や現場の航空機の案内を行う。臨時パートナーとして行動を共にする内「御剣とは似通った性分の持ち主同士」なのもあって段々と打ち解けて行き、お互いの人柄や仕事に対する姿勢を高評価し合う様になる。御剣といちるは「生真面目、努力家、不器用、苦労性」といった面が共通している。共同捜査中は終始一貫して「捜査の素人らしからぬ冷静沈着ぶり」を発揮して、御剣の意見に同調する場面もあった。
20代前半にして大手航空会社のCAに就職している時点で「優秀な若手社員」なのは間違いないのだが、どこかズレた感性や不器用な一面、真面目過ぎる性分の持ち主なのが災いして「意図せずして様々なトラブルを引き起こしては、自ら苦労を背負い込む結果を迎えてしまう事」も多い。丁寧過ぎる接客態度が災いして、敬語の使い方がぎこちなかったり、お辞儀の角度が最敬礼の45度よりも深々としていたり、空港のパンフレットの言葉遣いの誤りを気にしない等の問題点を抱えている。御剣との共同捜査では、それらの難点を表出させてしまい、彼を驚かせたり呆れさせたりしていた。
名前の由来は「この道、一途」か「この道、一流」の捩りと思われる。
木之路画伯
現実では「独特の画力とセンスを持ち、珍妙な絵を描く人」という意味で「画伯」と称される人物の該当者でもある。数ヶ月前に実施された社内公募により、いちるのデザインを採用した「新商品のオリジナル・スーツケース」が販売開始されたが、彼女はこれを通じて遺憾無く独自性を発揮した。全身が黄色いスーツケースの左上にはプレゼントの様に巻かれたピンクのリボンが描かれ、全体に黄緑色となった『ゴーユーエアライン』のマスコット・ゴーユーくんの複数の顔が浮かび、下部には黄緑色の文字で社名『GOYOU』が書かれているという、余りにもサイケデリックな絵柄と化してしまった。メイン画像のいちるが片手に持っている物こそが、そのスーツケースなのだ。悪趣味と言っても過言ではないデザインなものの、これでもスーツケースである以上、低価格でも数万円となるのは避けられないのだが、何と12万円と仰天の高価格が設定されている。看板キャラ・ゴーユーくんの関連グッズは全体的に好評発売中なのに対し、いちるデザインのスーツケースだけは例外として大不評である。
大量の在庫を残したスーツケースの存在は『ゴーユーエアライン』にとっても、いちる本人にとっても「目下の最大の悩み」として扱われている惨状にある。現在、彼女は在庫処分を少しでも促進するべく、自ら積極的に多くの人々にスーツケースの宣伝を行い、密かに仕事の合間に数台のスーツケースを自費購入するといった、涙ぐましい努力を続けている。いちるは知り合いになったばかりの御剣にも、しばしばスーツケースを売り付けようと画策するも悉く失敗に終わる。売れ残りのスーツケースに関する不幸は更に続き、捜査の末に「事件当時、真犯人の手でアクビーの遺体が一時的にスーツケースに収容されて、本来の殺人現場からエレベーターに運び出される偽装工作に悪用された事実」まで判明してしまった。
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※この先ネタバレ注意※
生真面目CAの一途な思い
ストーリーの前半では御剣に殺人容疑が掛かるが、後半では新たにいちるに殺人容疑が掛けられてしまう。全ては今回の事件の真犯人・若菜の策謀による結果だった。いちるが出会った当初の御剣に疑惑を向けたのも、若菜による計略の1つである。彼女にいちるはアクビー殺害事件のみならず、日常生活でも多大な迷惑を掛けられていた人物であっただけに「いちるは『ゴーユーエアライン』関係者の中では、若菜の悪事による最大の犠牲者」と言って良い。
若菜の正体は「国際的な密輸組織の幹部にして『ゴーユーエアライン』に送り込まれたスパイ」であり、彼女は「大手航空会社のCAの立場を利用して密輸品の資料を改竄する役目」を担っていた。今までずっと会社の誰にも知られないまま暗躍していた若菜であったが、ついに国際捜査官アクビーに「密輸組織の幹部が『ゴーユーエアライン』を根城にしての犯行に及んでいる事実」に気付かれてしまった。彼は「機内の貨物倉庫に必ず密輸品や関連の証拠品が収容されている」とまでは読めていたものの、若菜こそが密輸犯とは知らずにいたが故、不幸にも彼女を只のCAと思い機内の案内を依頼してしまう。突然の追跡者登場に困惑する若菜は貨物倉庫までアクビーを案内すると、口封じ目的で倉庫の出入口の階段から彼を突き落として殺害したのだった。アクビーの本当の殺害現場とされた貨物倉庫にも「例のスーツケースの在庫品」が数台置かれていた為、若菜はその1台の中にアクビーの遺体を収容しエレベーターに運び、あたかも殺人現場がエレベーターであるかの様に錯覚させる事を始めとして、数々の現場工作と偽証を行った。こうして他人にアクビー殺害の濡れ衣を着せようと図った彼女の罠に、まんまと嵌められてしまったのが御剣といちるの2人であった。
いちるは「殺人事件の容疑者とされる人生最大の危機」に直面する事となったが、御剣の完璧な推理によって無罪が立証されて、真犯人の若菜も逮捕された事で救われた。「事件を解決して自分を救ってくれたお礼」として、いちるは本来は12万円もするスーツケースを無償で御剣へと贈った。この場では彼女の心境に配慮して快くスーツケースを受け取った御剣であったが、後日談の第3話『さらわれる逆転』では、いちるに知られる危険性が無いのを良い事に「誘拐犯に譲渡する身代金の収納用具」としてスーツケースを利用する暴挙に及んだ。
アクビー殺害事件の解決後、いちると『ゴーユーエアライン』には思いがけない幸運が舞い込む。驚くべき事に例のスーツケースが「有名事件のキーアイテム」として人気を博し、デザインと価格はそのままに大ヒット商品へと生まれ変わったのだ。事件以前は会社のお荷物だったスーツケースは、事件以後は評価が好転して『ゴーユーエアライン』を代表する人気商品になった。会社の上層部にも大ヒット商品を制作した功績を称賛されたいちるは、上司一同から「今度は航空機のデザインを担当して貰いたい」との依頼まで受けた。「木之路画伯の新作」がどんなデザインとなるかは想像するだに恐ろしいものがあるが「厄介者のビジネスパートナー・若菜に関する苦悩から解放された今のいちる」ならば、以前よりは多少マシなデザインを手掛けてくれると願いたいものである。